ゆっくりじっくり魔王を殺していく。勇者達が 作:ねるね
《えぇ……本当っすか〜?怪しいなぁ》
いや、そんなに見ないで。なんか暑いし。
《来てないっすか?獣の女。冒険者みたいなんすけど、なんか突然肉焼かせて欲しいとか言って奇襲仕掛けてきたんすよ》
《へぇ……初対面でしょ?イかれてんな》
《勿論すよ。……知らない感じっすか。じゃあ、しょうがないっすね》
ニコッと炎は笑い、ゆらりと体を揺らす。ん?どうしたのかな。
《そう言えば、話が変わるんすけどアメ先輩って死ぬと殺した奴が欲しい物をくれるってマジっすか?》
……。
沈黙はそのまま肯定と受け取られ、話は続く。
《実は、俺が探している獣の女に大事な物を盗まれたんすよ。確証は無いっすけど、絶対そうだと思うんすよね〜》
《大事な物?》
《そうなんすよ!親父の代から継いだ家宝みたいな宝剣なんすけど、まぁ宝剣と言ってもこれぐらいの小さな刀で》
あー、気分はミステリードラマのトリックの解説を見てる気分だ。一人で勝手に納得しちまうよ。
《で、実は俺今日魔王様に呼ばれてて〜》
《え、そうなんだ》
《そうなんすよ。これから魔王に認められた男って名乗ろうかなとも思っているんすけど、そこで株を上げる為にも剣が欲しいなと思って〜》
やっぱカッコいいじゃないっすかと言う後輩に頷く。やっぱり、ロマンだよな。男の子は持ちたくなるよな武器。祭りとか、観光先とかで見ちゃうもんな。
《だから、後輩を救うと思って。先輩死んでくれないっすかね?》
あ、犯人役なんだ俺。リアルなドラマだなぁ。
《え?》
勢い良く炎の拳が飛んで来たのがギリギリの位置で俺の顔を逸れる。あっぶな。
《今度は外さないっすよ》
何げに現実世界では聞かない名セリフを聞いてちょっと得した気分になったが、だからと言って命を引き渡すほどでも無い。
さて、どうするか。先手は打たれてる。が、問題は無い。コイツは
《いつも通り行きますか》
エリア内の端から端までを横断する様に移動を開始する。当然、奴も追う様に付いてくる。最初はあった距離の差も相手のスピードによってすぐに縮まり。
《安心して下さいっす。痛いのは最初だけなんで》
炎の塊が凄い速さで俺に突っ込む。普通なら、タダじゃ済まないだろう。だが。
《済まない、それは残像だ》
《!?》
別方向からの声に、奴は良いリアクションを取ってくれた。まぁ、具体的に言うとそれは残像では無く分身体である。前言った通り分身体は喋れない代わり、俺の命令を何でも聞いてくれる存在だ。だから、彼には俺の声を飛ばす存在になって貰った。
大事なのはいつから入れ替わっていたのかと言う話だが、答えは最初からだ。一番最初の会話の時から分身体に変わっていた。だって、殺意殺さずに先輩のところに来る後輩なんている?しかもそんな後輩に対して何も思わない先輩なんてもっといないと思う。
今回は俺が前もって、情報を知っていたと言うポイントが大きかった。お陰で常に先手を打つことが出来た。