ゆっくりじっくり魔王を殺していく。勇者達が 作:ねるね
グ〜ッとお腹が鳴る。分かってるよと心の中で返事をしながら、私は目の前の敵から目を離さない。
『ねえ、炎のおじさん。もう一度聞いても良い?』
息を整え渇きからか垂れてくる涎を腕で拭い、再度私は確かめる。
《無駄だ。何度言っても変わらない》
『何で?お肉焼かせてよ!』
《駄目だ、ワタシの身体が焼肉臭くなる。それに……何でお前に肉を焼かせなきゃならない?》
『……お腹が空いてて、お肉焼くと美味しいって聞いて。それで、たまたま炎を纏ったおじさんがいたら焼いてって頼むのは当然じゃない?』
《──何を言ってるのか良く分からない》
本気でそう思っているかの様な顔をしているので私は溜息をついた。
何で分からないかなぁ。魔物だから?でもお肉のおじさんは分かってくれるから炎のおじさんが変なのかな。
『変な炎のおじさんだね』
《意味が分からない。悪いが、お前みたいな獣と遊んでいる暇は無いんだ》
そう言ってまた、人型の炎は私に向かって突進を繰り返す。それを避けずに真正面から食らった。
《何故避けない?何度も喰らった筈だ》
『ゲホッ……ハァハァ』
身体中が火傷でヒリヒリする。もう少しかな。うーん、分からない。どうなんだろ?おじさんが詳しそうだったから本当は来てくれると良かったんだけど前無理だって言ってたし、しょうがないよね。
『ふぅ……』
《お前は何なんだ?何故そこまで俺に執着する?ワタシがお前に何かしたか?》
『……貴方は何もしてないよ。貴方はね』
したのは、アイツである。名前は知らない。ただし、魔王軍を名乗っていた。アイツが……!
前は、楽しかった。小さい頃は、お父さんとお母さんがいてお金持ちだった訳じゃないけど。毎日、私とお父さんが笑っててそれを見てお母さんもつられて笑ってる。何で笑ってるのかも分からないけど、何だか面白くて幸せな日々だった。
でも、今はもう無い。また会いたいと思っても会えない。二人とも。
アイツが殺したから。あんな理由でっ……アイツが殺したから!
《良いかお前らぁ。魔族以外の種族はぜ〜んぶ。等しく、ゴミだ。特にケモノなんて地べたに這いずって吠えてるのがお似合いだ。ま、埋まっちまえば吠えられねえか。悪かったな、ワンコロ》
なんで?
魔族じゃないだけで?
たまたま私達が
じゃあ、お腹が空いたから
『ご馳走様』
《はぁ?》
お肉のおじさんに言われたんだ。食べ終わったらご馳走様って言うんだって。それは、食べ物に対しての感謝なんだって。
『今言っとかないと聞こえないと思って。だって』
ふふっ。
『"死んじゃったら聞こえないもんね?'"』
《貴様……!》
先程よりも強く、そして大きな火の塊となって燃えている。
そして。
《もう、お遊びは終わりだ。本気でお前を殺してやる》
『……?』
瞬間、何かが身体にぶつかり、身体が吹き飛んだ。そして、私の身体が燃えた。
『あ"っ"』
ゆっくりと私の身体が地面に当たる直前に、再び何かが当たり空へと打ち上がった。
《どうした?ワタシに勝つんだろ?言っとくがな。私は四天王候補生でトップの実力を持つ者だ。だからこそ、冒険者が多いこの場所を任された。この近くにいるらしい魔物も先輩らしいが、関係無い》
『!』
お肉の、おじさん?
《会ったら奴隷の様にこき使ってやろう。泣いて喜ぶだろうな。なんせ、いずれ私は魔王を倒し魔族の頂点に立つ男なのだから!その下につけるなんて幸せ以外に言える言葉は無いだろ?なぁお前もそう思うだろ?》
『……』
《もう口も聞けないか。負け犬にはお似合いだn。!?》
『
知ってる?おじさんが教えてくれたんだけどね。
動物のお肉を串刺しして焼く料理なんだって。串の代わりに爪を一時的に伸ばして肉に爪を立てると切れ味が良くて、スーッと入って綺麗に切れた。まぁ、お喋りに夢中で気づかなかったみたいだけど。
《き、貴様ァ!》
『よっと』
何とか地面に着地した。さて、さて。一口、口へと運び味わってみる。
うん。
『うーん?』
おじさんのお肉の方が美味しい気がする。
『みたいな感じ』
《えぇ……》
『後ね、見てよおじさんっこれ!じゃじゃーん!!』
バッグにしまっていたアレを取りだし、おじさんに見せた。
《燃える、剣?》
『いえ、剣と言うには少し小さいですね。せいぜいナイフや包丁程度でしょうか?』
《あー確かに料理するのに便利そうだな。切りながら焼けるのか》
『これは良い嫁入り道具になりそうですね』
『炎のおじさんの所で拾ったんだ!……ねぇ、所でおじさん。この人誰?』
数日来ていないだけで知らない女の人が来てる。しかも、すごく綺麗。無言でじーっと見つめていると、ニヤッと笑った。なんだろ。
『私は、この方の大切な人ですよ。所謂パートナーという者でしょうか?お互いの全てを曝け出して深い関係と言えば……』
《……》
『と、と言うのは、冗談で。私は聖女をやっておりまして、時々彼に相談をしているのですよ』
何故か大量の汗をかきながら、聖女様はそう言った。なんだ、びっくりした。奥さんとかかと思った。それより。
『聖女様が魔物に、相談を?』
『ええ、おかしいでしょう?』
『うん、変』
ふふっ。あははっ!
『変な聖女様だね』
『そうですね、変なおじさん』
《俺まで巻き添いにするなよ、変人》
その時は、昔みたいに心から楽しく笑えた気がした。
まるで両親と二人で笑ってた時の様に。