シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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 格納庫に戻ったカミーユはMK-Ⅳのコクピットから飛び降りた。フロストが、それに合わせて飛んで来る。

 

「すいません、MK-Ⅳをこんなにしてしまって…!」

 

「構いませんよ。大方データは取れましたし、カミーユさんが無事で何よりです。それで、あの赤い機体はなんです!?」

 

「何ですって…あれはアナハイムの機体でしょう?」

 

「そりゃあ…」

 

フロストの表情を眺めながらカミーユはここの社員は知らないのだろう、と思った。

 

「奥のヤツ、行けますよね?」

 

「増加装甲の調整は終わっていますが…って、何をいっているんです!あなたをこれ以上危険にさらすわけには…!」

 

「すいません、乗り換えて来いっていわれてしまったもので」

 

「いわれたって誰に…え?ちょっと、カミーユさん!」

 

フロストの腕を抜けて、カミーユはその、格納庫の奥に立つ機体のコクピットに滑り込んだ。元々MK-Ⅳの後にテストをする予定だったので、機体の整備はほぼ終わっている。ハッチを閉めて、慣れた手つきでスイッチを入れていくと問題無く起動し、全天周囲モニタに切り替わる。フットペダルの遊びを確認しながらレイアウトを眺めていると、ここがMSのコクピットだということが信じられないくらいに落ち着いた気分になっていく。

 

「フフ…僕が乗っていたのとは違うってわかってはいるけど、こんな気分になるなんてな…」

 

レバーを握ったところで、ハッチを叩く音がする。

 

『カミーユさん!ダメです、降りて下さい!あなたにこれ以上戦闘をさせるわけにはいかないんです!』

 

「すいません、フロストさん。行かなきゃいけないんです。そこをどいて下さい!」

 

その重厚な機体が、ゆっくりと歩きだす。

 

『うわっ!』

 

フロストの叫び声が聞こえ、止む無く、と判断されたのかエアロックが開く。施設の脇に配されているショートカタパルトに機体を乗せて、カミーユは深呼吸をした。そして、

 

「フルアーマーガンダムMK-Ⅱ、カミーユ・ビダン、行きます!」

 

そう一声を上げて月の空に飛び出した。

 

 

 

 

「何だ、こいつは!?」

 

突如として現れた赤い機体に、イリアの量産型サイコガンダムは完全に翻弄されていた。大した攻撃をしてくるわけではないが、次第に機体の損傷が増えて行く。しかもどういうわけかこちらの攻撃がまるで当たらない。その繰り返しで気が付けばすっかりアナハイムの施設から距離を空けられてしまった。

 

「小回りが効かないこの機体では…!」

 

とにかく相手の間合い取りが上手いのだ。一瞬で懐に飛び込まれたかと思うと、次の瞬間には手の届かない所まで離れている。この月の微妙な重力下で、これほど繊細な機体制御が出来るというのは…とても人間技とは思えなかった。

 

「先を読まれている…とでもいうのか…」

 

イリアの中に積もり続ける違和感が、ゆっくりと恐怖に変わっていく。頭を振り、一旦仕切り直しを図るために敢えて大きく後退した。ビームランチャーをやられたとはいえ、射程と火器搭載量では完全に勝っているのだ。距離をとってインコムで動きを封じながら大火力で押せば、一方的な展開に持ち込めるはずだ。

 

「調子に乗るなよ、赤い彗星気取りが…!」

 

何気なくそういって、それから気付く。この動きは確かに、教練で何度も見た赤い彗星のものに似ていた。レバーを握る手に汗が滲んでいるのを感じて、イリアは唾を呑んだ。

 

 

 

 

『それと増加装甲は戦闘中でもパージが可能ですが、一瞬で機体質量が軽くなる上に一部フレームがむき出しになる箇所が出来ます。注意して下さい』

 

フロストから入る機体の扱い方を聞きながら、カミーユはMK-Ⅱを飛ばす。

 

フルアーマーガンダムMK-Ⅱはその名の通り、かつてカミーユ自身が愛機としていたガンダムMK-Ⅱの全身に装甲と武装が追加された機体だ。元々ガンダムMK-Ⅱはティターンズで開発され、ムーバブルフレームといういわば全身骨格ともいえる斬新な機構が内蔵された機体ではあったのだが、斬新なのはそれだけで、その他の部分においては当時のMSの水準に収まる程度の性能しか有していなかった。そのため早くから強化プランが挙げられており、グリプス戦役中は支援メカのGディフェンサーが採用されたが、別案としてこの増加装甲の開発も廃案になることなく進んでいた。そしてMK-Ⅱ本体についても、かつてティターンズから手に入れた3機のうち1機はアナハイムに流れて来ており、その機体は研究がてら細部に至るまで調整が施されていたため、もはや外見は同じでも中身は別物、といっていいレベルにまでチューンアップされている。

 

もちろん、カミーユがそれに気づかないわけがない。

 

「これなら、いける…!頼むぞ、MK-Ⅱ…!」

 

戦闘はもうかなり離れた位置で行われている。望遠モニタで戦況を伺う限り、あくまで主導権はあの赤いMSが握っているようだ。

 

「あんなのに付きまとわれたらたまらないだろうな。本当に…」

 

苦笑しながら戦闘宙域に入り、シュツルム・ディアスの後ろに付く。通信は繋がらない。全ての回線を拒否しているようだ。無理やり取り付いて接触回線を使おうかとも思ったが、それには少々危険な戦況のようだ。サイコガンダムが、火器を乱射している。2機が重なるような動きは避けなければならない。

 

「あいつ、大分冷静さを失ってるな。ほとんど錯乱してるみたいじゃないか」

 

最早、カミーユを追い詰めていた時のクレバーな戦い方は忘れてしまったかのようだ。だが、本体にあれだけの大きさがあればまだまだ出力に余裕があるだろう。このままこちらの有効射程外から絶え間なく攻撃をされたのではたまったものではない。しかも、あまり良くない方角に動いている。

 

「グラナダ市街に向かっているのか…?あまり長引かせるわけにはいかないな…!」

 

街が近付けばMSを爆発させるわけにはいかなくなる。一気にカタを付けた方が良さそうだと思っていると、

 

「…え?バズーカの弾頭はクレイ…?」

 

また、一方的に赤いMSからの「意思」が頭の中に飛び込んできた。

 

「ああ…、そういうことですか。分かりましたよ、仕方ないな…!」

 

カミーユは、誰に見られているわけでもないのに笑顔を押し殺してからそういって、MK-Ⅱの高度を上げる。それは的にしてくれ、といわんばかりの動きであった。

 

 

 

 

 新たに出て来たガンダムの機体が浮かび上がるのを見て、クレイユは膝を打つ。

 

「よし、ライフルの接続は出来るな?」

 

『やってみるさ!』

 

『そっちこそちゃんと狙ってくれよ!』

 

撃墜された3人は、一旦は避難していたものの量産型サイコガンダムの登場を見て再び機体の周りに集まり、友軍機の援護をしようと動いていた。何とかガ・ゾウムのライフルを動かせそうだとわかり、コクピットにクレイユが乗り、残る二人が腕部とライフルの方に回って調整をしていた。

 

『けど、撃ったら俺たちは…』

 

『ああ、やられるだろうな…』

 

「だが、ガンダムをやれば、ジオンの騎士として名は残る!」

 

そこで3人の「おう!」という気合が重なる。この辺りはさすがマシュマーの元部下たち、といったところだろうか。そんな3人の赤誠が届いたか、ガ・ゾウムはゆるりとその右腕を上げた。すかさずクレイユはイリアに通知を送り、一つ深呼吸をする。

 

「よし…!ガ・ゾウム、エンドラ隊の意地を見せてやれ!」

 

クレイユの絶叫と共に、ガ・ゾウムの一撃が、カミーユのフルアーマーガンダムMK-Ⅱに向けて放たれた。

 

 

 

 

クレイユからの通信は、イリアにとって天佑であった。

赤い彗星モドキだけでも手を焼いているのに、加えてやってきた重装甲のガンダムも動きに隙が無い。火器の差でごまかすのも限界に来ており、何か展開を変える一手が欲しい…そう思っていたところに入った知らせだったのだ。そしてその通りに、ビームライフルの発射が確認された。重装甲のガンダムを正確に狙っている。

 

「やるじゃないか、あいつら!これなら…!」

 

ガ・ゾウムからの攻撃は距離があるが、正面の量産型サイコガンダムと側面からの十字砲火になる。

 

「かわせるものならかわして見ろ!」

 

インコム、胸部メガ粒子砲、それにグレネードも一斉に撃ち放ち、逃げ場を封じる。この一機を墜とせれば、アーガマへ行くはずの機体を2機、始末出来たことになる。3機のMSを失ったとはいえ、何とか任務達成のラインだろう。

 

「よし、撃墜…!」

 

ガンダムの爆発を確認し、次の標的、上方に動いていた赤いMSの方に意識を移した、その瞬間だった。

 

 

 

 

「簡単に、目を離すからっ!」

 

パージした装甲パーツの爆発の中から無傷のガンダムMK-Ⅱが現れる。軽くなった機体で瞬時に間合いを詰めると、バックパックのビームサーベルを手にして一気に振りかぶった。袈裟懸けに一閃、サイコガンダムの胸部装甲が裂ける。

カミーユはそこで『何!』という相手の声を聞いたような気がしたが、その時には頭部のバルカンポッドから至近弾を放ってサイコガンダムの顔面のカメラ類を破壊していた。

その巨躯が、悶絶するかのように手足を大きく動かす。

 

『こんなもので、この量産型サイコガンダムを墜とせると思うなあっ!』

 

今度は確かに、そういう声が聞こえた。

 

「いや、これで十分なのさ…!」

 

カミーユがそういって速やかに機体を後退させたその瞬間、上空のシュツルム・ディアスから放たれたバズーカの弾丸が、たった今出来たばかりのサイコガンダムの胸の裂け目に、ほとんど吸い込まれるようにして突き刺ささった。

 

「全く…何て精度だよ…!」

 

カミーユは鳥肌が立つのを感じながら、その射撃の腕の冴えを見た。

 

 

 

 

「何だ!?一体私は何をされたというんだ!?」

 

量産型サイコガンダムのコクピットでイリアが出来るのはただ、狼狽しながら操縦桿を前後させることだけだった。

倒したと思ったガンダムから斬撃を受け、カメラを壊されたと同時に、大きな衝撃を受けた。そこへ、

 

『聞こえるか、サイコガンダムのパイロット。投降しろ。その機体は内部をやれている。もう動かない』

 

そんな通信が入って来た。

 

「な…脅しのつもりか?」

 

そう答えたものの、確かに機体は動かない。内部を破壊した、ということをいっていたが、もし本当にそうだとすると最初にガンダムが装甲を切り裂いて、そこに赤い彗星モドキが何らかの特殊弾を打ち込んだ、ということになるのだろう。だが…そんな、針の穴に糸を通すような真似が出来るわけがない…出来るわけがないのだ。

背筋が凍るような思いを抱きながら、それでもイリアはサブセンサーを起動させて、何とか視界を確保する。そして、補助スラスターがいくつか動くのを確認する。とにかく、こいつらを相手にしてはいけない、と本能が告げている。

 

「フン…グラナダを、見過ごすことは出来ないだろう…!」

 

サイコガンダムの本体をグラナダへ突入させる指示を入力して、イリア自身はコクピットとなっている頭部を切り離した。

 

 

 

 

「何!?グラナダに機体を落とす気か!」

 

カミーユは月面に着地していたMK-Ⅱをすぐにターンさせたが、手持ちの火器が無い。フルアーマーパーツのシールドの中にビームライフルがあるはずだが、すぐには回収出来ない。シュツルム・ディアスの方もこの動きは予想外だったのか、明らかに対応が遅れていた。宙域を離脱していくサイコガンダムの頭部の方を追っている余裕は、ない。

 

「クソ、アナハイム!何とかなりませんか!このままじゃグラナダが…!」

 

『わかっています!MK-Ⅳを出して射撃をさせてみますが…!』

 

そんな対応では遅過ぎる。シュツルム・ディアスがバズーカとビームピストルを連射してスラスターを潰し、サイコガンダムはその軌道を多少下げたが、依然としてグラナダへの突入コースをとっている。

 

「間に合わないのか…!」

 

絶望しかけたその時、再びさっきの方向からビームが走り、サイコガンダムを直撃した。当たり所が良かったのだろう。軌道が変化し、急激に高度を落として行く。その間にカミーユはビームライフルを回収し、ガンダムMK-Ⅱを大きくジャンプさせた。サイコガンダムの上を取って、火を噴いている何基かのスラスターを撃ち、さらに、

 

「墜ちろっ!」

 

重心を狙撃する。ゆっくりと、だが確実にその巨体は沈んでゆき…ついには月面に突っ伏して盛大に月の砂を舞い上げた。

カミーユはその脇にMK-Ⅱを着地させる。サイコガンダムが伸ばしている右腕の少し先に、グラナダ市街との境界があった。まるで、無念だ、とでもいいたげに力尽きたその巨体を目の前にして、カミーユは冷や汗を拭った。それにしても、さっきの一撃は一体どういうことだったのだろうか?

 

「誤射ってことはないよな…市民を巻き込まないようにしたっていうのか…?」

 

発射された方向を見ると、シュツルム・ディアスがそのライフルを構えた機体に何やら指示を出しているのがわかり…それからすぐに、カミーユの真上にやって来た。

そして、

 

「ついて来い…だって…?」

 

見覚えのあるMSの指によるサインが、そう告げていた。

 

 

 

 

 




今回はフルアーマーMK-Ⅱとシュツルム・ディアスが量産型サイコガンダムと戦うという…これぞ二次創作(笑)という感じでお送りしました。

「フルアーマーガンダムMK-Ⅱ、カミーユ・ビダン、行きます!」

カミーユをもう一度MK-Ⅱに乗せてこれを言わせたかったんですよね。フルアーマーMK-Ⅱもプラモ狂四郎の最後を飾ったハイコンプリートモデルパーフェクトガンダムのデザインが元になった思い入れのある機体なので、出せて良かったです。本当に自己満足全開ですね!
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