私という一頁の物語   作:スナエ

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Beg you to stay

 前に、荒船や人見と映画館デートをしたと知って、ムカついた。

 砂子さんは、ラーメン屋とか猫カフェとかに誘ったら、俺にもほいほいついて来そうで、それもムカつく。

 俺の中では、常に嵐の中心の人。砂子さんが、呑気そうに廊下を歩いていた。歩幅が全然違うから、すぐに追いつく。

 

「砂子さん」

「こんにちは、当真くん」

「こんにちは」

「どうかしたの?」

「どうもしねーけど」

「そう」

 

 どうかしてるのは、あんたの方だ。俺は、ちょっと砂子さんに興味があるだけ。

 

「当真くん」

「はい?」

「なにか悩んでない?」

 

 心配そうな表情をしている。

 

「いらねーっつの、そういうの」

「そっか」

 

 そうやって、すぐに引き下がるとこも、嫌いだった。線引きがあるからだろ、それ。

 

「そういや、ひとつ頼みがありました」

「なんだい?」

「俺とデートしてくださいよ」

「デート?」

 

 不思議そうな顔をして、砂子さんは足を止めた。

 

「どうして?」

「今更、ふたりも3人も変わらないっしょ」

「荒船くんと人見さんのこと?」

「そうそう」

 

 それに、どうせ他の奴らともオフの日に会ってんだろ? 俺は、会ったことがない。腹が立つ。

 

「どこか行きたいとこがあるの?」

 

 あんたがいれば、どこでもいーけど。

「猫カフェ」と、答えておく。別に、ひとりで行けるが。

 

「猫、いいよね。生き物は、みんな可愛い。一種を除いて」

「人間?」

「まさか!」

 

 そりゃそうだろうな。じゃなきゃ、カウンセラーなんてしてないだろう。

 

「一体、なにが嫌いなんです?」

「……内緒にする?」

「します」

「……鳩だけ苦手。家のベランダを汚すから」

「なるほどな。実害あるんじゃ、しょうがねーな」

「そうなんだよねぇ」

 

 あんたを一番害してんのは、人間だと思うけど。それは、いいのか?

 

「それで、返事は?」

「いいよ。じゃあ、連絡先交換しとく?」

「はい」

 

 ムカつくけど、ラッキー。ちょろいぜ。

 メッセージアプリに、「よろしくお願いします」と、可愛いキャラクターのスタンプが届いた。

 俺が理由をこじつけないと、あんたは傍にいてくれないんだもんな。

 本当は、あんたにすがり付いた方がいいんだろう。砂子さんの庇護欲をそそるようなやり方がいいんだろう。

 でも、してやんねー。それじゃ、その他大勢と一緒だから。

 俺には、俺の頼み方がある。

 

「猫、飼いたいな」

「飼えばいいじゃないですか」

「うちのマンション、ペット禁止。それに、私は他の命を預かれないし」

 

 責任能力がないから、と自虐した。

 間接的に、他人の命を預かってる癖に。あんたの匙加減で、隊員の生き死にが決まることもあるんだぜ?

 逃げたいなら、一緒に逃げてやるのに。

 この心が満たされるためなら、俺はなんだってする。

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