キシリア・ザビ閣下は・・・   作:桐錠

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 感想で多かったので、ここで一括掲載。
 原作の設定では、NT(ニュータイプ)は精神過負荷が切っ掛けで、特殊な脳波である感応波(サイコ・ウェーブ)を発するとされています。その感応波の受信能力と送信能力とを分けて考察し、NTのタイプを本作品で定義付けしました。
 端的に言うと、受信能力=感受性と送信能力=干渉性の強弱の組み合わせで分類しています。各カテゴリーの中で能力の強弱がある感じです(アムロとララァはFの中で最強クラス)。

・Type-A(アセンション):
(受信)中、(送信)瞬間的に最大
 感知・共鳴力が極めて高い超感覚型。
 カミーユ、バナージ、ハサウェイ
・Type-C(コーディネート):
(受信)大、(送信)中
 精神共鳴力が高い調和拡張型。
 ジュドー、ハマーン、ミネバ、アルテイシア(セイラ)
・Type-E(エゴ):
(受信)低、(送信)最大
 強い影響力と行動力、周囲への干渉能力。
 キャスバル(シャア)、シロッコ
・Type-F(フロー):
(受信)最大、(送信)低
 他者感知・戦闘直感に優れる。
 アムロ、ララァ、シャリア・ブル、マリオン、ミライ
・Type-Z(ゼロ):
(受信)なし、(送信)なし
 本作オリジナル。解析特化型。“別世界の自己(前世?)”と自己(キシリア)を繋ぐ“データサーバー”のようなものとアクセスが可能と推定。本作のキシリアがコレで異世界転生で異世界の記憶持ちを定義付けたもの。主に以下の3つの能力。
 1) 多世界的認識:
 認識した“別世界の自己”の記憶を引き出せる
 2) 情報の集積:
 自己と“別世界の自己”の記憶を整理
 3) 計算・統合・俯瞰的判断:
 上記の情報の演算
 


26. キシリア様は采配者

 

「いやあ、本当に助かったよ。アサクラ!」

 

 そう言い笑顔で背を叩く男と異なり、アサクラの顔は歪みきっていた。

「……約束だ。俺はこれで手を切る」

「いいとも。折角だから君のお陰で得られた成果を、少し見せてやるよ」

 そう言い旧友の皮を被った男は、アサクラに端末を見せる。

「お……おい! ま、まさか‼︎」

 端末に映っていたのはアサクラがよく知っている、製薬用のアスタロスであった。

「いやあ、君が研究所と契約している残土廃棄業者を教えてくれたから、上手く潜り込むことができたよ。なんとか加熱処理前の土を探って、生きている根を手に入れることができた」

「アスタロスを密造している場所は⁈」

「それは教えられないな。ああ、ちゃんとした検疫コロニーだからな。たまたま海賊が盗難したものを、たまたま連邦軍が鹵獲しただけのこと。海賊がコロニーの所属を示すものを全部破壊してしまってね。持ち主不明だったから接収して有効活用しているだけさ」

 そんなことをスラスラ話す男を、アサクラは得体の知れないモノを見る目で見つめる。

「既にいくつか出荷していて長期契約済み。サイド1の連邦の駐留部隊へも献上したよ。自力で増やせるように、ちゃんと株をね」

 その言葉を聞き、アサクラは顔色を変え、男の襟首を掴む。

「お……お…お前! 株を持ち出したのか⁈ 何ということを‼︎ アレは管理を失敗すれば……」

 

 次に瞬間、突然店の照明が落ちた。

 

 そして静かに、即座にアサクラは制圧されて床に押し付けられる。

 

 カイル率いる特殊部隊は、機密漏洩罪でアサクラ技術大佐を逮捕した。しかし彼と取引していた工作員は取り逃したのであった。

 

 ********

 

「……戦略物資の流出を許したか…初動が遅れたな」

 

 サスロから受け取った「アサクラからの事情聴取」の報告書を一瞥したのち、ギレンは私に対して冷たく言い放つ。

「ギレン兄さん、キシリア姉さんのせいじゃない。今は僕が管理しているからこの件は…」

 庇ってくれるガルマを制して、私はギレンに頭を下げる。自身が倒れて入院中に発生したこともあり、それが原因で対応の指示が遅れてしまったのは、紛れもない事実であった。

「申し訳ございません」

 この後に控えている本題に支障をきたす訳にはいかない。故に今回は素直に謝罪することにする。

「密造コロニーの捜索を海兵隊のシーマ大尉とゲール大尉に任せて…」

「おい、馬鹿! 頭を動かすな‼︎ まだ病み上がりだろう……」

 割って入ったドズルが、優しげな声を滲ませて叱咤していた。

 いや、もう回復しているからここに居る訳で、大丈夫なのだが…

「捜索を始めているのなら良い。この件は一度ここで終いだ」

 デギンの鶴の一声で、製薬アスタロス盗難および密造事件については、この場での議論は一度打ち切ることになった。

 

 そして本来の会議の議題に移る。

 

 ガルマがギレン、サスロ、ドズル、デギンに資料を配布する。それは、新規ドクトリンによる部隊の構成案と模擬戦結果であった。

「これが例の新規の隊編成案か…エースを指揮官と教官にすると?」

 ギレンの言葉に一つ頷く。

「はい。新兵への教導任務を課して、模擬戦・連携訓練を徹底させます」

「MS小隊を3機一組、3〜4小隊を中隊として運用することは分かるが、内1小隊を機能を特化させた支援専門にすると言うのは…それに見合う効果は望めるのか?」

「出撃すれば、母艦に戻れる機会は限られます。故に前線で補給する必要があります」

 サスロの疑問に答えるガルマの言葉を聞き、ドズルが口を挟み。

「それで補給特化MSで母艦とピストン輸送を可能にするという訳か? 防御特化MSは?」

「補給機が居たら真っ先に狙いませんか? それに補給中も狙い時かと」

「つまり補給特化MS自体と、補給中の防護のためと言うわけだな。それはわかったが…通信特化MSの効果が今一つわからん」

 ガルマに変わって回答した私の言葉を聞き、ドズルはそう言い腕を組む。

「それについては、私の方から…」

 そう言い ガルマはメインスクリーンに動画を流し始める。

「こちらは、先日行われた模擬戦です」

 映し出されたのは、ザクIIの4小隊で編成された従来の突撃重視のガルマ中隊。そして新編制を元にした、ザクIIの2小隊、ドム・キャノンの1小隊、重装型ドム+ビグロ+ヅダの支援小隊、それぞれ同数の12機と補給艦で構成された突撃機動軍に所属するトップ中隊であった。

「交戦開始10分後、高機動型通信ヅダが電子妨害を開始しました」

「ガルマ隊の連携が乱れているな…」

「トップ隊の補給型ビグロが第一小隊の弾薬補充とMS牽引を実施。一方で…私の隊は弾切れにより戦闘の継続が困難になりました」

 その後、トップ隊のドム・キャノン小隊が狙撃を続行し、最終的にガルマ隊は戦術的撤退。トップ隊の勝利判定となった。

「うーむ…隊局地的にはガルマが優位だったが…」

「補給がなければ継戦は無理ですよ。補給のために下がろうとしましたが、母艦との通信を妨害されてままならず…弾切れになったタイミングで火力を集中的に叩き込まれたら、どうしようもありません」

「MS大隊を作る場合においても、汎用機の数を集めるのではなく、索敵班・射撃班・強襲班などと役割ごとに作成し、それに応じたMSをあてがう…か。なぜそんな回り道をする?」

 一応の納得を見せるも、予算の観点からサスロが尋ねる。

「兵士を死なせないためです。戦術とはそのために存在していると理解しております」

「理論的には悪くない。だが、コストがかかりすぎる」

「俺はいいと思うぞ。あの模擬戦、確かに部下を死なせない戦い方だった」

 ギレンが難色を示す中、ドズルが真っ先に賛成する。

「それが新方式を提案した理由です。人的資源の浪費を防ぐために」

「ふむ……実戦部隊での再検証は必須だ。宇宙攻撃軍と突撃機動軍の演習を認める」

「よし、俺の所の精鋭とやらせてみようじゃねえか」

「……この提案は段階的に導入するとしよう。“突撃戦術連携ドクトリン案”……とでもしておくかね」

 デギンの言葉を締め括りとして、旧自衛隊資料を元に作成した新規ドクトリンは、導入への道筋をつけることに成功した。

 

 珍しく会議後に時間が取れたことから、久しぶりに家族勢揃いで会食となった。

 そしてそのデザートに、私は自分で焼いたアップルパイを食卓の上に置いた。

「……珍しいな、何年振りだ?」

 片眉を少し上げたギレンの声を代弁するように、サスロが尋ねる。

「ここで振る舞うのは久しぶりですが、テキサスコロニーで療養中の時に、何度か作ってましたよ」

「それにしても、どう言う風の吹き回しだ?」

 そう尋ねるドズルの眼を見ないように、私はアップルパイに視線を落とす。

 

 大した理由ではない。

 自身の砂時計を認識しただけ。

 先日、フラナガン心療医療センターで…

 

「重ねて申し上げます。キシリア閣下、貴女はType-Zのニュータイプです」

 

「しかし、私には感応波(サイコ・ウェーブ)は…」

「確かに閣下からは感応波は感知されません。一般的なニュータイプの特徴である高感応性、感覚的共鳴、直感的な閃き、共感能力は有しておりません。しかし先ほど受けていただいた知力テストの時に観測した生体データから、ある仮説が浮かび上がりました」

「仮説?」

「貴女は多元宇宙の存在を把握……つまり多世界的認識を有している」

「……例えば、『別の世界の自分』の存在を認識していると言うことか?」

「その通りです。そして、多世界視点から得られた膨大なデータを演算し、俯瞰的かつ高度な予測および推論を可能としている」

 前世の情報を出し入れして考えてきたが、それがつまりそう言うことであろう。前世の情報を利用できる者、それこそが…

「それがType-Zと言うわけか」

「はい。閣下はType-Z1とType-Z2に当たります」

 フラナガンによると、Type-Zは複数段階に分けられるらしい。

 

・Z1(演算特化):「多世界の知識」「情報演算」「確率予測」に特化。私が普段使っているものだ。

・Z2(干渉特化):多世界的視点を通じて「干渉」する。つまり、前世の情報から知った望まない展開や未来を、潰している行為がこれに当たる。

 

「問題はこの先にあると推定される、Z3(融合特化)、Z4(神化)、Z5(虚数化)」

「神化、虚数化とは…大きくでたな」

「……既にその兆候が、貴女に見られております」

 フラナガンからの言葉を聞き、一瞬私の思考は停止する。そして再起動した思考で、声を震わせないように注意しながら、言葉を紡ぐ。

「………それは……どう言う……ことだ?」

「先日のEXAMシステムの暴走を止めたあの能力は、紛れもなくZ3の力です」

「あれは記憶を叩きつけたに過ぎん」

 前世の情報の中にある「DoS攻撃してサーバーをダウンさせる」イメージに近い感じだ。

「貴女が能動的に“記憶そのものを武器として叩きつけた”。これこそがZ3の本質なのです。その時の“情報爆撃”のデータがあったからこそ、Z4およびZ5の可能性に辿りついたのです」

 名称からして碌でもない事と理解しつつも、私は思わず訊ねる。

「万が一……Z4かZ5になったらどうなる?」

「貴女の人格は崩壊して人間性は消失します。記憶はおろか感情も心情も全てデータに還元され、演算計算から導かれる最適解を叩き出すだけの存在…いや世界の構造または概念になります」

 余りの内容に絶句し、言葉を理解することを心が拒否したが、フラナガンは追撃を緩めなかった。

「Z3の能力は二度と使ってはなりません。Z3の最終段階である安定期に入ってしまえば、二度と人には戻れないのです!」

 

 我が祖国の独立が先か。

 人で無くなるのが先か。

 つまりはそう言うことなのであろう。

 

「キシリア姉さん?」

 気づかう様な声で自身を呼んだのは、ガルマであった。

「……いや……シナモンを入れ忘れたと思い出しただけだ」

「いいですよ。むしろそっちの方が好きだし」

 ガルマの声に微笑で答え、アップルパイに包丁を入れた。

 

 そう、私はまだ人間だ。それを手放す気などない。

 





二次創作小説では、転生者は記憶が引き出せる事がデフォルトであることが多いので、それを逆手に取って特殊能力に位置付けました。
Type-Zは演算特化型なので、感応波の送受信能力がないため単体でのサイコミュの発動はできません(EXAMシステムを元にしたAIやNTを介在すれば可能:例として25話)。同様に超感覚もなし、見切りや精密射撃もできません。
だからこそ「0:Zero」なのです。

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