筆が進みましたので更新します。
最終章ですから伏線や仕込み、裏設定を回収していかないと(汗)
宇宙世紀0092年。
共和国に移行してからジオンの政務機関も一新され、立法を担う「ジオン共和国議会」、行政を担う「ジオン共和国評議会」が設立された。
そして評議会の国防省の要である戦略委員会、その中心人物でありギレンの後任となった、チャップマン・ジロム軍政執政官とランドルフ・ワイゲルマン軍務執政官は、厳しい表情をして突撃起動軍総司令のマ・クベに尋ねた。
「どうだった、マ少将」
「シャア大佐の方の首尾は?」
「キシリア様の持つ発信機の発信源を探ってもらいましたが、宙域にそれらしきものは見当たらず…」
その言葉を聞き、同席しているキャスバルも眉間に皺を寄せつつ口を開く。
「こちらもそうだ。シロッコがキシリアの持つカリョーヴィンの起動キーの逆探知をしてもらったが…身を隠せるような場所は見つからなかった」
「……流石はギレン様が選ばれたキシリア様の隠遁先です…」
半ば感心するような声で、セシリアはため息混じりでそう言った。
「情報部の方も収穫なしだ…やはり次の定期検診の時に、フラナガン医療センターへキシリア様が姿を現すタイミングを待った方がいいのでは?」
「最終的にそれも考慮するが…キシリア様とギレン様が共に居る確証は何処にもない。万が一ギレン様の身に何かが起きたのであれば、早急に動かねばならぬ」
ワイゲルマンの提案にジロムはそう言い重々しく首を左右に振った。
そう、マ・クベらはキシリアを探しているのではない。
彼らはギレン・ザビの行方を探していた。
事の発端は一週間前。
ギレンがジオン大学の授業担当をしている講義に現れなかったのだ。
急な用事で休むことはあったことから、その時点では大学側も深刻に捉えず、ギレンの秘書であるセシリアに連絡した。しかしセシリアも預かり知らぬ話であり、慌ててギレンの捜索が開始されたのだ。
ギレンの姿が最後に確認されたのは10日前。ザビ邸本邸でセシリアに幾つかの指示を出した時を最後に、以後は誰もギレンを見ていない状況であった。
国防省でジロムらとの情報共有を終え、マ達はザビ邸に戻る。
そこで待っていたサスロとドズルに、セシリアは静かに頭を下げた。
「申し訳ございません…私が離れた隙に…」
「いや、セシリア殿に責任はありません」
セシリアを擁護するように、マは首を左右に振ってそう言った。屋敷の警備兵も「邸宅から出た形跡はない」と証言しているのだから…
「ギレン兄上のことだ、おそらく邸宅内の緊急シャトル発着場を使ったのだろう」
「だがサスロ兄、そこも調べたが痕跡はなかったぞ」
「俺もお前も把握している設備は一部に過ぎん」
「つまり我々が知らない設備がまだ、ザビ邸の敷地内にはあると?」
キャスバルの言葉にサスロとドズルは同時に頷いた。
「デギン様ならご存知では?」
マの言葉にサスロは首を左右に振る。
「父上も大規模改修には関与していない。把握しているのは、改修を指示したギレン兄と実際に手配したキシリアだけだ」
サスロとドズルを中心に総出でザビ邸内を探しているのだが、いまだにギレンは見つかっていない。しかし邸宅内の使用人への聞き取り調査で分かったことがいくつかあった。
それはギレンがキシリアの子供時代の服を大量に持ち去ったこと、そして隠遁しているキシリアが突然邸宅に姿を見せ、いつの間にか立ち去っているという話であった。
「しかしギレン様は、本当にキシリア様の隠遁先におられるのですか?」
そう言いマはドズルに視線を向ける。
「この前に姉貴が帰った時、ギレン兄との会話で言っていた。『兄上のお手隙の時に“ミナレット”まで足を運んで欲しい』ってな」
「その“ミナレット”はキシリアの隠遁先の名称だ」
これらの情報を踏まえてマ達はキシリアの隠遁先を探しているわけだが、“ミナレット”の手がかりすらつかめていない状況であった。キシリアが身につけている発信機もまた、前述の通り居場所を指し示す手がかりにならなかった。
「八方塞がりだな…」
キャスバルが呟いたその時、マらが集まっているギレンの執務室にザビ邸の老執事が姿を現し、来客を告げたのであった。
「君は……確かグレミー・トトだな。なぜここへ?」
来客はシャロン学園の大学部の生徒のグレミー・トトであった。
「キャスバル理事長、今日はギレン・ザビ元総帥に用がありまして…」
「すまない、今は兄は不在でな。私でよければ話を聞くが」
「サスロ叔父上が…ですか?」
グレミーの口から思わぬ言葉が出てきて、一瞬時間が止まる。
「………おじィ? サ…サスロ兄がか?!」
「そうです。ドズル叔父上」
「なっ?!」
ひと足先に再起動したドズルであったが、「叔父」と呼ばれて再び静止してしまう。その様子を見てグレミーは訝しげな表情を見せる。
「……キシリア叔母上から話を聞いていませんでしたか?」
「お…叔母?! キシリア様が?!」
「はい」
驚くセシリアに対して淡々とそう答える様子をマは観察する。年齢からしてガルマの子供である可能性は除外される。「まさか」と思いつつもマは表情をとり繕って口を開く。
「君の父君は、ギレン様ですかな?」
「はい。キシリア叔母上からそう聞いています」
一瞬静寂。
その後、一斉に混乱した。
老執事にお茶を頼み、応接室に人数分のお茶が回って各々が口をつけたタイミングで、サスロが混乱の最中に断片的に聞いた情報を纏める。
「つまり君はキシリアの手で、名家のトト家に養子に出されたと。しかし義父に続いて義母が亡くなった時に、トト家を君が継ぐことを親類は認めなかったと言うわけか」
「はい。幸い義母が万が一の時の頼り先として、キシリア前理事長との伝手を残してくれていました。そしてシャロン学園に入学したのです」
「……キシリア様と面会した時に、ギレン様との関係を…知らされたのですか?」
セシリアの問いに、グレミーは首を左右に振って否定する。
「いいえ。最初に会った時、キシリア前理事長は僕の母は親友だったと…父がギレン・ザビと知ったのは、キシリア前理事長が学園を去る前日に呼び出されて、その時に教えていただいたのです」
その時キシリアはこうも言っていたそうだ。
グレミー・トト、君の出生は些か複雑な事情が絡んでいる。知ってしまえば己が自身を否定する恐れもある。それを理解した上で覚悟ができた時、ギレン・ザビに会いなさい…と。
「そしてこれを僕にくれました。僕の本当のママン…母上の形見だと。そしてギレン・ザビに必ず見せるように…と」
そう言いグレミーは机の上に剣と天秤のモチーフが刻まれているペンダントを机の上に置いた。
「…Thémis。旧世紀でも古代に分類される時代に信仰されていた、掟と予言の女神『テミス』の名称ですな」
マは手に取ることなく、ペンダントの文字とその意味を読み取った。
さらにグレミーは、フラナガン医療センターが発行した、ギレン・ザビと親子関係を証明する遺伝子検査結果証明書も見せてきた。セシリアは一瞬取り乱したような挙動を見せて証明書とグレミーを見比べていたが、彼が一瞬浮かべた寂しげな笑みに気づき、言葉を飲み込んで証明書を返却したのであった。
「話はこれくらいでいいでしょうか? 父…ギレン前総帥に会わせてください」
少しばかりの苛立ちを込めた声で、グレミーはギレンとの面会を要求する。
サスロは確認するようにドズルとキャスバル、そしてマやセシリアに視線を向けた。そして全員が一様に頷くのを見たのち、サスロは口を開く。
「会わせたいところは山々であるが…今ギレン・ザビは居ない」
「分かっています。居場所を教えてください」
「キシリアの所だと思うが…彼女の隠遁先である“ミナレット”の場所が分からなくてね」
そう言うキャスバルの言葉を聞き、グレミーは少し首を傾げて爆弾発言をした。
「…ミナレット? 僕がトト家に預けられる前にいた場所のことですか?」
懐かしげにグレミーが移動した先は、ギレンが良く手入れをしていたザビ邸内の薔薇園であった。
「確かここです」
「一度しか来ていないと言っていたが、良く覚えていたな」
「記憶力だけはいいので」
そう言いグレミーは勝手知る場所と言わんばかりに、薔薇園の中へと入り迷いなく先へ進む。そして一番古くからギレンが育てている白薔薇の木に近づいた。そして枝葉に偽装してあったレバーを引く。すると薔薇園を囲っている壁の一部に地下通路が姿を見せたのであった。
「ここで高速シャトルから降りて、僕はサイド3に来たんです」
進んだ先、古いながらも使用感のある隠しシャトル発着所に辿り着いた時、懐かしげな表情と共にグレミーはそう言った。
「……シャトルが無いな」
「じゃあ、ギレン兄はここから別コロニーへ?」
そう言いつつドズルは、簡易オペレーターシステムを操作しているマに視線を向けた。
「間違い無いでしょうな。9日前にシャトルの出航記録が残されています」
「航路記録は?」
「ありますが……」
突然言葉を切ったマに対して、キャスバルは訝しげな表情を見せる。
「どうした?」
「どうも移動先は周回軌道を取っているようですが…同じなのです」
「何がだ?」
「シャア大佐やシロッコ学園長が特定した、キシリア様の持つ発信機が指し示した地点、それが周回軌道上に位置しております」
「……隠蔽されていると言うのか?」
「となりますと少々骨が折れますな。シャア大佐の機体はジオン軍最新鋭の電子戦特化機であるアルス・ジャジャ試作機。それでも隠蔽を見破れないとなると…」
「シャロン・フェアリー隊でも、シロッコがジ・OⅡを持ち出したと言うのに、何も手掛かりは見つからなかったな」
「ちょっと宜しいでしょうか?」
その時、奥の資料室の書類を改めていたセシリアが皆に声をかける。
そしてセシリアが見せてきたのは、まだ学生時代と推定されるキシリア、若い頃のギレン、2人と同年代の複数人の姿が写ったどこかの施設内部の写真であった。そして写真を見るや否や、グレミーは興奮したように声を挙げた。
「っ‼︎ ここです! “ミナレット”、ここに僕はいた!」
写真の中のキシリアやギレンを始めとした全員が、グレミーが持ってきた「テミスのネックレス」を身につけていた。
「ご足労いただき、感謝いたします」
そう言いマは、ザビ邸の地下にある無窓会議室に集まった4人に視線を向ける。
ジャコビアス・ノード。ジオン共和国軍突撃機動軍のMS隊中隊の元・副隊長。現在は黒い三連星を始めとした退役軍人が多く再就職している警備会社「テミス」の社長。
ヒュー・マルキン・ケルビン少将。ギレンの学生時代の学友で、ニアーライトの上司に当たるジオン共和国軍情報部司令。
ジョニー・ライデン中佐。キシリアの学生時代の学友で、ジオン共和国軍突撃機動軍のMS隊中隊の隊長。
エイシア・フェロー・ライデン。キシリアの学生時代の後輩。現在はジョニーと家庭を持ち、娘イングリットを持つ一児の母。
「“これ”についてお伺いしたい」
そう言いマが机の上に置いた“テミスのネックレス”を見て、ケルビン以外の3人が目に見えて動揺した。
「…マ少将、これをどこで?」
ケルビンが冷静に尋ねる。
「ある青年が持っておりました。そして青年の母の形見であると、ネックレスを渡したのはキシリア様です」
「青年……ですか?」
「はい。遺伝子検査で彼はフラナガン・ロム博士の縁戚であることが判明しております。母子関係が最も疑われている者の名はセリーヌ・ロム…フラナガン博士の娘で、ギレン様の婚約者だった者…」
マはそこで言葉を切り、隠しシャトル発着所で見つけた写真の画像データを4人に見せ、若い頃のギレンの隣に居る者を指差した。
そしてそこには、目の前の4人の姿も写っていた。
「…ギレン様は“ここ”に居る可能性が高い。故に確かめに行きたいと考えております」
そう言いマは、人物の背景部分…“ミナレット”と考えられる場所を示した。
「……なるほど。正直、貴方がたの“依頼”でこれ以上拘束されるのは、私に取っても避けたいところではある」
ケルビンが口にした依頼とは、情報部に頼んでいるギレンの捜索のことであると、マは瞬時に理解した。
「ヒュー…仲間以外に話すのは『テミス』の規則違反…」
「キシリア様が『テミスの徽章』を預けたということは、我らが受け持っていた“ミナレット”の管理を委ねるという判断では?」
ジャコビアスの言葉を断ち切るようにそう言い、ケルビンはジョニーとエイシアに視線を向ける。
「2人の意見は?」
「……俺も同じ意見だ。マ少将であれば、キシリア様も納得するはず」
「私も…です。あの忌まわしき宇宙港の事故から四半世紀以上…ギレン様もキシリア様も表向きの場から去った今、秘密を抱えるのは限界と思っていました」
黒い三連星がジャコビアスの管理している戦艦「サングレ・アスル」の管理システムに向かい、エイシアから教えてもらった裏コードを入力。“ミナレット”の詳細な周回軌道情報が、マ・クベらに伝えられた。
そしてマ・クベ、キャスバル、ドズル、ジョニー、グレミー、セシリアは、座標が示した先に向かうが…
「報告通り何もありませんね。では、ジョニー中佐」
マに促され、ケルビンから借り受けたビーコンをジョニーは起動する。ビーコンから放たれた探索レーザーが、ジョニーの身体をスキャンする。
そして……
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《キシリア》
「どうしました、セリーヌ?」
《正規登録者が“ミナレット”近辺に来ている。“エキドナ”が迎撃か入港許可か、指示を求めているわ》
「正規登録者…誰か分かる?」
《ジョニーよ。ジョニー・ライデン》
「……隠蔽解除。入港を許可します」
第20話の伏線回収(汗)。
次回は来週土曜日更新予定。
筆が進めば、月曜日か水曜日に更新します。
あなたが好きなキャラクターは? ②
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キシリア・ザビ
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マ・クベ
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キャスバル・レム・ダイクン
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ギレン・ザビ
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ドズル・ザビ
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アムロ・レイ
-
ララァ・スン
-
ニアーライト
-
シャリア・ブル
-
パプティマス・シロッコ
-
カミーユ・ビダン
-
ジュドー・アーシタ