ゆっくりじっくり魔王を殺していく。勇者達が 作:ねるね
油断はしていられない。最後の最後まで隙を見せるな。と言うか動くな。俺が何をしても終わりなんだから。
にしても、まだか?
《何か待ってるんすか?》
炎がゆらめき、こちらを見透かすかの様に笑った。まるで、全てがお見通しかの様な奴の態度に思わず冷や汗が出る。
それを誤魔化す様に俺は再び奴と距離を取った。
《まぁた追いかけっこっすか。それは、無駄だって分かった筈っすよ!》
が、奴が宙を蹴り空高く舞い上がった後。急降下をして、先へと急ぐ俺の目の前に着地した事でそれは失敗に終わる。
《……何にも喋らないっすけど、まさかまたまた分身っすか。うっわあこりゃあメンドーだ》
奴は独り言の様に話を続ける。
《先輩か分身かは俺には分からない。それに、先輩は俺に勝つ何かがある。それは恐らく時間に左右する物。だとしたら、このまま時間を掛けるのは得策じゃない》
《あーメンドックセー。俺、考えるの苦手なんすよね。初対面には敬語で理知的に喋った方が、好意的な印象を持たれるよって死んだ友達が言ってたんでその通りにしてたんすけど。やっぱり》
言葉が途切れたタイミングで
《圧倒的な力でボコるのがサイキョーだと思いません?先輩》
《力でどうにかなるのなら、どれだけ楽だろうな。それなら、作戦も何もいらないだろうからな》
何処からともなく聞こえる声に応えると、周囲からカチカチッと音がするのが聞こえた。何だ?
《時に先輩、先輩は誰かに負けた事あります?》
《は、突然何言ってんだ?俺は産まれた時から今まで負けっぱなしだよ。寧ろ買った時の方が数える程しか無いよ》
《そっかー。自慢じゃないんすけど、俺は先輩の逆で勝つのが普通みたいな?そんな人生を送っていたんすよ。で、気がついたら
《ああ》
《でも、違った。あんなちっこい犬っコロにバラバラにされて、おまけに家宝の剣まで奪われて死ぬほど悔しかった。もう、誰に負けたくないんすよ。それは……魔王様にも。それから、先輩。アンタにも》
音がどんどん強くなっていく。しかもそれは一つじゃない。至る場所でだ。それで漸くそれが何の音か理解出来た。火打石だ。奴は、見えないぐらい小さく分かれて火を火打石で増させている。
つまり、奴は俺と同じ様に自分を増やして襲うつもりだ。それは、きっと。
《いやぁ、まさか先輩と考えが被るなんてびっくりしましたよ。まぁ、そんな冗談は置いておいて。いくらサイキョーな攻撃でも当たらなかったら意味無いんすよ。じゃあ、どうすれば良いか。答えは簡単だった》
だろうな。きっと、俺が動いた瞬間奴は姿を現し。総攻撃が始まる。その瞬間は俺の身は炎に焼かれ、黒焦げになって死ぬと言う話だろう。
《さぁ、先輩チェックメイトっすよ。これで終わりと行きましょうか!》
勝利を一ミリも疑わない声で奴は勝ち誇った様にそう叫ぶ。それを聞いて俺は笑った。
《奇遇だな、俺もそう思っていたところだ。お前の負けでな》
《は?》
悪いが、ここは勝たせてもらう。と言っても俺は何にもしないんだけどな。
やっと地獄の週七勤務が終わったのでゆっくりと投稿を再開します。