シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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「しっかし、地球ってのは信じられない広さだな…」

 

ウェーブシューターのコクピットでジュドーはそう呟きながら、朝日を受けて輝き始めた砂の海を見回す。コロニー一基分以上の空間がまるで同じ景色だというこのスケール感にはもう、驚きを通り越して呆れるしかなかった。

夜明け前から仲間たちに先行して行っている偵察だったが、人工物一つ見当たらないこの状況では、どうやら重力下仕様に換装されたゼータガンダムのテスト飛行に終わりそうだ。

 

「さてと…これ以上先に行くと旧ジオンの勢力圏になってる可能性あり、か…。それじゃここいらで引き上げるとしますか」

 

この辺りまでなら部隊を進めても問題無さそうだとわかればとりあえずは十分だ。ジュドーは一つ欠伸をしてから、仲間たちとの合流ポイントへとウェーブシューターの機首を返した。

 

 

アウドムラと合流して補給を受けた後、ジュドーらはアーガマと別行動を取ることとなった。アクシズに占拠されたダカールを海と陸から挟撃するという作戦の一翼を任されたのだ。

アーガマはアウドムラと海から、一方でダブルゼータ、ゼータ、量産型百式改、ディジェの4機とメガライダーには新たに「ガンダムチーム」という部隊名が与えられて、陸側からダカールを目指すこととなった。

合流は二週間後に決まり、ジュドーらは食料と水をしっかり積み込んで出発した。作戦であるということはわかっていたが、しばらくは大人たちの目を気にせず過ごせる…。自分たちを解放してくれたのは何らかの意図があってのことだろうが、子供たちにはちょっとしたバカンスのような、気楽さがあるのは確かだった。

 

 

 メガライダーを中心に、3機のMSが見える所まで来ると、ジュドーはウェーブシューターの高度を大きく下げて、ゼータガンダムに変形させてから緩やかに着地させる。

大量の砂埃が巻き上がるので、あまり近づいてから降りると仲間を砂まみれにしてしまうのだ。そこからゼータを少し歩かせて、メガライダーの少し手前のところで片膝をつかせてコクピットから降りる。すると何やら一悶着あったらしく、エルが駆け寄って来た。

 

「あ、お帰りジュドー!」

 

「ああ、何だ?何かあったのかよ?」

 

「大ありよ。プルがメガライダーに籠って水を大量に使っちゃってさ」

 

「まさか…風呂か!?」

 

エルが溜め息交じりに頷く。

 

「そういうこと。全然いうこと聞かないし、どうしたものかねって」

 

「わ、悪い!すぐに止めさせる!」

 

ジュドーはメガライダーの方へ走る。

何ということだろう。本人の「強い希望」もあったが、一応保護観察の身であるにもかかわらず今回の別動隊にプルが加えられていたのはジュドーが面倒を見る、という条件があったればこそ、なのだ。保護者として、これは非常にまずい状況といえた。

 

「おいジュドー、ちょっと待て!」

 

「何だよ!」

 

ビーチャに呼び止められてそちらへ顔を向けると、ちょうどイーノもやって来る。

 

「イーノ、水の残量、どうだった?」

 

ビーチャがジュドーに聞かせるようにそういうと、イーノは両手をかざして首を横に振り、

 

「僕らがドライフルーツになるのも時間の問題かな」

 

こちらもジュドーの方を意識した様子でそう答えた。

 

「ああ…そ、そう…」

 

顔をひきつらせながら苦笑するジュドーの背中を、追いかけてきたエルが押す。

 

「あの子、ジュドーのいうことしか聞かないんだからさ、ほら、早く!」

 

「わかってるって…」

 

二人でメガライダーのハッチの前まで来ると、腕を組み爪先で絶えず足元を叩いているルーが立っている。大層苛立ちのご様子だ。まともに相手をするべきではないと瞬時に判断したジュドーは、

 

「ちょっとジュドー!あの子…」

 

と怒りをぶちまけそうになるルーを、

 

「わかった、悪かった、大体は聞いてる!」

 

そういって押しとどめつつ、ハッチを叩いた。

 

「コラ、プル!お前何やってんだよ!」

 

「あ!ジュドー!帰って来たの!」

 

水を撥ねたような音と軽い足音が聞こえて来る。

 

「帰って来たの、じゃない!みんなの大事な水なんだぞ!お前が一人で風呂になんかつかっちゃったらなあ…」

 

「だってこんな砂まみれなんだよ?お風呂に入らないときれいにならないじゃない。あ、じゃあジュドーも一緒に入ろうよ!二人で入ればさ、お水をムダにしないですむよ!」

 

「お、お前な…」

 

プルの言い分に呆れ半分、焦り半分でそんな曖昧な言葉しか返せずにいると、左右の女性たちからの鋭いプレッシャーを感じる。ジュドーはそんな二人を引っ張ると、さっと耳打ちをしてから、

 

「わかったプル、俺も風呂に入るからさ、開けてくれないか?」

 

「ほんと?わかった!」

 

そんな返事が聞こえた瞬間、さっとその場を離れる。プルがルーとエルに捕まって、その悲鳴が聞こえて来る頃にはもう、ジュドーはビーチャとイーノがいるところまで引き返していた。

 

「何とか捕獲には成功したみたいだな」

 

ビーチャに皮肉交じりにそういわれて溜め息混じりに頷くと、

 

「ジュドーと一緒に行動させた方が良かったね。でも、水はどうしよう…」

 

イーノがそういってくる。一応、付近にある集落の位置はいくつか把握していたが、あまり回り道をしているとアーガマとの合流に間に合わなくなる。

 

「しょうがない、俺が先行していくつか町をあたってみるよ。遅れをだすわけにはいかないからな…」

 

「そうだな。それしかないか…進路上で上手く補給できりゃいんだが…」

 

一応、今回の別行動ではリーダーに命じられているビーチャが最もらしいことをいって思案顔になった。

 

「あれ、そういうやモンドはどうしたんだ?」

 

ジュドーがいうと、

 

「ああ、あっちだよ」

 

イーノが四つん這いになった百式を指した。よく見ると百式の腹の下には、ハンモックが吊り下げられている。そこでイビキをかいているのが、モンドだった。

 

「上手いことやってるな。陰にもなるわけか」

 

「ああ、休むのも仕事のうちだからな。あいつは防砂の整備をしっかりやってくれたよ」

 

「そうか…」

 

本格的な砂漠地帯に入ってから数日、みんな出来ることをやって、ガンダムチーム」はその名の通り、チームとしての体を成してきた。だが、実際にはトンデモない異物が紛れ込んでいるのをいつの間にか忘れていた…。そこへ、風のような何かが走り去って行く。少し遅れて、

 

「ばーか、ばーか!ジュドーのばーか!」

 

というそのトンデモない異物の声が響く。

 

「ちょっと、プルを捕まえて!」

 

後ろから走って来るルーにそういわれて前を見ると、下着姿のプルの小さな背中がぴょんぴょんと跳ねてゼータガンダムのコクピットに吸い込まるようにして消える。

 

「あいつ、何やって…!」

 

慌てて走り出すがもう遅い。

 

『水をとってくればいいんでしょ!ジュドーのばーか!』

 

ゼータガンダムは大きな声でジュドーをなじった後で、全員に大量の砂を浴びせながら飛び去って行った。

 

 

 

 

少年は、生まれた時からこの砂漠で暮らしていた。季節ごとに発生する砂嵐も、昼と夜の激しい寒暖差も当然のことだと思っているし、MSが動く時の騒音も、軍事演習に巻き込まれて忙しくなるのにも慣れっこだった。

だから砂漠で見慣れないMSを見つけても、そう驚きはしなかったが、

 

「ねえちょっとそこの人!水、持ってない?」

 

そのコクピットの中から自分と同じくらいの女の子が出てきてそう、声をかけられた時にはさすがに自分の目と耳を疑った。

 

「何だ!?誰だよ、あんた!」

 

返事をすると、女の子があっという間に駆け寄ってくる。見たことのない肌の色、髪の色、そして瞳の色だった。

 

「私はエルピー・プル。あなたは?」

 

「お、俺はアマリ…」

 

女の子はさらに近寄って来て、遠慮なくアマリの顔を覗き込む。

 

「ふーん、アマリ、ね。こういう肌の人もいるんだ。何か、かっこいいね!」

 

「え、な、何だよ…」

 

突然のことに少年はすっかり慌ててしまうが、そんな様子を少女はにこにこしながら眺めている。

 

「あははっ!アマリ、アマリ!ねえ、お水はどこ?」

 

「水は…町にいけばあるけど…君は…何者なんだ?」

 

「君じゃなくて、エルピー・プル!プルでいいよ!」

 

「あ、ああ、ごめん、プル…」

 

何だかすっかりペースを奪われてしまっている。だが自分は誇り高い砂漠の民だ。こんな女の子になめられてはいけない。

 

「いや、だからプル、君は何者なんだ!旅の人か?MSを使うってことはジオンの人たちの知り合いか?」

 

最近、町には新たなジオンの人たちがやってきた。もしかするとあの人たちの仲間なの

かもしれない。

 

「ジオンの人!?アマリの町にはジオンの人がいるの!?」

 

「ああ、そうだよ。ジオンの人たちはな、白人たちから町を守ってるすごい人たちなんだ。実はうちの父ちゃんもジオンでショーイをやってるんだぜ!MSだって動かせんるんだからな!プルが乗って来たあんな白くて細いMSなんて目じゃないんだぞ!」

 

アマリは自慢気にそういってやる。ここまでいってやればこの騒がしい女の子も大人しくなるだろう。

 

「ふーん、ジオンの人…ね。うん、わかった!じゃあ町に連れて行ってよ、アマリ!」

 

そういわれた時にはもう、アマリの腕はプルに掴まれている。

 

「え?ちょっと、何だよ、プル!」

 

「プルプルプルー!」

 

どっちに行けばいいかわからないはずの女の子に引っ張られ、アマリはすっかり混乱してしまった。もしかして町の外の女の子は、みんなこんな風にメチャクチャなのだろうか?

だが…それと同時に、こうして女の子に振り回されるのは何だか悪くない…そんな風に思う自分に少年は気付き、掴まれた腕の感触も心地よいと思うことを、我ながら不思議に思った。

 

 

 

 

 




GWの最後に何とか更新できました。
また明日からお仕事頑張りましょう…。

ずっと宇宙で暮らしていた人が地球に来たらどう思うんでしょうねえ?
個人的にはファーストガンダムで最も好きなエピソード「時間よ、止まれ」のクワラン曹長たちの様子がリアルで好きです。
なんやかんやでコロニーって人類が住むためだけに作られた環境なので、地球より住みやすいんじゃないかと思うんですよね。
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