シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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 自分が乗っていたあの戦闘機は、正式にはコア・ファイターというらしい。ルーは改めてそのコクピットで今まで聞いていなかった、特に疑問にも思っていなかった機能の説明を受けた。

 

「このダブルゼータは、かつてのRX-78…つまりファーストガンダムとそのサポートメカであるGファイターの機能を合わせた多用途運用が可能なMSとして設計されているの」

 

「ふーん、それで、このレバーは?」

 

「…ちょっとジュドー君?何であなたがここにいるの?」

 

ミリィの横に、さりげなくジュドーが立ってコクピットをのぞき込んでいる。

 

「ジュドーでいいよ。ゼータが動かせないんじゃしょうがないだろ。イーノとエルは前と

後ろのヒコーキに乗っちゃったしさ」

 

「コアトップとコアベースです」

 

ミリィが冷静に、コアファイターの前後に配置されていた機体の名称を告げた。

 

「ああ、そんな名前なのね」

 

「そうじゃなくて!」

 

「うるさいな。いいじゃないか。いつ誰が乗るかもわからないんだろ?」

 

「その通りです。では先程の続き、こちらのレバーは合体シークエンスに入るためのものです。コアトップ、コアベースとのドッキングセンサーがつながったらこのGマークが点灯しますので、そうしたら手前に引いて下さい」

 

これからこんなガキのお守りをするのか、と気分が重くなったその時だった。艦内にけたたましい音が鳴り響き、

 

「アクシズの艦が近付いて来たようだ!アーガマのクルーは戻って第一戦闘配置だ!」

 

「ミリィ、ダブルゼータは出せるの!?」

 

いい雰囲気の大人二人が駆けて来た。

 

「すぐは無理ですね。肝になるセンサーの最終調整にもう少し時間がかかります」

 

「艦長!この百式ならすぐに行けますよ!」

 

少し離れたところから、アストナージの声が響いた。

 

「じゃあ、私が百式で出ます!」

 

半ばウンザリしていたルーは、コアファイターのコクピットから立ち上がる。

 

「よし…では先に出てくれ!アーガマ発艦だ!」

 

「俺たちは?コアファイターだけでも何とか出せないの?」

 

ジュドーがそんな風に叫んでいる中、ルーは百式へ向かって飛んだ。金色の機体の胴体部分、コクピットは開いていて、まだメカニックが中にいた。

 

「もう行けます?」

 

「ええ、武器はビームライフルがそこのハンガーに、それから右肩のビームガトリングガ

ンの操作はここで」

 

メカニックの男がそういってコンソールパネルの説明をする。

 

「なるほどね…確かにこれは独特だけど…あとは他のアナハイム系の機体と似たようなもんね」

 

「ええ、元の百式より素直な仕上がりのようです。それじゃ、頑張って下さい」

 

「ありがとう」

 

男が親指を立てて離れてゆき、コクピットハッチが閉まって機内は全天周囲モニターに切り替わる。同じフロアにあるMS用エレベータに入って上昇させると、ある程度上がったところで天井のエアロックが解除されて百式は宇宙に出た。すぐにアーガマから通信が入る。

 

『量産型百式改か…機体データは受領した。パイロットはルー・ルカだな?』

確かトーレスというアーガマのブリッジクルーだ。

 

「はい、アーガマの前に出ろ、といわれていますが?」

 

『頼む。敵はエンドラ一隻、今の所MSは確認されていないが…赤いエンドラ級から補給を受けているはずだ。そろそろ出てくるだろう』

 

「なるほど…それで、アーガマの損傷の方は?」

 

『応急処置は終わった。こちらもすぐに出る』

 

「了解」

 

先行してラビアンローズに向かっていたルーは直接見ていないが、赤いエンドラ級が現れて、その艦砲射撃でアーガマは推進系をやられたらしい。その赤いエンドラ級は、ジュドーの操るゼータガンダムがとんでもない一撃を与えて足止めをしたらしいのでここまで追撃には来られないだろう、ということだったが…エンドラの方は単艦でもやって来た。

 

「さて、どんな機体が出てくるのやら…お、お出ましね」

 

アーガマの前に出て、エンドラが目視出来るギリギリのところまで進むと、そのカタパルトから光の帯が伸びるのがわかる。敵機が出てきたらしい。

 

「速いわね。データ照合…出来ないか、また新型ってこと?」

 

とりあえず、ビームライフルを2発、牽制で撃つ。敵機はそれを難なくかわし、だがそれに反撃をしてくるわけでもなくただ、近付いて来た。後方でアーガマも動き出し、一応迎撃態勢は取れたようだが、その後ろのラビアンローズも守らなければならないとなると敵機の数によっては難しい戦いになりそうだ。そこへ、思わぬ通信が入って来る。

 

『聞こえるか、エゥーゴの諸君!こちらはアクシズ先遣隊の隊長、マシュマー・セロだ。シャングリラからここまでの戦い、敵ながら見事!互いに手は尽くしただろう!そこで提案だ!我が方はアクシズの騎士の誇りにかけ、ゼータガンダムに一騎打ちを申し込む!』

 

いっていることはわかるが、内容を理解出来ないということもあるのだとルーは思った。アーガマからも何もいってこない。絶句している、といったところだろう。

 

『我が提案に感じ入っている様子だな。よし、ではゼータガンダムがこのハンマ・ハンマを倒すことが出来たら我々はこの宙域から離脱する、すなわち諸君らを見逃すことを約束しよう。だが、私が勝った場合はアーガマとゼータガンダムはこちらに引き渡してもらおう!』

 

何とも身勝手な条件に、ルーは機体の操縦桿を反射的に動かしていた。

 

「何を勝手なこといってんのよ!」

 

ビームライフルを連射してその声の主であろうMSに向けて突進する。確認出来たそのMSは大型で、今までのジオン系MSとは一線を画したかのように見える姿をしていた。

 

『何だ!私はゼータガンダムといったんだぞ!お前のような金色に用はない!』

 

「うるさい!そんなふざけた条件、飲むわけないでしょ!」

 

マシュマーのハンマ・ハンマはそのビーム攻撃をシールドで受け、さらにそのシールドから広範囲にビームを撃って来た。

 

「え!?メガ粒子砲!?」

 

一斉に放たれたビームが3本、ルーは機体を反らして何とかかわしながら右肩のビームガトリングを乱射した。それに対してハンマ・ハンマはすかさず距離を取る。あまり射程の無い砲撃と判断されたのだろう。

 

「バカなこと言ってる割にはやるじゃない…。って、何!?キャッ!!」

 

予期せぬ方向からのビーム攻撃を受け、百式の左足首が爆散していた。

 

「何よ今の…全く見えなかった…!?」

 

堪らず距離を空けようとしたところへハンマ・ハンマが加速をかけて迫って来る。そしてその巨体から右腕が切り離されて勢いよく飛んで来るのを、ルーは確かに見た。

 

「ちょっと…まさかサイコミュってやつ!?」

 

「サイコミュ」、正式名称「サイココミュニケーションシステム」とは、パイロットの脳

波を増幅して機体や武装の操作に使えるようにするというシステムである。端的にいえば、パイロットが「こう動け」と念じるだけで機体や武装がその通りに動くというとんでもないシステムだ。一年戦争の末期に旧ジオン軍が小型のスラスターを持つ「ビット」と呼ばれる特殊なビーム砲をこのシステムを使って動かすことに成功し、パイロットの意思に応じて自律作動する無数のビットが地球連邦軍を恐怖のどん底に叩き落した。当時、劣勢にあったジオン軍が一発逆転を狙って研究・開発していた兵器の一つであり、まさに一騎当千の威力を持ってはいたのだが、そんなとんでもない兵器が何の制約も無しに動かせるはずがない。

実際のところこのシステムは、もともと強い脳波を持ついわゆる「ニュータイプ」と呼ばれる人たちでないと起動させることすら出来ず、その上、増幅された脳波が周囲の人々の意思を感知・吸収することがあり、これが起動者の精神に大きな負荷を与えることが分かってきたため、人の精神を破壊する極めて危険なシステム、とされて一年戦争後はごく限られた組織・機関でのみ細々と研究が進んでいた。そんな中でアクシズは、一年戦争におけるジオンのサイコミュ研究機関の人々をそのまま内包しているという、いわばサイコミュ研究先進組織であった。

ハンマ・ハンマの腕は、ルーのいう通りサイコミュを使って ―厳密にいえば有線制御の簡易サイコミュで― 飛ばされていた。

 

『ルー、ラビアンローズから新型が出た!もう少し頑張ってくれ!』

 

「ガンバってくれって…簡単にいってくれるけどさ…!」

 

シールドから拡散ビームを撃つ本体と、どこから飛んで来るかわからない右腕…とても一機を相手にしているとは思えない状況だが、タネがわかれば有線の腕は何とか目で追える。敵の動きがどんなに速くても、このビームガトリングをバラまくように撃てば弾幕になるのではないか…ルーはそんな使い方を閃いていた。

 

「そこっ!」

 

およその位置に見なし射撃で乱射されたビーム弾が、見事、ハンマ・ハンマの右腕を撃ち落とす。

 

「やっるう!さっすが私!」

 

そんな自惚れた感激に浸ったのも束の間、自分の腕の爆発を煙幕にして、ハンマ・ハンマが突進してきていた。

 

 

 

 

「フ、ゼータではないが、やるではないか金色!」

 

マシュマーはそう叫びながらハンマ・ハンマの左腕にビームサーベルを握り、横に振り払うようにして金色の敵機に斬りつけた。まさに紙一重のところでビームの刃は届かなかったが、金色の体勢は大きく崩れた。

 

「もらった!」

 

さらにスラスターを噴かしてビームサーベルを振り上げた…が、その腕がブレた。

 

「被弾…だと!?」

 

幸い左腕にマウントしているシールドに当たっただけだが、確かに実弾を受けたらしい。その隙に金色には逃げられ、入れ替わるようにハンマ・ハンマの脇をシャングリラで見かけた戦闘機が通過していった。

 

「あれは…グレミーがいっていた自警団の戦闘機…シャングリラが戦闘を止めに来た…のか?」

 

マシュマーの不幸は、グレミーから誤った情報を事前に聞かされていたことであった。この時もし、躊躇せずにコアファイターを攻撃していれば、この自称アクシズの騎士は本当の英雄となれたかもしれない。だが、追って現れたコアトップとコアベースの砲撃から距離をとった時点で、その未来は消えた。

機体を後退させながら見たのは、3機の戦闘機が一瞬のうちにMSへ姿を変えるという…信じがたい光景だった。

 

「……何と!」

 

マシュマーはようやく、そんな声を絞り出した。

 

 

 

 

「ドッキング完了…これがダブルゼータ!!」

 

変形・合体の心地よい振動と、重厚さを感じさせる手足の挙動…ジュドーはそれらの感覚を味わいながら、ゼータに乗っている時より強く、機体と一体になっているのを感じる。

 

『ジュドー、上手くいったね!』

 

コアトップから分離したコアファイターに乗るイーノからだ。

 

「ああ!お前の調整のおかげだ!」

 

『お兄ちゃん、気を付けてね!』

 

『ジュドー、しっかり!』

 

コアベースと分離した方はリィナとエルの二人乗りだ。リィナがどうしても、といってエルのサポートという形で乗り込んでいた。

 

「二人とも、危ないから早くアーガマに戻れよ!」

 

そういいながら、ジュドーは早速ダブル・ビームライフルを構えた。バレルが二つ横に並んだいかにも高出力のライフルだ。

 

「まずはこいつで挨拶だ!マシュマーさん!」

 

撃ち出された2本のビームは、マシュマー機のシールドがしっかりと受けた…が、シールドそのものが爆発する。

 

「ヒュー!すっごいパワーじゃないの!ルー、そっちは大丈夫か?」

 

『ええ、一応ね…』

 

「よし、ならアイツを墜とす。援護してくれ!」

 

『はいはい』

 

ジュドーはバックパックに搭載されたミサイルランチャーを発射して、それを追いかけるように突進する。武装がゼータより多く、機体は重いが加速はいい。敵機がミサイルを回避しながらビームサーベルを構えてこちらを迎え討とうとしている。騎士のマシュマーならそうするだろうという予想通りの動きにジュドーはニヤリとしながら、ダブルゼータの背中からビームサーベルを引き抜いた。それはまだ、ビームサーベルが届く距離ではない。だが、ダブルゼータの背中から放たれたビームの奔流は、一般的な出力のビームサーベルとはケタ違いの長さと太さの光の刃を形成していた。

 

「おぉりゃああぁ!」

 

ジュドーの取った間合いもまた、絶妙であった。ハンマ・ハンマはアウトレンジからの攻撃に為す術もなく、左腕を切り落とされていた。

 

「ルー!」

 

大振りの隙をフォローしてくれ、とジュドーはいったわけだが、その声の途中で百式のビームライフルが飛んでいた。ルーの察しの良さに感心しつつ、そのビームをかわして後退するマシュマーの動きにも舌を巻いた。

 

「やるじゃないの、マシュマーさん…!」

 

さらに追撃のダブルビームライフルを構えたところで、エンドラが動き出したのを察知する。

 

『ジュドー、エンドラが撃って来る!』

 

「わかってるよ!」

 

回避運動に移ると艦砲射撃が始まり、マシュマー機はエンドラに吸い込まれるように後退していった。

 

 

 

 

 




ようやく、ダブルゼータを出せました。
子供の頃、このダブルゼータ初登場回を見逃した時に泣きそうになったのはいい思い出です。まあ、その後何度となく再放送を見ましたけどね…。

TVでは初めて乗った機体でいきなり変形・合体をかましていましたが、さすがにそれはないだろうということで、こちらでは事前に多少レクチャーを受けた、という形にしてみました。

あ、量産型百式改については前回少し触れていますが…まあ、これを読んでいる皆さんには詳しく説明する必要は無いですよね(笑)。
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