沢山の絶望をあなたに   作:エレオノーレ・フォン・ゼートゥーア

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対ル戦略

「対()()戦争方針か、いや連邦か、何にせよ用いる事ができる手段は毒ガスと高火力兵器群の大量投入ぐらいだ、イマイチ勝利するまでの道行きが想像できない。」

 

「同感だな、数万の戦車を相手に帝国軍は必ず押し切られる、せめてウラル以東への産業移転を妨害できれば別だろうがな。」

 

「戦車と大砲の生産を妨害し、弾薬工場を稼働させない方針か、膨大な肉壁だけでも厄介には違いないが鉄量を抑えられれば幾分かマシになる。」

 

「鉄量を活かさせない方針か、加えて泥濘と氾濫した河川で利用できる上で零度以下環境で活動できる補給部隊の構築、そして浸透と強襲を行ってくる敵の機甲部隊を確実に撃破できる戦術か。」

 

「帝国は自国の鉄量に自信をもっているが連邦はそれを大きく突き放しているぞ、唯一上回っているのは民間産業と魔導部隊と海空軍だが、それらも分散を強いられる以上厳しい戦いになる。

連邦は軍の体制上、補給関係の一部が日本帝国も真っ青なレベルで劣悪なのか?戦術規模での機動戦への脆弱性が少し気になる。」

 

「あの広大な土地で、機動戦で勝利を掴めるならナポレオンは敗北してない。

確実にどこかで進軍は停止する、帝国はドニエプル川とダウガヴァ川に沿って必ず一度は停止しなければならない、渡河装備の充足を待つ必要があるからな、参った事に帝国は重要な区画の何れかが陥落した瞬間敗北するが連邦は気にせずマガダン州か沿海州まで下がる事ができる、合衆国がシベリアを貸し出したらアメリカ大陸まで出向せねばならん。」

 

「モスクワを占領できれば鉄道網を掌握できるから、打撃にはなるだろう。」

 

「現実的に考えて、まあそこで打ち止めだろうな、理想はカザンの占領だが流石に厳いだろうし。」

 

「カザン?モスクワ以東の都市に価値があるとは思えないのだが?」

 

「第三の首都と言われてる、工業も盛んだし研究の要所でもある、何より宗教的にも連邦と切り離す価値が高い。

ここさえ切り離せば大祖国戦争のプロパガンダを否定できるんだが、イスラムとキリストの両方を味方にできればな、ここまで行く為の手段を確立するまでが悩ましい。」

 

「なぜ?」

 

「私、ソ連三大都市そしてカザンの占領を為して、正教を共産党から分離後、キリスタンを味方に付けて宣伝戦を行い、米国のキリスト教信徒と仲良しこよしの茶番劇を展開するんだ。」

 

「そんなフラグを...」

 

 

「冗談はともかく、連邦は戦略規模での強襲浸透作戦を遂行できる。

さながらそれは我々帝国が夢見る大陸軍そのもの、機動戦によって全てを破断するそれは全戦術家の理想だ。

帝国は理想を前に現実に叩きのめされたが、連邦は理想を地で征くぞ。」

 

「なら、どうやって連邦を斃す。」

 

 

「決まっている、あの病を気にしない大怪獣の動脈(鉄道網)を叩き手足を麻痺させる。

手段は糖尿病(宣伝戦)でも再生不良性貧血(民間産業の消滅による産業再生不良)でもいい、あの国の手足である軍隊を支えるものを徹底して叩く。」

 

「ソビエト連邦からロシア連邦まで国家規模を縮小させるのか、それでも厄介には違いないだろうが何もしないよりはマシだろう。」

 

「自分は変えられないからそれ以外を叩く、ここらが限界だ。」

 

「手段と段階はどうするつもりだ?

私には戦場レベルでしか戦争を俯瞰する事はできないぞ、無論私にできる事なら協力するが。」

 

「敵が膨大な土地を利用した戦略を成熟させる前にケリを付ける、我々は開戦直後から敵の戦略の成熟を妨害するしかない。」

 

「つまり?」

 

「敵に損耗を強いて、構築した決戦部隊を利用して確実に撃破する、真の意味での戦略規模での内戦戦略の成就を妨害するんだ。

その為の戦略爆撃機と誘導爆弾、そして高性能な電子機器の量産が必要だったがそれは達成済み。」

 

「それだけでは、その戦略の妨害を成す事はできないのでは?確実に列車を捕捉するには面そのものを認識する必要があるが、そこまでの能力は帝国情報部にはないぞ。」

 

「帝国軍は既に光学を用いた偵察衛星の一般化が進んでいる、そして赤外線探知型の早期警戒衛星の充足も完了した今、大手を振って新開発のSAR衛星を利用して列車を標的として徹底した戦略規模での後方襲撃作戦を行う事ができる。」

 

「浅学故に理解ができないのだが、まあ要するに連邦のウラル以西は全て裸も同然だという事だな。」

 

「そーゆー事、衛星が常に帝都へ情報を送り出し、帝都からの指示通りに戦略爆撃機が誘導爆弾で列車を路線ごと破壊する、高度1万mを時速600km以上で飛ぶ爆撃機とそれを護衛するジェット戦闘機を必要十分に迎撃できる態勢を有する軍隊は未だ存在しない、開戦後数年は我が軍の独壇場だ。

ダメ押しで私達魔導師を投入してもいいしね、97式があればまあ作戦遂行は可能だろう。」

 

「熱核兵器はまだなのか?」

 

「一応核融合には成功しているんだが、計算機と起爆剤込みで40t近い代物を運用する事はできないだろう?まあ放射性廃棄物を利用したダーティー・ボムが精々だな。

3年あれば実践投入できると思うが、まあ戦争が終わっていても不思議じゃないし、それまでは化学兵器と魔導師と通常兵器の組み合わせで頑張るしかない。」

 

 

数万の戦車を生産しつつ毎日軍艦を建造し万単位で戦闘機爆撃機攻撃機輸送機を量産し核兵器を開発する『あの国の様にはやれない』と、彼女達は落胆した。

立ち込める暗雲、この闇を晴らす未来はあるのだろうか。

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