シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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「聞こえるか、プル!エルピー・プル!」

 

『ジュドー?ほんとにジュドーなの!?』

 

何度目かの呼びかけで、ようやくキュベレイMK‐Ⅱとの回線が繋がった。既にその機体の輪郭が大気との摩擦で赤く染まっている。

 

「そうだ、ジュドーだ!助けに来たぞ!」

 

『ジュドー!どんどん落ちてく…!怖い、怖いよ!』

 

ノイズだらけで音声が良くないが、泣き声なのは間違いなさそうだ。ジュドーは自分を落ち着かせるためにも、一つ深呼吸をする。

 

「大丈夫だ、俺が来たからにはもう安心だ。まずは落ち着いて、俺の機体の上にキュベレイを乗せるんだ」

 

『ジュドーの機体って…この飛行機…?』

 

キュベレイのカメラはきちんとウェイブライダーを捉えているらしい。ジュドーは頷く。

 

「そうだ。その上に乗れば一緒に地球に降りられるんだぞ!」

 

『ジュドーと一緒に…?』

 

「そうだ!お前のことは俺が必ず守ってやる!早くこっちに来い!」

 

『わかった!お兄ちゃん!』

 

ウェイブライダーの高度を下げつつ、キュベレイとの軸合わせを行う。高度を告げる計器類がやかましいが、ジュドーは自分でも驚く程に冷静だった。集中力の高まりが、機体と自分を一体化させているようだ。キュベレイがどこにいるのか、はっきりと感じることが出来る。だが、少女の方はそうは行かなかった。

 

『あっ…やっぱりダメ、動けない…!!』

 

パニックを通り越して絶望したかのようなか細い声を、プルが出した。

思った以上に推進系のダメージが大きいのかもしれない。逆噴射でブレーキもかけられないとなれば、状況は絶望的だ。プルを助けるにはこの角度でさらに加速してキュベレイの下に潜り込まなければならなくなるわけだが…さすがのゼータガンダムといえど、それが自殺行為なのはジュドーにもわかる。緊張と集中が、極限に達しようとしていた。

 

「大丈夫だ、大丈夫…!俺が……絶対に助けてやる!」

 

その言葉に根拠などはない。だが、言い切ったその時、ウェイブライダーの周囲にオレンジ色の光が広がった。それは摩擦熱のものとは明らかに異なる、柔らかな光だった。

光はキュベレイをも包み込むと降下の速度が大きく減退し、周囲の温度が急激に下がっていく。

 

「な、何だ…!?」

 

一瞬呆気にとられたジュドーだったが、すぐに正気に戻り、キュベレイの真下に回り込む。

 

「プル!今だ!」

 

『あ…うん!』

 

そのウェイブライダーのスタビライザーをまたぐようにして、キュベレイが乗り付けた。

 

『何だろう、この光…すごくあったかい…』

 

「ああ、そう…だな」

 

答えながら、ジュドーは激しい疲労感に襲われていた。間違いない、シャングリラ宙域で敵艦を追い払った時、そして真上にいるキュベレイに乘ってファンネルを使った時と同じ感覚だった。だとすれば、この状態を長く続けるとまた機体が動かなく可能性がある。ジュドーは異常に高まっていた集中を、無理矢理止めた。

ややあって、降下の速度と熱が戻って来る。

 

『また揺れだした…!どうすればいいの!』

 

さらなる疲労が襲ってきたが、それをプルに悟られるわけにはいかない。幸い接触回線になり音声はかなり良好だ。細かく指示をしても大丈夫だろう。

 

「キュベレイの姿勢を低くして出来るだけこの飛行機に密着させるんだ。それからはみ出している部分は何とかたためるか?」

 

『やってみる!』

 

機体が大型で両肩や背部バインダーなど本体から突出したユニットが多いキュベレイがきれいにウェイブライダーの上に収まるのはかなり難しいだろう。

だが、こちらもまだ大気圏突入のシークエンスが完全に終わっていないのだ。キュベレイが乗った分、重量がかさんで突入角度を再調整しなければならない。ジュドーはモニタ上の情報を参考にしつつ、機体の揺れ幅を自分の感覚で数値に直しながら修正をかけていく。

 

「よーし、これで何とか…」

 

機体が安定してきた。キュベレイは大きな両肩で貝のように機体を包み込んで姿勢を固定させたようだ。これなら耐熱の方も問題なさそうだ。

 

「プル、これでもう大丈夫だ。頑張ったな!」

 

『うん!ありがとう、ジュドー…早く会いたい!』

 

「ああ、地球に降りたら、な…。ん?プル、グレミーは…これはグレミーか?」

 

機体の反応を拾うことは出来なかったが、ジュドーはグレミーの存在を確かに、感じた。

 

『そうだね…うん、グレミーも地球に降りるんだ』

 

「そうか、ハマーンもグレミーも……リィナも…」

 

 

 

 

 降下速度が緩やかに落ち、機体がゆっくりと上昇角をとっていくのがわかると、視界が真っ青になっていく。無事に地球に降りることが出来たのだ。

コロニー育ちのジュドーには、水平線というものがわからない。ただ、眼下の海と天井の空は共に青いのに、区切れ目がはっきりとわかるのが不思議だった。どこまでも続くその圧倒的な二つの青に挟まれて、

 

「地球…か…」

 

そう、いうしかなかった。無意識のうちにその不思議な境界線に向けて、ジュドーはウェイブライダーを飛ばし続けた。

 

 

 

 

 




ちょっと今回は短いですが…2部はここまでです。
ここからは後半戦になりますね。
3部以降、少し更新のペースが遅くなるかもしれません。一人でやっているものでなかなか「ガンダムファクトチェック」が追いつかなかったりするんですよね(笑)。

テレビ埼玉でまたダブルゼータの再放送が始まるようですね。ご覧になれる地域の方は本作と比較していただくのも面白いかもしれません。
MGフルアーマーZZも発売されましたし、ダブルゼータ40周年が盛り上がることを祈っております。
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