シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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 突然の来訪者たちにアーガマの艦内はちょっとした騒ぎになっていた。長く宇宙で暮らすクルーにとって、物珍しい風貌の女たちは十分に興味の対象になり得るのだ。

 

「お集まりいただき感謝します。白き船の人々よ。私はムーンムーンの光族、サラサ・ムーン。光の教えを広める巫女の役割を務めております」

 

故に、モビルスーツデッキに集まった多くの者が、サラサのその奇妙な単語が散りばめられた言葉を注意深く聴いていた。

 

「おいおい、光族に光の教え?何なんだよあの人たちは?」

 

上陸していなかったトーレスの言葉に、ジュドーは渋面をつくる。

 

「俺だってよくわからないよ。でもそういう人たちなんだ。ずっと外の世界と切り離されて暮らしてたらしいからさ」

 

「すっごい独特、っていうかね」

 

イーノも苦笑しながらそういった。このままではまとまらないと気取ったか、ブライトがサラサの横に立った。

 

「みんな聞いての通り、このコロニー、ムーンムーンは外界との交流を遮断し、独自の文化を築き上げている。人類は過剰な文明を捨てて、真の平和と平等を手にするべきだというお考えをお持ちで、それを広めようとされているらしいが…それはひとまず置いておき、アクシズの連中がこのコロニーに入って来て、MSで暴れている。我々としてはこの、光族の皆さんを救いたいと思うのだが…どうだろうか?」

 

なるほど、こういわれれば光族を助けにMSを出すのは自然だ。ブライト艦長も上手いものだとジュドーは感心して手を挙げた。

 

「はーい!アクシズのやつらを追い出すためにダブルゼータで出たいと思いまーす!」

 

イーノ、エルが「私も」「僕も」と続いた後で、

 

「ねえサラサさん、あのロオルってジイさんはアクシズの人たちに渡しちゃっていいかしら?」

 

ルーがそういうと、ムーンムーンの女たちがドッと笑う。ブライトが一応ルーをたしなめようとしたが、先にサラサが、

 

「ええ、ロオルはあちらの方々を気にしていたようですから…それも止むを得ませんね」

 

そう答えた。彼女たちはさらに笑い、

 

「あのジジイは口ばっかりであたしらもうっとおしいと思ってたからね。好きにしてくれていいよ」

 

ロオルを叩き伏せた大柄な女が続いてそう答えたところで、さすがにブライトが、

 

「おいおい、いい加減にしないか…」

 

と割って入ると、真顔に戻ったサラサがまたしゃべり始めた。

 

「さて、冗談はこれくらいにして…実はムーンムーンには古くから伝わるご神体が存在します。あなたがたの持つ巨神よりも大きい、伝説の巨神が…」

 

突然の言葉に、クルーたちがまたざわめく。

 

「それって、通常のMSよりも大きな機動兵器があるって意味かしら?」

 

ルーがボソッとそういったが、

 

「どうだろう。そんなものがあってもまともに動くとは思えないけど…」

 

イーノの答えが的を得ているような気がする。ジュドーは黙ってサラサの言葉を待った。

 

「伝説の巨神は聖殿の奥にある森でずっと眠っておりますが、絶大な力を持っていると言い伝えられております。もしこれが動けば、あなた方の巨神と協力して赤い船の巨神たち

を鎮めることが出来るかもしれません」

 

「ほう、そんなものが…こちらも動かせるMSはダブルゼータと百式しかありませんし…」

 

ブライトがそう答えると、

 

「興味深い話ですね。ミリィ、観測データは取ってあるわよね?」

 

エマリーがすぐにそういって、ミリィが手元の端末を弾き始める。

 

「ええ、チェックしてみます…なるほど、艦長代理たちが行った建物の奥に…巨大な人工物が確かにあります。データベースに照会してみますね」

 

その少しの間にブライトがちらりとエマリーを見て、エマリーがそれに微笑みを返している。全く仕方のない大人たちだ。

 

「ありました!キャトル、コロニーを建設していた時に使っていた重機…のようなものです。確かにこのパワーがあればMSは一捻りかもしれません…!」

 

「そう、キャトル!まさしく言い伝えられている通りの名前です!」

 

サラサが両手の平を合わせて嬉しそうにそういったが、すぐに、

 

「サラサ様、しかしルフォイの星はラサラ様が…」

 

お付きの女性にそういわれて、サラサは肩を落とす素振りを見せた。

 

「何ですって?何の星…と?」

 

独特の発音でよく聞き取れなかったのはブライトも同じらしい。

 

「ルフォイの星、です。ご神体を動かすために必要といわれている神器なのですが…」

 

「サラサ様の妹君であるラサラ様がそれを持って家出中なのです」

 

「何ですって…?」

 

サラサ、ラサラと似たような名前が出て来て混乱したのか、ブライトが先程と同じ言葉で聞き返したところで、ジュドーはしびれを切らせた。

 

「もう、何だかよくわかんないけどさ、MSを出すのは決まったんだろう?人探しもするってんなら手分けしよう。ダブルゼータは分離して出るよ!ルーは百式で頼む!」

 

「あいよ!」

 

「よし、エルはサラサさんを乗せていけ!」

 

ジュドーがそれだけ言うと、クルーたちも騒ぎながら動き出し、MSデッキの集会は散開のムードを見せ始める。

 

「ああ全く…!ミリィさん、そのキャトルのデータをジュドーたちに送って下さい!メカニックで出られる者はエレカで出るぞ!残りは第二戦闘配置で待機、アーガマはいつでも出港できるようにしておけ!」

 

ブライトがテキパキと指示を出すと、クルーたちは一斉に持ち場へ向けて散っていく。そんな中、

 

「ちょっとジュドー、サラサさんを乗せて行けって…」

 

エルがジュドーの背中にそういってきたが、

 

「ラサラさんだっけ?妹さんを探してもらうんでしょ!」

 

イーノがそういってその肩をポンと叩く。

 

「そういうことだ!もうリィナのことは気にするな!いいな!」

 

ジュドーはそういい捨てて、コアファイターのコクピットに飛び乗った。

 

 

 

 

「…で、その伝説の巨神ってのを動かして見せればみんな考えを変えるんじゃないか、って…それがラサラさんの考えなわけね?」

 

モンドがそういうと、前を走る少女、ラサラが振り返って頷き、立ち止まる。ひとまず、アクシズの連中とは大分距離を取ることが出来たようなのでビーチャとモンドも走るのを止めた。

 

「そうです。姉も私も文明の力を否定する光の教えは少しおかしいのではないかと思っていて、姉と私で別の船の方々に接触してみようということになったのですが…まさか赤い船の方々がこんなに好戦的だとは…」

 

「いきなりMSを出して来たもんね」

 

モンドが同意すると、ラサラが頷く。

 

「はい。姉は姉で動いたようなので私も、と思ったのですが軍人の方々は怖かったので…」

 

「それで俺たちに声をかけたってわけか」

 

ビーチャの言葉に、ラサラは深めに頭を下げた。

 

「はい、勝手を承知でのお願いです」

 

モンドは頷いて、森の木々の合間から見える鬱蒼とした小山を見据える。それにしてもあの階段に続いてかなりの距離を走ったものだ。まだ息が切れている。

 

「あれ、あの向こうに見える山みたいのがその巨神なんでしょ?あそこまでどれくらいかかるのかなあ…?」

 

「そうですね、このまま走れば一時間はかからないと思いますけど…」

その答えを聞いた瞬間、二人はその場にしゃがみこんだ。

 

「何!?冗談じゃねえぜ!これ以上走れるかっての!」

 

「さすがに、まだ一時間もあるってのは…ちょっと…」

 

ラサラの方は、呼吸一つ乱れていなかった。

 

「え?あの、大丈夫ですか…?」

 

華奢な見かけのわりに随分と体力があるらしいラサラが、そういって髪を耳にかけながら中腰になって近付いて来る。妙に色っぽい仕草であったので、モンドはどぎまぎしたが、同時にその首からかけられた小さな宝石に目が行く。

 

「ん?ラサラさん、その首飾りは…?」

 

「ああ、これですか?ルフォイの星、というものです。巨神を目覚めさせるために必要だといわれて姉から預かったのですが…これをどうやって使うのかわからないのです」

 

「そうなんだ…ちょっと見せてくれる?」

 

ラサラはそれを首から外してモンドに手渡した。

 

「何だ、何かわかるのかよ?」

 

「ああ、もしかするとこいつは…」

 

モンドはその宝石を光にかざして少しずつ角度を変えていく。宝石を透過していく光が、規則正しく動いていく。

 

「うん、多分こいつはジュエリーキーだ」

 

「ジュエリーキー?」

 

ビーチャとラサラが声を合わせる。

 

「ああ、すごく硬度の高い宝石を上手くカットしてあってさ、一定の波長の光が出るようになってるんだ。その光を鍵にして機械を起動させるってのが、昔流行ったんだよね」

 

「ってことはあの巨神、本当にMSか何かってことか?」

 

「だろうね、多分」

 

モンドが頷くと、ラサラが目を輝かせた。

 

「光を鍵に…!?すごいですモンドさん、巨神を動かせるんですね!」

 

「だといいけど…そこまで行くのが…」

 

「ん、ありゃなんだ?」

 

ビーチャの指す方を見ると、上の方はツタで覆われているが、下の方は直線的な灰色をした…あきらかに建造物と思われるものが目に入る。しゃがんだおかげでかえって視界が開けた、ということだろうか。

 

「ああ、地下への入り口です。でもいっても何もありませんよ?」

 

「いや、あれは」

 

「ああ、地下鉄のゲートに見えるな」

 

そういって立ち上がる二人の後を、今度はラサラがついていく。近付くと、それは見立て通り地下鉄の入り口にそっくりであることがわかり、ビーチャとモンドは頷いて階段を下り始める。光が届かないところまで来ると、モンドは整備に使う小さなライトを取り出して辺りを照らした。頼りない光ではあるが、確かにリニアモーターカーの線路と車両があるのがわかる。テーマパークの中を走っているような、小型のものだ。

 

「あの、何かわかるんでしょうか…」

 

少し怯えた様子を見せるラサラだったが、

 

「ビーチャ、車両をみてくれない?動力があれば動くかもしれない」

 

「おうよ」

 

二人の男子はその廃墟のような光景に夢中だった。モンドは当たりを付けてこの空間の隅に向かうと、小さな扉を見つける。開けてみると沢山のレバーが並んでいた。

 

「よし、ブレーカーだ!」

 

かなり旧式ではあるが間違いない。一つ一つ、それを上げていくと周囲がパッと明るくなった。

 

「え!?すごい…!!」

 

ラサラがそう言って驚いている向こうで、

 

「モンド!こっちも通電したぞ!来てくれ!」

 

ビーチャの声がする。駆け寄って動力車の計器類を見ると、どうやら動かせそうだ。

 

「地下にあったからかな、状態がいいな…。これは動くぞ!ラサラさん、乗って乗って!」

 

「え!?」

 

モンドは得意満面でサラサの手を引っ張って自分と一緒の動力車に乗せる。

 

「おい、モンド!」

 

「ビーチャはそっち!」

 

客車の方を指して、ビーチャの非難めいた言葉を遮る。すごすごと客車に乗り込むビーチャの姿を視界の端で見てから、

 

「よーし、見ててよ、ラサラさん!」

 

電源を入れて前進レバーを押し込んだ。車両はゆっくりと動き出し、順調にスピードが上がっていく。

男子たちはもう、歓声を上げるだけだった。

一方のラサラは「ひゃあああ」と情けない声を出しながら、ただ、モンドの腕にしがみついていた。

 

 

 

 

 




ムーンムーンの話を組み立て直せるなら、「伝説の巨人」ネタを放り込まざるを得ない!

ということで楽しくやらせていただいております。しかし原作はこんなイチから説明が必要なエピソードをよく2話にまとめたものだ、と思いますね。
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