シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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 砂漠の夜が明ける。

 

 基地内に寝泊まりしているロンメルは、朝日が地平線をオレンジ色に染める頃に目を覚ます。軍服に着替えて外に出ると、不寝番にねぎらいの言葉をかけ、軽く周囲を歩いてからデスクに戻って報告事項に目を通す。しばらくして副官のカラハンから呼び出しがかかり、全隊員の前で朝の訓示を行う…ここまでは、この8年毎日続けてきたいつもの朝と同じだ。

 

だが、ここからは、今日からはそれが変わる。

 

「ロンメル中佐、そして麾下の方々、世話になりました。我々はこれよりガルダーヤ付近に展開しているアフリカ解放戦線と青の部隊の同志たちに決起を促しに参ります。また、ダカールでお会いしましょう!」

 

この客人たちの呼び掛けに応じたロンメル隊は、ダカールへ進軍するのだ。

隊員たちの間に静かな高揚感が広がっているが、同時に一抹の不安、戸惑いのような気配が併せて感じられるのをロンメルは見逃していなかった。それは、期せずして手に入れてしまったこの安定、変わらない砂漠での暮らしへの未練に他ならない。

 

血気盛んであった若者たちが考えて行動するようになった。生活のため町の者たちと上手くやっていこうと努力し、中には妻帯した者もいる。それらは決して悪いことではない。8年という歳月の為せる技、というべきだろう。だがそれが、軍人としてあるまじき怠惰と弱気抱かせる原因となった。いざという時に任務と命令を忠実に守り、時には己の命を捧げることも厭わない…そういう、本来のジオンの軍人たるべき姿を取り戻さなければならない。

 

「グレミー大尉、ラカン大尉、アリアス中尉、解放戦線のガデブ・ヤシンには話を通してある。彼らもきっと共に立ってくれるだろう」

 

「ありがとうございます、中佐。このグレミー・トト、ロンメル隊の変わらぬ闘志と忠誠を目のあたりにし、感動いたしました。このこと、しかとハマーン様に報告致します!」

 

グレミーとその後ろに控えるラカン、アリアスが敬礼を取ると、兵たちの中から歓喜の声が溢れる。事はそう単純ではないが、女々しい感情は一旦これで追い払うことが出来たようだ。なかなか上手いことをいう若僧だ。

 

「うむ、この8年、さしたる功も上げられなかったのが悔やまれるが…必ずやダカールに馳せ参じるとお伝えいただこう」

 

「了解です、中佐。では我々はこれで!」

 

「うむ、貴官らの健闘を祈る!」

 

3人の男たちが再び敬礼をとって去っていく。この興奮が冷めやらぬうちに全ての惰弱な思いを払拭すべく、ロンメルはたたみかける。

 

「さあ、皆、銃を取れ!MSを起こせ!雌伏の時は終わるのだ!決起に備えよ!ジーク・ジオン!」

 

短く、高らかに宣言して拳を振り上げると、それに続く隊員たちの雄たけびが響き渡った。上手く士気を上げることが出来たと思いながら彼らの顔を眺めていく…が、そこで最近士官に登用した一人の男がいないことに気づく。

 

「…うん?カラハン、ニキ少尉はどうした?」

 

そう、傍らの副官に尋ねた時だった。

 

「なっ!?プル、エルピー・プルか!?お前、なんでこんなところに…!」

 

「あははっ!やっぱりグレミーだった!グレミーこそこんなところで何やってるのよ!」

 

見送ったはずのアクシズの士官たちの方で何か騒ぎが起きている。そして、そこから抜け出て来るようにして、件の少尉が現れた。

 

「ロ、ロンメル中佐、遅れて申し訳ありません!その、出がけに息子があの少女を連れて来まして…!」

 

「何だ、どういうことだ?わかるように話せ!」

 

「そ、それが自分にも…」

 

と、ニキ少尉が口ごもったところへ、グレミーらが引き返してきた。

 

「ロンメル中佐!あの、お見送りいただいた手前恐縮なのですが…その、この者を預かってはいただけないでしょうか?」

 

グレミーが抱えるようにして連れてきた少女が大きな瞳をロンメルに向けてパチパチと瞬かせている。ロンメルが無言でいると、グレミーが続けた。

 

「その…信じていただくのは難しいかもしれませんがこの者はMSのパイロットなのです。しかも、ニュータイプの素質を持っておりまして…」

 

「ニュー…タイプ」

 

ジオン思想の信奉者であれば、その言葉が指す「人の革新」については理解もするし、信じてもいる。だが、それがパイロットとして高い能力を持っている、などというのはまた別の話だとロンメルは思っている。子供のエースパイロットが戦場を駆け回るなどというのはSFムービーの中だけにしてもらいたい。

 

「この子をダカールまで連れて行けば手柄にもなりましょう。そういう子供なのです。これは…」

 

「子守りで点数を稼げ、というのか?」

 

正直、あまり愉快な話ではない。

 

「どうか、ご理解下さい。ダカールに行けば私の申し上げていることが真実だと、わかっていただけるはずです…」

 

グレミーの言葉に嘘があるとも思えない。あまりに突飛な話ではあるが、何も手土産がないよりはマシ、といったところだろうか。

 

「わかった…。そうまでいうのであればこの子供は預かろう」

 

「おじさん!子供じゃないよ、あたしはプル!エルピー・プル!わかった?」

 

「なっ…」

 

隊員がどよめいているのがわかる。慌ててグレミーが、

 

「プル!こちらはロンメル中佐だ!無礼な口を利くんじゃない!」

そんな風にプルを叱ったが、隊員たちが見ている手前、これは面子に関わる。子供のいうこととはいえ、これで収めるわけにもいかないか…と思っていたところへ、脇から出て来た少年が、その少女の頭をたたいた。

 

「こらプル!お前謝れ!ロンメル中佐はジオンの英雄なんだぞ!」

 

「何すんのよアマリ!」

 

どうやらこの小さな代行者のおかげで大人げないことはしなくて済みそうだ、と思っていると、その少年が進み出てきてロンメルに一端の敬礼をした。そして、

 

「ロンメル中佐!僕はこの子が乗って来たMSを確認しました!」

 

「おい、アマリ…!」

 

父親であるニキが止めに入ろうとするのを、ロンメルが制する。

 

「ほう、MSだと…?」

 

そういって横目でグレミーの方を見やる。

 

「プルはエゥーゴに保護されて地球に降りてきたはず…奴らのMSを奪取して逃げてきたのかもしれません…」

 

「逃げて来たんじゃないよ!ゼータで水を探しに来たの!」

 

「ゼータだと?ゼータガンダムか!」

 

「アーガマが追って来たのか!?」

 

グレミーの後ろで黙っていたラカンとアリアスが会話に入って来た。

 

「アーガマは来てないよ!ガンダムチームが来てるだけ!」

 

「ガンダム…」

 

「チーム…だと?」

 

一瞬の間の後でラカンとアリアスがやっとそういった。他の大人たちはその「ガンダムチーム」という単語に理解が追いつかず、言葉を失っている。

 

「そうだよ、ガンダムチームだよ!プルプルプルー!」

 

プルがそういって走り出した。全く要領を得ない少女だが…とにかく、この少女と、少女が乗って来たというエゥーゴのMSを捕捉しておくのは、悪くない選択のようだ。

 

「あの子供を捕まえて置け。それからニキの息子、アマリといったか?」

 

「は、はい!」

 

「そのMSのある場所はわかるのか?」

 

「はい、砂丘の手前でした!案内出来ます!」

 

元気に答える少年に、ロンメルは頷く。

 

「よし。ニキ、貴様はいい息子を持ったな。偵察隊をつけてやる。そのMSを捕獲してこい!行け!」

 

「はっ!了解です!」

 

MSの方へ向かう親子に、追って数人を遣ったが…一つ、疑問が残る。

 

「ガンダムチームというのは…どう思う?」

 

脇のカラハンにいうと、

 

「あの子供はアーガマではなくガンダムチーム、といっておりました。その言葉を信じるのであれば別動隊のようなものかもしれません…」

 

「うむ、考えられる話だな。フフ…ならばお誂え向き、ということか」

 

ロンメルはそこでニヤリと笑ってグレミーらを見る。

 

「中佐、まさかロンメル隊で戦おうというのですか!?エゥーゴの新型は油断なりません!そういうことであれば我らもここに残り、加勢いたします!」

 

「いや、これこそ天啓というものだ。我々の力だけで別動隊の首を上げ、ミネバ様の元へ参りたい。貴官らは自分たちの任務を全うしてくれ」

 

「いえ、しかし…!」

 

「くどいぞ!いかに相手が新型のMSといえど、ロンメル隊がこの砂漠で後れを取ることは無い!」

 

後方にいる二人がグレミーを抑え、敬礼を取った。そして、

 

「了解です、中佐。ロンメル隊の必勝、疑うべくもありません!」

ラカンがそういうとグレミーも止む無く、という風に敬礼をとり、

 

「…出過ぎたことを申しました。では…我々は任務に戻ります。プルを、よろしくお願いします」

 

そう言い残して、3人は再び去っていく。

 

「よろしいのですか、中佐?やはり最新のMSを知る彼らがいた方が良かったのでは…」

 

カラハンの言葉を、ロンメルは一笑に付す。

 

「別動隊、ということはそもそも大した数ではないだろう。MSはせいぜい二個小隊6機といったところか…それにこれからそのうちの1機を鹵獲しようというのだ。何ほどのことがあるというのだ…!」

 

知らず、力の入ったその言葉にカラハンは押し黙る。「ガンダムチーム」などというからにはガンダムタイプのMSが複数いるのだろう。ジオンにとっては忌まわしいその名の機体は、だが、それ故に撃破出来た時のインパクトは大きい。ロンメル隊の名は、かつてのビッター隊のようにアフリカ中、いや地球に残る全てのジオンの部隊に響き渡ることだろう。ロンメル自身の心のも巣くっていた軍人らしからぬ感傷は、不意に目の前にぶら下げられた栄達の種を前に消え去っていた。

 

「MSが消えたとわかれば必ず後詰めの連中が調査に来るはずだ。砂丘の手前か…。地雷原は生きているな?」

 

「はっ、先だって訓練の際に確認しております」

 

「よし…MSは全機出して配置に付けておけ。私も出る」

 

「はっ!了解です!」

 

ロンメルは頷くと颯爽とマントを翻し、この日のために欠かさず整備をしてきた愛機、ビームキャノンを構えた赤いドワッジの元へと向かった。

 

 

 

 

 




地球に置き去りにされたジオンの人たちの悲哀というのは個人的に気になるところなんですよね。
本当はもっと長く彼らの暮らしぶりなんかを書いてみたいという気もしたのですが、あまりもテンポが悪くなるので(笑)、この辺でガンダムチームとの戦闘にしたい思います。
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