シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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「よーし、まずは私のお手本だよ!」

 

プルはそういうと少しの間、目を瞑る。

 

「ちょっとプルさん、どうしちゃったの?」

 

「うるさい!静かにして!」

 

「はい…」

 

球形のコクピットの壁面にへばりつきながら、ジュドーは黙ってモニタや計器の類を改めて見回す。ゼータやダブルゼータとは根本的に違うコクピットだ。とはいえ、MSのコクピットに変わりはないから、見ればそれがどんなものかは大体の予想がつく。ただ、どうしてもよくわからないメーター類があり、何だろうと思って眺めていると、それが急に輝き出した。

 

「よーし、ジュドー、あの岩を見ててよ!」

 

「え?ああ…」

 

「ファンネル!」

 

プルのその声に応じたとでもいうのか、無数の円錐のような形をした「何か」が、キュベレイから発せられてプルのいった岩に目掛けて殺到する。そして、

 

「行けー!」

 

プルの叫びと共にその無数の円錐はビームを放ち、岩を粉々に粉砕した。ジュドーは呆気に取られる。

 

「すげえ…」

 

「でしょう!へっへーん。さ、次はジュドーの番だよ。こっちこっち!」

 

そういってプルはジュドーをシートに座らせ、自分は当然のようにその膝の上に座る。

 

「さ、意識を集中させて?」

 

「そんなこと、急にいわれても…さ」

 

ジュドーは、アゴにあたりそうになるプルの頭を避けながら実際に困惑する。あんなものが本当に動かせるというのか?

 

「あのファンネルたちにお願いするの!はい、これをつけてね!」

 

プルはそういってジュドーの額にヘッドセットのようなものを押し付けた。

 

「何だよ、これ」

 

「いいからいいから!さ、やってみよう!」

 

プルはそう言って上機嫌で前方の岩を指す。こんなことをしている場合ではないが、自分の身の安全はプル次第なのだ。あまり刺激するのも良くない。

 

「ええっと、ファンネルたちにお願い?すればいいのね?」

 

「そうそう、イメージが大事だからね!」

 

仕方無く、ジュドーはさっきプルがやったのと同じようにファンネルが飛んでいく…そんなイメージをする。

 

プルがキュベレイと呼んでいるこの機体は正確にはキュベレイMKⅡ、といってハマーン・カーンの専用機であるキュベレイを量産化するために試作製造されたモデルとなっている。そのため、外観は変わらないがややグレードの落ちるパーツを使っている部分があり、オリジナルの機体より性能は落ちる。だが、仕様自体は踏襲されており、最大の特徴であるサイコミュ兵器「ファンネル」もオリジナルと同様の10基を機体の尻尾部分になるバインダーに搭載している。

 

ジュドーのイメージが、ヘッドセットを通して背部のファンネルに通じていくのがわかる。

 

「何だ、これは…!」

 

妙な感覚だった。バインダーが跳ね上がってファンネルが起動し、機体を囲むような位置に浮かぶのが見える…以上にはっきりと感じられた。

 

「そうそう、そこで行けーって!行けーって言うの!」

 

「よ、よし…行けー!ファンネル!」

 

言語化した方がより明確なイメージに繋がるということなのだろうか。10基のファンネルは鋭角的に曲がりながらプルの指した岩に向けて飛んで行き、見事にそれを打ち砕いた。

 

「やった!すごーい!」

 

「あ、ああ…こりゃまたなんて武器だ…」

 

ジュドーは、そこでカミーユに言われたことを思い出した。人の意思で動くマシン…そんなものが本当にあるのだ。同時に、シャングリラを出た時の戦闘でビーム刃を放った時と同じ疲れに襲われているのに気づく。さすがにあの時ほどではないが、間違い無く、同種の感覚だ。機体を確認すると、オーバーヒートするようなことはないようだが、ファンネルはチャージが必要らしく、連動していたメーターが赤く点滅している。

 

「はい、しばらくお休みね!」

 

「そんなにくっつくなよ!」

 

首根っこに抱きついて来たプルの頭を押さえていると、手持ちの端末に反応がある。

 

「お…!聞こえるか、ジュドーだ!今アクシズの何とかって丸っこいMSに乗ってる!」

 

『こっちでも捕捉したわ!』

 

ルーの声だ。幸いにもミノフスキー粒子の影響があまり無く、音声は明瞭だ。

 

「丸っこいじゃない!キュベレイだよ!」

 

「コラ、プル!大事な話の途中なの!」

 

『…今の声、ミアさんじゃないわよね?何があったの?』

 

「ちょっとトラブってさ、ミアさんはまだアクシズだ」

 

『まだアクシズ、だって…!?』

 

「ミアさんなら大丈夫だ。アクシズの連中もあの人には手出し出来ないらしい…本当に悪いんだけど、一旦置いて行くより他に方法が思いつかない」

 

そういったところで、コアトップ、コアベースに続いてコアファイターがやって来る。3機揃って一旦こちらを通り過ぎてから、大きくターンして減速し、スラスターを落として慣性だけで緩やかに周回し始めた。

 

『ってことは、ジュドーはすぐに逃げないと危ない理由があるってこと?』

エルからだ。

 

「そうだ。何だか知らないけどハマーン・カーンに会った。多分俺、捕まったら殺される」

 

『ハマーン・カーン!?』

 

という声が重なるが、

 

「ダメだよ、ジュドー、死んじゃだめ!」

 

そんなことは聞いていない、プルの腕に力が入り、ジュドーの首が思い切り締められる。

 

「ちょ、お前が殺す気か!」

 

『それでジュドー、お前は誰を連れて来たんだよ』

 

ビーチャの声だ。

 

「ああ、俺を助けてくれた…ってことになるのか?エルピー・プルっていう女の子だ。このMSのパイロットみたいなんだけど…」

 

『パイロット?声だけ聴くと小さな女の子みたいだけど…』

 

エルの声にジュドーは溜息をつく。

 

「そうだよ、小さな女の子だ。とにかく一から説明してる暇はないんだ!」

 

『そのようね。早いとこ、こっちに乗り移れっていいたいところだけど…ジュドー、あんたノーマルスーツ着てるの?』

 

「着てない。プルも着てないし…乗り換えは…無理だな」

 

少しの沈黙の後、後ろからMSの反応がある。

 

「マズイ、追手だ!」

 

『ジュドー、その機体ごとアーガマに来い!』

 

ビーチャが大胆なことをいってくる。

 

「いや、さすがにそれは…プルも帰さないと…」

 

「いーよ!行こう、アーガマ!」

 

間を空けずに発せられた少女の快活な声に4人は一旦動きを止めたが、迷っている暇はない。3機の飛行機と1機のMSは、すぐに同じ方向へと飛び始めた。

 

 

 

 

 あのジュドー・アーシタという少年はとんだ食わせ物だったようだ。リィナの兄だというから少し気を許してしまったが、宮殿に忍び込んでいた上にプルをかどわかすとはとんでもないヤツだ。ここで逃しては大きな騒動になってしまう。

 

「だが、捕まえれば大きな手柄だ…!」

グレミーはキュベレイMKⅡを追いかけるため、自分もテストパイロットとして開発に携わった新型MS「バウ」に乗って単機で出撃した。およそこれまでのアクシズ系の機体とは大きく異なり、ガンダムタイプに近いフォルムを持つのこの機体は、アナハイムによる一連のMS開発計画「Z計画」の成果が政治的取引でアクシズにもたらされた結果、生まれた。そのためこれまでの機体と異なる部分は多いが、グレミーはこの軽快さと反応の良さを気に入っていた。

 

その機動力もあってか、キュベレイMKⅡの反応はすぐに見つかった…が、それが敵軍のマーカーに囲まれている。

 

「まさか…!?ここまでの手筈を整えていたというのか!ミアという女性を囮にしてここまでするとは…!卑劣な!」

 

そんな風に憤りながらグレミーは加速をかけ、キュベレイMKⅡに呼び掛ける。

 

「聞こえるかキュベレイMKⅡ、エルピー・プル!」

 

『あ、グレミー?どうしたの?』

 

あっさりとそんな返事があり、グレミーは虚を突かれる。

 

「な…どうしたの、ではない!何をやっている!」

 

『何って、これからアーガマに行くんだよ?』

 

呆気に取られるとはこのことか。一瞬手足が機体の操縦桿やフットペダルから離れた。

 

『グレミーさん…悪いけどプルは…』

 

キュベレイMKⅡとの間に映像が繋がる。あの少年がプルを膝に置いて操縦席に座っていた。それを見て、グレミー我に返る。

 

「貴様、ジュドー・アーシタ!やってくれたな!」

 

『え?グレミー?グレミーってもしかしてあの迷子のグレミーさん?』

 

何かの通信機器を介しているのか、音声の状態は良くないがこの声は…グレミーの身体中の血が一気に沸き立ったようだった。

 

「その声…ルーさん!?ルー・ルカさんなのか!?」

 

『あら、やっぱり…何やってるの?こんなところで?』

 

「そ、それは私のセリフです!何故あなたが…!」

 

そういったところでキュベレイMKⅡの映像をよく見ると、リィナの兄の近くで浮いている端末が、ルーが話す度にチカチカと光っている。

 

「まさか…エゥーゴの方だったのですか…?」

 

『ええ、そうなの。だからあなたの敵ってことになるわね』

 

「そんな!ルーさんが…!?」

 

多くの情報が入り乱れていた所へ、つれない女神に決定的な一撃を加えられてしまった。その威力は、グレミーの頭の中からプルやジュドーのことなどを叩き出すのに十分であった。

もちろん、その間にも機体は進んでいる。アクシズからはかなり離れ、うっすらと白い艦影が見え始めたことにすら、グレミーは気が付かなかった。

 

 

 

 

何故か黙ってしまった上に威嚇射撃の一つもしてこないアクシズの追手をビーチャは不審に思ったが、ノコノコと着いて来てくれたのはラッキーだ。ジュドーとの通信を切って、エルとルーに呼び掛ける。

 

「一旦俺とジュドーがアーガマに降りてコアファイターを交代する。エルとルーはあのオレンジを見張っててくれないか?」

 

『わかったよ、ビーチャ。で、ルー、あのMSのパイロット、知り合い?あんたに気があるみたいじゃない』

 

『勘弁してよ。あんなの…。それよりビーチャ、あんた何か考えがあっていってるんでしょうね?』

 

「あったぼうよ。とにかく後は任せてくれ」

 

『ふうん…まあいいけど、下手打たないでよ。それじゃエル、散開するわよ!』

 

『了解!』

 

コアトップとコアベースが大きくターンしてオレンジのMSに向かう。ビーチャは再びジュドーの端末に回線を繋ぐ。

 

『何だよビーチャ、急に回線切ったりして…ルーとエルはどうしたんだ?』

 

「細かい話は後だ。ジュドー、お前は俺と一緒にアーガマに降りてくれ」

 

『え?あ、ああ、わかった』

 

ジュドーからの返事を聞いたあとで、ビーチャは声のトーンを上げる。

 

「それと、聞こえてるんだろう?アクシズのMS!グレミーとかいったか!」

 

一瞬遅れて、

 

『な…何だ』

 

改めて聞くこの声は間違いない、エンドラにいた時に確かに聴いたことがある。

 

「お前の機体はもうアーガマの射程内だ。逃げられないぞ」

 

『あ…』

 

ようやく気が付いたのか、オレンジの機体が動きを止める。

 

「無事に帰りたかったらリィナとミアさんを引き渡せ!少し時間をやるからそこで考えろ。だがおかしな真似をするなよ。お前の好きなルーさんに撃たれるぞ!」

 

『な、何だと…』

 

わざとらしく「グレミーとかいったか」などと言ったがビーチャはグレミーを知っている。あのお坊ちゃんだと知っているからこそ、思いついた脅しだ。

コアトップとコアベースに捕捉されて完全に動きを止めたその機体を背中に見て、ビーチャはニヤリと笑いながらジュドーの操る機体と共に悠々とアーガマに着艦した。

 

 

 

 

 




スーパーロボット大戦っぽく、ジュドーをキュベレイに乗せて「ファンネル!」といわせましたが、ここはサイコミュ兵器の認識を持たせたかったというところですね。

グレミーはもうしばらく甘ちゃん(笑)のままです。
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