①みんなでエゥーゴの志願兵になる
②アナハイム・エレクトロニクスの広報が美少女グループの存在を聞きつけて大々的に
宣伝され、慰問などの後方任務で楽して稼ぐ。
③戦後、除隊してアナハイムか芸能界に入る。
それが、ルー・ルカとその仲間たちによる華麗なる3段計画であったのだが、その計画は一段目からして既に瓦解していた。
「何だって私みたいな新米の女の子がパイロットやらなきゃならないのよ…」
ルーは一人、新型の戦闘機に乗ってアーガマが寄港しているというシャングリラを目指してサイド1宙域を飛んでいた。
友人、と思っていた仲間たちはそもそも入隊すらしなかった。勇み足でハイスクールを休学までして入隊したルーは、止むを得ずエゥーゴで訓練を受け、かつての仲間たちに思い知らせるために意地でも成功してやろうと思っていたのだが…この半年の間にティターンズとの戦争は終結し、地球連邦軍出身者やアナハイム・エレクトロニクス社の出向者たちがさっさと母体組織に引き揚げてしまうと、ルーのような新兵が見てもわかるくらいにエゥーゴという組織はガタガタになっていた。
そうなれば、彼女のような新入りでも戦力として使わなければならないのが現場の台所事情というものだ。確かにティターンズはなくなったかもしれないが、まだアクシズの連中が地球圏をウロウロしているし、エゥーゴにいた者を連邦軍がどのように扱うかはっきりしていないため、少なくとも給料の遅配がないエゥーゴに残り、様子見をしている人々もいる。何より、アナハイム・エレクトロニクス社がまだ出資を引き揚げていない…ということは、エゥーゴという組織にはまだ、存在価値があるということなのだろう。
そんな、大分後ろ向きの理由をもって継続しているエゥーゴではあるが、これまでに活躍してきた人々に報いようという最低限のモラルは持ち合わせているようで、殊勲艦であるアーガマへの補給と退官する者たちへの年金などの福利厚生についてはきちんと考えているらしい。ただ、それらの案内をする役目を、
「ああもう、こんなところで貴重な10代後半を終わらせてなるもんですかっての!」
この青春真っ盛りの新兵が担わされていたということにはやはり問題があるだろう。
「えーっと、それで今、どこだっけ?」
そんな事情で今一つ自分の任務に集中し切れていないルーは、少々迷子になっていた。
彼女の乗っている最新鋭の戦闘機であれば、航宙図をインプットしておけばほぼ自動で目的地まで飛んでくれるはずなのだが、シャングリラ周辺には暗礁宙域が多く、デブリも多いため迂回し続けていたら、大分本来のルートから外れてしまったらしい。迷走するこの新型機が今の自分と重なってゲンナリしていたところへ、突如、アラート表示がモニタに現れた。
「何よこれ…救難信号!?随分近いじゃない……私も急いでるんだけどなあ…でもまあ、連邦軍の救難信号だし…見捨てるわけにもいかないか…」
ルーは少し迷ってから、そのアラートが発信された座標を目的地に上書きする。戦闘機はゆっくりと速度を落とし始めた。
程なくして、小さな影が視認出来た。近づいていくと脱出ポッドか何かの上で人が手を振っているのが見える。ルーは来て良かった、と思いながら映像を拡大して、それから今度は後悔した。
「何よあれ、ジオンのパイロットスーツじゃない…!ってことはアクシズの兵士ってこと!?」
映っていたのは間違いなく、緑を主体としたジオン軍のパイロットスーツ…それに身を包んだ若い男のようだった。
「どうしよう。ここまで来て無視ってのも無いわよねえ…あーもう、なんでアクシズの兵士が連邦軍の救難信号なんて打てるのよ!」
そのアクシズ兵がティターンズ兵にMSを奪われて脱出ポッドを押し付けられたことなどルーは知る由もない。半ばヤケになってその脱出ポッドにワイヤーガンを打ち、戦闘機を近づけた。
救いの神はどうやら女神らしい。
戦闘機から降り立ったそのしなやかな姿を見て、グレミーは感極まっていた。飛びつくようにして、近づいてきた女性の手をとる。
「ああ、ありがとう!救難信号を見つけてくださったんですね!」
「え、ああそりゃあ、まあね…」
その応答でグレミーは我に返る。
「あ、これはすいません。決して驚かせるつもりはなかったのです。救けにきていただいたことが嬉しくて、その、つい…」
「ええ、それは、わかります」
女性はそういって、少し笑ったようだ。なんと朗らかな声だろう、グレミーの心が躍った。
「接触しないと話も出来ませんし…そりゃあ心細かったでしょうから構いませんよ。それで、えーっと、つかぬことを伺いますが、あなたジオンの、アクシズの方?」
グレミーは襟を正す。
「これは失礼を。申し遅れました。私はアクシズの巡洋艦エンドラ所属のグレミー・トト少尉です」
「ああ、これはどうも。えーっとその、私はルーといいいます。ルー・ルカ」
「ルー・ルカさん、素敵なお名前だ…それは戦闘機…ですか?」
グレミーは、ルーの乗ってきた目の前の機体を指さす。
「え?ええ…その、サイド1の自警団のような組織に入ってまして、ほほほ…」
「そうなんですか。女性ながら戦闘機乗りとは勇敢なのですね。」
「ほほほ、それはどうも…。それでグレミーさん?あなたどうしてまたこんなところに?」
「ああ、それはその、戦闘がありまして…」
敵艦の艦砲射撃に一方的にやられて放り出された挙句、漂流者にMSを奪われた…などとはさすがに情けなくて言えたものではない。何とか話が逸れてくれればと思い、
「ええっと、ルーさん、ここに来るまでに何かご覧になっていないでしょうか?この辺りに私の母艦がいるはずなのですが…」
などと言ってみると、
「母艦…え!?アクシズの船がそんなに近くに!?」
思いの外、ルーが驚いた様子を見せた。なるほど、自警団なら近くに戦闘用の艦艇がいるということに神経を尖らせて当然だろう。
「ああ、でも決して、一般の方々や近隣のコロニーにご迷惑をかけるようなことはしません。エゥーゴの船、アーガマを追っているのです。おそらく1バンチのシャングリラを目指しているはずなのですが…」
それを聞いたルーが、急にグレミーの肩を掴んできた。
「え!?シャングリラに!?アクシズの船も向かってるっていうの!?」
「お、おそらくは…」
ルーの身体が、近い。グレミーはどぎまぎしながらそう答えた。
「シャングリラの方向、わかります?」
「ええ、中に入れば…」
二人は狭い脱出ポッドの中へ、身を寄せ合うようにして入る。モニタの航宙図を見せると、ルーは手首の端末に何やら入力し始めた。それなりに明かりがある中だと、ルーの顔が良く見えた。きれいな瞳をした、美しい少女だった。
「あの、ルーさん、私が無事エンドラに帰ったら…」
「これ、随分高性能な脱出ポッドですね」
「ええ、しゃくですがティターンズのものですから…」
そういった後でグレミーはしまった、と思ったがもう遅い。
「ティターンズ!?何でアクシズの方がティターンズの脱出ポッドに?」
「その、MSをやられてから漂流中に運よく発見しまして…」
「ふうん…。そういうこともあるんですね…。そっか、それで連邦軍の救難信号だったのか…」
「ええ、まあその、そういうことです。それでルーさん?」
「あ、この位置情報…グレミーさん、ちょっと待ってて!」
ルーはそれだけいうと、グレミーの言葉も待たずに脱出ポッドから飛び出していく。
「あ、ちょっと、ルーさん!」
グレミーがそういった時には、ルーの姿はもう、戦闘機のコクピットの中に消えていた。
「ちょっとちょっと、冗談じゃないわよ…」
ルーはコクピットのコンソールに手首の端末をかざし、さっきのデータを送信して捜索範囲を広げる。シャングリラの位置が確定し、同時に、
「うっわ!ほんと、こんなに近くにアクシズの船が来てるじゃない…!あのグレミーってパイロット、よっぽど方向音痴なのかしら…どっちにしてもこりゃヤバいわね。一刻も早
くアーガマに知らせてやらないと…!」
アクシズの艦の位置も判明した。かなり近い。あの脱出ポッドのセンサーでも方向を絞れば確認できる距離だ。
ルーはすぐに脱出ポッドとの通信回線を開いた。
「聞こえる?グレミーさん!」
『ああ、ルーさん!聞こえますよ!』
「あなたの船、やっぱりすぐ近くにいるみたい。私は急ぐからもう行くけど、この方向に向けて救難信号を撃ち続けて!」
ルーは、エンドラの位置情報を脱出ポッドに転送する。
『え!ちょっと待ってください!』
「ごめんね、グレミーさん!」
それだけいうと、ルーはシャングリラに向け、戦闘機のスラスターを全開にした。
学校で昼食を済ませた5人がジャンク山にやって来ると、アーガマの前には数台の電気自動車-エレカ―が停めてあり、クルーたちが揃っている。
「あれ、何だろ?俺たちのお出迎えってやつ?」
とジュドーがいうと、
「そんなわえねえだろ」
とビーチャが応じる。あくまで険悪な空気を維持しているその二人を先頭に、アーガマクルーたちの輪に入ると、真ん中にカミーユとファ、それに戦災孤児だとかいっていたシンタとクムという二人の子供、それにいくらかのケガ人の姿があった。
「あれ、カミーユさん…どっか行くの?」
カミーユの脇にぬっと顔を出したジュドーがそういうと、カミーユは一瞬驚いたような表情を見せてから、
「ああ…病院が決まってね…。アーガマを降りることになった」
それだけいって苦笑いをした。
「え、アーガマを降りるって…」
「前にもいった通り俺はもう、MSには乗れない状態なんだ。結構しっかり休みをとらないといけないらしい……ジュドー」
「なんだよ」
その場の全員が、二人の会話に耳を傾けていた。
「すまない、少しの間でいいんだ。アーガマにはもうすぐパイロットの補充が入る。それまでの間だけ、ゼータを頼む」
カミーユはそういって、ジュドーに頭を下げた。
「え、ちょっとよしてよカミーユさん、みんな見てるじゃない…わかった、わかってるよ。俺たちがしばらくアーガマにいるよ。な、みんな?」
「お前、何勝手に決め…」
「よしなよビーチャ!」
「そうそう、こういう場面に水を差すもんじゃないって」
反論しかけたビーチャを、エルとモンドがたしなめた。後ろからブライトがゆっくりとやって来る。
「カミーユ、すまんな。本当はもっとしっかりと見送ってやりたかったのだが…何しろ私を含めてここにいる者たちは皆、お前に何度も命を助けられているからな」
「止めて下さいよ。俺だって皆さんがいなかったらとても生き残れませんでした…。これから搬入作業でしょう?俺たちはもう行きます。さあ、ファ」
「ええ。それじゃ艦長、皆さん、お世話になりました」
ファはシンタとクムの頭に手を置きながらそういい、カミーユたちとその場にいた負傷兵たちは分かれてエレカに乗り込んでいった。ブライトを含めその場の全員が、敬礼をしてそれを見送る。
「やっぱエースパイロットだったんだな、カミーユさんって」
「単にMSの操縦が上手い、というだけではなかった。本当に…世話になった」
「ふうん…」
クルーたちがちらほらと艦内へ戻っていく中、ブライトと数人はまだ、敬礼を崩さずにエレカが消えた方向を黙って見ていた。その車影が完全に見えなくなってからやっと、ブライトはジュドーたちの方へ向き直る。
「さて…情けない話だが、カミーユのいっていた通り、今度はお前たちの力を貸してほしいと思っている。全員未成年ということもあるから昨日、お前たちの学校には連絡をさせてもらった。おそらく学校から父兄へも連絡が行くことになるだろう」
「え、ブライトキャプテン、もうそこまで話を進めちゃったのかよ!?」
ビーチャが割って入る。
「うん?何だ、不都合だったか?仮にも軍のパートタイマーになるんだ。当然のことだろう?」
「道理で、今日は先生たちに捕まらなかったわけだ」
イーノがそういうと、ビーチャを除く全員が苦笑する。
「さすがの手際ってわけですか。これでもう俺たちは逃げられない」
ビーチャの呟きを、ブライトは口の端で笑って受け流す。
「そういうことでお前たちにはしっかりと働いてもらいたい。まずは全員、搬入作業を手伝ってくれ。…ああ、ジュドーはMSデッキだ。ゼータガンダムのメンテンスを手伝え」
「お、なんだよ、ジュドーだけ特別扱いだっての?」
モンドがそういうと、
「先日のゼータガンダムの搭乗記録を解析したところ、ジュドーにはMSパイロットとしての適性が認められた。適材適所ということだ。もちろん、お前たちにも適性があればパイロット訓練に回ってもらうことになる。後で全員メディカルチェックを受けてもらう予定だ」
そう聞かされては拒むことも出来ない。ジュドーはMSデッキに、後は全員搬入口に向かった。
「ねえ、リィナはやっぱりキッチンで働きたい?」
歩きながらエルがそういうと、
「うん、昨日チラっと見せてもらったけど知らない調理器具がいっぱいですごく面白そうだった!エルはどうするの?」
リィナの明るい笑顔は本当にかわいい。つい、つられてしまらない笑顔になってしまう。
「私はねえ…掃除かなあ…何かあちこち気になるところがあってさあ」
「あ、わかる!通路の隅とかすっごいホコリなの!」
「そうそう、やっぱり男所帯なのよねえ」
もっともらしくフムフムと頷きながらそういうと、リィナが大笑いする。
「ほんと、男の人っていくつになってもああいうの、気が付かないのかな?」
「そんなこともないと思うけど…リィナは部屋のホコリにも気付かないような男に引っかかっちゃダメよ!気になる男が出来たらまずはお姉さんに相談すること!」
「わかりました!」
そういって敬礼してみせるリィナに、エルの何かが振り切れる。
「くぅー!もう、かわいいんだから!」
エルはリィナを抱きしめてその頬にぎゅうっと自分の頬を押し付ける。
「おいおい、何やってんだよ。先に行くぞ」
「へへ、いいねえ。仲良しで」
ビーチャとモンドがそういって先に歩いていく。イーノは黙って、一番後ろを歩いている。
エルは、ジュドーも含めたこの仲間たちが好きだった。ケンカもよくするが、大事なところは多分、繋がっている。だからみんな一緒なら今回のアーガマの仕事だってきっと楽勝だ。リィナの手を引きながら、エルはそんなことを思っていた。
毎回脅かされっぱなしのジークアクス、「薔薇というよりチューリップ」の登場でますます謎が深まって来ましたね。我々の知る世界線と繋ぐつもりなのか、そもそもあれはさらに別の世界線のものなのか…さあ、本当に12話で終わるんでしょうか?
こちらはZZのサバサバ系ヒロイン、ルーが登場です。
富野作品の女性キャラクターは、暗い、恐い、面倒くさい、といった感じで正直苦手なんですが、その富野色が薄くなったからか、ZZの女性キャラクターたちはみんな愛らしいところがあっていいな、と個人的には思っています。
最後のエルとリィナの掛け合いはそんなことを思いながら書いていたような気がします。
蛇足かな、とは思ったのですが一応採用しました。