沢山の絶望をあなたに 作:エレオノーレ・フォン・ゼートゥーア
「本当に貴様は数を用意するのが好きだな...
他の計画では強化外骨格の性能向上を目的とした研究開発が行われているというのに、貴様だけ製造の簡素化と汎用性の拡大に舵を切るか。」
「まあ実際のところ戦争は数だからね、ターニャもそう思うだろう?こういった人型兵器は数を担保できない限り決して主力には成り得ないんだから。
...将来的には戦車や砲兵の代わりに死ぬ脇役か、或いは後方の三戦級戦力として縁の下の力持ち的な位置に落ち着くだろうし、てか内部ユニットとして運用したいから基本的な調達コストが上がり過ぎると困る。
前提として同世代の製品な、単純な話だけど40万円の車3つと120万円の車1つどっちが欲しいかって話、営業なら別だろうけど基本は40万円の車3つだわな、てか会社的に安価な外骨格がたくさん欲しい。」
「計画の私物化じゃないか...」
「気にしたら負けな、理の一致とでも言って欲しいな。」
どれほど性能が上がろうと所詮歩兵に過ぎないし、歩兵なんて各種兵器のバックアップか盾にしか使えないんだから、要点を捉えつつ安価に大量生産できる事を優先すべきだというのにな。
...ただ歩兵だけで戦わないといけない環境があるのなら、別だけど。
思い浮かぶのは月面でのBETAとの戦闘、明らかに対人兵器じゃない、対人兵器にしては取り回しが悪過ぎるし火力も過剰だ。
戦車級相手でも有効打を与えられる12.7mmに対戦車擲弾を装備した上で、ナイフの利用も可能とする兵器は背景を理解できない限り異様に映る。
ふと感じた違和感、何かが引っ掛かる。
...私以外でBETA襲来を知っている人間がいる?
私ほど鮮明じゃなくとも、なんていうか電波的な?『あ〜何か来るわぁエイリアンと戦争しながら人類同士でも争う事になるわぁ〜』みたいな事を考えて備えている人間が少なくはない数が居そう。
...それを何となく分かっているなら安全性とか二の次だろうな、宇宙に置き去りにされるヤツだこれ。
「何でもいいが金払いだけはしっかりしてくれ、特に安全対策はケチるなよ。」
「全面的に同意する、MADみたいに安全装置をオミットするみたいな凶行には走らんよ。」
何だっけか因果の流入か、マブラヴの原作知識は空覚えだから役に立たんだろうな。
記憶も対象なら困ったちゃうね、疑心暗鬼兼妄想症の首脳陣とか洒落にならん、香月博士を筆頭に原作がそうだったし割とこの世界でも有り得そうだから笑える。
そうじゃなかったら首脳陣はきっとレプティリアンかmuv-luv星人なんだろうね...
「宇宙ステーションの開発には携わらないのか?
あれこそ貴様が率先して参入する事業に思えるが、拠点狂い策源地狂いの貴様は今頃お熱かと。」
「私って変なヤツでな、先にモノを作って、そのモノを扱う為の諸々を追々考えるタイプなんだよね。」
環境適応型の策案を出して開発と製造を行うのが普通なんだけど、私は結構アメリカ脳だからマシンパワーとかで無理矢理成立させるのが好き。
「...もしかしたら100〜4000億円の粗大ゴミを大量生産するところだったのか?」
国際規模で宇宙開発しながらノウハウの獲得をしている横で、月まで単独で航行可能な船を開発して、いざ出立しようとしている化け物が目の前に居る事にターニャは眩暈を催す。
...曰く機械で宇宙まで行くのは初めてとの事、つまり生身では既に行った事あるとの証左である、いざという時は宇宙にまで向かいに行くと言っているのも冗談ではないかもしれない。
「ステーションはただの足掛かりだからね、月面への有人航行及び物資輸送を既に可能としている今は魅力を感じないんだよな。」
やる事は多いし改めて無重力空間でのドッキング技術を習得してもねぇ、正直時間とリソースの無駄だ、わざわざそれを合衆国なり国連の効率悪いユニットで学ぶ価値を感じられない。
「国連は現在デブリの除去と大型ステーションの建設をしているのに何故一企業グループ如きにそれができるんだ!!何でだよ!!」
「落ち着きたまえよターニャちゃん、ほら深呼吸深呼吸ヒッヒッフー。」
「できるかぁ!!貴様はもっと常識的な範囲で仕事をしろぉ!!」
「正当な仕事なんだがなぁ...」
国連か豪州政府に砲兵代わりの攻撃駆逐艦への改修を認めさせる事ができれば完璧なんだけどな、そう都合良くはいかない。
まあ取り敢えず投入できる兵器は機械化装甲歩兵に兵員及び兵器輸送型駆逐艦、そして迫撃砲発射型含む数種類のドローンの運用を可能とするぐらいか。
...BETAが月面で光線級を投入するか否か、まあ五分五分ってところだな、これだけの戦力でBETAに航空戦力の脅威の撃滅しない限り月面の開拓を不可能であると判断させるしかない、また戦力が足りないか。
だが先の大戦では間に合わせたんだ、今回も間に合わせる。