筆が進んだので更新します。
第50話記念、MS多目のドリームマッチです。
第5章前半の山場ですので長めです。
サイド6、リボーコロニー。
火星との定期便の企画書が整ったと連絡を受け、私はサイド1から再び戻ってきた。
ジュドーらをシャロン学園に預けたシャリアと合流したが、教員の一人であるシムス・アル・バハロフが同行していた。シャリアが「嫌な予感がする」と護衛の追加として連れてきたのだが、パルダコロニーに帰ったカイルの代わりに、シムスは私の秘書的な立ち位置でここ数日過ごしていた。
そんな私の所へ、ジオン軍宇宙攻撃軍から突撃機動軍に移籍したアナベル・ガトーが来た。
「盗難された連邦軍の新型試作MSを捜索している…と?」
連邦軍のMSと言っているが、講和条約の取り決めで連邦軍のMS開発はジオン軍との共同開発となっている。そして、ガトーの赴任先であるトリントン基地でMSの開発研究が進められていた。
「捜索は貴方だけですか?」
「いえ、ジオン軍からシーマ大佐のガラハウ隊、連邦軍からアルビオン隊のサウス・バニング大尉以下5名が同行しています」
それらの名を聞き一瞬私は静止して、思わずガトーをまじまじと見てしまう。
「…ところでガトー、最近はデラーズに会いましたか?」
「いいえ。地球での任務になりました故、グラナダのデラーズ閣下と会う機会はありませんが」
「……そうでしたね。忘れなさい」
そう言い私は、思わず寄った眉間の皺を揉みほぐす。
つい別世界の情報を思い出したが、そもそもジオンの勝利で一年戦争を終えている。デラーズが紛争を起こす理由もないし、ガトーが連邦のMSを強奪する必要もなかった。
「それで違法賭博の件ですか?」
「はい。MSの闇バトルにその試作機が出場するという情報がありまして」
「なるほど。私の方でも別件で違法賭博を調べています」
リボーで連邦軍が独自にMS開発をしていると言う噂は、MSの整備用の備品や消耗品の搬入量増加が発端であった。結局それは、違法賭博の対象であるMS同士の闇バトルが原因であると判明していた。
「シャリアが出場予定なので彼に話を…と言いたいところですが、次の試合はペア出場で、組む相手を探すために不在です」
「ペアを組む相手ですか? それでしたら私が…」
「現役の士官を闇バトルに出す訳にはいきません」
そう話している間に、シャリアが一人の男を連れて戻ってきた。
「マッシュ。久しぶりですね」
シャリアが連れてきたのは黒い三連星の一人、他の2人と共にMSの警備会社へ再就職し、ジオン軍の新兵への教官もお願いしているマッシュであった。休暇中でサイド6に居たところを、シャリアから依頼されたらしい。
MSの闇バトルが行われるのは明日。
私はイズルハとの会議があるが、休憩時間等で配信される闇バトルの様子を見る予定であった。
そして翌日。
ルナ・ラインの会議の合間、MSの闇バトルを確認していた今日の護衛担当のガブリエルに状況を尋ねる。
「状況は?」
「シムスから連絡がありました。準決勝を勝ち抜いたそうです」
闇MSバトルの本大会では観客がいるらしく、配信動画の中に人の姿が映った。そのためバトル会場では、情報漏洩の防止目的でミノフスキー粒子が散布されている。ライブ映像等は無線中継地点まで有線を引いて配信しているが、一般の無線通信機器は近距離以外の使用は不可という話であった。
しかし逆に、ニュータイプ同士の精神波による通信は良好であった。そこでシャリアが集めた情報をシムスが受け取り、シムスからガブリエルとガトーに連絡していた。
「ふむ…賭けた相手の試合しか閲覧できないとは、なかなかできたシステムだな」
賭けの倍率の変動もリアルタイムとは…実際の公的賭博場のシステムと遜色はないようだ。
「盗難MSらしいものは確認されておりません。出たとしたら、スペックからしても早々に敗退することはないかと…」
「と言うことは別ブロックか」
そうこうしている内に、別ブロックで勝ち残ったペアがシャリアたちのチームの前に姿を現した。
「当たりのようだな」
相手のチームはザクⅡ改、そして白と青のツートンカラー機体…別世界の情報を照合してすぐに該当する機体があった。
ガンダムNT-1、コードネーム「アレックス」。
「キシリア様、シムスから通信が……その……」
「何だ?」
「ザクⅡ改のパイロットが…うちのバーナード・ワイズマンだそうで…」
「……バーナードは?」
「本日は休暇をとっております」
それを聞き私は頭を押さえて、動画の画面に視線を向ける。
「何故わかった?」
「シャリア殿が使用していますMSは、バーナードが整備をしている機体でして…」
シャリアの乗っている機体は「ケンプファー」。
軍縮に紛れてジオン軍はMSやMAの更新に成功していた。ゲルググからマラサイ、ヅダからガルバルディ、ビグロからビグロマイヤー、そしてドムはケンプファーからさらにドライセンへと移行していた。
そのため、払い下げが出回っているケンプファーなら悪目立ちしないと、シャリアはキシリアの護衛に頼んで借りたものであった。
「あいつ…自分が整備しているMSの傷の位置まで覚えているようで」
「自身が整備している機体が出てきて、誰が乗っているかと確認のために通信をしてきた。そう言うことだな」
「はい。それで大体の事情がわかりました。例の盗難MSですが、パイロットはクリスチーナ・マッケンジー。盗難された新型試作MSのテストパイロットで、休暇でこのリボーコロニーに戻っていたところ、エコーズに所属していた元連邦兵が接触してきたということで…」
「エコーズ…地球連邦軍の特殊部隊であったな」
「それが……リボーコロニーに核弾頭を仕掛けたとかで…」
いきなり物騒な話が出てきて、私は思わず片眉を上げる。
「核だと?」
「コロニーを破壊すると脅され、エコーズに従っていると…」
「違法賭博の闇バトルへの参加もそうなのか?」
「優勝したら起爆装置を渡すと言われているらしく…」
「核の存在の信憑性は?」
「盗難されたMSの武装の中に核弾頭搭載武器があったと…」
「…“星屑”じゃなくて“ポケ戦”の設定であって欲しかった…」
「はい?」
思わず漏れ出た私の呟きが耳に入ったらしく、ガブリエルは聞き返す。
「……何でもない。それよりどうするか…」
核は設置済みで、元エコーズのテロ犯が起爆装置を持っている状態と考えた方がいい。
そこで私はある事を思いつく。
「確かシムスは、悪意の感情を察することができたな」
「はい。そう聞いておりますが」
「シムスに伝えろ。シャリアに時間稼ぎをするよう伝えたのち、ガトーと合流して核弾頭の捜索に協力するようにと」
シャリアとの通信が出来なくなるが、核弾頭を探す方が優先となる。
加えて手の空いている護衛も捜索に向かわせる。今いる支社を含めて、ルナ・ライン社のセキュリティは最高クラス。私の護衛は最小限でも事足りる。
そして迎えた試合開始時刻。
シャリアのケンプファーとマッシュのドムキャノン改が、クリスのアレックスとバーナードのザクⅡ改と対峙する。
突然、闇バトル会場に2機のMSが乱入してきた。
「ノイエ・ジール⁈」
その内の一機…ガトーの愛機を呼ぶガブリエル。
そしてもう一機の姿は、別世界の情報の中にあるガンダム試作一号機「ゼフィランサス」であった。
状況が掴めず唖然としていると、ガブリエルが通信機を私に手渡した。直接話した方がいい案件と考えインカムを装着した。
それと同時に聞き覚えのある声が聞こえた。
『キシリア様!』
「シムスか? これは一体…」
『決勝開始直後から強い悪意が闇バトルの会場付近のコロニー外壁に…シーマ殿たち海兵隊が核弾頭を発見しました。無力化作業をする間の囮となるとガトー殿とウラキ殿が…』
程なくアリーナ周囲のハッチが開き、闇バトル会場に主催者側の警備担当と推定されるMSが8体投入された。その姿を見てガブリエルが呟く。
「ケンプファーか?」
「いや違う。おそらくアナハイム社の試作機…ガーベラ・テトラ」
弱みを握られているクリスもガトーらを排除しようとするが、ガーベラ・テトラはアレックスを攻撃。それをバーナードのザクⅡ改が庇い、腕の盾を犠牲にして何とか防いだ。
そしてそれを見て私は合点がいった。
「ガーベラ・テトラの宣伝か……」
「どういうことですか?」
「独立戦争の時、アナハイム社は連邦軍のMS開発研究を行っていた。そして試作機を3号機まで制作したところで終戦した」
講和条約の取り決めで、連邦軍のMS開発はジオン軍との共同開発が義務となった。しかしジオンの各企業が連邦軍への協力に難色を示し、ルナ・ライン先端技術研究所が持つ数世代前の一部技術を提供する形で落ち着いた。つまりアナハイム社は3号機まで作った技術を蓄積した成果を、連邦軍に納品できなくなったのだ。
“テトラ(4)”と言うのは、断ち切られた系譜を継ぐMS。終戦処理時の書類の中で見たMSの形状と一致していた。
「連邦軍の主力MS候補のアレックスを叩きのめす動画が出回る。効果的な宣伝方法だな」
アレックスで優勝させた後にガーベラ・テトラを乱入させ、倒すまでがセットということだ。
アレックスを庇いつつ、ザクⅡ改がマシンガンで牽制して時間を稼ぐ。その一方でマッシュのドムキャノン改の砲撃で一機の動きを止めている間に、シャリアのケンプファーが距離を縮めビームサーベルでコックピットを貫いた。
また会場の端、ガトーのノイエ・ジールが旋回している機体を砲撃で打ち落とし、地上で回避行動を取り始めた機体にコウのゼフィランサスが突進しシールドで壁に押し付け、そのままビームサーベルでMSの四肢を切り落とした。
8体のガーベラ・テトラが全てスクラップと化した直後、シーマから核弾頭の無力化に成功したと連絡が入った。
「キシリア様、そろそろ会議の時間ですが」
連絡に気を取られている間に、時間を過ぎてしまったらしい。
「申し訳ございません。今すぐ会場へ……」
その時、足元から鈍い音と共に振動が走る。
何事かと確認作業をしようとした時、突然警報が鳴り響く。滅多な事では鳴ることはないそれは、コロニーの外壁に損傷が起きた時に鳴る、警報であった。
無力化した核弾頭の取り外し作業で不具合があったか?
会議場のスタッフが慌てた様子で入室し、民間用宇宙服を手渡しつつ退避ブロックへの移動を促してきた。
宇宙服を着用してたどり着いた避難ブロックには、すでに多くの人間の姿があった。
「アル?! なぜここに?」
避難ブロックに居た一人の少年も姿を見るや否や駆け寄り、イズルハは話しかける。それは護衛のバーナードと仲良くなった少年で、イズルハの息子でもあるアルフレッドであった。
「実は…その……友達と遊んでいて…」
「平日の昼間にか? 学校は⁈」
今の時刻は夕方を少し過ぎた頃。しどろもどろ話すアルの言葉から推定すると、学校をサボって例のMS闇バトルの観戦をしていた可能性が高そうだ。
周囲を見渡すと皆が賭博のチケットを持っている。交わされる会話からも、ここにいる者たちは闇バトルの会場からこの避難ブロックに誘導された様子であった。
アルたちを除けば全て成年。子連れと言った一般住民はいない。
「っ‼︎」
違法賭博を目的としたMS同士の闇バトル。
その設営に紛れて設置されたとされる核弾頭。
そもそも、何故リボーコロニーの破壊を目論む?
考えられるのは、見せしめ、テロ……
または暗殺。
核が不発となった今、闇バトルの存在自体を消して証拠隠滅を図る必要があるのでは? だとしたら今いる場のこの状況は……
罠か⁈
「……通路に引き返す。先行して安全確認を」
私の言葉を聞き、護衛のガブリエルは聞き返すことなく一つ頷いた。
そして先行して来た道を戻り、通路に繋がる扉を開ける。イズルハたちを先に通し、キシリアも続こうとしたその時…
空気を裂く轟音と甲高い金属音が同時に響き渡り、衝撃が走った。
「私が狙いか!」
私は目の前のアルたちを、通路の先へと突き飛ばした。
********
鈍い機械音と共に強風が止んだ。
急に鋭い目となったキシリアに突然押され、アルは友人たちと共に通路奥に倒れ込んでいた。起き上がったアルが振り返ると、先程まで自分が居た場所に緊急隔壁が降りていた。
“警告! この先陰圧ブロック”
そう表記された赤い警告ランプが、隔壁の中央に灯っていた。
キシリアの姿はどこにもなく…
「キシリア様っ⁈」
護衛のガブリエルの叫び声を聞き、アルは通路横にある小さな窓に飛び付く。先程までは無かった大量のデブリが、宇宙に漂っている様が見えた。
そこでようやく、アルは何が起きたのか理解した。
「……嘘だと…言ってよ……」
次回はできれば月曜日、遅くとも水曜日更新予定です。
あなたが好きなキャラクターは? ②
-
キシリア・ザビ
-
マ・クベ
-
キャスバル・レム・ダイクン
-
ギレン・ザビ
-
ドズル・ザビ
-
アムロ・レイ
-
ララァ・スン
-
ニアーライト
-
シャリア・ブル
-
パプティマス・シロッコ
-
カミーユ・ビダン
-
ジュドー・アーシタ