私という一頁の物語   作:スナエ

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共犯者

 彼の身長は、178㎝。私は、150㎝。だからいつも、カウンセリングルームの椅子に座ってもらってから、抱き締めている。

 正面から抱き締めて、肩越しに囁く。

 

「私は、城戸さんの味方ではありません。ですが、私とあなたは共犯者です」

「ああ……」

「そして、私は、あなたを置いていなくなることはありません」

 

 私は、生き汚いのだ。世界中に迷惑をかけようが、私は生き抜いてみせる。

 城戸さんの片手が、私の背中に触れた。

 

「きみは、組織にとって、欠けてはならない人だ」

「あなたもです」

「そうだな。私は、必ず目的を果たす」

「ええ。"絶対に大丈夫"ですよ」

 

「またその呪文か」と、苦笑される。

 まあ、言霊というものがあるらしいから。おまじない。願い。祈り。なんでもいい、私は助かるためなら、悪魔に魂を売ってもいいんだ。

 仮初の平和でも、それが永遠に続けば、世はこともなし。真の平穏が手に入るなら、もちろんいただくが。

 

「それでは、そろそろお茶にしましょうか」

 

 体を離すと、ぱちりと目が合う。

 

「いつもすまないな……」

「ははは。いいんですよ。浮き草のように生きてた私を拾っていただけて、感謝していますから」

 

 からから笑って、城戸さん用のブラックコーヒーと、自分用のハーブティーを淹れた。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

 マグカップを手渡し、ただのカウンセラーとクライアントに戻る。

 

「今度、映画の上映会をするんです。城戸さんも来ません? あの子たち、腰抜かしますよ」

「人が悪いな。ちなみに、映画のタイトルは?」

「カリガリ博士です」

 

 私は、1920年に公開された、ドイツのサイレント映画のタイトルを告げた。この映画は、私のお気に入りのホラー/ミステリージャンルの物語である。

 

「相変わらずだな」

 

 大脱走と同じくドイツが舞台なのに、全く毛色の違う映画。相変わらず、私たちは————。

「趣味が合わない」と、声を揃えた。

 物語鑑賞が趣味の私は、当然大脱走も好きではあるが、オールタイムベストには入っていない。

 しばし、無言のままで過ごした。

 その後、空のマグカップを返される時に、私はじっと見つめられる。

 

「現海が最後まで見ていてくれるのなら、私の物語は幸せだろう」

「お任せください。プロですもの」

 

 私は、人に物語を見てきた。人間ひとり分の数々の人生を見てきた。

 嫌いな人間は、ただの物語。見たこと自体を、忘れてしまう。

 好きな人は、幸福な物語であれと祈る。

 どんな結末になろうとも、私はあなたを見続けるでしょうね。

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