シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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「エル、右から撃って来るよ!」

 

急ごしらえの後部シートに座るリィナの声に、

 

「はいはい、お任せ!」

 

そういって答えながらエルは機体を旋回させた。全く、降り注ぐ敵艦の対空砲火に少しも怯えた様子を見せないリィナは大したものだと思うが、エル自身もどうやら自分に操縦の才能があることを自覚せざるを得なかった。ある程度の機体制御は自動でやってくれるが、こうまで思い通りに動かせると気持ちがいい。

 

「よーし、ルー、イーノ、皆で集中攻撃しちゃおう!」

 

『そうね、エンジンの一つでもやっておけば速度が落ちるでしょ』

 

『了解、じゃああのフラフラしてるMSを抜いていこうか!』

 

ルーとイーノも大いに乗り気だった。エンドラのMSも機銃も、ジュドーの話の後で急に勢いが無くなっている。二機のコアファイターと百式はその隙をついて、エンドラの左舷後方に回り込んだ。

 

『よし、そこ!集中砲火!』

 

ルーが示したターゲットサイトが、二機のコアファイターにリンクされる。後は機体が目標を通過するまでにタイミング良くミサイルの発射ボタンを押すだけだ。

 

「そーれ!」

 

「行って!」

 

エルとリィナが声を合わせたところでミサイルが飛んでいく。ルーのビームライフル、イーノのミサイルもそこに集中し、放った3機がそれぞれ交差してまた別方向に飛んでいった一瞬の後で、大きな爆発が起こってエンドラの左舷エンジンが火を噴いた。イーノとルーの歓声が聞こえる。

 

「やったね、エル!」

 

「うん、これで時間が稼げるでしょ!」

 

エルが振り向いて後部座席のリィナと満面の笑みを交わした、その瞬間だった。突き上げるような強い衝撃が機体に走り、キャノピーが跳ね上がる。何らかの攻撃を受けたのか、さっき攻撃をした艦の破片が飛んで来たのかわからない。シートベルトに身体を押さえつけられながら、エルは、リィナがシートごと飛ばされていくのを…悪夢を見るような思いでただ、見送ることしか出来なかった。

 

 

 

 

「お…うわっ!何だ何だ!?」

 

轟音と共に艦が大きく揺らぐ。無重力下でも姿勢を保つのが難しいほどの衝撃だった。

 

「まだ揺れてるな…」

 

「こりゃあ…どこかやられたな?」

 

「ああ、速度が落ちて来たな…」

 

軍人たちのいう通り、どこかを攻撃されたとみて間違いないだろう。ややあって、艦内放送がかかった。

 

『エンドラは敵の攻撃により航行に支障を来した!さらにエゥーゴの新兵器による攻撃を予告されている!よって…誠に遺憾ながら現時刻をもって当艦を放棄する!白兵戦用意をしている者たちに従い全員ランチに乗り込め!総員、退艦!総員、退艦!』

 

「何だと!?」

 

「この艦、沈むの…!?」

 

あまりにもショッキングな内容にビーチャとモンドはただ驚くしかなかったが、軍人たちはあくまで冷静だった。

 

「よし…開くな?」

 

リーダー格の男の声に、さっきまで扉を調べていた者が頷いて、一体どこに隠し持っていたのか、小さな機器を扉のロックに取り付けた。

 

「こういう時、救助艇の席は捕虜にまで回ってこない。おそらくこのまま放っておかれる」

 

「え…?マジっすか?」

 

「ああ、だがお前たちは子供だ。出ていけばさすがに助けてくれるだろう。艦内の緊急装置が作動してロックが外れたとでもいっておけ。お、開いたな」

 

小さな電子音がして、扉が開く。軍人たちは通路の左右を見渡しながら、ビーチャとモンドを押し出した。

 

「行け。俺たちと一緒にいるよりは助かる見込みがある」

 

「そう…いってくれるのはありがたい、けどさ…」

 

「皆さんはどうするの…?」

 

ビーチャとモンドの問いに、

 

「俺たちは俺たちで何とかするさ」

 

リーダー格の男がそう答えると、3人は合わせたようにニヤリと笑った。そこへ、ドスドスといやに大きな足音が響いてくる。軍人たちはさっと部屋の中に隠れたが、ビーチャとモンドは出遅れた。

 

「おお、無事だったかお前ら!」

 

「げっ!」

 

「ゲモンのおっさん!」

 

まさかのゲモン・バジャックの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 上手い具合に、エンドラはハイメガキャノンの射程に入ったところで急激に減速してくれた。アーガマからの情報によるとルーたちが頑張って左舷のエンジンを潰したらしい。よく見てみると、小型の救命艇がいくつか出てきているのがわかる。

 

『ジュドー!お前、自分が何をいったかわかっているのか!?戦場で敵を逃がすのは気分がいいかもしれんが、助けた敵が今度は味方を撃ってくる!お前の自己満足のせいで味方が死ぬかもしれんのだぞ!自分が戦争をしているという自覚を持て!』

 

余裕が出て来たからか、ブライトがうるさいことをいってきている。まあ、確かにそれはそうだとジュドー自身も思った…が、そう素直に大人の言い分を認めるわけにはいかない。

 

「知らないね、そんなこと。俺は…俺たちは自分たちが納得しないやり方はしない、それだけさ」

 

『ジュドー…お前、帰ってきたらそれなりの覚悟をしておけ』

 

ブライトはそれだけいって通信を切った。

 

「うわぁ…怒鳴られるより効くなあ…。けど、仕方ないよな。あそこにビーチャとモンドがいるかもしれないし…マシュマーさん、母さんたちまで助けてくれたんだからさ。さーて、チャージはもうちょいだけど思ったより射程が広いな…さっさと逃げてくれよ」

 

ジュドーはダブルゼータをチャージに支障が出ない程度に動かしている。アクシズの方でもまさかこのMSこそが艦を沈められる新兵器、とは思っていないようで、警戒は百式やコアファイターへ向いているようだ。

 

「けどほんとに、墜とせるんだろうな…」

 

MS単機で巡洋艦クラスを沈めるだけの火力を出せるなどとは、実際の所ジュドー本人も半信半疑ではある。そこへ、そんなジュドーのことを信じた敵からの通信が入った。

 

『マシュマー・セロだ。ジュドー・アーシタ少年、聞こえるか?』

 

「ああ、聞こえてるよ。大分やられたみたいじゃないか。アーガマを襲うのは諦めた?」

 

『ぬ…まさかこちらを釣り上げる作戦だったとはな…不本意ながらそれを見抜けなかった我々の負けだ。潔く認めよう』

 

マシュマーは何やら勘違いをしているらしいが結果オーライというやつだ。マシュマーという人はいつもこうだな、と思いつつジュドーは面白いので特にそれを正すことはせずにおく。

 

『まだ死に物狂いで攻勢に出ることは可能だが…ここで徒に犠牲者を出す気はない。総員退艦の指示を出した。後5分、待て』

 

さすがに動けなくなった艦ではどうしようもないと判断したのだろう。態度がやや横柄なのは気に食わないが、とりあえずもう戦闘になることは無さそうだ。ジュドーは胸を撫で下ろす。

 

「悪いけどあと3分だ。それ以上はどうなるかわからないぜ」

 

『ぐっ…』

 

「っていいったいところだけどさ、あんたは俺だけじゃなく、シャングリラ行きの民間船も救ってくれた。だから出来るだけ待ってやる。ただ、これで貸し借りは無しだ。次に会った時はお互い全力で勝負だからな」

 

『ジュドー、お前…そうか、母上には会えたのだな?』

 

「なっ…!何でそんなこと知ってんだよ!」

 

『あれだけ派手に親子の会話を繰り広げておいてわからないわけがないだろう』

 

「ああ…そりゃそうか…クソ、最悪だ」

 

ジュドーは思わず片手で顔を覆った。

 

『フフ…だがまあ意気に思うぞ、ジュドー・アーシタ。このマシュマー・セロ、騎士の誇りにかけてお前と正々堂々の再戦を誓おう…では、さらばだ!』

 

最後まで芝居がかったセリフと共に、マシュマーからの通信が途絶える。

 

「はいはい、さらば、ね…」

 

マシュマーとはいずれまた会うことになるだろう。そんな確信めいた思いを持ったちょうどその時、正面ディスプレイにチャージ完了を知らせる表示が出た。百式とコアファイターも後退している。だが、エンドラの救命艇がなかなか射程の外に出ない。ジュドーは躊躇っていた。

 

『ジュドー、何をやっているの?臨界に達したジェネレータは爆発することだってあるのよ?』

 

突然、ラビアンローズのミリィから警告が入る。あくまで抑揚のない声だった。

 

「うわ、何だよびっくりしたな…ってまあ、ちょっと待ってくれよ。こっちにもいろいろと都合があるんだ…って、何でチャージが完了したのわかるんだよ」

 

『ダブルゼータの状態はこちらでもモニタリングが可能です。戦況のことはわかりませんけど、機体管理の観点からいわせてもらえば即時発射を推奨します』

 

「わかった、わかったよ!」

 

いいながら、ようやく、エンドラの救命艇が射程から外れたのを確認する。

 

「お…よし、それじゃいくか!」

 

ジュドーは気合とともにトリガーを押し込んだ。

 

「ハイメガキャノン、発射だ!」

 

ダブルゼータの額に青白い光球が浮いた次の瞬間、周辺宙域の暗闇が一転して、その青白い光に塗り替えられていった。

 

 

 

 

 




第一部も次の話で終わりになります。分量が半端なのでこの後、準備が出来次第投稿します。
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