シェアード・ユニバース二次創作   作:スナエ

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俺は生きたい

 内科医の青砥桐人(あおときりひと)は、病院の裏口から退院する患者を見送った。

 裏口退院。つまりは、入院患者が死んだということ。

 この場にいるのは、主治医だった青砥と遺族、それから、葬儀屋。

 葬儀屋は、木林南雲という。フォレスト葬儀社の社員である。

 白衣の男と黒い男は友人ではないが、知らない仲でもない。

 青砥は、救えなかった命を引き摺り過ぎない人間ではあるが、それでも酒に逃げたい時はあった。そんな時に呼ぶのが、木林である。

 その日の晩、青砥と木林は居酒屋へ行った。

 青砥は、白衣から喪服に着替えている。木林は、いつもの格好だ。

 

「相変わらず、私服はそれですか」

「ああ。また死なせたからな」

 

 日本酒を飲みながら、黒い男たちは話す。

 

「傲慢ですね」

「うるせぇ」

 

 別に、何もかも自分のせいだなんて思ってはいない。

 ただ、事実として指の隙間からこぼれるものがあるというだけ。

 

「永遠の命が欲しい」

「ロマンチック」

「万能薬でもいい」

「ファンタスティック」

 

 木林の相槌を聞きながら、青砥は溜め息をついた。

 

「あんたは、欲しいものは?」

「これですかね」

 

 指で円を作り、金を表す木林。

 

「俗物」

「なんとでも」

 

 青砥に罵られても、木林は笑みを絶やさない。

 

「木林」

「はい」

「兄の情報は?」

「ありません。身元不明のご遺体の画像は、全部お送りしています」

「そうか」

 

 青砥には、行方不明の双子の兄がいる。どこかで生きているのか、の垂れ死んでいるのか。消息は掴めない。

 青砥が金を払い、木林が男性の遺体の画像を送る。ふたりは、そういう取り引きをしている。

 青砥の兄は、薬学科の天才と言われていた。

 その兄がいなくなってから、何年経ったのだろう?

 もうすぐ、失踪届を出すことになるかもしれない。

 

「馬鹿みたいな話なんだが」

「はい」

「兄には、死んでいてほしいんだ」

「何故です?」

「兄は、いつも退屈していた。それで、ろくでもない犯罪計画を立てる遊びを四六時中していたんだ。俺は、それが現実になるのが怖い」

 

 木林は、青砥が随分酔っていることに気付いた。弱音を吐くのは珍しい。

 

「俺は、兄を止められない…………」

 

 だから、死んでいてほしい。

 

「青砥さん」

「桐人」

「桐人さんが気にすることないですよ」

「そうはいかないだろう。家族なんだから」

「そういうものですか」

 

 青砥は、うなずき、日本酒を飲み干した。

 血縁というしがらみが、青砥桐人を捕らえて離さない。

 

「煙草、いいか?」

「どうぞ」

 

 一本取り出し、ライターで火を着けた。

 青砥の喫煙は、自傷みたいなもので。それを止めない木林は、やはり友人ではなかった。

 ふたりは、たまたま近くで生きている。

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