シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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 癪に障ることだがビーチャのいう通りにしたことでジャンク屋稼業は今のところかなり順調で、ジュドーはプチ・モビルスーツのコクピットシートに座っていることが多くなっていた。

 

「ま、好きなことやって稼げるからいいけどさ」

 

そういいながら、ジュドーは器用にアームを動かして小さな破片をキャッチした。

宇宙空間を漂う人工物の破片を集めて売りさばく連中は「ジャンク屋」と呼ばれている。そしてそのジャンク屋たちの商売道具がジュドーの乗っているプチ・モビルスーツだ。

「プチモビ」と略して呼ばれることの多いこの機体は、全高が3mほどでガラス張りの球形コクピットに手足が生えたような恰好をしている。モビルスーツとは呼ばれるものの、作業用の重機に近い。ジュドーはこういった機械を動かすの好きだった。遺伝なのかもしれない、と思ったことがある。

 

かつてジュドーの父親はコロニー公社の下請けでこんな宇宙のゴミ拾いの仕事をしていて、その仕事の最中に行方不明になった、と母親がいっていた記憶がある。リィナが生まれたばかりの頃らしいからジュドーにしても父親の記憶はほとんどない。本当に仕事の途中で行方不明になったのか、単純に家から逃げてしまったのか、最近になってそんなことを考えるようになったが、それを確かめようにも母親は別のコロニーに出稼ぎに行ってしまい、ここしばらくは顔も見ていない。最低限の生活費は振り込んでくれているが、一体どこで何をしているのかわからない。

 

だが、ジュドーは別に父も母も恨んではいなかった。というよりある程度自分で生活出来るようになれば親なんて煩わしいだけで、寂しいなどとは思ったことがない。仲間たちがいるし、リィナがいる。それに、毎日面白いことが結構ある。今日だってエルがとびっきりの情報を持って来ているのだ。

 

『ジュドー、2時方向に大きな破片が浮いてる。ギリギリ回収できる大きさだけど、それを取ったらもうストレージボックスが一杯になる。どうする?』

 

イーノがコロニーの管制室からレーダーを見ながら指示をしてくる。今は電波を吸収してしまうミノフスキー粒子の影響がないので、レーダーも通信回線もすこぶる良好だ。

 

「それじゃあそいつを回収して今日は終わりにしよう。おいエル、この辺にアーガマが来てるって情報、間違いないんだろうな?」

 

『本当だよ。なかなかシャングリラに入れなくて昨日からずっとこの辺にいるってさ』

 

「OK、それじゃさっさと仕事を終わらせるか!」

 

ジュドーはそういって作業用プチモビのスラスターを噴かせた。コロニーにやって来る艦船は円柱型をしたコロニーの中心部に備えられた港に入ってくる。コロニーはそれ自体が回転することによって慣性重力を得ていて、そのため外面に近い居住区の重力は1G近くあるが、中心部はほとんど0Gで、宇宙空間からやってくる船が停泊するには都合がいいのだ。

 

エルが持って来た「アーガマが港の近くに来ている」という情報を得たジュドーたちは今日の「狩り場」をその付近に定めていた。

 

『おいジュドー、今日はもう終わりだ!早く撤収しろ!』

 

ちょうど、イーノのいった大きな柱のような金属塊を発見したところで、ビーチャの声が飛び込んできた。

 

「何だよビーチャ、今頃来たのかよ」

 

『ジャンク屋組合から呼び出しがあったんだよ!やつら、俺たちのことマークしてきやがった!』

 

「何だよ、その辺は上手くやってるんじゃなかったの!?」

 

『ビーチャの名義でそのプチモビを定期レンタルにしただろ?そこから足がついたらしい』

 

モンドの声が聞こえてきて、ジュドーは舌打ちした。

 

「だから業者を変えてあっちこっちから借りりゃ良かったんだ。定期の方が安く済むなんて色気をだすから…」

 

『まとまった資金があるんだからそうするだろ!とにかく早く帰って来い!あの組合のゲモンとかいうオヤジ、何をしでかすかわからないぞ‼』

 

ジュドーは目の前の金属塊の回収を中断する。

 

『よし、それでいい。すぐ帰って来いよ!』

 

「いやだね。せっかくのチャンスだ。アーガマだけはこの目でおがませてもらわなきゃ!」

 

『おい、ジュドー!』

 

「ビーチャだってアーガマを見てみたいだろ?こいつのカメラでばっちり撮ってきてやるからさ、その映像を売ればいいじゃないか」

 

『いいから言うことを聞け…』

 

「あー、あー、妙だな。ミノフスキー粒子の影響が出てきたかな?」

 

ジュドーはそういいながら、自分の名を呼ぶ何人かの声が聞こえてくる回線を切った。

 

「全く、ここまで来てタダで帰れるわけないでしょ…っと!」

 

プチモビには、命綱となるワイヤーがついている。安全面を考慮して、ワイヤーの伸張は数キロの余裕をもって止まるのだが、その辺りの解除方法は公然の秘密だった。ジュドーはさっさとそれを解除して、限界までワイヤーを伸ばし、周辺の宙域に目を凝らす。

 

「やっぱり目立ちたくはないだろうからどこかに隠れてるんだろうな…よし!」

 

ジュドーは静かに目を瞑り、自分の頭に直接響いてくる声を探る。不思議なことだが、こうすることで人を探せるのだ。会いたい人に会う時、会いたくない人を避けたい時によく使う方法だった。

 

「知らない人の声を聞くのは…やっぱ無理かな……ん?」

 

一瞬、不思議な感覚が身体中を走っていった。人の声、それも今までの誰よりもはっきりとわかる声が感じられた。「声を感じる」とは妙な感覚なのだが、ジュドーには「声」としか思えなかった。何かいっているのはわかるが、何をいっているかはわからない。ともかくジュドーはその「声」に導かれるように、プチモビを進める。すると、隕石群の中に、白い艦を見つけることができた。たまらずガッツポーズをとってカメラを回した。

 

「感動ものだね、生アーガマ!」

 

思わずそんな言葉を口にした瞬間、また頭の中に声が聞こえる。

…わかりました、もうMSには乗りませんよ…

 

「え?何だよ、今の声…」

 

そこで今度は、はっきりと「声」が聞こえる。かつてここまで、何をいっているのかわかるほどの「声」は聞いたことがない。まだ少年のような声、でも大人びた口調…もう少しよく聞きたいなと思い、前に出ようとしたその時、逆に思い切り後ろに機体が引っ張られた。プチモビは慣性で、回転しながら後方に飛んでいく。

 

「うわっ!おかしいな、ワイヤーはまだ余裕あったはずだけど…って、何だ!!」

 

ずっと後ろの方に、「MSらしき物」の姿が見えた。ワイヤーの長さが限界になったのではない、あれが引っ張ったのだ。ジュドーのプチモビは、その、尖った頭に4本のアームを持った異形の「MSらしき物」に捕捉された。

 

『おい、貴様!誰の許可を得てこの宙域でジャンク拾いをやっている!』

 

接触回線で伝わる大声が、プチモビのコクピットを振動させた。頭を割られるような凄みのある声だ。

 

「何だよ藪から棒に!後ろから引っ張るなんて危ないじゃないか!」

 

『何だと!』

 

「大体あんたこそなんだ!今日この宙域の行動許可を取ってるのは俺たちだけのはずだ!」

 

『馬鹿野郎!公社の許可なんざ関係ねえ!ジャンク屋の狩り場はな、組合が毎月公平に割り振るんだよ!たとえガキでもモグリは許さねえ!ジャングリラでジャンク屋をやりたきゃ組合に入れ!』

 

それは正論なんだろうと、ジュドーにはわかった。だが、同時にいいようのない怒りがこみ上げる。

 

「組合だあ?ふざけるな!そんなもんは大人が勝手に決めたルールだろ!従うつもりはないね!」

 

『このガキ!ゲモン・バジャック様を怒らせたな‼』

 

「だったら何だ!」

 

『このゲゼのパワー、大人の力を見せてやる!』

 

ゲモン、そういえばビーチャがそんな名前を口にしていたな、と思い出す。どうやら危ないおじさんに捕まったようだ。ゲモンが「ゲゼ」と呼んだこの異形のMSらしきものは、そのアームで器用にプチモビのワイヤーを掴んだかと思うと、ぐるぐると振り回し始めた。

 

「なっ、うわあぁ!」

 

ジュドーはコクピットの座席に必死にしがみついた。その醜態を、ゲモンが見て笑っている。どういう構造なのか、ゲゼの腰部分にある箱型のコクピットも自機を周回するように動いていて、ゲモンの大きな顔が常に真っすぐジュドーを見据えていた。

 

『はあっはっはー、どうだ小僧!』

 

「なんだこのくらい!下町の遊園地だってもっとスリルがあるぜ!」

 

『口の減らないガキだ!ならこれでどうだ!』

 

回転スピードがさらに上がる。なんでこんな機能を備えているのか、ジュドーにはさっぱりわからなかったが、さすがにキツくなってきた…のだが、どうやらそれは自分だけはないらしい。

 

『……っう、ど、どうだ、小僧め…』

 

ゲモンの様子が明らかにおかしい。

 

「へんっ!どうしたのおじさん、目が回ったのかよ!」

 

『う、うるさ…むぐっ!』

 

「え?」

 

プチモビの円運動が突如止まった…そう思った時にはものすごいスピードで周囲の星が流れていくのがわかった。

 

「ちょっと、えええー‼」

 

命綱のワイヤーが切れていた。ほとんどハンマー投げの要領で、ジュドーは広大な星の海に放り出されていた。

 

 

 

 

 




ジークアクス、衝撃の一年戦争ifでしたね。
このZZもややifの要素がありますが、逆シャアにつながるように収束していく予定です。
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