沢山の絶望をあなたに 作:エレオノーレ・フォン・ゼートゥーア
「合衆国に行っていたんじゃなかったか?」
「逃げ帰ってきた、捕らえられて人体実験でもさせられそうな雰囲気だったし、まあ自分の安全が第一だからね。」
「...一度ぐらい人体実験された方がいいんじゃないのか?
それで、是非とも一度でもいいから自分が人間だという事を証明してくれ。」
「中々酷い事を言うねターニャちゃん、何であれ仕事だよ。
私達は私達にできる、私達がするべき事をしようじゃないか。」
「ターニャちゃんはやめろ」
「フリフリドレス着せるぞ(迫真)」
彼らは駆逐艦に積載された妙にデカい二つのカゴを傍目に、それに乗り込んで月面へ移動する。
...彼女は『貴様がそれでいいなら』と納得し、今ニューヨークの国連本部に居る筈の人間の言葉に耳を傾ける。
「それで何をする気なんだ?」
「戦術機を本格的に製造しようと思う」
「遂にか、だが前はエンジン含む跳躍ユニット等の技術開発が未熟と言っていたが。
...気が変わったか?」
「ああそうだな、正式採用型でも先行量産型でも何でもいいから明日にでも月面に送り込んでやりたい。」
お馴染みこの世界の二号戦車の40mm機関砲(装弾数400発)を左腕に、88mmの対戦車擲弾を連続発射可能な無反動砲(装弾数24発)を右肩部に、連装の12.7mmもしくは大型の近接戦闘用のナイフを運用する為の人型の右腕を、そして精々要塞級を飛び越えられるだけの跳躍ユニットを搭載した。
言うならば第0世代もしくは0.5世代戦術機だ、近い未来にて開発されるF-4と違い碌な装甲もなく武装も限定的、ただし跳躍ユニットは一応同等の性能はある。
重量故に兎跳びと巡航しかできなかったF-4初期型と違ってコッチはある程度動ける、F-4並みの拡張性と中身だけどまあ機能的にはF-5に近いかな。
密閉された操縦席と各種ユニットはそれぞれ、現行の技術水準で最高峰の性能を示す事ができた。
スターライト樹脂に覆われた機体は小型種程度では打撃を与える事もできない、ある程度であれば戦車級に噛み付かれたとしても戦闘能力を保持する事ができる筈だ。
...名称は零号戦術歩行戦闘機で、分かり易いからね。
「貴様の事だしこの倍以上の火力が運用できる様にするだろうと思っていたが、何と言うか常識的と言うか控え目だな。
...だが相変わらず製造に関しては規格外の一言だな、この調子で量産しては月面への輸送も間に合わないだろうに。」
「両手両足を連続して同時に動かす為のシステムがまだ組み上がってない、AIも初期型だから敵の存在と距離を測定するぐらいしかできないぞ、しかもパイロットに伝える手段もないときた、だから目標に対し数値を無造作に表示するぐらいか。
まあハードは余裕あるから、常時システムをアップデートして来年には第一世代戦術機相当の代物に発展させる事はできる筈、地球環境下での運用を可能とする戦術機は合衆国や国連に任せよう。」
彼女らは月面に新たに試作された第0世代戦術機0号戦術機の実機を2機遺し、今一度地球へと戻る。