「あれって、ゼータガンダムじゃないの?」
ルーの言葉にイーノは頷いた。
「そう、ですね…」
ゲモンのトラックを追っていたルーとイーノの乗ったコアファイターは、そのトラックの少し先に、ゼータガンダムとガザCの姿を確認していた。
「やばい、撃たれそうじゃない!」
ルーはそういうと、コアファイターを一気に加速させた。何の訓練も受けていないイーノに、この急加速のGは強烈だった。
「うわっ、ちょっと、ルーさん!」
「変なところ触らない!」
コアファイターは大きく旋回して急降下し、ガザCの後ろに回り込んで内蔵されている機銃を放った。
「当たった…けど!」
不意を突いたはずだったが、ガザCはこちらの動きに反応し、装甲の厚いバインダーで攻撃を防いでいた。しかもすぐに手を振り払うような動作で攻撃してきたが、それは何とかかわして再び上空に上がる。
「うわ、何よアイツ。かなりの手練れなんじゃないの!?」
「ルーさん、ジュドーと…ああ、ゼータガンダムのパイロットと話は出来ますか?」
クラクラする頭を押さえながらイーノがそういう。
「そりゃあ、エゥーゴの機体同士だし…はい、しゃべって!」
ルーが通信回線を開いたらしい。イーノはゼータガンダムに向かって呼び掛けた。
「ジュドー、聞こえる?僕だ、イーノだ!」
ゼータガンダムの頭がこちらを見上げた。
『イーノ!?何だよ、その戦闘機にはイーノが乗ってるのか!』
「僕が操縦してるわけじゃないけど…とにかく、苦戦してるみたいだね?」
『ああ、何かさっきから殴られまくりだ!まともな武器はないし、どうすりゃいいのって感じ!』
「わかった。敵をあの丘の上まで誘導出来ないかな?」
『丘の上って…』
この辺りはかつて、シャングリラの山の手といわれるエリアに物資を供給するコンビナートがあった。コロニー建設当時の施設であったため今では老朽化が進んで寄り付く者もいないが、それをいいことに、ここを遊び場にする子供たちがいた。
「この戦闘機に付いて来て!」
『わかった!何か考えがあるんだな!』
「うん!ルーさん、あれを使います。近づいて脚を撃って下さい!」
「あれって…あのガスタンクのこと!?」
記憶の通り、巨大な球形のガスタンクが見えてきた。ここでよく遊んでいた子供の一人であったイーノは、極めて真面目な顔で頷いた。
「全く、とんだ伏兵をしかけてくれたじゃないか!だがここまでだ、ゼータガンダム!」
戦闘機から急な攻撃を受けて、ヤザンは熱くなっていた。ゼータガンダムと戦闘機を追い、斜面を上がっていく。ゼータガンダムをロックオン出来そうで出来ない。
ガザCをトラックの中に入れてアーガマまで運ぶには、どうしても右肩のバインダーを外す必要があったため、微妙に機体バランスがとれないのだ。
「ええいちょこまかと…!」
この時のヤザンにいつもの勘を働かせるだけの冷静さがあったなら、もしくは…
「何!?何だこれはっ!!」
そのガスタンクがもう少し小さければ、正確な回避運動をとることが出来たかもしれない。丘を上がり切ったところで突如として現れた視界の全てを覆う巨大建造物に、ヤザン機は全力で回れ右をした。
「おい、ヤザンどうした!?何があった!?」
ゲモンの呼び掛けにヤザンから返って来るのは意味の分からない叫び声だけだった。
「おかしいな…。取り乱すようなヤツじゃないと思ったんだが…」
ゲモンのトラックは先ほどまでゼータガンダムとガザCがいた辺りに着いていたが、既にそこに両機の姿はない。
「うん?揺れてるのか…?」
停車しているはずのトラックが、妙なことに揺れ始めた。もちろん、コロニーに地震など無い。不審に思ってバックモニタを見ると、そこにはヤザンのガザCと、何か巨大なものが映っている…などと悠長なことを考えている暇はないことがすぐにわかった。
「な、何だありゃあ!」
地響きと共にその巨大なものが迫ってきている。ゲモンはほとんど本能的に、アクセルを思い切り踏み込んでいた。
『む、ガザCの反応が近づいて来るぞ。ふふふ、これは好都合だ』
マシュマーの声にグレミーは頷く。
「はい、今の我々には女神の加護があるのでしょう。この斜面のすぐ上ですね!」
『女神…うむ、いいことをいうな、グレミー。確かにその通りだ…!!私がミサイルを斉射して脚を止めてやる。その隙に機体を取り返せ!』
「ありがとうございます!グレミー・トト、マシュマー様の御恩は決して忘れません!必ずやガザCを取り返し、ゼータガンダムを撃ってご覧にいれます!」
『その意気やよしだ!さあ、行くぞ!』
2機が同時に斜面を上がって行くと、すぐ目の前に目的のガザCはいた。何故かは知らないが大型トラックもいた。そして、その後ろから何か得体の知れない巨大な球形の物体が凄まじい勢いで迫って来てもいた。
アクシズの若き男たちは同時に悲鳴のような声を上げたが、そこは日頃から自らを騎士と任じているだけあり、すぐに逃げ出そうとはしなかった。
『何とぉぉー!!』
グレミーのコクピットにマシュマーのそんな雄たけびが響き、そのマシュマー機から放たれたミサイルが、巨大な球形の物体の真ん中に命中するのが見えた。
鈍い爆発音が響き、緩い振動がコクピットを揺らす。
太く濃い灰色の煙が立ち昇っているその元をモニタで確認すると、何故だかはわからないが、ガザC以外にもガスタンクの爆発に巻き込まれてひっくり返っているMSが2機、さらによく見ると、見覚えのあるトラックまである。
「イーノ、助かったよ。けどあれ、オレンジを運んできたトラックじゃないか?」
『どうしよう、あのトラックには多分ビーチャとモンドが乗ってたと思うんだ…』
「何だって!?本当なのか!?」
『多分、そうだと思うんだけど…』
この角度からだと煙に邪魔されてはっきりとはわからない。
「よし、探しに行くぞ!」
『ダメよ!』
突然の女の声だった。
「何だ、誰だ!」
といったと同時に、モニタに戦闘機のコクピットの内部らしき映像が飛んできた。
『あたしのことはとりあえず置いといて、あの程度の爆発ならMSもトラックも中にいる人も大丈夫よ。そんなことよりあれはアーガマを追ってきたアクシズのMSなの。あんた、そんな丸腰で行ったら確実に殺されるわよ』
「な…何だよ、何もかも知ってるようなこといってさ…」
『何もかも知ってるのよ!いいからすぐにアーガマに引き返すわよ!こうなった以上少し
でも早くこのコロニーから出ないとアーガマがやられちゃう!』
ジュドーはモニタの映像を拡大すると、確かにトラックと3機のMSは動きこそ止めているものの、大した損傷はないようだ。タンクは爆発したが、中のガスはほとんど抜けていたのだろう。同時に、
『ジュドー…確かにトラックは無事みたいだ。ガザCが守ってくれたように見える…』
イーノのそんな声が聞こえた。上空から見ている分、こっちのモニタより確かだろう。
「だからってさ…」
『ごめんジュドー、僕が騒がせておいて何なんだけどさ、ここはあの二人を信じよう。このままだとアーガマが襲われちゃう…』
「…わかったよ。カミーユさんから預かったゼータガンダムを壊すわけにもいかないからな。で、えっと、イーノと乗ってるあんた!」
『あんたじゃないわ。ルー・ルカよ』
「ああ?ルールか?いっとくけど俺はあんたの命令を聞いたわけじゃないからな。そこんところは覚えとけよ!」
『はいはい、もうそれでいいから、連中が伸びてるあいだにさっさと行くわよ!』
イーノが何かいいかけたようだが、そこで回線は一方的に閉じられた。
「なんだ、この女!」
ジュドーは薄くなってきた煙の先にいるかもしれない友人たちに後ろ髪をひかれながらも、視線を切り替え、ゼータガンダムをジャンプさせて戦闘機を追いかけた。
ジークアクス終っちゃいましたねえ。まあ何にせよ古参と新規のファンが入り乱れることが出来たようで、ガンダムを取り巻く環境全体が盛り上がったのは嬉しい限りです。
そしてこのタイミングで閃光のハサウェイ第二部だってのかい…!こちらも楽しみですね。展開は暗く重くなって来るでしょうけどね…。
さて、本編につきましては…原作アニメのガスタンク、あれを出したかったんです!
あのはっちゃけかたはZZ前半を象徴するものだと勝手に思っておりまして、今だ!とばかりに登場させたら3機のMSをなぎ倒すというとんでもないMAP兵器になってしまいました。
オレンジぶちまけたりガスタンク転がしたり、こんなノリもそろそろ終わりかなあ…。