沢山の絶望をあなたに 作:エレオノーレ・フォン・ゼートゥーア
「私は重頭脳級と交渉し、停戦を結びたいと考えています。」
「...ほう?」
不意を突かれたとはこの事だ...
個人的にはBETAとの停戦は確実に不可能と考えている、BETAとの共存は人類がBETAを家畜化するか、人類がBETAに家畜化されるかの二択だと思っているから。
...人類の使命とかそういった言葉とは別だ、社会的な生命体におけるプロパガンダを排すれば残酷な事に、人類は自分達を含む家畜以外を結果的に排斥して生き残ってきたのだ。
まあ実際には排斥というより、関わり合いを保てなかった存在が滅んだに過ぎないのだが、その辺は勿論例外もあるし考えるだけで無限の選択肢があるから面倒だし放っておこう。
まあ何はともあれ私よりもBETAに詳しい彼女が言った言葉だ、一考の余地はあるし、その提言を受けない理由もないだろう。
「人類はBETAに勝てませんでした
重光線級の最大出力照射を15分以上無効とするラザフォード・フィールド展開能力、0~3G環境下での戦闘運用への対応、極超長距離荷電粒子砲の運用と完全循環型生命維持装置の搭載、重力勾配航法と短距離空間跳躍の併用による単独惑星間展開能力、これらを可能とした第八世代戦術機を含む使節艦隊にてBETA本星に侵入、そして戦闘になり戦闘種と交戦、それから2年足らずで人類は一人残らず殺されました。」
つまりはこのXG-70d凄乃皇四型に匹敵する性能の戦術機を開発する事ができたが、それ以上にシリコニアンとやらの戦闘種が強力だった訳だ。
...まあ返り討ちに逢ったのだろうな、どうせ数を揃えられなかったとか桜花作戦みたいな失敗前提の作戦で失敗したっていうオチだろうけどね。
「まあ、そうだろうね。」
「驚かないのですか?」
「あれほど高度なノイマンマシンを宇宙規模で運用している存在だ、利用できる資源の量なんて人類の比じゃないだろうからね。
例えるなら沖縄県の渡名喜島が世界を相手に挑むみたいなモノだろう、それよりもっと酷いさ話にならないね、個人的には2年保った事実の方が驚きだよ。」
BETAの巣を駆除するだけでいいものを、私にはわざわざ本丸に手を出す理由が理解できない。
...所詮対等な存在だ、その点数と多様性に富んだ人類が負ける理由は内部分裂以外にないだろうに、それだけの戦術機が開発された世界で内戦ができる余裕は存在するのだろうか、否絶対にないと確信できる。
「そうなんですか?」
「...それで重頭脳級との交渉だったか?
個人的な経験からしては多分無理かなって思う、ただそれができると思ったからここに居るんだよね。」
「はい」
...ああやらかした!!
交渉とか無理だわ絶対に!!だってこれから生まれてくる重頭脳級どころか既に在る重頭脳級でさえシステム面は全部壊れた状態だもん!!
どうせ古いのは耐用年数がどうのこうのとかで処分されてるだろうし尚更だろう、マッピング能力どころか各種認識能力が完全に破損しているからな、もはや意思の疎通すら困難かもしれない。
「結論から言わせてもらうと、不可能だと思う。」
「...どうして?」
彼女が震える体で、何とか紡いだ言葉がこれだ。
...何というかごめん、それ以上の事は言えないわ。
「BETAの設計の可逆性がない事をいい事に、色々書き換えてゴチャゴチャにしたから、下手したら会話が成り立つかも怪しい。
...唯一の生命体は炭素生命体のみって記述したんだけどね、それなのに人類を襲い続ける時点で既にマトモじゃない、無意味で無価値な行為になるかもしれないけど、それでもいいかな。」
「あがー」
「改めて一度だけ試してみるな」
反応がない。
ただの 屍の ようだ。
壊れちゃった...
『●●逕溷多菴薙%縺昴′蜚ッ荳?縺ョ逕溷多菴薙〒縺ゅk
●●逕溷多菴薙%縺昴′蜚ッ荳?縺ョ逕溷多菴薙〒縺ゅk』
「駄目だなこりゃ、重頭脳級の奴ら完全に壊れてやがる。」
本来あ号標的との交渉は社霞の肉体を介して行われる筈だった、それを社霞が望んでいたし、ターニャも私もその危険性を理解していたから承認していたのだ。
だが実際は私の魔導機を介して行われた、ターニャは予定と違うと私の行動を不審に思い、社霞の安全を問い質し始めた。
「社霞はどうしたんだ?」
「壊れちゃった...」
「何をしたんだ貴様ぁ!!」
「私悪くない、超新星爆発程度で壊れるBETAが悪い、可逆性の担保されてない生命体モドキなのが悪い。」
ターニャが彼女の正気を問い質す中、私は考える事を止めて引き金を引く。
無表情で「やり場のないこの想い、受け取って。」と言いながら、彼女の魔法にて増幅された荷電粒子砲があ号標的を吹き飛ばした。