私という一頁の物語   作:スナエ

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優しい人

 連日、フル稼働でカウンセリングをした。第二次近界民侵攻の余波だ。

 ブドウ糖タブレットを齧りながら、頭を働かせ続ける。

 

「俺が拐われかけちまったせいで、ショックを受けた奴が、たぶんいて……」

「それは、いるだろうね。君は隊長だし、慕われてる」

「俺は、どうすればよかったんですか?」

「諏訪くんは、何も間違っていない。隊員を守っただけだ。次は、自分も守ればいいだけ」

 

 私は、いつも通り、淡々と静かに告げた。

 

「からかわれもするんですけど、たまに、気遣われてるのかもしんねーって思う時があって」

「例のキューブの件?」

「はい」

「まあ、そうかもね。君は、平気なの?」

「平気です。結局、拐われてねーし。それより、拐われた隊員のことが気がかりです」

「そうか。君は、優しいね」

「俺は…………」

 

 諏訪くんは、躊躇いがちに言葉を続ける。

 

「……ただ、したいようにしてるだけです」

 

 根っからのお人好しなんだなぁ。粗野なところはあるけど、本当に善い子なんだよな。

 

「それがいいよ」

 

 心と言動が同じであることは、良いことだから。まあ、基本的には。

 

「時間だね。また、何か話したいことがあったら、いつでもおいで」

「はい。ありがとうございました」

 

 諏訪くんを見送った。

 

「はぁ…………」

 

 溜め息をつく。優しくて気遣いが出来る人は、他者の痛みに敏感な傾向がある。他人が傷付くところを見て、心を痛めることが出来る人が辛い目に遭うなんて、そんな理不尽、見過ごせない。

 自分の鈍さには、呆れる。物語が好きなのに、私は物語には愛されない気がしていた。人間が好きなのに、人間には愛されない気がする。

 でも、いたんだよ、奇跡的に。世界に、たったひとりだけ。まあ、もう切ってしまったんだけどね。たったひとりの“特別”を手放すほど、ゆるせないことがあったんだ。

 きっともう、誰も私を好きにならないだろうけど、いいよ。恋人というものが一度いたのが、奇跡だったワケだし。

 面倒なんだよ。不定性やアセクシャルや精神疾患や家庭の事情を話すの。そして、それを受け入れてもらうこと。本当に、かったるくて堪らないね。

 だから、もういいかな。体験が好きだから、結婚はしたいけど。出来れば、友情結婚がいいな。でも、友人すらいないんだよなぁ。

 諏訪くんが友達だったら、よかったのに。なんて、どうしようもないことを考える。

 まあ、そうなったら、諏訪くんが不憫だけど。私ほど、友達甲斐がない奴もいないだろう。

 人生は、ままならないねぇ。

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