沢山のコメントありがとうございます。
本作品はoriginベースですが、他の媒体の設定を齟齬や無理の無い流れになる様に補正して組み込んでいますので、年代が前後したり、多々の独自解釈がありますので、ご注意ください。
また、今話でキシリアの秘書として、オリジナルの名前を付けたキャラクターが出ますので、ご注意ください。
宇宙移民計画。
地球に住まう人類の人口が膨れ上がったからか、地球環境が悪化したからか、どちらが先かは今となっては不明であるが、生物を育み維持できる許容を超えた地球は、当時の全人類を維持できなくなってしまった。その頃になってようやく連合統一国家「地球連邦」が出来、連邦の主導のもとで人類をスペースコロニーへと強制移住させる「宇宙移民計画」が始まった。
この移住についてだが、闇雲に行われたわけではない。コロニー社会を整えるため、組織を構築して運営する能力を有する者…即ち統治者としての働きを望まれた人材が、各サイド最初のコロニーへの移民第一陣の中に一定数存在した。サイド3のサハリン家など、名家として各サイドで今も統治を続けている一族がそれにあたった。
その他に社会の安全や秩序を守る、治安維持を担うことを望まれる人材もまた、宇宙へと上がった。宇宙移民たちの武力蜂起を恐れた連邦政府により、その規模を著しく制限されたことから、各サイドへ分配して移住する事を断念し、一つの集団として必要に応じてサイドからサイドへと渡り歩くようになった。
それこそがザビ家であった。
宇宙世紀0036年、資源枯渇に起因する通貨危機が起き、サイド3の世情が不安定になった。当時の為政者たちのトップであったローゼルシアの父に請われて、デギン・ザビは移住することになった。治安維持と同時進行で、火星と木星の間のアステロイドベルトから採掘用小惑星をいくつか確保する手助けをし、通貨危機を乗り越えることに成功する。しかしその頃にはコロニーの建設ラッシュが落ち着き、サイド3の工業生産力がピーク時から4割低下してしまった。経済不安による混乱が収まる気配がないことから、デギンは腰を落ち着ける決意をして、サイド3の議会の議員になったのであった。
宇宙移民黎明期からのスペースノイドであるにも関わらず、サイド3では新参者やら成り上がり者扱いされているのはそれが原因である。しかし、長年に渡ってサイドからサイドを渡り歩き治安維持に勤めてきたことから、宇宙に点在する全てのサイドの有力者との伝手を有している一族でもあった。
私キシリア・ザビは、サイド6に来ていた。そして今対峙しているのは、ランク・キプロードン。サイド6の名家の当主である。
「なるほど……このサイド6で事業を立ち上げたいと言う話ですね」
「はい。最近、コロニー公社支部での不祥事の噂が絶えないでは無いですか?」
「経費着服でしたか……確かに自力でコロニーを管理、運営をする能力を持たねば、コロニー公社が適当な整備をして問題が生じた時に、死活問題になりかねませんからね」
そう言いランクは、私が提示した商品のカタログを端末を操作しつつ閲覧する。
「ふむ……作業用の新型モビルワーカーに、宇宙線被曝症関連の医薬品ですか」
「我がサイド3に本社を置くルナ・ライン、その先端技術研究所をこちらに設立する計画です。その研究所を介して販路を作りたいと考えております」
ルナ・ラインとは、地球やコロニー間を往来するシャトルを運航する民間航宙会社であり、サイド6は大きなハブ港となっていることから、宇宙港には独自の駐機場に加えて、整備場と従業員宿舎を所持していた。その規模拡張に伴って、研究所を作る予定となっていた。
その計画を説明すると、ランクは先ほど見ていたカタログの、とあるページを再度提示して見せてきた。
「この新型モビルワーカー…元は月面の鉱山根掘削機だったとか」
「はい、この機体は動力の小型化に成功して、より細かく複雑な作業を可能にしていると聞いております」
「……色々と応用が利きそうですね。こちら、デモ機をお借りすることは?」
「可能です。本契約の場合、初年度は無償でメンテナンス要員をつけることもできますし、経費を抑えたい場合はリースという形を取ることも可能です。ランク殿からの依頼でしたら、最優先に対応するようにしましょう。ただし…」
「ふむ……申請内容に問題はありませんし、良いでしょう。私の方から自治政府へ推薦いたしましょう」
内々で話を進めて今回は最終確認作業であったが、サイド6での起業が確定し安堵の息を吐く。
「で、そちらの方は?」
資料を片付ける私に、すぐ後ろに控えて一度も言葉を発さなかった女性を目で指して、ランクが尋ねる。
「私は多忙でしてね。業務は彼女に一任する予定となっております」
「ルナ・ライン先端技術研究所、所長リアナ・キシと申します」
そう言いリアナは静かに一礼した。
リアナはキシリア付きの秘書であるが、ザビ家私設の諜報部隊の一員でもあった。元々名もない下級層の人間であったが、顔立ちがキシリアに似ていたことから、影武者要員として育てられていた。名前ですら「岸 莉愛奈(キシ リアナ)」と微妙に似せて名付けられた彼女を、わざわざ今回起業したルナ・ライン先端技術研究所の所長に抜擢した事には理由があった。
「では」
「はい、こちらを」
宿泊しているホテルに着くや否や、互いの服を交換し、リアナは褐色に近い茶髪に、逆に私はリアナと同じ黒髪に染める。そして交換した服に着替えて、リアナがつけていた度の無い眼鏡を掛け、互いに姿を入れ替えた形となった。
「では、あとは頼む」
「はい。影から護衛をつけておりますが、お気をつけ下さい」
こうして私キシリアはリアナにすり替わり、ホテルを後にしたのであった。
ルナ・ライン、サイド6支社。
そこの応接室へ向かうと、先日ザビ家私設の諜報部隊が身柄を確保していた、一人の初老の男性の姿があった。
「初めましてでよろしいでしょうか? ミノフスキー博士」
ミノフスキー物理学研究の第一人者、トレノフ・Y・ミノフスキー博士が緊張した様子で、私の方を見た。
「サイド3のミノフスキー・イヨネスコ公社は、イヨネスコ博士に移譲したとお聞きしておりますが……博士は今後はどちらへ?」
「……………」
「……元々貴方は、デギン議長に請われてサイド3に来たのでしたね。宇宙線被曝症の恐怖からスペースノイド達を解放して欲しいと」
数年前にガルマと共に訪れた博物館で得た情報を、私は口にする。
「そして貴方は、コロニーの人工太陽を改良して放射線量を大幅に減らした。ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉を開発したことで、エネルギー不足を解消し、コロニーは隔壁外から降り注ぐ宇宙線を防ぐ磁気バリアを完全なものとした」
「……私は………」
「そして例の計画、見事なプレゼンで中止を見事撤回したと聞きましたよ」
私の言葉を聞いて、トレノフは腰を浮かせる。弟ドズルが推進している新たな兵器、モビルワーカーを改良したモビルスーツ(MS)。その開発計画の進捗が芳しくないことから兄ギレンは中止を言い渡すが、トレノフの行ったプレゼンによって中止を撤回させたのだ。
「逆にそれで気づいてしまったのですね……人殺しの道具を創ってしまったと」
トレノフは音を立てて椅子に座り直し、ただ静かに頭を抱えて机に突っ伏した。
「弟子達が……私の愚痴に付き合ってくれた地球にいる弟子が、誘ってくれたのだ。逃げればどうか…と」
「逃げた先で創れば、被害は2倍になりますね。互いが同じ物を持っていれば抑止力になると言う考えは、捨てた方がいいと思いますよ」
終末兵器クラスならともかく、ただの大量破壊兵器ならば使われるのが明白。しかも旧世紀と違って宇宙に人工の大地を浮かべる今となっては、終末兵器ですら使う敷居が低くなっている。
「ならば話は簡単なこと、違う研究を始めればいい」
「……今まで築き上げたものを棄てろと?」
「方向性を変えればいいのでは? どうせ熱核炉の改良は、イヨネスコ博士が進めているのでしょう? ならば違う効果の研究をすればいい」
「違う効果?」
ここから先の情報は前世の記憶由来のもの。だがこの天才科学者を連邦へ亡命させないために、ここで前倒しで提案してみる。ただあくまでも示唆するだけ、表に出ている論文の内容を組み合わせて…
「ミノフスキー粒子をある一定濃度以上に散布すると、立方格子状に整列する性質がありましたね? 確かI・フィールドだったかと…」
「それが一体……」
「理論上は、素粒子の大きさの物質が立方格子状に整列しているわけですよね? その時の立法格子の目の大きさは? その物理学の最小単位と言える目を通り抜けられる物質は、果たしてこの世界に存在するのでしょうかね?」
「っ⁈ I・フィールドがバリアを構築する可能性があるということか⁈」
「それを研究されてはどうですか? 壊すのではなく、守る研究を」
私の言葉の意味が呑み込めなかったのか、トレノフは訊き返す様な視線を向けてくる。
「非意図的な使われ方が見出されたのであれば、こちらの意図する使い方を新たに提示する。逃げ出すよりも、そちらの方が建設的とは思うのですが?」
私の言葉が刺さったかの如く、トレノフの動きが凍りついた様に静止した。
「実はですね。ルナ・ライン、サイド6支社に先端技術研究所を作る予定です。従業員の宇宙線被曝対策のための研究室を作る予定となっております」
その言葉を聞き、トレノフは目だけを動かしてこちらを凝視してきた。そこで私はルナ・ライン先端技術研究所の所長、リアナ・キシとしての名刺を提示する。
「うちの研究員になっていただけませんか? ミノフスキー博士」
最初は震えていたが、私に両手を掴み提案に諾いたトレノフの目に、迷いの色は存在しなかった。
取り敢えずサイド6でやっておきたかった仕事は全て終えた。
これから私キシリア・ザビは、地球へと向かう。
サイド6の宇宙港で行き交うシャトルを見つつ、私は緊張を解すように息を吐く。ここから先は気持ちを切り替えなければいけない。ルナ・ライン先端技術研究所の所長リアナ・キシとして、宇宙線被曝症対策医療品の売り込みのために地球に向かうのだ。
キシリア・ザビとは別人になりきる…と言うわけでプライベートモードから更に砕けた応対を試みる。できるだけ気さくな笑みを作りつつ、私は搭乗員へチケットを見せる。
「リアナ・キシ様ですね。ようこそルナ・ラインへ」
「地球までよろしくお願いします。ああ、貴女は地球に詳しいのかしら? 聞きたいことがあるのですけど」
「はい。ある程度の情報は知っております」
「スッポンが食べれる店、まだ地球にあります?」
「………………は⁈」
私の持つ前世の情報が告げる。頬骨が浮き出ていたことが、キシリアを老け顔にしていた一番の原因であると…
地球へ行く重要任務の中には、コラーゲンが豊富な美容食を食することも含まれていた。
「雑炊が最高に美味だとか……貴女は食べたことあるかしら?」
「その………『すっぽん』とは何ですか?」
初めてすっぽん料理を食べた時、雑炊の美味しさに驚きました。
お高いので、頻繁に食べれるものではありませんが…
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