私という一頁の物語   作:スナエ

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読書の秋

「2+2は、いつも4」だと、オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授は言ったけれど、私はそうは思わない。

 推理小説の探偵に文句をつける気はないけど、現実って、もっとテキトーなものだよ。

 その辺は、私と弟の意見は同じである。弟曰く、「気分でいつも通らない道を行くこともある」「16タイプ診断の結果が、毎回違う」「そんなに一貫したシュミはない」らしい。

 テキトーを擬人化したような男の言には、説得力がある。

 かつて、機械的に物事をこなすことが「人間的」とされていた時代があった。ロボット工学やAI技術が発展した現代では、感情的な言動を「人間的」と言う。

 私は、SFのオタクであるが故に、「システム」が好きだ。虫のシステマチックなところが大好きだ。そういうところを気持ち悪いと言う人もいるが、私は「機能美」だと考えている。

 まあ、私は生物全般が好きだけどね。

 でも、鳩だけは苦手。我が家に害があるから。勝手に棲み着こうとしないでほしい。

 

「砂子さん」

「なに?」

「ホームズのライバル探偵ってたくさんいますけど、誰が一番好きですか?」

「シャーロキアンに訊くかね、それを」

「いや、気になるじゃないですか」

 

 カウンセリングルームで、諏訪くんと、ふたりきりの読書会をしている最中に、そんな質問を投げかけられた。

 

「ジョン・イヴリン・ソーンダイク博士かな」

「オースティン・フリーマン」

「うん。ストランド・マガジンのライバル誌である、ピアスンズ・マガジンの探偵だよ」

「なるほど」

 

 諏訪くんは、納得したみたいだ。

 

「そういえば、砂子さんの、国内で一番好きな探偵は?」

「深山木探偵」

「誰すか?」

 

 そうなるよねぇ。深山木幸吉は、名探偵じゃないし。

 

「江戸川乱歩の孤島の鬼に出て来る、事件を解決しないで退場する探偵」

「ああ!…………なんで?」

「私が初めて触れた探偵は、ホームズだったから、事件を解決出来ない探偵に衝撃を受けたんだよね」

 

 “名探偵”とは、真実に辿り着く“システム”だ。私が、ミステリのオタクではなく、探偵もののオタクである所以は、そこにある。

 そんな“システム”になれなかった彼は、ただの探偵。“名探偵”の成り損ない。愛さずにはいられない。

 

「意外なシュミですね」

「好きな名探偵は、別にいるよ。誰でしょう?」

「ヒントください」

「性格が悪い」

「ヒントになってねー!」

 

 文句を言う諏訪くんを見て、私は笑った。

 

「当てたら、ひとつ言うこと聞くよ」

「質問。性別は?」

「男」

 

 読書の秋って楽しい。諏訪くんと不定期に開く読書会は、いつも楽しいよ。

 

「……砂子さんって、ちょっと名探偵っぽいですよね」

「私が?」

「白衣のカウンセラー探偵。ホワイダニットがメインだろうな」

 

 ホワイダニット。何故、行ったか? 犯行の動機の解明を重視したミステリ。

 

「ああ、それは私向きかもね」

「でしょう?」

 

 諏訪くんも、かなり名探偵っぽいけどねぇ。

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