シャドウ様 in 呪術廻戦   作:よもつ太郎

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実地試験

 そういえば、虎杖君はやっぱり死刑を免れたらしい。しかも、高専に入ることになるという王道展開をしっかり踏襲している。やっぱり主人公は違うなあ。

 

「では、4人目の1年生を迎えに行こうか」

 

「夏油先生、1年が4人って少なすぎません?」

 

 虎杖君の心配も分かる。やはりオーディエンスの存在は欠かせないからね。闇堕ち系主人公としても、気掛かりなところなのだろう。

 

「これでも少し多めなくらいだよ。呪術師はそれだけ珍しい。だから、私は皆が呪術師になるのが嬉しいんだ」

 

 夏油先生、それは虎杖君の望む回答ではないんだなあ。でも大丈夫、僕が代わりに答えよう。

 

「心配しなくても、僕たちがいる。先輩たちもいるし、先生たちもいる」

 

「はは、いいこというじゃん影野」

 

 嬉しそうな虎杖君。これぞ君の知りたかったことだろう? ちゃんとオーディエンスはいるぞ。君の闇堕ちで悲しんだり驚いたりしてくれる人たちはちゃんといる。だから、安心して闇堕ちするんだ。

 何気なく夏油先生の顔を見ると、優しそうに微笑んでいた。先生の鑑だな。五条先生とは月とすっぽんすぎるよ。

 

 時間を見ながら、皆で歩き出す。4人目とやらに会いに行くとしよう。ちゃんとモブ挨拶も用意した。

 

「そういえば、制服の着心地はどうかな」

 

「めちゃいいっす! アレンジも入ってるし」

 

 虎杖君の制服が早速できている。いくつかあるデザインの中から選んだらしい。主人公っぽいアクセントが効いてる。ちなみに、もちろん僕はノーアレンジだ。作画コストを抑えモブに徹する。

 

「今更ですけど、なんで原宿なんですか?」

 

「生徒の希望でね。東京は初めてらしい」

 

 へえ。東京といえば原宿なのかな?

 

「あ、いたよ」

 

 夏油先生が示す先には、明らかにヤバい女が。

 

「私は?」

 

 スカウトに声かけてる……。あれも逆ナンってやつなんだろうか。すごいなあ。完全にネームドだ。

 

「少し待っててね」

 

 夏油先生はちゃんとしてるなあ。

 

「こちらは釘崎野薔薇さん。今日から同級生だよ」

 

「喜べ男子、紅一点だぞ」

 

 食らえ! 僕のモブ挨拶!

 

「初めまして、影野実です。これから、よろしくお願いします」

 

 どうだ! 他人行儀すぎてとっつきづらい上に、無駄に長い! それでいて情報はない。一切記憶に残らないッ!!

 

「……」

 

 釘崎野さんに凝視されている。3秒後には僕の名前など忘れているだろう。

 

 (なにコイツ。同級生のくせに仰々しすぎ。どうせまともに人間関係構築したことなくて距離感図れないボッチ。教室の端で自分のことしか考えてないクソね。逆に印象的だわ)

 

「虎杖悠仁。仙台から」

 

「伏黒恵」

 

 溜め息をつく釘崎野さん。

 

「私ってつくづく環境に恵まれないのね」

 

 よしッ!!

 

「自己紹介も終わったところで、これから実地試験をするよ」

 

「実地試験? って何すか?」

 

「簡単に言えばちょっとした訓練だよ。虎杖君はもちろん、釘崎野さんも東京の呪いは初めてだからね。体験しておいた方がいい」

 

 呪いは基本、人口が多い方が強いからね。田舎より都会の方が厄介だ。

 

「それに何故か、田舎には最近呪いが出にくくなっているという話もある」

 

 田舎ならノーマークなので呪霊狩り放題だ。そう思っていたら、やり過ぎていたらしい。

 

「あと、試験が終われば東京観光する予定だから、気合い入れてね」

 

「マジ!?」「TDL!!」「中華街!!」

 

 

 

$$$

 

 

 

 そうしてたどり着いたのは、明らかに"居る"建物。

 

「虎杖君、これを持っていきな」

 

 呪具を渡す夏油先生。

 

「まだきちんと呪力は扱えないだろうから、この武器を使うといい」

 

「うす」

 

 そんなこんなで、虎杖君と釘崎野さんは建物の中へ入っていった。

 

「本当に大丈夫ですかね」

 

「心配しなくても大丈夫だよ。2人の様子は今も見張っているから。何かあれば術者の私は分かる」

 

「うんうん。心配ないって」

 

 伏黒君は、クール系に見せかけて実は熱血なサブキャラだね。日曜の朝で言えば、青だ。

 でも、フラグってこともあるよね。

 

「夏油先生って、五条先生と最強コンビって言われてるんですよね?」

 

「まあ、そうだね」

 

「先生たちに匹敵するくらい強い人って他に居るんですか?」

 

「居ない……と言いたいところだけど、心当たりが2人居る」

 

「1人は、今虎杖君の中に居る両面宿儺。彼は史上最強の術師と名高い」

 

 へえ。さっすが闇堕ち系主人公。カタログからして最強。

 

「もう1人は、昔の話なんだけどね。まだ弱かった私たちは、ある人に助けられた。結局、ちゃんとした名前を聞くことはできなかったから、素性は分からないんだけどね」

 

 なぬッ!! 何やら分かっている奴が居るじゃないか。実力を見せつけ、名乗ることもなく颯爽と去っていく……。くぅ~、これぞ陰の実力者って感じだ。

 

 とにかく、今確認したかったのはシャドウへの認識だ。現在ノーマーク。五条先生には目付けられた気がするけど……。ここから、最初の山場だ。何者なんだ!? となったところで、圧倒的な実力を見せつける。次の見せ場が楽しみだなあ。

 

 あれ? すぐ見せ場来るかも……。

 

 音も無く現れる怪しげな青年。整えられた髪型と、清潔感のある身だしなみ。これからデートにでも行くかのような格好に不釣り合いの威圧感のある呪力。

 

「どうも。初めまして。私はオロチと呼ばれています」

 

「皆、逃げてッ!!」

 

 夏油先生が叫ぶ。建物の中の呪力を探ると、どうやら2人は無事呪霊を祓ったらしい。

 すぐに走り出す伏黒君。僕もみっともない走り方で逃げる。中の2人も、状況を把握したようで逃げ出す。バラバラになったら戻ろうっと。

 

「そう警戒しないでください。少し訊きたいことがあるだけですから」

 

 大きな龍や、禍々しい蛙がオロチをじっと見ている。呪霊操術によって使役された呪霊である。

 

「貴方は、シャドウについて知っていますか?」

 

「知っていたとて、お前に話す義理はない」

 

「うーむ。困りましたね。貴方も知らないとは」

 

 ここしかないッ!!

 

「我について知るも知らぬも等しく知らぬ。何者にも我を理解すること、能わず」

 

「噂をすれば……」

 

「お前がシャドウか」

 

 コツ、コツ、と足音を立ててゆっくり歩く。着実に1歩、されど慎重に。隙はなく、この場を支配するオーラを纏う。

 

「これは……想像以上ですね。私の計画に支障をきたすかも知れない」

 

「シャドウ、お前の目的は何だ」

 

「我はただ、陰に潜み、陰を狩るのみ。それだけのためにある」

 

 僕の返答を聞き、面白そうにオロチが話し始める。

 

「では、呪術師の味方ではないと。では、私と手を組む気はありませんか? 損はさせません。そう、例えば世界の真実には興味ありませんか」

 

「断る。世界の真実など、貴様に教えられるまでもない」

 

「随分と自信家のようですね。だが、貴方が知るはずはない」

 

「どうかな?」

 

 そんなん知らないよ。だって、世界の真実とかそもそもないでしょ。オロチさんも結構拗らせてるなあ。それっぽいこと言えばいいんでしょ。

 

「塗り替えられた歴史の裏に隠れているのは、もはや忘れ去られた真実。今のこの世界を読み解けば分かることだ」

 

「何だと……? 貴様……どこまで知っている」

 

 名演技だな……オロチさん。

 何も知らないよ。

 

「さあな。しかし……貴様よりは知っている」

 

 剣先を向けて決めポーズ。良い感じじゃない?

 

「なるほど……シャドウ。覚えておこう。今はな」

 

 瞬時に姿を消すオロチ。

 いいねそれ。僕もやろっと。

 

 

 

$$$

 

 

 

 夏油傑は、未知の術師2人を前にして、ただ見ていることしかできなかった。戦うことはおろか、会話を理解することすらかなわなかった。

 彼の心に、ほんの少しだけ、よく見ないと分からないほど小さい穴が空いた。

 

 "最強のくせに、何もできなかったの?"

 

 本人でも気づかない内に、心のどこかに沈んで溶けた。

 

 

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