私という一頁の物語   作:スナエ

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釣り

 東くんの引率で、渓流釣りに来た。

 メンバーは、小荒井くん、奥寺くん、木崎くん、諏訪くん、穂刈くん、冬島くん、村上くん、半崎くん。それと、私。

 それぞれ暑さ対策をして、釣糸を垂らす。マイ釣竿よ、頑張れ。

 

「砂子さん、ルアーってどれがいいんです?」

 

 半崎くんに訊かれた。

 

「その焦げ茶色のやつかな」

「了解。何かコツは?」

「鮎は、上流を向きながら川底のコケを食べるから、岩にコツコツ当てるように動かすといいよ」

「ありがとうございます」

 

 しばし、折り畳み式の椅子に座り、獲物がかかるのを待つ。

 釣り、何年ぶりだろう?

 ちょっと怖いから、考えないでおこうかな。

 私が思考を逸らしていると、控え目な歓声が上がった。東くんが鮎を釣り上げたようだ。

「流石だねぇ」と呟くと、私の釣竿にもヒットする。

 糸を巻き上げ、岸に寄せて、釣り上げた。

 

「よし! 塩焼き!」

「砂子さんって、わりと食い意地張ってますよね」

 

 少し離れたところから、半崎くんに言われる。

 

「そんなことは、あるけど……」

「あるんだ」

「私が、ボーダーでカウンセラーやってるのは、お茶とお菓子が経費で落ちるからだよ」

「マジすか?」

「少しはね」

 

 半崎くんは、笑った。

 川のせせらぎが、夏の暑さをほんの少し忘れさせる。

 

「砂子さん、食堂でいつもご飯大盛りにしてません?」

「してる」

 

 返事をしながら、二投目。

 

「どこにそんなに入るんです?」

「胃」

「そりゃ、そうでしょうけど」

「生きるって、食べることだから」

 

「哲学、ダルいっすわ」と苦笑された。

 

「おっと」

 

 二匹目の塩焼き!

 

「やりますね」

「名前に海が付く者として、これくらいはね」

「ここ、川っす」

「川は海に繋がってるでしょう?」

「はあ…………」

 

 半崎くんと、益体もない会話をしていると、冬島くんに話しかけられた。

 

「砂子さん、見て。二匹」

 

 同時に二匹釣ったらしい。

 

「おお! やるね、冬島くん」

「そういえば、砂子さんは、麻雀覚えないんですか?」

「私には無理だよ。役が覚えられなくてね。賭けポーカーをするなら、誘ってよ」

「嫌だなぁ。そんな、いつも何か賭けてるみたいに」

 

 目線が合わないが?

 

「砂子さん、ポーカーフェイスだしなぁ」

「職業柄ね」

「はは。手強そうだ」

 

 そんなこんなで、渓流釣りイベントは、和やかに進む。

 

「じゃあ、グリルの準備が出来たので、焼きましょうか」

「ガンガン焼こう!」

 

「はい」と、苦笑混じりに言う東くん。

 年少者から順に、鮎の塩焼きを渡していく。そして、自分より先に私にもくれた。

 

「ありがとう、東くん」

「いえ。同行してもらえて助かりました」

「そう?」

「もちろん」

「また何かあったら、声かけてよ」

「はい。頼りにしてます」

「それじゃあ、いただきます」

 

 塩焼きにした鮎は、とても美味しい。

 やっぱり、生きるって、こういうことかも。

 私の人生、食欲・睡眠欲・物語鑑賞欲で出来てるな。

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