私という一頁の物語   作:スナエ

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照準

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 胸に穴が空いて、そこに泥が詰まっている気がする。

 またダメだった。またひとり、私の前からいなくなった。

 無言で去られたから、何がダメだったのかは分からない。

 まあ、人付き合いには別れはつきものだけれど。でも私は、永遠を望む幼児性を手放せずにいる。

 気を取り直して、チョコレートのアイスを食べた。

「いってきます」と、出勤する。

 本日の最初のクライアントは、北添尋くん。こっそりと椅子を大きいものに交換しておく。

 数分後。ノックの音がしたので、「どうぞ」と言う。

 

「おはよう、北添くん。かけて」

「おはようございます」

 

 緑茶といちご大福を出して、カウンセリングを始めた。

 

「何か不安や懸念事項はある?」

「んー。特には…………?」

「どんな些細なことでも構わないよ?」

「選抜試験と関係なくても?」

「いいよ」

 

 気軽になんでも話してみてほしい。

 

「砂子さんって、トーマくんのことどう思ってますか?」

「当真くん……?」

 

 なんで、当真くん?

 

「そうだな。親切な子だよね」

 

 私は、少し考えながら返事をした。

 

「へぇ~」

「それが何か?」

「ちょっと心配なんですよね、トーマくんのこと」

「そうなの?」

「あんまり素直じゃないというか、複雑な感情というか」

 

 当真くんの“興味の出力の仕方”のことかなぁ?

 あ、“私への興味の出力の仕方”ってこと?

 

「それは、今のところ問題ないかな」

「そうなんですか?」

「うん」

「いやぁ、ゾエさん結構気になってて。問題ないなら、よかったです」

 

 その後は、取り留めない話をした。

 

「お疲れ様。何かあったら、いつでもおいで」

「お疲れ様です。ありがとうございました」

 

 北添くんを見送り、デスクに戻る。

 新しく作られた傷が、まだ痛い。

 無心で、板チョコを一枚食べた。

 

「はぁ…………」

 

 緑茶を淹れ直し、一口飲む。

 しっかりしないとな。大人なんだから。

 カウンセリングをする遠征選抜試験の臨時隊長は、あと5人だ。折り返しは過ぎている。

 もう少し、がんばろう。

 それにしても。彼の興味の矛先、いや、照準? って、周りに知られてたのか。

 意外だな。なんとなく。

 当真勇くん。君は、私のことを助けようとしているのかなぁ?

 気にかけてくれてるだけで、だいぶ助けられているけれど。

 私は、君を完全にシャットアウトすることはない。でも、君の手を取ることもない。

 それでも君は、私を助けてくれるだろうか?

 

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