鋭い感想で指摘があった通り、ニュータイプの皆さんは主タイプと副タイプがあって複合であることが多いです。副タイプの方でType-Zが混ざっている者も何名かいる設定です。
第四章から徐々に明らかになる予定です。
サイド1の連邦駐留部隊の駐屯基地であるガーディアンバンチが壊滅‼︎
コロニー内を埋め尽くす謎の植物。最新の兵器か⁈
地球連邦に対するテロと断定。サイド1に向けて地球連邦艦隊を派遣!
「随分と豪勢なラインナップだこと。報道関係者は当分忙殺されるわね…」
アサクラと接触していた工作員は、新聞の内容をざっと確認し呟く。
「サイド1の反逆行為として、連邦軍は出撃……ね。私が贈った製薬用アスタロスの繁殖に連邦軍が失敗して、一気に増えて押し潰されただけじゃないの。コロニーが密閉空間だと言うこと忘れていたのかしら?」
呆れたようにそう言いつつ工作員は、自身の姿を偽装していた鬘や上着と共に変声器を取り外した。
「贈った株がジオンから盗品由来と分かっていたみたいね。証拠隠滅でサイドごと潰すって、盛大な大盤振る舞いをするわねぇ」
連邦がそう動くように物や情報を流していた人物が工作員たるこの金髪女性であるが、自身の所業の結果を受け流し淡々と端末を操作して報告に目を通していく。
「ふうん…サイド1の為政者と民の断絶は決定的か。民の声を聞いた一部議員は、ジオン公国に救援要請……遅すぎでしょう。同盟すら結んでないのに。ジオン側からの申し出を散々突っぱねていたのに、よくやるわ〜」
その時、彼女の懐にある通信機に連絡が入る。
「あ、はい。ステファニー・ルオです」
表の顔であるルオ商会の社長としての応対をする工作員…ステファニー。
「父上でしたか……え? また“端末”を壊した⁈ 波長が合うニュータイプなんて、簡単に見つからないんですから、もっと丁寧に扱って………はあ…ウチが持ってる新薬密造コロニー? 横取りした検疫コロニーを改造したアレ? まあ確かに潮時ですが………承知しました」
通信を終えたステファニーは、新たな仕事を押し付けられて深い溜息を吐く。
「地球降下軌道に乗せて、連邦軍に破壊させて証拠隠滅とは……そういえば、ジオン軍が盗まれた検疫コロニーを探して彷徨いていたわね。誤認させて擦りつければ“火種”になる」
思考をまとめつつ、ステファニーは立ち上がる。
「父上が『視た』のであれば仕方がないわ。その先に私たちが願う未来が、あるのですもの」
そう言って粛々と出立の準備を進めるステファニーには、自身の行動によって引き起こされる未曾有の災害に対する罪悪感など、微塵も見えなかった。ただ任務を遂行するだけの者…
「さて……急ぎましょう。父上の新しい“端末”も、見つけないといけませんからね」
********
サイド3、ジオン公国。ズム・シティ。
「サイド1からの救援要請……人道的な救助を名目として、ドズルを向かわせたが……」
「おそらく間に合わぬ。せめて生き残りの救助だけでも……」
サスロとギレンの悲観的だが正確な予測を聞き、キャスバルは一度目を閉じたのちゆっくりと口を開く。
「サイド1の生き残りを、我がサイド3へ移住させることは可能か?」
「サイド間の移住となると…連邦政府の承認が必要となります」
「ここでも連邦の意向が必要だというのか⁈」
悔しそうにそう言うキャスバルを一瞥しつつ、私キシリアは提案する。
「ここで再度、サイド3を中心としたコロニー連合形成を目指しましょう。各サイドとの人道支援に関わる同盟…『市民避難支援』『医療物資の空輸』などの名目で、避難と仮移住させる体制を整えるのです」
「名案だな。人道支援目的で武力展開も可能となる」
ギレンの賛同を以て、コロニー連合に向けた複数コロニー間の同盟締結を目指すことになる。本格的な交渉をする前の打診をするために、父デギンと兄サスロは足早にサイド5へ向けて出発した。
その数日後、弟ドズルは帰還した。
サイド1は壊滅状態。
かろうじて残存した複数のコロニーの修復支援をして、宇宙攻撃軍は帰還したのであった。
その報告をしたドズルは、沈鬱な表情で拳を震わせていた。
「…サイド1のガーディアンバンチ崩壊の原因は何なんだ?」
そのドズルの問いに賛同するように、ギレン兄は私に視線を向ける。なんで私が全て問いに対する解答を持っていると思うのですかね……
「ここからは予測となりますが……例のアサクラの情報漏洩事件で、彼は盗難されたアスタロスが外部で密造されていると言っておりました」
「お……おい! つまり盗難されたアスタロスが暴れた結果だと言うのか⁈」
「報道機関経由ですが、破壊されたサイド1のガーディアンバンチの画像が手に入りましたので、今ガルマに解析をお願いしておりますが…」
そう言ったところで、ちょうどガルマが会議室へと急ぎ駆け込んできた。
「解析結果が出た! 製薬用のアスタロスだ‼︎」
ガルマの言葉に私は思わず額に手を当てる。
「どうする?」
「どうしましょう?」
ギレンとほぼ同時に私は互いに問いかける言葉を発する。
「どうも何も、連邦が盗難して自爆した事実を公表すればいいだけであろう?」
悩む私たちに対して、キャスバルがさっくりと正論を口にする。
「根拠がありません。連邦はサイド1ごと証拠隠滅を図りましたから」
私の言葉を聞き、キャスバルとガルマは絶句する。
「な……自分らの失態の揉み消しで、サイド1を滅ぼしたのか⁈」
義憤ゆえに声を震わせるキャスバルの言葉を聞き、途中参加であったガルマは事態をようやく飲み込み、確認するようにドズルに視線を向ける。
「壊滅…と言っていい状況だった」
その言葉を聞き、ガルマも義憤で表情を歪ませた。
「私からの案として……我が国の製薬アスタロスの盗難の疑いについて、連邦政府に対して抗議するのはいかがでしょう?」
「うむ……同時に新薬の地球連邦への提供を打ち切りだな」
「宇宙線被曝症予防薬は?」
「それは継続で構わん」
ギレンの言葉を聞き私は安堵する。利鞘は新薬よりそっちの方が良いので、ルナ・ラインにおける対連邦での利益はそこまで大きく減ることはないであろう。
それにしても、特権階級の方に薬もワクチンも優先させたり、転売の商品に扱われたりしたため、大部分のアースノイドには行き渡っていない。自身らは例の多剤耐性肺炎のワクチンを打って大丈夫と考えているだろうが、集団免疫で社会全体で押さえ込まないと変異株が出て、薬もワクチンも効かなくなるのだが…国の方針として取引を禁止された以上は、こちらの知ったことではない。精々、検疫を強化するだけのことであった。
その時、ニアーライトから緊急連絡が入る。
それは新薬密造コロニーの発見と、そのコロニーが地球に落下したという、衝撃的な内容であった。
会議室から音が無くなった。
「……続けたまえ」
静寂を打ち破ったギレンの声に促されて、私はニアーライトからの報告の全文を読み上げる。
盗難された納品前の検疫コロニーで、盗難された製薬アスタロスを栽培し、新薬の密造がなされていた。その盗難コロニーを、シーマ少佐とゲール少佐は発見。しかしコロニーは既に地球落下軌道に乗っていた。
対処法を考えていたところで、ルナツーに居た連邦軍のワッケイン少佐が駆けつける。そしてコロニーを破壊するために共闘したのだが……
「堅牢に作られたことが裏目に出て破壊しきれず、分割して地球に落ちてしまったそうです」
結果、大きな破片のいくつかは海に落ちて津波を発生させた、二つの大きな破片がそれぞれ豪州と北米に落下し、甚大な被害をもたらしたと言う話であった。
連邦側もジオン側も、前代未聞の事態に対する被害状況の把握に追われて、1ヶ月ほどが経過した。
「連邦はジオンが『コロニー落とし』をしたという見解を発表したか……」
「先手を打たれましたね。しかも公表している死者数、多剤耐性肺炎の死者も明らかに計上していますね…」
加えて連邦政府は、感染者や感染疑いの者の隔離施設を沿岸部に作っていた。そこを津波が襲って全滅し、皮肉なことに多剤耐性肺炎の患者数は下火になりつつあった。
しかし……
「地球に居たアースノイドの半数が死亡か…その大量虐殺犯として、連邦軍はアスタロス制作責任者の身柄を要求してきた」
そう言いギレンは私に視線を止めた。
「父上とサスロ兄が出回っている隙を狙ってきましたね。しかも、既にジオンが故意にコロニーを落としたと触れ回って、サイド間の同盟締結が難航している」
そこで言葉を止めた私は、冷め切った紅茶に口をつけて、その琥珀色の水面に視線を止める。
「こちらが筋を通すのが先決かと」
「……お前が出頭するのか?」
「アサクラにでも押し付けますか?」
「アレは使えぬ。お前の言う『己が保身のために、犯した罪を全て他者へと押し付ける』典型例だ。お前が与えた慈悲を無駄にした」
「慈悲?」
「口を開けば、閑職に追い込んだお前の非難だ。全ての原因は『キシリア閣下にある』と」
「予想通り使えませんね……」
かと言って、シーマとゲールに押し付ける気はない。二人は「コロニーを破壊しきれなかった自分らが責任を取る」と言ってはいるが、そもそも盗難の原因である情報漏洩を防げなかった私自身のミスだ。
「アサクラから工作員の情報は?」
「部下には『任務による事故死扱いにして良い』と尋問をしているが……ダメだな。以前に起きたマス邸襲撃事件時で確認された情報漏洩と類似した経路だ」
特定の裏切り者がいるわけではなく、その時々でターゲットを変えて情報を抜き取っていき、表向きの裏切り者は尻尾切り。
サスロからの報告にあった巧妙な工作員と、同一である可能性が高いと言うことであった。
「……まずは、サイド6のランク大統領へ使いを出しましょう。わがジオンに非がないことを説明するために。人員はそうですね…キャスバル様を使者として、マ・クベを副官につけましょう。そして補助としてリアナとカイルも同行させます」
「ふむ……他には?」
「新ドクトリンの演習を前倒しをしましょう。いつ開戦となっても良いように。演習の陣営はそうですね…ドズルとガルマにそれぞれ出してもらう形で」
「そうだな。で、辞令はいつに?」
「直ぐにでも、出来れば今日中に」
「………で、周囲の人間を離した上で、お前は何をやろうと言うのだ、我が妹よ」
「簡単なことです。我がジオンに義があると知らしめるための手を打ちます」
三日後。サイド3首都バンチ、9:00。
ジオン公国軍突撃機動軍司令キシリア・ザビ准将が、アスタロス制作の総責任者として、地球連邦軍サイド3駐留基地本部に出頭したのであった。
たくさんの感想ありがとうございます。
ただ、あと3〜5話ほど山場に向けて話が進みますので、ネタバレになりそうな一部の返信は今しばらくお待ちください。
キャラクターアンケートをやっておりますが、「その他」は誰なのか感想とかで一言書いていただけると助かります。
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