「おのれアーガマめ…!あんな新型を出してくるとは…!」
『マシュマー様、危険です!エンドラまで退がって下さい!』
エンドラはもう、ハンマ・ハンマのすぐ後ろにいる。
「ゴットン…!何故エンドラを動かした!」
『向こうが2機出してきたのに一騎打ちもないでしょう!残りのMSとエンドラでアーガマをやりましょう!』
「何!?バカをいうな!まともにMSを動かせる者はいないだろうが!何のために私が一騎打ちを挑んだと思っているのだ!」
『ここでやらなければキャラ様に先を越されます!我々だけでアーガマをやるといっていたではないですか!』
そういわれるとマシュマーとしても返す言葉がない。
「く……ならば……よし、ゴットン、MSは何機出せる!」
『はっ、ガザC1機、ガザD1機、ガルスJ1機、の計3機です』
「うん…?グレミーは戻っていないのか?」
『あ、ええ。自力で戻ると聞かなかったので…回収はキャラ様にお願いしております』
「そうか…あいつ、進路を間違えているんじゃないのか…?まあいい」
機体とパイロットの数を考えれば確かに自分と合わせて4機が限界だろう。ハンマ・ハンマは両腕を失っているが、不慣れなパイロットたちの先頭に立ってアーガマに突入するくらいのことは出来る。マシュマーは腹をくくった。エンドラ艦内にも届くよう、通信を切り替える。
「聞こえるか、エンドラの勇士たちよ!今、我らが宿敵アーガマは後ろのドッグ艦を守らなければならんから退路がない。エンドラはこのまま突貫し、アーガマ内部へ侵入、これを制圧する!MS部隊は全機出撃、総員白兵戦用意だ!」
それだけ言い切ると、マシュマーはエンドラの艦橋の前でハンマ・ハンマのモノアイを点
滅させた。艦内からの雄叫びがそれに応える。エンドラはさらに速度を上げた。
「ビーチャ、白兵戦ってどういうこと?」
「あれだ、生身の人間で殴り込みって、そういうことだろう」
「…アーガマに?」
「ああ…」
物騒なマシュマーの声を受けてエンドラの艦内が騒々しくなる中、ビーチャとモンドがそんなことを話していると、
「マズイな…アーガマはそもそも人が足りないんだろう?」
「ああ、ラビアンローズもエゥーゴが運用するようになってからは連邦軍の護衛が引き揚げたって話だが…」
「ここの連中は血気盛んだからな…乗り込まれたらあっさり制圧されるかもしれん」
軍人3名がボソボソと、辛うじて聞き取れる程度の声でそんな感想を述べている。
「アーガマに行くってんならさ、その時に逃げ出せるかな…?」
モンドがぽつりとそういうと、
「下手に動けば撃ち殺されるだけだ。ここで大人しくしていた方がいいだろうな」
軍人の一人にあっさりとそういわれる。ビーチャとモンドは顔を引きつらせた。
「俺たち、これからどうなるんだろう…」
「さあな…」
ビーチャは半ば投げやりにそう答えると、身体が進行方向とは逆に押されるように流された。艦の速度が上がり、Gがかかったのだ。
「おい、ムダ話をするな」
番兵のキツイ口調には、かなり緊張感がある。
「よう、白兵戦をやるって、正気なのか?」
軍人の一人が、その注意など介していないようにそういった。
「…黙れといっているんだ」
「あれでもアーガマは歴戦の船だ。猛者が揃ってる。ラビアンローズも貴重な船だからな。昔からたくさんの護衛が就いてるんだぜ?大丈夫なのか、お前たち?」
「な…それは、本当なんだろうな!?」
「俺らも流れ弾に当たって死ぬのはごめんだからな。ウソなんかいわねえさ」
少しの沈黙の後、
「お前ら、大人しくしてろよ」
そういって番兵が離れていった。
「今の…ブラフですよね?」
ビーチャがそういうと、軍人たちは笑っていた。
「俺たちゃ潜入工作も一通り教育を受けててな…」
そういって一人が立ち上がり、
「おい、カメラを塞いどいてくれ」
と小声でいうと、さりげなくもう一人が立ち上がって妙な位置に立って体操のような動きを始めた。指示した方の男はそれ見てから扉の方へ歩いていき、ロックの辺りを触りながら、「この程度か」などといっている。ビーチャとモンドは顔を合わせた。
「何だか…プロの軍人って感じだね。頼りになるかも」
「ああ、いざって時には俺たちだけじゃ…どうしようもないもんな」
いくらイキがっても自分たちは子供だ。この軍人たちのような知識も経験もない。ビーチャは、嫌でも己の非力さを感じざるを得なかった。
「エンドラ、突っ込んできます!」
トーレスの悲鳴に近い声がアーガマのブリッジに響く。
「何、特攻か…!?いや、取り付こうってのか…!」
ラビアンローズとのこの位置関係であれば、確かにこちらへ突っ込んでくるのは有効な策ではある。無謀、ともいえるが…。シャングリラに入る前からの戦闘で、エンドラのクルーは経験の浅い連中だろうと、どこか相手の若さを感じて侮っていた。だが、これが若さ故の大胆さか、と思いブライトはぞっとした。
「どうするんです、艦長!」
ブリッジクルーも取り乱している。
「最初にあのMSはアーガマを引き渡すことを条件にしていた。だとすれば…こちらに突っ込んで白兵戦でラビアンローズもろとも制圧しようってんだろう」
「白兵戦!?そんな無茶な…!」
サエグサがそういうのも無理はない。
「ああ…こちらでそんなことが出来る生粋の軍人はアーガマにもラビアンローズにも多くはいない…接触されるまでが勝負だ!何としてもエンドラを撃ち落とせ!ジュドー、ルー、敵は正面のアーガマに火力を集中してくるはずだ!側面をついてくれ!」
『了解!』
『わかった。あ、やつらMSを出してきたぞ!』
エンドラが全部で4機のMSを展開してきた。こちらの2機はその対応に回らざるを得ない。どうにも手駒が足りない、そう思っていたところへ、コアファイターから通信が入る。
『艦長、イーノ機はこのままエンドラに攻撃をしかけます!』
あの穏やかそうな少年がそんなことをいうのか…ブライトは一瞬虚を突かれたが、すぐに、
「何!?バカをいうな!コアファイター一機で何が出来る!すぐに帰って来い!」
そう怒鳴りつけた。
『帰ってもアーガマがやられちゃったら同じことです!ジュドーたちの援護くらいは出来ます!』
『同じく、ちょっとミサイル打ち込んできます!』
エル機からの通信だ。本当に、若さというのは恐ろしい。
「お前たち、いい加減にしろ!そんな戦闘機では無理だ!戻って来い!」
『すいません、ブライト艦長、よろしいですか!』
「何だ、この大変な時に…!あ、エマリー…艦長代理か」
ラビアンローズのエマリーが、サブモニタに映っていた。驚かせてしまっただろうか…と思い、ブライトは一つ咳払いをして平静を装う。
「失礼、どうかしましたか?」
『え、ええ、あのミリィから提案があるとのことです』
「メカニックのミリイさんか…何です?」
ブライトがそういうと、エマリーの横からミリィが出て来た。
『この通信、ジュドー君にも聞こえていますね?』
『ああ、聞こえてるよ!』
ジュドーがすかさず答える。
『時間が無いので単刀直入にいいます。ダブルゼータのハイメガキャノンをフルパワーで撃って下さい。引き付ければ巡洋艦程度なら沈められます』
「何ですって!?」
ブライトは思わず聞き返すが、
『どうやるんだ!』
ジュドーが割って入る。
『本体にある全てのジェネレータをフルドライブさせて頭部のバイパスに繋いで発射します。ただしチャージに数分かかりますし、発射前後はダブルゼータが完全に無防備になります』
『数分って何分さ!』
『早ければ3分、かかって5分。方法は…今、送信したわ』
『お…了解!みんな、時間稼ぎを頼む!』
『了解』の声が重なったところで、ブライトはたまらず声を上げる。
「ちょ…ちょっと待て、お前たち!」
とはいってはみたが、それ以上の戦術はおそらく、無い。
『待ってられないよ!ダブルゼータ、チャージに入る!』
ジュドーの声は極めて快活だった。結局、ブライトには次の言葉が見当たらない。どうやらこの戦場は、敵も味方も次世代の者たちに支配されたらしい。
ダブルゼータの設定を終えてすぐに、ジュドーはエンドラに向けて回線を開いた。
「聞こえるかマシュマーさん、エンドラの皆さん!こちらはジュドーだ。この間助けてもらったシャングリラのジュドー・アーシタだ!」
ややあって、
『ジュドー、お前何を…!』
『ゼータにも乗っていたな、あの時の少年!』
ブライトとマシュマーから同時に返事があった。ブライトの方はとりえず無視する。
「ああ、色々あって悪いけど俺はもうあんたたちの敵ってことになる。けど、あんたたちには世話になったし、マシュマーさんは民間の船も助けてくれた。だから教えてやる。このまま突っ込んできたらエンドラはエゥーゴの新兵器で撃沈されるぞ」
『何!?』
「まだ間に合う。引き返してくれ!」
『な…いや、そんなハッタリにはごまかされんぞ!』
「ウソじゃない!あんたたちには借りがあるんだ。それを返したいだけだ!あんたならわかってくれると思って話をしてるんだ!マシュマーさん!」
『ぐ…』
二人の会話はもちろん、エンドラのブリッジにも響いていた。マシュマーは逡巡し、エンドラのクルーには迷いが生じていた。
いよいよ一部も大詰めです。
来週、1.5話分程度の分量で一気に終わらせる予定ですのでよろしくお願いします。
ZZのコアファイターって便宜上「ネオ・コアファイター」と呼ばれますけど、劇中では一度もそう呼ばれてませんよね?
劇中で呼ばれていなくて、設定上の呼び名の方が通りがいい、というのは他にも0083でのガンダムたちがGP01、02という呼ばれ方はしていないくて、ガンダム1号機、2号機と呼ばれているのと同じような感じですね。
ガンダムは歴史が長いのでいつのまにか文字情報の方が重きを成したってところなんでしょうかねえ。