連休があったので、ちょっと頑張ってみました。
ー追記ー
見直したら、ビスト家とルオ家の家族関係が誤っていたので、マーサとステファニーのセリフを一部修正しました(2025/9/5)
ー 追記 ー
カーディアスとマーサの血縁関係に誤りがあったため訂正しました(2025/10/5)
ルオ商会。
地球のニューホンコンに拠点を持つ企業連合であり、日用品から武器に至るまで多様な商品を取り扱う総合商社である。
ルオ・ウーミンにより設立され、宇宙世紀以前から存在しているとも言われている。世界への影響力はルオ商会とビスト財団とで二分していると言って過言ではなかった。
「随分と閑散としているわね」
サイド3、24バンチ「タイガーバウム」。
旧世紀の香港や許都をモデルにした観光用コロニー。その街並みを眺めつつアナハイムエレクトロニクスの幹部、マーサ・カーバイン・ビストが金髪豊かな女性に話しかける。
「仕方がないわ。ここは観光用のコロニー、居るのは従業員だけよ。そして貴女方のために貸し切ったのですもの」
「元は居住不適地だったが、ルオ商会が整備したと聞いたが?」
「そうよ。住民も集まったんだけど、ジオンが住民を軒並み自国民に組み込んだわけ。せっかくコロニー公社を抱き込んで、資金調達先の一つにしようとした矢先だったのに」
もう一人の来客、カーディアス・ビストの問いに、このタイガーバウムの主人とも言えるステファニー・ルオはそう答える。
「住民はいないのか?」
「一部は住み込みで働いているけど、居住地は別コロニーになっているわ。そうしなければ、観光コロニー名目で中立に持っていけなかったもの」
そういうステファニーの表情は、何処かしら歪んでいるように見える。その理由はカーディアスにも理解できた。
「ステファニー。例の感染症の利権について、こちらはウーミン翁に従い損切りをしたわ。密造製薬コロニーの処分も承諾した」
そこで言葉を切り、マーサは露骨に眉間に皺を寄せる。
「見込み通り戦争が始まったのに、軍需での利益は予定を遥かに下回ったわ」
「あら、兵器産業は無茶振り支払い渋りが常で、それほど旨味はないはずよ」
「兵器開発で生まれる最新技術が、今後どれだけの影響力を持つと思っている?」
カーディアスにそう切り返され、ステファニーはただ笑みを浮かべる。それに痺れを切らしたように、マーサもまた口を挟む。
「肝心なのはその”最新技術“の民需転用よ。でも我が社は出遅れ、最先端の技術はジオンとサイド6にリードを奪われたわ」
「それはアースノイドとしての懸念かしら? それともルナリアンとしての恨み言?」
「我が社としての意見よ」
不愉快と言わんばかりに目を細めそう返すマーサに対して、ステファニーはご機嫌をとるように笑いながら返す。
「この場は私たちの今後の方向性を定める場。前回のような損切りを強いられたら困るでしょう?」
「確かに。各々が仕込んだ“火種”の影響範囲を示し合わせる必要がある」
話を変えてきたステファニーの言葉に乗るカーディアスを睨むも、マーサはその話題に乗る。互いに多忙な身の上なのだ。
「ジオンは独立を果たし、統治も成功させつつあるわね。いずれ緩やかに各サイドも独立するでしょうね」
「連邦政府も規模を縮小するのは既定路線とは言え、このまま再建を終えるであろう。人類が“目覚める”前に…」
「まだ“人類の進化”に固執していたの? それより、ビスト財団の影響力が落ちる事の方が、由々しき事態では無くって?」
そう言うマーサにカーディアスは思わず睨む。
美術品で資金洗浄をしていたビスト財団であるが、そのやり口をコロニー公社が真似て税金を中抜きしていたことが発覚。コロニーの為政者と地球連邦政府の両者からの信用を失い、コロニー公社の影響力は激減していた。長年の商売相手であったが、ビスト財団はコロニー公社を切る以外に方法はなかった。
そしてそれは連邦のコロニー公社を介したサイドへの支配を、緩やかに崩壊させつつあった。
「我らにとっては好ましいとは言い難い事態。とは言うものの、それに対して互いに無策ではないでしょう?」
そこで言葉を止め、ステファニーは飄々とした笑みを浮かべる。
「私は連邦軍で処分されそうな人達を逃しましたわ」
「こっちは専務を動かして、我が社の在庫を連邦軍で冷遇されている人達に分けてあげたわ」
「知己を通じて資金援助と言ったところだな」
互いに仕込んだ”火種“を示し終えて、ステファニーはテーブルの上の鈴を鳴らした。
程なく初老の執事が、ワゴンを押して入室して来た。運んできたのは3つのワイングラスと赤ワイン…サイド3、5バンチ「ボルドー」の純コロニー産ワイン。極少数生産に成功し一部官僚のみに愛飲されると言われているワインであった。
「そう言えば、ブリックはどうしたの」
ステファニーの秘書代わりをしていた少年の姿がないことから、マーサは尋ねる。
「父上の命令で、最近養子に取った義妹のミシェルについてるわ」
「流石はウーミン翁ですわね。どこかの誰かは寄宿舎に押し込んだり、外で産ませて放置ですからね」
そう言いマーサは、カーディアスに意味深な視線を向ける。
「そちらはまだ、自分の血筋からニュータイプを生み出すことに躍起になっているのかしら? 見つけて養子にして育てた方が早いのに」
「そうよね……アルベルト、私が養子に貰ってもいいわよ」
「……それより、先に為すべきことがあるだろう?」
そう言いカーディアスは、仇敵を見るように冷たい視線をワインに向ける。ムーア戦役の戦勝記念として、“キシリア・ザビ”が功労者に供出したと言うワインを…
「そうですね。それでは当面の作戦成功の前祝いをしましょう」
そう言いステファニーは、ワインのコルク栓を抜いた。
「これでよし……と。次は…」
サイド6、リボー。
ルナ・ライン駐機場の一角で、バーナードはMS「ケンプファー」の冷却水用タンクの栓を閉めた。そしてバーナードは、サイクロプス隊のエンブレムを一撫でして、次の整備箇所へと移動する。
サイクロプス隊。
マッチモニードと同様に、元はザビ家が抱えていた少数精鋭の特殊部隊であり、隠密任務や潜入工作、身辺警護などの様々な仕事を任されていた。しかしキシリアが保安隊隊長時代の時に、隊ごとに任務内容が固定化された。そしてサイクロプス隊は要人の身辺警護と潜入捜査、マッチモニードが隠密任務と潜入工作を担当するようになった。
やがてジオン公国軍の発足を機に、サイクロプス隊は突撃機動軍、マッチモニードは情報部へと組み込まれることとなった。
そしてサイクロプス隊の新米でキシリアの警護任務に就くバーナードは、任務の最中に知り合った少年アルフレッドと、互いに「アル」、「バーニィ」と愛称で呼び合う仲になっていた。
「バーニィはジオン兵なの?」
「いや。確かにサイクロプス隊はジオン軍突撃機動軍の部隊だけど、軍人は半分くらいだな。俺は…まあ準軍属ってところだな」
戦後、軍縮に伴ってサイクロプス隊のジオン兵の半数は退役…と言うものの、そのまま隊に残って要人警護の任を継続している感じであった。そしてバーナードは、戦後に入隊した補充要員であった。
「戦えるの?」
「ん……まあ訓練は受けてるよ」
そう言いバーナードは、整備をしつつアルフレッドに答える。
キシリアの護衛用に持ち込んだMSは、ルナ・ラインの駐機場の一角を借りて置かせてもらっている。ルナ・ラインの幹部の息子であるアルフレッドにとって、この場所は駐機場になる前からの遊び場らしく、ちょくちょくバーナードの所へと遊びに来ていた。
「そう言えば、クリスが今晩会いたいって」
アルの言葉を聞き、バーナードは思わずスパナを落としかける。それもそのはず、アルの家の隣に住んでいる年上の幼馴染であるクリスチーナ・マッケンジーは、短い滞在期間ながらも互いに好意を抱いていて…
もしかしてデートか?
妄想し始めたあらぬ事を頭から追い出し、バーナードは若干頬を赤らめつつもMSの整備を再開した。一方でそんなバーナードの様子に気づいていないアルは、思い出したようにふと疑問を口にした。
「バーニィが護衛している人、今は居ないの?」
「んー? 色々忙しい人だからな。色々回って、アルの親父さんが企画計画書を整えたあたりに、戻って来るんじゃないのか?」
「ふうん…」
生返事をしつつ、アルはケンプファーの周りをぐるりと回る。
「へえ……やっぱり全然違うんだね!」
「違う? アルは他にMSを見た事があるのか?」
「見たと言うか…友達が見せてくれた画像があって…」
そこで言葉を切って、アルはバーナードの耳元に口を寄せた。
「近いうちにMS同士の内緒のバトルがあるって噂で聞いたんだ!」
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サイド1、1バンチ「シャングリラ」。
「違法賭博を目的としたMS同士の闇バトル…ですか?」
私キシリアは、同じサイド1の複合企業「ブッホ・コンツェルン」の密閉型私設コロニー「ブッホ」で、シャンホルスト・ロナとシャロン学園に関する寄付の取り決めを交わした。
別世界由来の情報では、後の悲劇に繋がる「職業訓練校」は0081年に設立されていた。しかしこの世界では、宇宙空間での大きな戦闘がムーア戦役のみに止まり、さほどスペース・デブリが出ず急激な収益上昇が無かったらしい。まだ計画段階という話を聞いて、寄付の見返りとして教員の人材派遣の取り決めをした。これで思想教育の修正はできるはずである。
そしてサイド6の「リボー」に再び向かうべく、拠点にしていたホテルに戻った時、別件でシャングリラに来ていた学園の教員主任であるシャリアからそのような話を聞いたのであった。
「はい。本日保護した少年らの話によると、総合大会がサイド6で行われると」
「保護というと…医療機関を介して報告があった、ニュータイプ候補の子供か?」
「その通りです。本校の説明に伺ったのですが、保護者は出稼ぎで不在でして…」
フラナガン医療センターからサイコ・ウェーブの検知機械を貸し出し、精神不安を訴える子供らのニュータイプ診断を依頼していた。そしてそれらしい子供が見つかった場合、シャロン学園への入学を薦めるという活動を行なっていた。
「当人も不在で妹から聞き取りをしましたところ…悪い友達とつるんでいる…と」
「そして悪い友達諸共、MS同士の闇バトルに出ていたと言うわけですか」
「何でも、闇バトルの参加チームのMSの部品を、ジャンク屋に売り飛ばしたとかで…違法賭博での損害分に達するまで働かせていたそうです。その内の一人のはMSの操縦までさせておりまして…」
「10才やそこらの子供になんと言う無茶を…」
「なんでも異様に勘が鋭く、MSバトルに連戦連勝だとか…」
「それでは何かと理由をつけて解放しないのでは? どうやって保護を?」
「闇バトルの決勝に私が出て、勝利しただけです」
話によるとシャリアは、サイコミュ搭載の最初期試作機「ブラウ・ブロ」で参戦したとのこと。早めにエネルギーCAPが導入されたことから、機体の小型化と機動性能の向上に成功していた。つまり別世界の情報ではMAであったが、この世界ではMSと言えるサイズとなっていた。
「それなりの腕でジムカスタムのハイエンド機体で、予想以上に手こずって中破させてしまいましたが…」
「よく勝利できたな…」
「はい。最近取り付けたサイコミュの無線式メガ粒子砲で不意を突けましたので。その場でパイロットの子を確保。賞金を叩きつけて、MSの整備員として働かされていた子供らも保護しました」
そう言いシャリアが差し出してきた、保護されたニュータイプ候補の子供らの名を見て、私は飲みかけの紅茶を咽せてしまった。
「キシリア理事長?」
「い……いいえ……なんでもありません」
本当は大いに問題があるが…
ジュドー・アーシタ、エル・ビアンノ、ビーチャ・オーレグ、モンド・アガケ、イーノ・アッバーブ…
Zの続編に当たるZZの主人公と主要メンバー御一行の名前が、そこに羅列されていた。
「………何か?」
「………いや」
シャリアに憐れみの視線を向けていたらしく、尋ねられ私は申し訳ない気持ちで視線を逸らした。
大量の問題児を見る羽目になるであろうシャリアに対して、心の中で詫びの言葉を言うしかなかった。年齢的に小学部となるが…最近編入してきたルー・ルカと上手くやれるか、一抹の不安を覚えた。
「それより問題なのは、賭博が成立するほどのMSが、どこから流通しているかと言うことです。どうも連邦軍のMSのようでしたが…」
「軍縮で削減した兵器が流れていると?」
「それに加えて、新品もありまして…」
「アナハイムか?」
「証拠はありませんが」
「観客の客層は?」
「それが…無観戦試合でした。撮影した映像を配信しているとのことで」
シャリアの言葉を聞き、私は少し思案する。
「サイド1の闇バトルで優勝したと言うことは、貴方は総合大会に出る資格はある…と言うことですね?」
そう言って視線を向けると、私が何を言わんとしているか理解したらしく、シャリアは苦笑を浮かべて頷いた。
次回は早ければ土曜日が月曜日。
遅くとも水曜日に更新できるかと思います。
あなたが好きなキャラクターは? ②
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キシリア・ザビ
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マ・クベ
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キャスバル・レム・ダイクン
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ギレン・ザビ
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ドズル・ザビ
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アムロ・レイ
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ララァ・スン
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ニアーライト
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シャリア・ブル
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パプティマス・シロッコ
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カミーユ・ビダン
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ジュドー・アーシタ