私という一頁の物語   作:スナエ

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負傷

 他人のために命を投げ出せるか?

 私の答えは、ノーだ。

 今日は、強制的にカウンセリングになった三雲修くんと対話しなくてはならない。

 

「なんで呼ばれたか、分かってるかい?」

「違反行為をしたからですか?」

「違うよ。死にかけたからだ」

「そうなんですか」

 

 事の重大さを分かっていないのか? 君は、危険を省みずに、トリガーをオフにしたそうじゃないか。

 

「三雲くんは、自分が弱いと思う?」

「弱いとしても、戦うことは出来ます」

「そうだね。君は、他人のために戦える子なのかな?」

「ぼくが、人を助けたいから、そうしているだけです」

 

 話をしている限り、彼はトラウマを負っていないようだった。

 自分が弱いから狙われる。暴力には暴力で対抗するしかない。誰も守ってくれない。そういったトラウマの類型があるのだが、どれも持ってなさそうだ。

 死にそうな目に遭っても、折れない志がある。それが、君の強い面か。

 

「記者会見、見たよ。度胸あるね」

「それは……ありがとうございます…………」

「遠征目指してるんだろう? がんばってね」

「はい。ありがとうございます」

「私からは、以上。お茶とお菓子、どうぞ」

「あ、はい」

 

 三雲くんは、大福を食べて、緑茶を飲んだ。

 

「何か訊きたいことはある?」

「砂子さんの役割って、負担が大き過ぎませんか? 現状、代わりがいませんし……」

 

 それ訊く~? 私のことなんていいのに。

 

「出来ることをしてるだけだよ。私は、大人だ。任せときなさい」

「……はい」

 

 まだなんか言いたそうだな。

 

「すいません。ぼくのせいで、仕事が増えてしまって……」

「そんなこと気にしなくていい。君は、本来なら守られるべき存在なんだから」

「はい……」

 

 身を削らなくていいよ。心を砕かなくていいよ。命を懸けなくていいよ。そう言ってあげられたらな。

 こういう時、己の無力さを感じる。彼らの生き死にに、私はほとんど関与出来ない。

 

「どうか、健やかでいてね。楽しい思い出をたくさん作ってね」

「はい」

 

 三雲くんは、私の目を真っ直ぐ見て返事をした。

 子供の頃を、戦争だけで塗り潰してほしくはない。だから、美しく煌めく宝石のような記憶を。そういうものを握り締めて、進んでほしいんだ。

 これは、私のエゴ。戦場に繋ぎ止める役割を持ちながら、君たちの平穏を望む。矛盾している私。いつか、地獄に落ちる私。

 誰に称賛されなくとも、私は私をやり続ける。

 

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