シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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「アーガマ、現れました!MSを展開しているようですが…サンドラの部隊が押さえに回っています!」

 

サダラーンのブリッジで、ハマーンは通信兵の報告を聞き、口元をわずかに緩ませる。

 

「ふ…アーガマをまいたか。義理は果してしてくれるようだなグレミー…。艦長、突入シークエンスは順調か?」

 

「問題ありません。お部屋にお戻りください。ここはこれから騒がしくなります」

 

隣のキャプテンシートに座る中年の男が淡々とそういった。

 

「いや…地球の姿はブリッジから見たい…邪魔であれば戻るが?」

 

「いえ、それでは少々ご辛抱下さい…サダラーン180度回頭、バリュート展開だ。MS部隊はギリギリまで待機、いつでも出撃できるようにしておけ」

 

艦長命令に応じて船体が大きくターンし、艦の向きと進行方向が前後逆になる。ブリッジが船内に収納されていくと同時に艦尾からバリュートが開いて奇妙な浮遊感に包まれる。

 

「こんな状況でMSを出すのか?」

 

「アーガマにはゼータガンダムと、フライングアーマーを使って大気圏に突入する機体が配備されている可能性があります。突入中に戦闘継続が可能な機体に襲われれば『風船』はあっという間に弾けますので…」

 

風船、とはいうまでもなくバリュートのことだ。流石に敵戦力のことをよく把握しているその発言に、ハマーンは頷く。

 

「これだけ離れればそんな心配は必要ないように思うが…万が一の事態にも抜かりなく応戦してくれるということか。私は安心していいらしいな、艦長?」

 

「無論です。我ら一同、命に代えてもハマーン様を無事に地球へお届けいたします」

 

「フフ…そうか。だが、地球へ着いてからが本番だよ。お前たちにはまだまだ働いてもらわねばな」

 

「ええ、どこまでもお供致します」

 

大気との摩擦で艦内に揺れが生じ始めたが、それはハマーンにとって心地の良いものとなった。もう、じたばたしても仕方が無い。一旦全ての雑事を忘れようとしたその時、確かに、あの少年の叫び声を聞いた。

 

「フフ…やはり、来ているかジュドー・アーシタ…一足先に待っているぞ」

 

そういってうっすらと笑みを浮かべつつハマーンは目を瞑った。

 

 

 

 

「ちょっと、何なのよこいつら…」

 

アーガマの進路を塞ぐように、ズサ編隊が執拗な攻撃を開始していた。全部で5機が確認され、そのうちの2機は大型のミサイルを搭載している。

 

「対艦攻撃部隊だっていうの…?こっちの動きはある程度予測済みってわけね…!」

 

現状、宇宙でアクシズに表立って敵対しているのはエゥーゴくらいのもので、その唯一の戦力であるアーガマが地球降下のタイミングで何らかの妨害を仕掛けて来ることは当然わかっていただろう。

 

「けど…簡単にはやらせないんだから!」

 

ルーはダブルゼータのパワーに振り回されることなく、次々と放たれるミサイルを軽やかに撃墜していく。

 

「アーガマ、ジュドーの方はどうなってるの?」

 

『ゼータガンダムの方にも敵機が展開しているようだ。サダラーンは…追い切れないかもしれない』

 

トーレスの声に、ルーは溜め息をつく。

 

「勝負は地球までお預けってわけね…ん?ちょっと左舷の機銃座!狙いが甘いんじゃないの!」

 

『うるせえ!お前に当たらないように気を遣ってるんだよ!』

 

すかさず聞いたような声が返って来る。

 

「それはどうもって…その声、ビーチャなの?」

 

『そうだ!イーノとモンドで左舷の機銃をやってる!』

 

「あら、それは結構なことで。でも、もう私に気は遣わなくていいから上手くあいつらを誘導して固めて頂戴。ハイメガキャノンで一気に叩くわ!」

 

『な…簡単にいうなよ!』

 

『いや、それでいい。ビーチャ、多少のムダ撃ちは構わん。敵機をダブルゼータの前方に回せ!』

 

ブライトの声だ。

 

『りょ、了解ですよ!』

 

ビーチャの上ずった声に苦笑しながら、ルーは展開しているズサ隊に目を向けた。

 

「さあ、こっちよ!いらっしゃい、ハリネズミさんたち!」

 

ダブルゼータが挑発するかのように、両腕のウイングシールドをはためかせてズサ隊に見得を切った。

 

 

 

 

「敵を集めるったって、どうすりゃいいのさ!」

 

モンドの悲鳴のような声に、ビーチャは頭を抱える。

 

「ええっと…他の機銃座と連携をとりゃいいのか?」

 

「あ、ビーチャ、プランが表示されてるよ!」

 

イーノの声にモニタに目をやると、確かに幾つかのプランと共に、他の機銃座の動きが表示された。

 

「お、そうか。これを参考にすりゃいいのか…よし!モンド、イーノ、右舷の機銃座と合わせてやつらを追い込むぞ!」

 

そういって、プランを選択する。

 

「了解…」

 

「わかった!」

 

二人のその返事が聞こえた瞬間、目の前をミサイルが通過していく。すると、

 

『左舷、弾幕薄いぞ!何やってんの!』

 

すかさず、ブライトの怒号も飛んでくる。

 

「わ、わかってますよ!二人とも、バンバン撃つぞ!」

 

最前線の緊張が三人の背筋を凍らせる。だが、もう余所見をしている暇はない。刻々と移り変わる戦況に必死に食らいついていかねばならない。3人は敵機が放ってくるミサイルをシステムに指示される通り夢中で墜としていく。そのうちに、敵機が固まって来るのが目視出来るようになった。

 

「すごい、ホントに敵が固まって来たよ!」

 

「最新の対空システムかあ…こういうのも面白いな」

 

イーノとモンドの声に、ビーチャもまた頷く。

 

「ああ、対空機銃でこんなこともできるんだな…ブリッジ、確認出来てます?」

 

『ああ、よくやった!ダブルゼータ、発射のタイミングを逃すなよ!』

 

トーレスがそう答えると、

 

『上出来じゃない!それじゃ行くわよ!』

 

ルーの快活な返事が聞こえ、それから光の渦が見えたのと同時に敵機の反応が次々と消えていく。

 

「相変わらず…えげつない威力だな…」

 

そういって苦笑しながらも、ひとまずは危険が去ったかと背伸びをしたその時、

 

『一機うち漏らした!アーガマ、気を付けて!』

 

ルーの声が響き、全員が再び機銃座にはりつく。

 

「げ!あれ、何だよ!?」

 

モンドが指さす方を見ると、敵のMS、ズサが突っ込んで来るように見えたが…。

 

「変形したのか!?」

 

「いや、バックパックだけ飛ばして来たんだ!あれをアーガマにぶつける気だよ!」

 

イーノのいうことが正しいらしい。

 

「冗談じゃない!あんなの止められるのかよ!?」

 

3人は真っ青になりながら迫るその飛行物体に射撃をしていくが、単純に相手の質量が大きく、押し返すことが出来ない。

 

「ダブルゼータは!?」

 

「出力が落ちてるんだろ!」

 

「うわぁぁ!こっちに来るよぉ!」

 

ビーチャは咄嗟に逃げ出そうかと思ったが、ブライトに指揮を執れ、といわれたことを思い出し、歯を食いしばって足を止め、この状況下における最善策は…と頭を巡らせた。そして、

 

「モンド、イーノ、機銃をオート追尾に設定してここから退避だ!」

 

二人にそう言い放つ。

 

「わかった!」

 

「そうか、そうだね!」

 

だが、3人が大急ぎで目の前の目標に照準設定をして逃げようとしたその時、上から稲妻のような閃光が走り、視界から敵機の片割が消えてしまった。

 

「何だ今の!?」

 

「MSの影!?」

 

「百式だよ!」

 

量産型百式改のキックでズサのバックパックが吹き飛んでいた。機銃座の方へ戻って見ると、百式改はすかさずビームライフルを放って見事に目標を破壊している。3人が目を見張っていると、その金色の機体がゆっくりとこちらに近づいて来た。

 

『よ、みんな大丈夫?』

 

その声に、ビーチャは感極まった。

 

「エルか!助かったぜ!」

 

『そうでしょそうでしょ、この私に大いに感謝なさい!』

 

「いや、ほんと死ぬかと思ったよ…」

 

「でも何で…エルは待機じゃなかったの?」

 

イーノの疑問は最もだ。

 

『ブライト艦長からね、ハイメガキャノンを撃った後のルーのフォローに入れって命令があったのよ!』

 

「何だよそういうことか…。だったら…」

 

『先に知らせてほしかったか?』

 

ブライトからの声にビーチャはビクリと背筋を伸ばす。

 

「そ、そりゃあそうでしょう…」

 

『フフ…ビーチャ、さっきのはいい判断だった。そこはもういい。戻ってこい』

 

 

 

 

『え…?あ、はい…』

 

ビーチャの返事を聞きながら、ブライトはアーガマの正面に目を戻す。

 

「トーレス、敵の第二波は?」

 

「認められません。護衛に回っていたエンドラ級も降下に入ったようです…追い付けませんでしたね…」

 

「この戦力ではな…。ジュドーは敵を追っているのか?」

 

ゼータガンダムの位置を見ると、すぐ近くにいる敵機を追っているように見える。

 

「わかりません。ジュドーとの直接連絡はもう難しい状況です。サダラーンを追っていったように見えましたが…」

 

「そうか…ルー、エル、お前たちもアーガマに戻れ。降下を開始する」

 

『了解』

 

そもそもバリュートを背負っていない百式のエルからはすぐに返事があったが、

 

『艦長、ダブルゼータは出来ればバリュートを展開して降下してみたいのですが…』

 

「…アナハイムの意向か?」

 

『ええ、こんな機会は滅多にありませんから…』

 

確かにこんな機会は滅多にない。アナハイムが実際にバリュートを使用した際のデータを欲しがるというのはわからなくはないが…バリュートには少しでも不備があれば簡単に穴が空いてしまう。怖くはないのか?と思うが、ともかく、もしもの場合に備えてMSを出しておくのは悪くない選択だった。

 

「…アーガマの影に入るのならば許可する」

 

『了解、ありがとうございます』 

 

「よし、アーガマ180度回頭、降下に入る。総員重力下の体制に移っておけ。地球の重力は月やコロニーとは別物だ。きついぞ」

 

指示通りにアーガマが反転し、バリュートが開かれる。目の前にダブルゼータが回ってきて、バリュートを開くのが見えたと同時にブリッジの窓枠を耐熱シャッターが覆っていく。

艦内の各ブロックに異常がないことを確認した後はもう、為すべきことはない。

ブライトはキャプテンシートに肘を乗せ、祈るように両手を組んだ。

 

 

 

 

 




アニメ本編を見るとビーチャの初陣はこの大気圏付近の戦闘なんですね。いやしかし、さすがにそれは無いだろう、と思い、こちらでは機銃座で戦闘をさせました。設定上アーガマには対空レーザーはあっても機銃座は無いみたいなんですけど、スーパーロボット大戦なんかではあったりするのでまあ、この作品のアーガマにはあるんだな、ということにしておいて下さい(笑)。

それに機銃座がないとブライトさんの「左舷弾幕薄いぞ!」も聞けませんしね!
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