ようやくZ開始の年代に突入です。本作は原作と全然違う展開ですが…
第5章はあと4〜5話で終幕予定。最後までお付き合い願えると幸いです。
ー 追記 ー
カーディアスとマーサの血縁関係に誤りがあったため訂正しました(2025/10/5)
宇宙世紀0087年。
ビスト財団が地球上に所有している美術館の一つ、その地下に極一部の者しか知らない施設があった。
UC計画研究所。
地球連邦軍再編計画の裏で極秘に進めてられいる“UC計画”…ジオン登場前の世界情勢への回帰を目的としたこの計画は、実質はビスト財団とアナハイム社が掌握していた。
その実験室に一人の男性がいる。
カーディアス・ビスト、ビスト財団の現当主である。
「ご無沙汰しております」
一人の女性が実験室に入りつつ、艶やかな声で話しかけてきた。
「息災か、マーサ」
従兄妹であり、ビスト財団とアナハイム共に地位を確立しているマーサ・ビスト・カーバインを、カーディアスは一瞥する。
「ステファニーが掻き回すから、その対処に苦慮しているところよ。どうもウーミン翁はコールドスリープ状態ではないみたいね」
「起きているとは珍しい。“新しい端末”を得たと聞いたが、不具合でもあったのか?」
「順調じゃないの? その“新しい端末”…ミシェルと言う子の占いの顧客で、連邦議会議員が何人か付いたらしいし…端末が確定したから“材料”も決まって、このデータを欲しがったんじゃないの?」
そう言いマーサは訪問の目的である、記録媒体のディスクをこれ見よがしに見せる。
「予想通り、オーガスタ研とムラサメ研のデータはローレンが持ち出してたわ」
「木星船団に同行していたウォンからか?」
「そうよ。火種も点けるのに成功したらしいわ。地球圏に戻り次第、機を見て離脱する予定。これで彼、専務に確定ね」
そう言いマーサは、MSの設計図が映し出されているモニターへと目を向ける。
「“ユニコーンガンダム”。大層な名前よね」
「“一角獣”、“黒獅子”……そして“不死鳥”」
設計図の横に記されている名称…そこから連想される単語をカーディアスが呟いたその時、ミラーガラス越しの部屋に鎮座しているシミュレーターへと、パイロットスーツを身に纏った少女が入る様子が見えた。
「……“フェネクス”の“贄”か」
「最初はテストパイロットにする予定だったらしいけど、それでは失敗すると“視えた”らしいわ」
「“世界構造の情報保管庫”または“アカシックレコード”由来の情報…そんな与太話をお前は信じているのか?」
「どうでもいいわ。私は“人類の進化”なんて興味はないですもの」
そう言いマーサが視線を戻すと、どことなく憂いを浮かべたカーディアスの表情が目に入った。
「私生児に会った後、いきなりお父様の墓参りをしたり…どんな風の吹き回し?」
「…アルベルトは元気か?」
「なかなか優秀だわ。流石は貴方の息子ね」
「……そうか」
尚も少女から目を離さないカーディアスに対して、マーサは深くため息を吐く。
「仕方がないでしょう。ニュータイプの精神体を搭載したEXAMシステムがなければ、
「ルナ・ラインの方は、ニュータイプの“魂”を喰わせることなく、機械ベースのAIでの完全制御に成功したと聞く」
「それではスペックを満たせないという結論だったのでしょう? まあ、要望してきたスペックが異常だったわね」
「1機で他の2機を共鳴させるため、高出力の感応波が必要という話だ」
先ほどから伝聞内容しか話そうとしないカーディアスに対して、マーサは嘲笑に近い笑みを向ける。
「高出力の感応波を常時垂れ流す機能だなんて、常軌を逸しているわ」
「“トライステラー計画“の骨幹と言う話だ」
「その計画、地球連邦政府は巨額な資金を回しているわよね。連邦軍が兵器開発費を引き出すための名目でしょう?」
マーサの父はその巨額な資金に目が眩み、唆されて財団を乗っ取ろうとし、祖父サイアムに謀殺されたことを思い出したマーサの声が低くなる。
「本来は改暦前から続く超長期的計画だ。“人類の進化”を促すための」
「またそれ? 随分壮大な話…世界そのものを書き換えるつもりかしら?」
マーサの言葉を聞き、カーディアスは一瞬目を開く。そして突然、背を向けて実験室の扉に向けて歩き出した。
「どこへ? まだステファニーは…」
「急用ができた。失礼する」
カーディアスは振り返らずにその場を後にした。残されたマーサは溜息を一つ吐いて、実験体とされている少女へと視線を向け、その目を細める。
「リタ・ベルナル…3人の奇蹟の子供たち……」
「リタ……ミシェル……」
ヨナ・バシュタはそう呟き、壊れたペンダントの欠片を眺めていた。
「ヨナ! ここにいたんだ…」
そう言い話しかけてきたのは、ヨナが今いるシャロン学園の友人、リィナ・アーシタであった。
「それって確か…地球連邦政府から送られる徽章よね?」
「……よく知っているな」
「ふふ……学園の図書館って色々充実しているもの。その模様は…何か画期的な発明をしたとか?」
「父さんの形見なんだ。ハービック社の研究員だったらしい」
「壊れているのね…破片は残っている? あったらお兄ちゃんの友達に頼んで、直してもらおうか?」
「いやいい。残りの欠片は……友達と分けた」
そう言い目を伏せたヨナを見て、リィナは恐る恐る尋ねる。
「もしかしてそのお友達って…オーガスタ研究所で……」
「いや生きている。ジオン軍が来る前に、どこかに連れて行かれたから。もう少し残っていれば、二人もここに居たのに…」
「だったらヨナは、将来は宇宙船の操縦士かな? 友達を探しに行くために」
「……ああ…そうだな。探しにいけばいい。きっとまだ、間に合うはずだ」
自身に言い聞かせるように呟き、ヨナは静かに起き上がる。今いるシャロン学園の中庭に、人工太陽の穏やかな日差しが降り注ぐ。
「で? 相談って何?」
「その……実はお兄ちゃんのことなんだけど」
「ジュドーさんのこと?」
ひとつ頷いてリィナは真剣な表情で、口を開く。
「男の人って、どうやったら朴念仁じゃなくなる?」
「………は?」
地球圏宙域。地球圏共同特務隊「シャロン・フェアリー隊」専用母艦「アーガマ」。
サイド6からサイド4へ向かうその艦内で、盛大なクシャミが響き渡った。
「どうしたジュドー、風邪か?」
シャロン・フェアリー隊に所属するシャロン学園生徒の憩いの場である、艦内休憩室。隊の見習いであるイーノが、同じく見習いで友人のジュドーに飲み物を渡しつつ尋ねる。
「いや……ちょっと鼻がムズついただけ…」
「それにしてもモンド、遅いなあ……」
その時、2人がいる休憩室へとモンドが入ってきた。
「やっと戻ってきた…マリオン先生が頼んでいたナット、あとカクリコン先輩が頼んでいた補強テープ、見つかったか?」
「ああ。持ってきた。それとついでに…」
そう言いモンドは、隠し持っていた苺を2人に見せる。
「おいそれって……キッカが栽培している」
「沢山実ってんだ。ちょっとくらい取ってもバレない……」
「そんな訳ないでしょうっ‼︎」
甲高い声が聞こえて、恐る恐るモンドが振り返ると、そこには仁王立ちしいたキッカの姿があった。
「モンドっ‼︎ また勝手に横取りして…そのせいで二番艦のラーディッシュの方で足りないって、フォウ…じゃなかったキョウとロザミアから苦情が来たんだから‼︎」
「ん? 栽培検証用の株、多めに積んだんじゃなかったのか?」
そう疑問を口にしたジュドーに対して、キッカはため息を吐きつつ口を開く。
「マシュマー先輩がグレミー先輩に唆されて、一部の苺の鉢と薔薇の鉢を取り替えてたのよ…梱包されてたから、気づいたのは出航後…」
「薔薇ねえ……グレミー先輩はルー先輩にあげる予定だったのかなあ…」
「でもさあイーノ、グレミーが居るのはラーディッシュじゃん。どうするつもりだったんだ?」
「毎日出している艦間の輸送船に紛れ込ませようとしたみたい…ね、モンド⁈」
そう言いキッカは青筋立てて睨みつける。
「な……何でそこまで知って…」
「アンタと同じ補給担当のレツが見つけたからに決まってんでしょうが⁈ アンタ! 薔薇を一輪貰う代わりに、そんなことまで…」
キッカの言葉が終わる前に、モンドは脱兎の如くその場から走り去る。
「ちょっと待ちなさいっ‼︎」
走り去ったキッカの背を見送りつつ、ジュドーはふと疑問を口にする。
「何でモンドは薔薇なんか欲しがったんだ?」
「そりゃあ……ねえ…」
そう言いイーノは、ちょうど2人のいる休憩室前を通りかかった双子の少女に視線を向ける。
「ん? サラサとラサラか?」
シャロン学園がニュータイプの学校であることを聞きつけ、学園で学ぶために2ヶ月ほど前に編入してきた双子の姉妹。
「確か一緒に居た爺さんが、『ムーンムーンの民を全員編入させろ』とか言ってきて、人数的に無理だから学園で教員を育てるってなって、連れてきた2人だろう?」
「あの爺さん凄かったな。いきなり『大学部の教育を受けさせろ』とか言ってきて…」
「理事長が論破して高等部に編入したんだっけ? それがどうしたんだ?」
「……その調子じゃあハマーンさんの事、気づいてないな?」
「ハマーンがどうかしたって?」
呑気にそう言うジュドーの言葉に、イーノはため息を吐きつつ首を左右に振った。
********
サイド6からの航行を終え、私キシリアの乗るアーガマは、サイド4の首都バンチに到着した。
帰りはラーディッシュに乗艦予定で、内心楽しみにしているが、アーガマを降りるのも名残惜しい。そんな気持ちを抱きつつ艦橋から見下ろすと、艦の運用訓練で航路を共にしていたシャロン学園の中学部以上の生徒たちが、雑談し楽しげに下艦する様子が見えた。
「自由行動ですか?」
「交代制です。艦を空にはできませんから」
艦内各所から送られてきた報告書…と言うより生徒らのレポートをタブレットで確認しつつ、ブライトはそう答える。
「どうですか、生徒たちは」
「正直教え足りないところはありますが…あとはバスクに任せるしかないですね」
そう言いつつブライトはやや渋い顔をする。こちらとしてももう少し学園で教授して欲しいところだが、旧エコーズの元連邦兵が不穏な動きをしていると情報が入っている。この後の復路を含めた実地演習を最後に、エウーゴから派遣されたブライトら連邦兵は、本部に帰還する予定となっていた。
「ベッケナー殿とアマダ殿が移籍を申し出てくれて、こちらとしてはありがたいです」
「あー……正直こちらは困りますが…まあ仕方がないですがね」
そう言いブライトが苦笑したのもそのはず、ヘンケンとシローが移籍する理由は、端的に言えば学園所属の者に好意を抱いたのが原因であった。
まあ、色恋沙汰は私には縁のない話であるが…
そうこうしている内に、リアナがフレミング・インダストリーから迎えが来たことを伝えに来た。
私はブライトに艦を任せて、リアナと護衛のバーナードと共に外出することになった。
サイド4「ムーア」。
ジオン独立戦争でサイド内が戦場となり、半数近くのコロニーが破損する甚大な被害が出た。
このサイド4の首長を務めているのはフレミング家であり、同家の会社フレミング・インダストリーが運営・統治している企業国家のような形態となっていた。
フレミング・インダストリー本社に併設されている行政庁舎の応接室で、サイド4の首長が出迎えた。
「直接お会いするのは初めてですね。 キシリア・ザビ理事長」
「お会いできて光栄です。オットー・フレミング首長」
挨拶もそこそこに、私とオットーは席に着いて早速本題に入る。
「まず最初に、我がシャロン学園への寄付に対して、御礼申し上げます」
「今後のことを鑑みれば、教育に投資することは吝かではありません。人材育成は、我らスペースノイドの未来を考える上で最重要事項と言えますゆえ…」
「スペースノイドの未来を考慮するのでしたら、サイド間の連携を固めることは急務ではございませんか?」
室内は硬質な床ゆえ、思った以上に通った私の声に押されたように、オットーは押し黙った。
「責めているのではありません。先の戦争で、サイド4は多大な被害が出ました。それはあの時、同盟関係でないことからジオンが軍を出す口実が無かったのが原因」
「……分かっております。同盟を結んでいない相手へ、援軍を要請することができなかった」
「サイド間の互助関係は、有事より以前に構築しなければなりません。それを理解していながら、何故サイド6からの共栄圏参画に拒否したのでしょうか?」
暫し黙秘を続けていたが、私の視線に耐えられず、オットーは深い息を吐きつつ口を開いた。
「現状では、我らには共栄圏に貢献できる手立てがないからです。それでは対等な関係を築くことはできません」
サイド4のフレミング・インダストリーの所有する工業コロニーは、戦争に全て破壊されていた。その再建計画を立て、先に居住コロニーを再建したのだが問題が発生、ほとんど人が戻らなかったのだ。労働者が確保できる見込みがないことから、計画は完全に頓挫している状況であった。
「サイド6がサイド1に投資をして、本格的な工業コロニー群を作る計画が持ち上がっています。それを受けて、我がサイド4から人が流出しているのです」
「その非難はお門違いかと。サイド1はすでにサイド6と共栄圏を形成しております。身内への投資を優先するのは、当然では?」
私の正論を受けて、オットーは再度押し黙った。異世界の情報では、確かサイド4は壊滅した責任を取って自ら命を絶ったオットー・フレミング。これ以上追い込むのは、彼の精神の許容を超える恐れがある。
手元の扇子を軽く開きパチンと閉ざしてから、私は徐に口を開いた。
「…被害が甚大だったサイド1では、農業プラントコロニーは不足しています。そしてサイド4で居住コロニーの空きが多い…確か、居住コロニーならば、農作物の生産は可能では?」
「…サイド4を農業プランテーションしろと?」
「あくまで提案です」
静かにそう言い切る私に対して、オットーは反論を試みようとしたが、次の瞬間には考え込んだ。
「……確かに輸出先の見込みはある。しかし我らには知識と技術がない」
「それについてですが、シャロン学園が人材派遣をできればと思っております」
そして私は土産の入った箱をテーブルに上に置き、箱の蓋を開けた。
「これは?」
「艦内で育てた苺です。学生の研究成果の一つです」
そう言う私の言葉に誘われるように、オットーは箱の中にある新鮮で瑞々しい苺に視線を止めた。
「……人材と共に技術提供もすると」
「はい」
「施しを受ける気はありません」
「還元です。我が学園へ寄付していただいた見返り。ロナ家には教員派遣、ヤシマ家には環境プラントコロニーの新規顧客開拓、そしてエッシェンバッハ家には……」
「あくまでも『我が家』への、学園からの還元ということだな?」
私の言葉の途中で割り込み真剣な眼差しを向けつつ、オットーは確認してきた。
「フレミング家で無人コロニーを幾つかお持ちでしたよね? そこで試験的に栽培されたらいかがですか?」
「その後は?」
「ご自由に。できた農作物を売るのも、食すのも、新たな無人コロニーで栽培するのも構いません」
「……サイド1、サイド6との共栄圏、我がサイド4の参画を前向きに検討いたしましょう」
そう言い差し出された右手、私は硬く握り返したのであった。
今月も引き続き本職が忙しいので、週1〜2くらいの更新になりそうです…
次回は来週土曜日、早く書けそうでしたら月か水に更新します。
あなたが好きなキャラクターは? ②
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キシリア・ザビ
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マ・クベ
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キャスバル・レム・ダイクン
-
ギレン・ザビ
-
ドズル・ザビ
-
アムロ・レイ
-
ララァ・スン
-
ニアーライト
-
シャリア・ブル
-
パプティマス・シロッコ
-
カミーユ・ビダン
-
ジュドー・アーシタ