ゆっくりじっくり魔王を殺していく。勇者達が 作:ねるね
『全ては主の通りに』
天に向かって祈りを捧げる彼女の姿は聖女の名の通りと言えるだろう。きっと後ろの信者には彼女が光って見えるだろう。
私が光らせました、命と引き換えに。
これで聖女の信仰心が高まって、
『ああ……主よ。我が救世主よ!こんな私に祝福を与えてくださるのですね。これからもモンスター教は不滅です』
壊滅して下さい。勝手に御神体にされて、慕われて怖過ぎるんだよ。辞めてくれ。
「モンスター教バンザーイ」
「バンザーイ!」
「バンザーイッ!!」
地獄の万歳三唱の後、聖女以外の信者達は街へと戻り聖女だけが此処へと戻った。
『救世主様、お話があります』
《帰れ》
俺には話が無いんだよ。おかえりはあちらです。そんな俺の態度を気にする事無く、聖女は話を続ける。
『獣人の娘の話です、お聞きになりますか?救世主様』
にやりと笑い、そう言う女は先程の清楚な聖女らしさは一ミリも存在しない。悪戯が好きな餓鬼みたいな顔に変わっていた。
《性格悪りぃな、本当に。この腹黒根回しTSクソ聖女が》
『はっ、言うねぇ。魔王軍のペーペーが。聖女様にそんな口聞いても良いのか?あん?』
《それとこれは関係無いだろ》
『あるよ、大アリだね。さっき言った獣人の娘。その子が行ったのは魔王軍の四天王候補生がいる狩場だ。間違い無く、生きて帰って来ないと思う』
淡々と。まるで軽い事の様に、奴は言った。
《四天王候補生って言ってもピンからキリまでいる筈だ。必ずとも……》
『いや、必ずだな。候補生ランキング一位だぞ?生きて帰ってくる方がおかしい』
そんな……。
『まぁ、返って良かったのかもしれない。駒に対して情をお前は持ちすぎだよ。たかだか、駒。たまたまそん時にそれが起こっただけの巡り合わせだ。それにお前は固執し過ぎなんだよ』
『人は死ぬ。それは当たり前の事だろ?』
そんなの分かってる。簡単に死ぬ俺だからこそ、命の尊さと言う物を一番分かってるつもりだ。
『だから、あの子の事は諦めろ。もう忘れろ。な?後は俺がなんとかする。大丈夫だよ、俺はそう簡単には死なない。死んだとしても魔王を巻き込んで死んでやるから安心しろ』
そう、か。確かにあの子の事は何も知らない。名前だって聞こうとしなかった。聞いたら仲良くなってしまう気がしたから。あくまでも俺達はビジネスパートナーなのだから。
『ほら、酒持ってきたから今日は飲もうぜ?つまみなんか無い?』
奴はいつもより明るくテンションを上げて、俺にワインボトルを押し付けて来た。何処から持ってきたものやら。
『ウチの会計が金をこっそりちょろまかして買ってたワインだから、きっと良いワインだと思う』
そして、仕事中にも関わらず酒を呑んでしまった。
少し時間が経つとアルコールが体内に回り、体が熱くなってきた。
『あっつ……』
それはどうやら聖女サマの方も同じ様で、服を一枚脱いだ。瞬間、重りのような物が音を立てて落ちたのでそっと目を逸らした。
なお、数分後に食いしん坊ちゃんが普通に帰って来て色々疑われてしまった。それも、また歳を取れば良い思い出になるのだろうか?
今はまだ苦い記憶である。
所で、ボロボロだけど。一体何があったのか詳しく教えて欲しい。大丈夫?