シン訳 機動戦士ガンダムZZ   作:溜め無しサマソ

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「艦長、コールサイン、ゼータガンダムからです!」

 

ブリッジクルーのトーレスの声が響き、ちょうどその場でファ・ユイリィをなだめていたブライトは、ファの肩を叩いてからキャプテンシートに座る。

 

「つなげ!」

 

ブライトの声に応じて回線が開かれると、ゼータガンダムのコクピットがブリッジのメインモニタに映し出される。

 

「カミーユ!お前、自分がどんな状態かわかっているのか!何故こんな勝手な真似をした!」

 

「カミーユ!」

 

ブライトとファの、カミーユへ呼び掛ける声がほぼ同時だった。だが、

 

『アーガマ、聞こえてるみたいね?カミーユさんは調子が悪いみたいだからさ、俺のいうことを聞いてくれないか?アクシズのMSに追われてるんだ!』

 

答えたのはパイロットシートの奥から顔を出してきた少年だった。

 

「な、誰だお前は!」

 

『俺?俺のことなんかいいからさ、とにかくすぐにダミー隕石をたくさん出して姿をくらまして、それから俺たちの後ろから来るアクシズのMSに攻撃してくれ!いや、でも当てないように!当てないように攻撃してくれよ!』

 

ブライトを始め、アーガマのブリッジクルーは混乱した。ファがキャプテンシートの前に出てくる。

 

「カミーユ!誰なのその子は!?あなたは大丈夫なの!?」

 

『ファ…大丈夫だよ。ブライト艦長、この、ジュドーのいうことを聞いてくれませんか?アクシズのMSが追ってきているというのは本当です。僕のせいで…』

 

ブライトは小さく舌打ちをした。どうやらあまり時間が無いらしい。カミーユのいうことは本当だろう。

 

「…ダミー隕石放出!総員第一戦闘配置、ゼータの後方へ索敵を集中しろ!」

 

『さっすがあ!話が早いっ!』

 

「いいんですか、艦長?」

 

そのトーレスの問い掛けはブリッジクルーの総意だろう。ブライトは一つ溜息をついてから、

 

「カミーユが信じろといっているんだ。それに賭けるしかあるまい」

 

そう言い切った。クルーたちはそれで納得したらしい。先程のブライトの命令が着々と実行に移される。

ブライトはもう一度溜息をつき、キャプテンシートに頬杖をついた。ゼータのコクピットにいる少年は一体何者なのか?皆目検討がつかなかったが、カミーユの言葉だけではなく、自分自身もあの少年が怪しい存在には見えなかった。ニュータイプでもなんでもない自分だが、くぐり抜けてきた修羅場の数と、そのおかげで身についてきた直感は頼むところとしている。やはりここは、賭けるしかない。

 

 

 ガザCのスラスターの強弱に合わせて、ガルスJのコクピットは揺れに揺れた。リニアシートは大抵の揺れなどは気にならない程度に緩和してくれるのだが、さすがにこんな運用は想定外らしく、マシュマーはこみ上げてくる胃液を必死に堪えながら、各種カメラを見回す。気分は最悪だったが、このチャンスは何としても、ものにしなければならない。

 

『マシュマー様、ゼータはこの先の暗礁宙域に向かうようです』

 

先行する僚機から通信が入る。

 

「何、暗礁宙域だと…ふふふ、そうか!やはりアーガマだな!この宙域にアーガマがいるに違いない!」

 

そう、息まいている間にMS隊は暗礁宙域に入る。

 

『なるほど、これを隠れ蓑に…しかしすごい密度の隕石やデブリです。少々危険ですね』

 

「うむ、この速度で大質量の物体にぶつかればただでは済まんぞ。全機変形は解除、減速だ。ゼータの向かった方向は把握しているな?」

 

『はい、押さえております。しかし、あの、マシュマー様…』

 

「何だ?」

 

『アーガマにはシャア・アズナブルがいたという話ですが…』

 

マシュマーはそこでこのパイロットのことを思い出す。

 

「今は余計なことを考えるな、グレミー・トト。確かにアーガマにはシャア大佐がいた。だが大佐はハマーン様と道を違え、ハマーン様の手で討たれたのだ。もうアーガマにシャア大佐はいない」

 

グレミー・トト、マシュマーがエンドラを任された直後、MSのパイロット候補生として

配属された新任士官だ。サイド3の名門トト家の御曹司という鳴り物入りの新人で、艦内で何度か会った。いかにもお坊ちゃんらしい線の細い優男、という印象がある。

 

『ですが、同志はいるかもしれません。エゥーゴにはかつてジオンに所属していた者も多く参加しているとか…。そういった者たちをこちらへ引き入れることはできないでしょうか?』

 

マシュマーはガルスJの動きを止める。当然、僚機のガザC3機も動きを止めた。ガルスJはゆっくりと、グレミー機を見据える。

 

「うむ、それはなかなかに面白い考えだが…いいかグレミー、我らはミネバ様、ハマーン様の意に従うアクシズの兵士だ。たとえ親兄弟であっても、その意を違えるものとは戦わねばならん。残念だが、今アーガマにいる者たちは我らの呼びかけに応じなかった者たち…つまりはハマーン様の意に添わぬ者たちなのだ。ここで、戦うことを躊躇ってはならん」

 

『マシュマー様…』

 

「かつての同胞とも刃を交えなければならないとは…我らの選んだ道はあまりに苛烈だ。しかもその割に報われることも少なかろう…。だが私は、この道を後悔したことなど一度たりとも無いぞ。新たなジオンの理想のため、ハマーン様のためならば、いつでもこの身命を投げ打つ覚悟は出来ている!」

 

すぐに、青年たちの歓声がガルスJのコクピットに響き渡る。

 

『我らも同じ思いです!』

『マシュマー様!』

『マシュマー様!』

 

若き彼らの誠心は、マシュマーの胸を打った。

 

「うむ、私は何と素晴らしい部下を持ったのだ…さあ、もう迷うなアクシズの騎士たちよ!行くぞ!共にゼータガンダムとアーガマを討つのだ!」

 

さらなる雄叫を行進曲として、マシュマーは恍惚として機体を前へ進めた…が、その時、すぐ後ろから強烈な光が上がった。振り向くとガザCが一機、爆炎に包まれている。大口径のビーム砲からと思われる連続射撃が、唐突に始まった。

 

「なんと…!これは艦砲射撃か!いかん、散開だ!」

 

『うわっ!マシュマー様っ‼』

 

さらに一機が撃墜される。マシュマーは周囲を見渡したが、アーガマらしき艦影は見当たらない。

 

「これだけの隕石群が何故盾にならんのだ…む、そうか、ダミー隕石か!」

 

回避運動を取りながらよく見てみると、射線上の隕石は風船のようにあっけなく破裂している。

 

「ダミー隕石で姿をくらましながら攻撃とは…卑怯な!」

 

卑怯、などといっても、この失態はマシュマー自身が足を止めて部下たちに説教をしたことで相手に時間を与えてしまったことに起因する。マシュマーという男はそういう所が全く抜けているわけだが、それはそれで彼の魅力の一つになっているのも事実で、

 

『マシュマー様、これでは戦えません。私が前に出ますので、その隙に離脱して下さい!』

 

そんな言葉が自然と部下の口から出てくる。

 

「何をいうグレミー!お前こそ逃げるのだ!私はせめて一太刀、アーガマに浴びせてやらなければ死んでも死に切れん!」

 

『マシュマー様がそのように自暴自棄になってどうするのですか!エンドラを呼んで来て下さればいいのです!それまで持ちこたえてみせます!』

 

「む、しかし!」

 

などと問答していると、グレミーのガザCが本物の隕石に接触、その隕石にビームが直撃してあっという間にグレミー機はセンサー半径の外に吹き飛ばされていった。

 

「あっ!グレミー!」

 

とかけた声が届いたかどうか…残念だが、あの爆発ではおそらく死んだだろう。そこでマシュマーは、ようやく冷静になった。確かに、グレミーのいう通りなのだ。

 

「くっ!アーガマめ…!待っていろ、エンドラと合流して必ず叩き潰してくれる!」

 

そういって、隕石にぶつからないように少しずつ、暗礁地域を後にしていった。

 

 

 

「ええい何てことだあの小僧、一体どこまで飛ばされやがった!」

 

ゲモン・バジャックは、自分で放り投げた相手を探しながら、そんな風に投げられた相手の悪態を突いていた。彼はナチュラルにそういう発想に至る無茶苦茶な思考の持ち主ではあるのだが、一応、放り投げた相手…つまりジュドーのことを心配してかれこれ小一時間、プチ・モビルスーツの捜索をしていた。

 

「全く、このままじゃ俺は犯罪者だ。あのプチモビ、酸素はまだ大丈夫だろうが…まさか隕石にぶつかったりしてないだろうな!?…くそっ!あのクソガキめ…!」

 

ジャンク屋の組合長をやっているだけあり、宇宙空間をさまよう物体を捌くのはお手の物だ。命綱を延長して可能性のある方面を順に捜索していると、不意に強力な通信電波をキャッチした。

 

「何だこれは…一般のもんじゃないな」

 

コロニー公社からの警告だろうか?無視するわけにもいかないので回線を合わせてみたが、反応がない。

 

「ちっ、何だってんだ…ああ、どこ行きやがったあのガキー!」

 

『ガキっていうのはプチモビに乗ってた子供のこと?』

 

「そうだ!違法操業のクソ生意気なクソガキだ…って、何!?」

 

先ほどの強力な回線から入って来た通信だ。

 

『悪かったね、クソガキでさ』

 

その声と共に颯爽と現れたMSの姿に、ゲモンは言葉を失った。

それはゼータガンダム…そう、見紛う事なきエゥーゴの象徴たるMSであった。

 

「な、何だ、どういうことだ?あのガキが…まさかゼータガンダムに乗っているってのか!?」

 

『ああ、まあ色々あってさ。で、ゲモンさん、俺を探してたんだろ?ちょうどいいからこのままシャングリラに入れてくれよ』

 

ゲモンの状態は混乱と呼ぶに十分であった。

 

「お前、一体何をいって…」

 

『ジャンク屋組合の組合長さんなんだろ?お偉いさんに頼んでくれよ。それとも何か?俺をぶん投げてあやうく宇宙漂流者にしかけたってこと、バラそうか?』

 

「お、大人を脅迫しようってのか!」

 

『違うよ、取引だよ、取引。ゼータガンダムとアーガマをシャングリラに入れてくれ。ジオンの人たちに追われてるんだ。そうだ、ついでにジャンク山にアーガマを匿わせてくれよ』

 

「何、アーガマだと!?」

 

『そうだよ。ほら』

 

そういってゼータガンダムがゲゼの前から身を翻すと、すぐそこに、白亜の巨艦が迫っていた。

 

『ね?アーガマでしょ?ほら、頼むよゲモンさん。…ってちょっと聞いてる?ゲモンさん!』

 

今度は完全に、ゲモンは言葉を失っていた。

 

 

 

 

 




連休で少し書き溜めが出来ましたので投稿です。
Gジェネエターナルに手を出してみました。ストーリーは劇場版Zを採用していて、そこからのZZなんで、カミーユが突然いなくなってますね(笑)。
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