沢山の絶望をあなたに 作:エレオノーレ・フォン・ゼートゥーア
「月面のハイヴ攻略の実行だと?正気か?」
通常兵器の投入は不可能、戦車や砲兵を用いる事のできない月面は地球の戦場とも比較にならない過酷な場所だ。
...月面での戦闘となれば通常陸戦兵器によるハイヴ制圧は不可能となる、戦術機を用いての重頭脳級の撃破のみになるが、それの援護に用いる事のできる兵器はHSSTや戦艦で運用できるもののみとなる。
一応地上にあるマスドライバーによる投射攻撃や大量の駆逐艦からの迫撃砲による絨毯爆撃も可能だが、巻きあがる砂とかで地獄になる未来しか見えないから没で。
「理由としては3つある。
第一にBETAの総数が少ない、地球にはオリジナルのH1を足して11個のハイヴがあるが月面には1つしかない、暫定的にH00と呼称する事にしようか、まあ唯一孤立しているH00を攻撃する理由として端的に弱いものイジメだな。
第二に月面のハイヴはレーザー級を用いるほど追い込まれた経験がない為、運用されるBETAの脅威度が低い、最低でも重レーザーがなければ現行にて運用されている戦術機の相手にはならない。
第三に利益的な問題だ、私は地球にてBETAの痕跡を完全に消すつもりだが、どうせハイヴがどうのこうのって荒れる未来しか見えないし、その点月面にあればある程度交渉の軟化も可能だろう、それにハイヴを利用するのも既に基地がある月面の方がカシュガルの中心より相対的に楽ではあるだろうし。
第四に余計な人類同士の諍いに巻き込まれる可能性が、地球のオリジナルハイヴ攻略に比べて低い事だな。」
流石に月面への核攻撃は合衆国だろうが国連だろうが苦労するだろう、まあ実際今の技術でも地球から見て月面の反対側にピンポイントで攻撃する事も実際かなり難しいからな。
主力の0号後期型は超ムキムキで第二世代機並みどころか2.5世代機に準ずる性能だし、特1号は言わずもがな1号でさえ生まれるのが15年早かった第三世代機とかいうチートだからね。
実際合衆国の戦略AIなるおバカちゃん()も地球のハイヴ攻略より安価に済みそうって言ってるし、私とターニャが出れば二機でも攻略できるレベルなのが月面のハイヴだ。
今回は48機、特1号が12機に0号が36機だ。
...まあ今回も普通に勝てるよ、特1号があればS-11で普通に重頭脳級が砕けるだけだし。
誰も成功できるとは思っていなかった、先のハイヴ攻略にて調子に乗った小娘による凶行と皆々考えていた、日本の近衞と汎豪州共同体の面々を除いて。
皆忘れてはないだろうか、彼女はあと数年で80にもなる老婆だという事を、少なくとも彼女を小娘と宣う面々よりは年上のババアである。
尚心持ちは死んだ直後と同じぐらいの年齢のまま、まあ少年の心を持ったBBAという少女の心を持ったJJIと同じぐらい気持ち悪い存在である、どうでもいいけど。
戦術機に乗るより素手の方が強いとまで言われる人間、曰く重レーザー級との撃ち合いに勝ったとか何とか。
彼女の庇護下に入る事のできる人達を増やす為に汎豪州共同体が生み出されたのだ、その事を知る人々は誰も月面のサクロボスコハイヴ攻略の成功を疑わなかった。
だがその後の行動に戦慄した、彼女は西側東側問わずBETA及びG元素への情報提供を行うという。
理由としてはオルタネイティブ6の目的に通常兵器によるハイヴ攻略とは別に、地球におけるBETAが存在した痕跡の抹消という項目が含まれている為だ。
代わりに月面のハイヴを利用可能とする、それもオリジナルハイヴを。
なるほど悪くない主張かもしれないと東側諸国や欧州の国々や中東連合は思った、だが西側諸国や国連は別である。
...彼らにとっては月面のH00が唯一のハイヴである、だというのに『何故ソ連や中華にもその利用権を与えるのだ』と、無論反論も用意していた、だがそれを受け入れさせるのは少し時間がかかるだろうな。
これは我々西側諸国の方が受けられる恩恵は大きい、何と言ったって地球からハイヴを根絶する大義名分を得られるのだから。
イラン中国ソ連ポーランド、例外なくハートランドもしくはリムランドである、ハイヴの数でも大きく劣る事からシーパワー国家の集まりである西側諸国が追い越されるのは目に見えて理解できるだろう。
...故に月面で少し我慢すれば、彼ら『東側諸国の将来的な損益を大きく減らす事ができる』と、時間が経てばその認識を広める事はできる。
どんな環境であろうとハイヴ攻略が可能であると示される、そして軌道戦艦や特一号さえあれば圧倒的な『コストパフォーマンスに優れた陣容で重頭脳級が撃破可能であると』。
時が進むぞ、原作よりも早く。