誤字修正と感想、いつもありがとうございます。
ネタバレ防止で返信できてませんが、全部読ませていただいています。
筆が進んだので更新しました。
「情報で聞いていたが、完成していたとは…」
地球連邦軍の新兵器、EXAMシステムを搭載した自律行動型無人MS“ジムカスタム・BD”。
索敵ビグロのグレニス中尉から、オデッサ基地の様子がリアルタイムで送られてくる。無人MSの自爆攻撃で弾薬庫が一つ吹き飛んだ様子をモニター越しで見て、シロッコは呟くようにそう言った。
オデッサ上空衛星軌道上で、ビグロからの情報を含む通信中継をしているムサイ級戦艦「ファルメル」。
その格納庫を改造した、即席研究室の中にシロッコはいた。所狭しと設置されている複数のサーバーをチェックし、それらを繋ぐ集積演算システムを立ち上げ、MSのシミュレーター…実質はMSの遠隔操作装置を起動させる。続けて通信機を起動させると、オデッサ基地にいるランバ・ラル准将と繋がった。
「こちらの準備は整いました。そちらは?」
『ラサ基地から届いていた例のMSは起動済みだ。まずは現状を伝える』
地球連邦軍がオデッサ基地上空から投入した75機の内、48機がフレアやチャフが仕込まれたダミー、残り27機が無人MSであった。
1大隊の内3機を上空で撃墜に成功するも、24機がオデッサ基地に分散して落着。接近して落着した2機は同士討ちを始めたが、内1機は中破に至ると近くの建物に突っ込んで自爆。その余波で通信塔が破壊された。
幸いなことに連邦軍のMSは超鋼スチール合金であるため、ビーム兵器が有効であった。ジオン軍はエネルギーCAPの開発に成功しており、背面の追加装備でビーム砲の装備が可能なドム・キャノンや、携帯式ビームライフルを装備している新型MS「ゲルググ」で対応しているわけだが…
『回避反応、攻撃速度が尋常では無い。隊長格でなければ、先にこちらが撃ち抜かれる』
「AIの行動パターンは?」
『マ大佐らが解析を急いでいる。今分かっている事は、こちら側の戦闘意思に反応する事、後方支援や指揮中枢関連施設が攻撃目標として指定されている事、そして中破以上の損害で近場の建物へ突っ込み自爆する事だ』
それにより、弾薬庫や格納庫、通信施設が破壊されている。結果、MSパイロットだけではなく、後方支援部隊である通信班や整備班、補給班に無視できない人的被害が発生していた。
『なんとか6機破壊したが、まだ10機以上残存している。キシリア閣下の指示通り、機動力を奪った敵MSのコクピット部分を持ち帰ってきた』
「よく自爆しなかったですね」
『初撃でジェネレーターの接続部分を切断しただけだ。無人MSのコックピットは例のMSの格納庫前に置いてある。後は任せる』
そう言いランバは無人MS排除の指揮に戻るため、シロッコとの通信を切った。
「と言うことだそうです。キシリア閣下」
『承知した。連邦軍はまだ無人MSを保有している可能性が高い。それが投入される前に、その中枢…EXAMシステムの無力化を目指す』
通信機のモニター越しに映されたキシリアは、作戦本部では無く私設研究室に居り、いつもの装飾付きの軍用ヘルメットではなく、複数の配線が繋がれたヘッドギアを頭部に装着していた。
『現場の指揮権限は部下らに移譲した。シロッコ、“メーティス”を起動させろ』
「了解しました」
シロッコがキシリアの依頼を受けて制作した、情報爆撃特化型AIシステムを搭載した、遠隔操作MS 「メーティス」。
名称の由来は古代ギリシャの知恵の女神。
名付けの理由を訊くと、キシリアは皮肉気な笑みを浮かべて「自身を呑んだ主神の性質を、全智神へ書き換えた女神の名であろう? 」と答えた。
主神の地位を簒奪される未来への恐怖から呑み込まれた叡智は、やがて神の中枢を書き換えた。呑み込まれたふりをして内から塗り替え、EXAMシステムすら変質させる…自身が生み出したAIシステムとMSが背負う名として相応しいと、シロッコは思った。
衛星軌道上にいるシロッコの遠隔操作でMSメーティスは動き出す。格納庫外に置いてあった無人MSの残骸を引っ掴んで、再び格納庫に戻る。そしてコックピットの搭乗口脇の緊急ハッチを開けて、中を埋め尽くしている機械端末に線を繋いだ。
ニアーライトを通じて知らさせた、テム・レイが仕込んだバックドアを介して、無人MSが暴走や自爆するリスクを抑えつつ、シロッコは難なくOSの最深部まで到達する事に成功した。
「これは……EXAMシステムの本体ではなくて子機ですね…」
『子機? それが我が軍のエースを翻弄する動きで、MSを操作できるものなのか?』
「子機の中枢はニュータイプかそれに準ずる者の“脳“そのもの…システム本体からの情報をサイコ・ウェーブを介して受信し、さらに演算解析処理も可能としているようですね」
無人コックピット内部を占めるシステムの中央、強化ガラスの円筒の中に浮かぶ物に視線を向けつつ、シロッコはキシリアの疑問に答えた。
『……こちらから情報圧を掛けます。その隙に情報の回収と解析を』
「了解」
キシリアの指示に従って、シロッコは情報の収集と解析を進めていく。
「ワルシャワの連邦軍本体に、無人MSが4大隊残しております」
『100機以上か…厄介だな。システムの中核人格の解析は?』
「はい。フラナガン医療センターのデータバンクに該当者がいました。閣下の懸念した通り、アムロ・レイです」
『やはりそうか……アムロの身体は無事であろうか?』
「確証はありませんが、ここまではっきりとした自我という事は、まだ生きている可能性は高いかと」
精神体がEXAMシステム本体に囚われていることから、正確な意味で無事とは言えないが…
「無人機のコクピットに搭載されてる“中枢”は、情報にありましたムラサメ研究所などで処分された、強化人間の被験者由来と思われます。アムロの精神はその“受信媒体”を通じて、間接的に無人機を操作させられているかと…」
人格の主が確定できたからか、システム本体に囚われているアムロの思念が、シロッコにも少しずつ伝わってきた。アムロ型EXAMシステムの子機が受けるダメージが、向けられた敵意が、アムロの精神体を蝕んでいるのが理解できた。つまり、無人MSが破壊される事は、アムロにとって“死”と同じ苦痛を感じるということで…
いたい……くるしい……
ボクは何度死ねばいい?
もう死にたくない……
殺されるんだったら…
ミ・ン・ナ・コ・ワ・シ・テ・ヤ・ル
『いかん‼︎』
「キシリア様?」
『これ以上無人MSが破壊されれば、取り返しがつかないことが起きる!』
「しかしそれではオデッサは…」
『マリオンの時と同じだ。情報爆撃を掛けてシステムを抑え込む。システムの中核となっているアムロの精神体を解放すれば…』
「っ⁈ なりませんキシリア様‼︎」
シロッコは制止するが、キシリアの放つ情報圧が高まる。しかし今回は、直接システム本体に接続している訳ではない。中継している子機では、流し切れるような情報量ではなく…
「キシリア様っ‼︎」
ようやくシロッコの声が聞こえ、事態に気づいたキシリアは止めたが遅かった。
逆流してきた情報圧に耐えきれず、AIだけでなくメーティスの制御系が全て焼き切れてしまった。仲介させていたMSが自壊したお陰で、シロッコには殆どダメージはなかったが、サーバーの過熱を感知して艦内の防災システムが作動し、周囲は泡で満たされた。
「どうしました? 一体何が⁈」
研究室の異常を察したシャアの副官でファルメルの艦長であるドレン中尉が、部屋に飛び込んできた。泡を掻き分け中から出てきたシロッコは珍しく慌てた様子で、ドレンに半ば食ってかかった。
「急ぎグラナダへ連絡を! キシリア様の安否確認をお願いします‼︎」
鉱山基地オデッサ。
まだ夜明けは遠く、煙幕やミノフスキー粒子が薄っすらと漂い視界はお世辞にも良いとは言えない。
オデッサ基地の中枢とも言える作戦司令室のある司令棟、その外壁に連邦軍のジムカスタム無人機が取り付こうとする。
「甘いっ‼︎」
マは専用機ギャンを駆り、一気に距離を詰めて無人機を蹴り倒す。そしてそのまま無人機のコックピット部分…EXAMシステムの中枢を正確にビームサーベルで貫き沈黙させた。システム稼働を示す頭部ツインアイの青い光が消えた直後、通信が入る。
『大佐! 退避完了いたしました‼︎』
「了解した。ウラガン、こちらが片付くまでは沈黙を維持。機能を立ちあげるな」
『了解しました』
ウラガンからの連絡が来て、マはようやく安堵の息を吐いた。自身が倒した無人機は先ほどの機体で2機。最初の1機は煙幕を使った後で不意打ちを仕掛けたが、結局は乱戦となった末に自爆させてしまった。その時の被害でギャンシールドは破壊され、ギャンのコックピット内は複数のアラートが鳴り響いていた。
「……あと6機か?」
強か打ちつけた左腕の鈍痛を自覚し始めたその時、ノイズ混じりの通信が入る。
『こ……シャア少………残り6機……司令棟に向かって…」
シャア・アズナブル少佐…キャスバルの影武者としても活動している彼は、愛機である通信特化ヅダに乗り、表の顔である中隊長として味方間の通信維持と索敵補助に動いていた。
「誘導ご苦労。後はこちらで対処する」
シャアから同時に送られてきた敵機の位置情報を見て、マは一人呟く。
「そろそろ頃合いか…」
そう言いマは、コックピット内に飾っていた白磁の壺を回収した。
無人ジムカスタムは受領した命令に従い、オデッサ基地の最中枢である司令棟へ向かう。外壁に立っているギャン…目標の一つである指揮官機の姿を確認するや否や、無人ジムカスタム3機が一斉にバズーカを放った。
ギャンが大破したことを確認する間も無く、6機は各々の方向から一斉に司令棟の外壁を破壊し、侵入するや否や閃光を放って大爆発を引き起こした。
轟音と共に爆風が粉塵を撒き散らす。冷たく乾いた風が吹き飛ばし、ようやく視界が改善されてきた頃、ようやく空が白み始め、瓦礫の山と化した司令棟の姿が露わとなった。
「シャア少佐から報告。基地内の敵MSの反応、喪失確認」
「第二司令部の機能を、速やかに立ち上げたまえ」
基地司令であるマの言葉に答えるように、第二司令部内部の照明が完全に点灯した。
「通信機能の回復を急げ! それと、被害状況の確認を進めろ」
次々と指示を出していくウラガンを横目に、マは疲れを押し殺すように臨時の司令席に座った。
現場指揮権の移譲を受けた折り、キシリアに具申して許可を得た作戦、「司令本部の破棄による囮作戦」は見事に成功した。
指揮機能は第二司令部へ完全に移行し、オデッサ基地内と、外部との通信の復旧を進めていった。そしてマは痛めた左腕の手当てを受け、骨にヒビが入っていると肩から下げた布で固定した。
「マ大佐、グラナダと繋がりました」
「よろしい」
マが通信室へ移動して程なく、スクリーンにグラナダの突撃機動軍の作戦本部が映し出される。
しかしそこにはキシリアに姿はなく、何処となく落ち着きのない様子のキリングの姿があった。
「キリング中佐、キシリア閣下に取り次いでもらえないか?」
『そ……それが』
歯切れの悪い返事でマは一抹に不安を覚えた。しかしその時、颯爽とした様子でキシリアが作戦本部に姿を現した。
『すまない、少し席を外していた。報告を聞こう』
席に座るや否やそう切り出され、違和感を抑えつつマは報告を始める。
「オデッサ基地を襲撃した連邦軍の無人MSは全て破壊しました。現在、被害状況の確認と復旧作業を急がせております」
『そうか……破壊してしまったか…』
「閣下?」
『……いや、よくやってくれた。今後の指示を伝える。マ大佐、オデッサ基地の地下に保管している“アレ”を使う準備をしろ』
オデッサ基地の地下に保管している物と言えば…
「っ⁈ 閣下しかし“アレ”は……」
『状況を伝える。下手をすれば…人類滅亡に至る危機が差し迫っている』
「一体どういう…」
『例のEXAM搭載無人機だが…システムの無力化を試みたのだが…失敗した』
「システム無力化? っ‼︎ 閣下? 貴女は一体何を…」
『苦情は後で聞く。それより緊急性の高い情報を伝える』
明らかに何かを隠していると確信するも、マは取り敢えず先に緊急の要件を聞くことにする。
『一点目、ワルシャワの地球連邦軍本陣には、無人MS大隊が4大隊残存している』
4大隊…即ちオデッサ基地に多大な被害を与えた4倍の勢力…108機の無人機を連邦軍が所有しているということだ。
『二点目、それら全てが暴走する可能性が極めて高い。特に人に対して執拗に排除行動をとると予想される』
キシリアの言葉を聞き、マの思考は一瞬凍りついた。
「……暴走⁈ それは一体……」
『EXAMシステム中核が“生存”と“破壊”を指令した後に沈黙した。自爆命令を否定し、戦闘継続を選択して完全自律行動に移る可能性が高い…人への……恨みを募らせて…』
そこでキシリアの体勢が崩れるが、彼女は肘置きにしがみつくように上半身を起こす。
「キシリア様⁈ やはりどこかお加減が…」
『…今はそれどころではない。連邦軍では止められない! 無人MSが各地へ拡散したらどうなる? 一体幾つの街や都市が灰燼と化すと思う⁈』
「っ‼︎」
『マ・クベ……最悪の場合は核弾頭の使用を許可する。私はお前を信じる』
先ほどまで互いに濁していた“アレ”の正体を明確に告げるや否や、 キシリアは一方的に通信を切った。
次話は遅くて来週月曜日、早ければ水〜土曜日に更新です。
第四章終幕まで残り5〜7話は、ゴタゴタが続く感じです。
お付き合い願えると幸いです。
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