誤字脱字修正ありがとうございます。スマホで書いているとキーの打ち間違いが多くて…
旧ポーランド地区、ワルシャワ。
事前に住民ら民間人の避難と疎開を完了させた上で、地球連邦軍が本陣を構えている。ジオン軍の重力戦線の要である、鉱山基地オデッサの陥落を目指し、ワルシャワからリヴィウに向けて進軍を始めた。しかし…
「ヤボリフスキの森林地帯を抜けられません!」
その報告を聞き、総司令官のレビルは一瞬苦い表情を見せる。
当初予定していた空爆による上空からの支援は、ジオン軍で“ガウ”と呼称されている輸送機が散布した物質により、通信やレーダーに異常をきたしたことから、フライマンタによる支援は不可能となった。
幹線道路は封鎖されていることから、エルランが率いる部隊を其方に回して囮とし、レビルが率いる本隊が広大な森林地帯を密かに抜け、一気にリヴィウを落とす予定であったが…
「ええい‼︎ 戦車隊で薙ぎ払えないのか⁈」
初期にジオン軍で使用されていたマゼラアタックに対して、連邦軍の61式戦車は有利に戦えていた。確かにジオン軍が導入したMSのドム・キャノンに対しては無力であったが、射程距離と主砲の破壊力、そして数量的な優位性があったのだが…
「それが……戦車に類似している敵MSの方が、射程距離も機動性も上まっておりまして…」
「戦車に類似しているMS?」
レビルが尋ねると、分析担当者がモニターにその姿を表示数量。
「ジオン軍の中で“ヒルドルブ”と呼称されており、分類上はMSとされています。形状は戦車そのものですが、前進、後進、進路転換途中いずれにおいても、射撃精度が異常でして…」
「複数種のMSがそれぞれの弱点を補って運用しております。補給や索敵も担当部隊が存在し、中隊ごとに独立して動ける状態となっております」
「衛星軌道上の索敵MAから直接情報を得ております。オデッサとの通信が途絶えたとしても、継戦能力は維持される可能性が高いかと…」
次々と具申する参謀たちの言葉を聞き、レビルは少し思案する。
「……オデッサ基地の状況は?」
「無人MSは全て破壊されました。基地施設の6割を破壊、作戦司令部も破壊いたしましたが、30分後に通信および指揮系統の再構築が確認されました」
「破壊できたのは建物のみ。基地司令のマ・クベは排除できなかったようだな」
オデッサ基地の中枢機能を潰せなかった事は痛いが、27機の無人MSが上げた成果としては絶大である。
「後方設備に対して多大な被害を与えたのは事実です。おそらく今前線を押し上げたとしても、オデッサ基地から援軍を出す事は不可能かと…」
「そうだな……モーゼス博士に伝えよ。全ての無人MSを前線に投入するようにと」
彼は知らない。
そのオデッサ基地の襲撃で散った無人MSの痛みを蓄積し、EXAMシステム本体が変容してしまったことに……
ビックトレー級と呼称される前線司令部にも使われるこの陸戦艇には、地球連邦軍の総司令官のレビルが乗っている。偽情報で別艦に居るように見せかけつつ実際には乗っている理由は、無人MSの制御装置がこの艦にあるからであった。
その格納庫の一部を即席の研究室に改造し、サイド6から亡命したクルスト・モーゼスはモニターに映っている数値…正確には暴走を示すアラートを眺めていた。
「それにしても連邦は浅はかで良かった。簡単に話に飛びついてくれたお陰で、私の悲願は成就する…」
暫くして周囲に爆音が鳴り響いた。
「使った精神体が思ったより耐えて時間を要したが…やっと自律的に敵意を向けてくれた。認識プログラムの最上位にニュータイプのパターンを入れた以上は、最優先で排除してくれよう」
モーゼスの目的、それは……
「標的はニュータイプだ‼︎ アレを根絶やしにするためには、どれだけ犠牲が出ても構わん‼︎」
自身の研究を潰したキシリア・ザビ。
詳細は知らないが、彼女もまたニュータイプであることは、モーゼスは知っていた。
元々は人の精神体をコピーして収めるはずが、暴走して精神体そのものを喰らったEXAMシステム。
キシリアはそのシステムの膨大な演算領域とデータ保管領域を一瞬で破裂させた…つまりキシリアは他者の精神を操り、乗っとり、壊す事も自由自在であると同義。キシリア単体ではサイコ・ウェーブは出せないが、他のニュータイプの力を介在すれば可能と事故の時に発覚した。
それに今後、キシリアと同じニュータイプが現れないと誰が言い切れようか⁈ だからモーゼスは決心した。世界からニュータイプを根絶やしにすることを…
「……ん? 随分と連邦軍はニュータイプが多いのか? まさか無差別という訳では…」
モニター越しでに見える無人MSの挙動に対して、モーゼスは異変を感じる。そしてどういう訳か、無人MSはモーゼスが乗るビックトレーに向けて集まり始めた。
「……どういうことだ? ああそうか、この艦にニュータイプがいるのか? ならば早々に脱出して…」
その時突然、研究室の鉄扉が開いた。
「モーゼス博士、これは一体どういう事だ⁈」
姿を現したのは、レビル大将であった。
何かしらの襲撃を受けたのか、服は煤けて破れ、左腕と頭に血が滲んでいた。そしてレビルは怒りを抑えきれないらしく、握っている拳が小刻みに震わせていた。
一方でモーゼスは、モニターに映し出されたセンサーの感知信号を見て一人合点する。
「ははあ…そういうことか。レビル大将、貴方はニュータイプですね」
「…………ニュータイプ?」
「そう。だからここに無人MSが集まってきている…っと、データを回収して退散だ…」
「……なるほど。だから艦載機のドラゴン・フライで脱出しようとした時、私の搭乗機だけ撃ち落とされた…と」
そう言いレビルはモーゼスに銃口を向ける。
「早く無人MSを止めろ。人間に対して無差別に襲っている」
「はは……そんな馬鹿な……私のプログラムに間違いは…」
その時、少し離れた場所にあった陸上戦艦ヘビーフォーク級が爆発炎上する。
モニター越しに見える無人MSは確かに見定めて攻撃しているが…人間を見つけて即座に発砲している。人間に対してオールドタイプかニュータイプか、選別しているようには見えなかった。
焦ったモーゼスは非常停止命令を発するが、無人MSは止まらない。
「っ⁈ 何故だ? 何故止まらない⁈ こんな筈では……」
「……本当に制御不能のようだな…ならば取る手はただ一つ」
レビルは踵を返して、モーゼスの研究室を出る。
そしてその鉄扉を外から閂で施錠したのであった。
そして……
ジオン軍、オデッサ基地。
マ・クベはキシリアの命令に従って、基地の地下に保管してある水爆……核弾頭搭載ミサイルの発射準備を進めていた。
連邦軍の西侵攻ルートの起点であるワルシャワの本陣を、奇襲する予定であったシーマ少佐ら海兵隊からの緊急連絡で、連邦軍内部で同士討ちが発生している事が判明。シーマらを乗せているガウ輸送隊に対して、攻撃中止とワルシャワ上空から離脱するように命令を下す。
そしてデメジエール少佐率いるヒルドルブとドム・キャノンの混合隊にも、第二防衛線まで急ぎ撤退するように命令を下した。
そんな時、連邦軍から連絡がきた。
通信を繋げた先、モニターに映し出されたのは連邦軍の司令の一人であるエルラン中将…連邦軍の侵攻ルートの操作とジオン側に情報を流していた、マが懐柔した連邦軍の高官であった。
いつもはエルランの部下であるジュダックが連絡員となっているため、直接連絡してくるのは珍しくマは内心警戒を強めた。
『……其方でも情報を掴んでいると思うが、陣営に関わらず情報共有すべきと判断して、連絡を取らせてもらった』
「ほう? どのような要件かな?」
『こちらの保有する、無人MS108機が暴走した。こちらからの停止命令も自爆命令を受け付けず、特殊な方法で連携を取り始めているが、電子的なジャミングは無効。一機も破壊できずに、こちらの被害は甚大…』
「それで?」
『……撤退時に遺棄した武器に搭載しているAIを乗っ取り、それを操っているとの報告も入った。今ここで根絶しなければ……手が付けられなくなる』
「はっきり言い給え、我らジオン軍に何を求めている?」
互いに言わんとしていることは分かっている。しかし物がモノだけに、どちらが先に言い出したか…という事が非常に重要であった。
『手を組めとは言わん。だがあの機械共は、“我々”双方にとって最悪だ……一帯に同時に核を撃ち込む』
観念したようなエルランはそう口にした。それもそのはず、マ達は物資輸送用の経路でいざとなったら宇宙へ逃げられるが、エルラン達は逃げきれず無人MSの餌食になるのは明白だからだ。
「一つ確認だ。無人MSはまだ拡散してはいないのだな?」
『レビル大将が自ら、ビックトレーで壁となって友軍の撤退を支援し……そのまま囮を買って出た』
つまりレビル諸共、核で焼き払えという事である。
「核使用は貴官の判断か?」
『レビル大将からの最後の命令だ』
「……承知したエルラン中将。射線が重ならぬよう戦術協定を交わす」
『もちろんだ。お前たちは南から、我々は北から。時間差は20秒で良いか?』
夜明け間もない薄暗がりの中、人工の太陽が地上で解き放たれた。
その業火の中、108機の無人MSと共に、ビックトレーに乗っていたレビルとモーゼスもまた、その姿を地球上から消したのであった。
ジャブロー地下、会議室。
レビルの戦死、無人MSの暴走、そしてオデッサ作戦の失敗…
追い込まれたジャミトフは、ムラサメ博士と相対していた。
「……つまり、ジャブローにある4大隊の未起動のEXAMシステム搭載無人MSもまた、いつ暴走するか分からんのだな?」
「はい」
「っ……構わん。全て廃棄しろ」
「無理ですな。こちらからの指示を受け付けないように本体は休眠状態に入っておりますが、切っ掛けがあれば即座に目覚めて連鎖的に無人MSが自律起動するのは明白です」
ムラサメが静かに書類を閉じながらジャミトフに視線を向けた。
「切っ掛けとは?」
「あれは“敵意”に反応します」
「敵意だと?」
「正確には、“悪意”とも“恐怖”とも呼べる人の感情に反応し、閾値を超えたと判断すると……即座に起動します。当然、解体目的で近づけば、我らの思念から“悪意”を察して暴走するでしょうな」
ジャミトフの目が鋭くなった。
「……“恐怖”もそうだと言ったな。我々が“恐れる”だけで起動する可能性がある?」
「はい。実は初期試験体を密閉区画に運び込もうとした時も、技術班の一人が叫び声を上げた瞬間に暴走しましたからな…」
ムラサメの言葉を聞き、事故扱いで処理された事件のことを思い出して、ジャミトフは表情を歪めた。
「そして今はその時より過敏になっております。おまけにシステム本体だけではなく、基地内の複数の工廠で保管されている無人MSにも感知能力があり、サイコ・ウェーブで情報を共有しあっております。正直どの範囲まで、自己に対する“敵意”を察知できるか予想もつきませんな。なにせ分析目的で近づいた場合も“悪意”と判定させる危険性がありますゆえ…」
ムラサメのその言葉を聞き、ジャミトフは絶句する。つまり基地内の者たちに対して、危険性を周知させることも、ジャブローから避難を促すこともできない。
コリニーはダカールの地球連邦本部、ルナツー防衛をしているワッケインへの援軍でティアンムやワイアットは出払っており、エルランはブリテン島で軍の再編を進めている。万が一の場合でも連邦軍が全滅になる事はない。ゴップには心中してもらうことにはなるが…
しかしジャブローには連邦軍の家族や連邦議員と言った、非戦闘員も数多く居住している。彼らを逃す術が現状ないと言うことだ。
「隔離施設は?」
「下手に近づけない状態で、どうやって移動させるおつもりで? 」
「……冷却封印は?」
「接触温度の変化が内部センサーに刺激を与えた途端に、自己保全機構が作動するでしょう」
「っ‼︎ 今ジャブローにある4大隊は放置するしかないというのか⁈」
思わず片手で額を抑えつつ、ジャミトフは呻くように言う。
「現時点ではそれが最も安全な選択です」
「それが破られたら?」
「暴走します。人間に対して敵意を抱いております故、3時間もあれば基地内の人間は皆殺しにされるでしょう。基地の設備を掌握して兵器生産施設を乗っ取り、得た人体パーツで自己を複製し、輸送機で人類のいる所なら何処へでも赴くでしょうなあ…」
単にジャブロー基地や地球連邦にとどまらず、人類存亡の危機に陥っているとジャミトフは突きつけられた。
「だったらどうしろと⁈ ジャブローを核で焼けと言うのか⁈」
「いいえ、その必要はありません。制御すれば良いだけの話…」
「モーゼスは死んだんだぞ?」
苦々しくジャミトフは吐き捨てる。
モーゼスが持参したMSは欠陥が多く、ミノフスキークラフト技術を用いた新型艦の試験艦であるホワイトベースは、通信がしにくいと言う欠点があった。特異的な形状から医療搬送艦に偽装して、アムロの戦闘訓練の隠れ蓑にするくらいしか利用価値がなかった。
その“通信がしにくい”というのがミノフスキー粒子の影響であり、電子戦に利用できると知ったのが、オデッサ作戦でジオンが使ってからであった。そちらの方が有用な情報であったと言うのに…
そして極めつけが、暴走寸前の無人MSの軍団…とんでもない置き土産を残して死んだモーゼスに、ジャミトフは怒りを抑えられない様子であった。
「実は彼から興味深い話を聞いておりまして…暴走したEXAMシステムのプロトタイプを、ジオンのキシリア・ザビが止めたそうです」
ムラサメの言葉を聞き、ジャミトフの目は据わる。
「彼の発言だけではありませんぞ。もう一つ興味深い事が分かりまして…オデッサを襲撃した無人MSの一機から、EXAMシステム本体へ接続した形跡が見つかりましてな。どうもラサ基地から情報を多量に流し込んで、システムダウンを狙ったようでして」
「オデッサ作戦の折、キシリアはグラナダに居る。それは明白だ」
「はい。そこでさらに無線における情報量の観測データを照らし合わせたところ、同時間帯にラサ基地とグラナダ間で大量の情報が行き来していた形跡がありました」
そこで言葉を切り、ムラサメは静かに次の言葉を放った。
「キシリア・ザビを制御装置として組み込む。それが私からの提案です」
感想ありがとうございます。鋭い内容が多くて、ネタバレ防止で返信できず申し訳ございません(汗)。
多分、第四章終幕まで返信は難しいと思いますが、その後に返していければと思います。
あなたが好きなキャラクターは? ②
-
キシリア・ザビ
-
マ・クベ
-
キャスバル・レム・ダイクン
-
ギレン・ザビ
-
ドズル・ザビ
-
アムロ・レイ
-
ララァ・スン
-
ニアーライト
-
シャリア・ブル
-
パプティマス・シロッコ
-
カミーユ・ビダン
-
ジュドー・アーシタ