オルタと巡る日本全国、食街道!   作:絹ごしタマゴ

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オルタに過大な夢をみています。許して。


第一話 路地裏

 

 少女は走っていた。

 

 体育の授業を怠けていたことを神様にごめんなさいと念じながら走っていた。

 運動神経は悪くないものの、出不精で面倒臭がり屋な性格によって万年運動不足の体に鞭を打ち、痛いくらいに稼働する心臓と肺、そして悲鳴を上げる足をなんとか動かして走っていた。

 

「grrrr……!!!!!」

 

 後ろを不安げに時おり振り向く少女。その目線の先で唸る化け物。スマホのゲーム画面で何度も見たエネミー……グールから必死に少女は逃げ惑っていた。

 

 

 

 

 半泣きでひたすらに走っていた。

 

 混乱する頭を落ち着けと宥めながら必死に考える。

 

 なに、なにが起こっている。ちょっとショートカットで入り組んだ路地裏に入ったらエネミーと遭遇だなんて、訳も意味も分からない。

だってここはFGOが存在している日本だけれど、FGOの世界でもなんでもない。ゲームでそれを見てる側だ。

 

 そりゃ、オギャアオギャアと産声を上げたときにから、何のために転生したのかと悩んだ夜もあったけど、これは違うって…!

 転生した理由も分からなければ、世界を救うような使命を課されたわけでもない。ただ「勉学において強くてニューゲームができる」という小狡い特権を胸にのんびりと平和な学生生活を謳歌していただけなのに、なのになんでこんな脈絡なく「非日常」そのもののエネミーに追い回されてるわけ…!?

 少年漫画の主人公の学校は片っ端から調べたけどフィクションとして存在してた、かつて遊んでたゲームもフィクションだった。だから、本当にたまたまこの世界にやってきただけだと思ってたのに…!!

 

 走って走って走って、漸く、ふと違和感に気が付く。いくら走れどもなぜか路地裏から出られない。いや、出口が、ない。冷や汗が流れた。

一体本当にどうなっているんだ。

 

 後ろのグールとはそれなりに距離があるが、出口が無ければ消耗戦。こちらは既に限界を訴えかける心肺機能と震える足。もう走っていられる時間は幾ばくもないだろう。こうなれば、捕まるまでそう遅くない。

 

 

 

「っぁ」

 

 避け損ねた空き缶に躓いて足を縺れるように倒れ込む。その拍子、スマホがガシャンと音を立てて落ちた。

 

 グールはどんどん迫ってきてるのにも関わらず、足が、体が、鉛のように重たく動かない。震える足を呵責するように立ち上がろうと試みるが、一度止まった足はもう動きそうになかった。

 

 

「(死にたくない、死にたくないわ、だって今日は限定みたらし団子食べに行くつもりだし、週末は少し遠くまで食べ歩きに行く予定なのに…!!映画の予定だってあるわ…!前売りチケットもまだ使い切れてないのに…!!!!)」

 

 それに、今でこそ肉体に順応しているが、子供らしくなかった幼年期も愛し慈しんでくれた家族に、まだちっとも孝行できてない。

 

 肺が軋むように痛んで息をすることも儘ならない。グールとの間にあったリードは既に大きく減り、あともう暫くすれば捕まるだろうことは容易に想像ができた。

荒い息を押し潰すように無理やり静めながら、落ちたスマホを握りしめてズルズルと這うように進む。

 

 

「はっ…は、まだ、しにたくない、死にたくないの、や、りのこしてる、こと、たくさんあるし、死にたくない、こわい、こわいよ、怖い、お母さ、ママ、パパ、死にたくないよ、」

 

 

 ズルズルと這い進む。手元のスマホに付けたチャームがキラリと光った。

 

 

「オ、ルタぁ……」

 

 

 落とした拍子に少し角が削れた()()()()()()()()。デファルメ化されたクー・フーリン・オルタだった。

 

 

「お母さん、お父さん、神様、助けて、助けてください、助けて、お願い、死にたくない、死にたくないよぉ、お願い、神様ぁ…、」

 

 

 切れかけてた()()()()()()()()()のチェーンを千切って手の内で握り込むようにして祈る。

 

 

「神様、神様、お願い、します、オルタ、オルタぁ、お願い、衣食住世話するから助けに来て、お願い、助けて、」

 

 

 馬鹿げた祈りだ。しかし、この馬鹿げた状況。そしてオルタへの信頼があった。ありとあらゆるリソースを全ツッパした己のオルタがもし来てくれたなら、この絶体絶命のピンチも助かるかもしれないという、ステータスに裏付けされた信頼。そして糸のような希望だった。

 

 自分でも縋っている先が藁と分かりながら、死とグール、現状への恐怖と恐れ、極限状態の精神は全てに縋って生と救いを願っていた。あり得ぬことが起こっているなら、更にあり得ないことがあっても良いじゃないか。

 

 

「お願い、お願い、クー・フーリン・オルタ、私のクー・フーリン・オルタ、お願い、助けて。神様、お救いください。お供え物奮発するから、オルタを通じて毎日お供え物捧げます。神使として。だからお願い、お願いします。神様、神様。クー・フーリン・オルタを、()()()()。お願い、助けて。」

 

 

 グールがあと数メートルまで迫りきて、獲物を振りかぶるのを横目で捉えた刹那。

 

 手元の()()が目も開けていられないような眩さをもって光輝いた。

 そして続くように熱を帯び始め、ぎゅうと握りしめていたチャームから、とうとう手を離してしまった。光の中手を伸ばすが、届かない。

 今度はそれに続いて、まるで雷が生まれるかのようなバリバリバリという轟音と共に、ゴオゴオと業風が吹き始めた。

 前髪を気にする余裕どころか、後ろではグールがよろめき吹き飛ぶほどだ。自身の身体が飛ばされてしまわぬように蹲るのが精一杯だった。

 

 

 数秒にも、数十分にも感じられる時間が経ち、そして、落雷のような一際大きな音と光の後。

 空間を裂いて喰い破るようにしてそれはやってきた。

 

 

 

「クー・フーリン・オルタ。召喚に応じ参上した。……俺の色がお前に関係あるのか?

 

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