四十六室の老害(自称)   作:スターリー

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プロローグ

 

 早朝、目が覚める。

 光が差し込み出したばかりの外を見て、もう少し寝ていても良いだろうになんて思いながらも、その内心とは裏腹に習慣か、それとも老いた歳のせいか、日が昇るのと競うように身体が勝手に起きてしまうようになってしまった。

 

 くっ、儂のムスコは最近段々と起き上がらなくなってきたのだがなぁ……などと、心の中では茶目っ気を出すが声に出さないのはきっと年相応に成長したからである。

 

 本人的にはまだまだ若いつもりなのだが、関節の悲鳴と増え続けるシワと真っ白に染まりきった白髪のトリプルパンチは避けられない。そのどう頑張っても言い訳できないお前はもう老けているという説得にボッコボコのノックアウト。目の前の現実に泣く泣く敗北し、屈する毎日である。

 だがしかし、せめて心だけはと抗い続けているのだ。

 

 布団を片付け、簡単に身なりを整え、部屋を出ようとする。

 襖を開けると最初に目に飛び込んで来る光景は一糸乱れず整然と並び頭を下げる召使いたちとその先頭に立ってお出迎えをしてくれる側仕えであり執事であり家令である青年、秀胤(ひでつぐ)である。

 

 この家のほぼ全てを秀胤の先祖代々で管理してくれていて、もう彼でかれこれ十五代目である。

 仕事が多くて大変だろうと別の者に割り振ろうものなら私では力不足ですか!? と大げさに絶望すると嘆き悲しみ、お役に立てないならば生きる価値なしと自決も辞さない様子で別の事件になりかねない勢いがあるから、もうスルーする事をいい加減に学んだ次第である。

 

 覚悟決まりすぎか! というか、儂も長生きし過ぎか! とサイレントノリツッコミしなければならない原因でもある。何故ならば少しでもなにかあれば襖を破壊して心配してくるのだからしょうがない。

 

「おはよう御座います。源蔵(げんぞう)様」

「うん。おはよう。みんなもおはよう。いい朝だな。それはそれとして、いつも言っているだろう? 朝からこんなむさ苦しいことなんぞせんでいい。朝も早いし、大変だろうに」

「いいえ、そういう訳には参りません。朝、いの一番に貴方様をお迎えする。これは私たちの仕事などではなく使命、いえ、喜びですから!」

「そ、そうか……うん、その、あ、ありがとうな?」

 

 一年に何度か彼らの負担を減らそうと決めて、何か仕事を分担するかと聞いてみるが歴代家令は十五代目になってもみんな全員口を揃えて、負担などなりよう筈もありませんと必ず同じ答えが返ってくる。

 

 仕えてくれている他の子たちも聞いてみるけど、彼ら彼女らも同様なリアクションで何か私に不手際がありましたでしょうか!? とあらぬ方向に行こうとするので最早触れぬが吉である。

 

 でも、こう、なんというのだろうか。

 そういうキラキラした目で見られるのは果てしなくむず痒いのだ。照れるし、何より恥ずかしい。

 なんでそんな好感度とか忠誠心とか尊敬度合いが高いの! もう逆に怖い怖いよ……と心の中で戦々恐々の源蔵である。

 

 軽く運動を済ませ、身体を清め、朝食を取りながら秀胤にスケジュールの確認と家のあれこれの話し合いを済ませる。

 

 身支度を終わらせると職場という名の戦場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 水も草木も空気でさえも、循環を失い、停滞し、手入れをせずに、そのまま放置をしていれば、醜く変化し穢れ果て、やがては命を奪う毒となる。現世ではそれを腐敗と呼ぶらしい。

 

 その法則は人にも、そしてそのような現象を持ち得ないはずの尸魂界(ソウルソサエティ)の死神にも当てはまるらしい。

 

 大袈裟な門をくぐり抜け、城にも似た立派すぎる建物の中へと歩みを進める。与えられた更衣室で着替えをし、顔を隠すとその先にある四十六室と呼ばれる機関こそが源蔵の職場であった。

 

 

 此処は人間の世界、所謂現世ではなく、現世で死んだ者たちが辿り着く大船場であり、尽きた魂が新たなる生命へと巡るための最寄り駅。世界の循環を司る、神のシステムの具現とも言えるだろう。

 

 その名も尸魂界。

 

 そこに生きる者たちも人間の魂だけではない。

 姿形も在り様も言葉ですらも近しいが人の範疇を大きく超えた力を兼ね備え、そこから更に学び鍛えて選ばれた死神と呼ばれる存在がこの世界を治めている。

 

 死神達は世界を繋ぐ楔の守護者であり、巡る世界のバランスを取ることが役割であり、その均衡を崩してしまう虚という世界のシステムエラーから生まれるバグを退治する。

 

 それこそが存在理由であり存在価値である。

 

 故に尸魂界にはその命題を果たしながら、行政と軍隊の性質を併せ持つ護廷十三隊と呼ばれる集団がある。そして国、いや政府のように組織を運営し、秩序を保っているのだ。

 

 実際彼らが組織される前は現世で悪辣を成した大罪人と尸魂界で名を馳せた死神が送られる地獄とまるで大差ないような無法地帯で惨状だった。思えばそれから随分と発展したものだ。

 

 あの時代に比べたらそれはもう治安が良くなっ……へ、平和に……平穏……いや、そうでもないか。割と今でも血生臭いな。ふむ。考えるのはよそうか。

 

 そう、つまり神と名の付く我々だが、その言動は完璧とは程遠く、人同様に心があるが故に多くの揺らぎがあった。

 我々にも心がある。だから、善くも悪くも、美しくも醜くも、正しくも間違いも、清くも邪でもある。

 

 だから法治という手段が必要だった。

 

 尸魂界は、護廷十三隊の上に立法と司法を併せ持つ機関が存在する。

 

 それこそが源蔵が務めている職場。

 

 中央四十六室なのである。




隠し持ってる斬魄刀(公認)は分身を造るタイプ……。

霊圧だけ凄くて山爺くらい成長し続けてる。でも完全に宝の持ち腐れでお送りしたい(希望)
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