四十六室の老害(自称)   作:スターリー

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二刀一対のふたり

 

 

「花風紊れて花神啼き、天風紊れて天魔嗤う」

「波悉く我が盾となれ、雷悉く我が刃となれ」

 

 祝! 真央霊術院卒業生初の護廷十三隊隊長が誕生した。

 

 しかも二人同時に。彼らの名は京楽春水と浮竹十四郎。

 

 つまり重國の愛弟子達である。

 

「花天狂骨」

「双魚理」

 

 高まる二人の霊圧が源蔵の全身を暴風のように打ちつけ、服がなびく。構え、立ち居振る舞い、佇まい。その隙のなさが二人が隊長に相応しいだけの強さがあると物語っていた。

 

「成る程成る程。これが尸魂界に君たちだけの二刀一対の斬魄刀。花天狂骨と双魚理。壮観だねぇ」

 

 そこは流魂街のはずれ。

 荒野のようなその場所は修練場としてよく使われている地区である。そこで新しく隊長となった二人と源蔵が対峙していた。

 

 十四郎が戸惑った顔で疑問をぶつける。

 

「あの、源蔵殿。本当によろしいのでしょうか? 斬魄刀を観るためとはいえ、模擬戦をするだなんて……」

「儂だってやりたくないけど、これも仕事だからねぇ。それに重國が君等を見て欲しいって、あんなに嬉しそうに酒を注がれたら断れなくて…………」

 

 いつもは来た書類にポンッと判を押すだけなのに、と黄昏る源蔵である。

 

 

 中央四十六室では出来る限りの斬魄刀の把握と管理をしている。出来ているかと言われれば微妙なところだが、それでもやるべきことの一つだ。

 

 その理由は勿論危険だからである。

 始解に到達する者はかなり限られるが、それでもモノによっては尸魂界を陥落できうる危険性があるものもある。そもそも刃物である時点で危ない。

 

 もう既に過去の戦乱や虚のせいで流魂街にはかなりの数がばら撒かれているし、貴族によっては代々受け継がれる物もある。それに源蔵のように隠し持っている連中だっていなくはない。

 

 だから、せめて護廷十三隊に所属する死神が所有する斬魄刀だけでも把握しようとしているのだ。

 

「恩人に刀を向けるってのは……どうも、気が引けるねぇ」

「まあまあ、こんな機会二度もないだろうし、百聞は一見に如かずって言うのは確かだよ。これが一番手っ取り早い。それに……」

 

 源蔵の爆発する霊圧に二人が防御の態勢をとる。

 

「儂に手加減は不要。これでも生き残ってきた側の死神だとも!」

 

 なんせ過去のユーハバッハとの大戦の際、源蔵が生き残っていたのは中央四十六室に居らず、雀部長次郎の奇襲が失敗したときの為にユーハバッハの動きを止める第二陣として死体の山の中に隠れていたからである。やはりフィールドギミック。

 

「君たちからだと手が出し辛いだろう。だから、こっちから征くとしようか……縛道の六十二、百歩欄干!」

 

 速さ、量、範囲のすべてが一級品の光の棒の群れが二人を分断する。この一撃は誰だって油断を捨てさせられる。

 

「それじゃ! 春水殿から見せてもらおうか!」

「まったく、手加減してほしいのはこっちの方さ。流石は山じいの世代ってことかねぇ! 不精独楽!」

 

 その風の塊をヒョイッと避ければ、その隙に姿は無く、耳を澄ませば影から声が聞こえてくる。

 これは所詮模擬戦。命のやり取りはしない。だから刃を振ることはしないが、それでもそのやりとりには殺気が宿る。

 

「影鬼」

「縛道の二十一、赤煙遁」

 

 そうして影から逃れるために上へと逃げれば……。

 

「嶄鬼」

「成る程、やっかいやっかい! 縛道の四、這縄!」

 

 這縄を斬り捨てているうちに距離を取る。

 不精独楽は威力は大したことないものの活用方法が多彩な実体を持った目眩まし。影鬼と嶄鬼は攻撃に移る際に京楽の狙いが敵を斬る為の行動から一瞬ブレるところを源蔵は見逃さない。何かルールがあるのだろうと経験から当たりをつける。

 

「その斬魄刀が定めたルールを霊圧範囲内にいる全員に強制させるってとこかね。素直に敵の首を狙うか、その子のルールを味方につけるかの駆け引きがある訳だ。君自身が相当な実力なのにそこに駆け引きまで持ち込まれちゃ敵わないよ」

「…………まだ何の説明もしちゃいないのにそこまで読まれるなんてね」

「それにしても凄い構成だったねぇ。ちょっと本気で殺られるかと思ったよ」

 

「いやぁ、いつもは振り回されてばかりなんだけど。今日は源蔵さんの殺気と霊圧に当てられたみたいで……」

 

 スミマセンと申し訳なさそうにする京楽に気にしなくて良いよ、とジェスチャーをする。斬魄刀と良い関係を築けているようで何よりである。

 

 

「さて、お次は十四郎殿だね。よろしく頼むよ」

「はい。宜しくお願いします。源蔵殿」

 

 十四郎殿は身体が弱い。肺に良くないものを抱えている。だが、莫大な霊圧がそれを支えている。そして何より、その身にミミハギ様という神を宿しているらしい。完全に霊王様案件である。

 

 本人から源蔵にだけこっそり自己申告があったのだった。中央四十六室にはまだ報告していない。霊王様の一部の宿主であるだけで特に問題はない。そう、問題は無いのだ! 

 

 それよりもこの斬魄刀の確認に長い時間を付き合わせるのは良くないだろう。

 

 そんな感じでぱぱっと終わらせるのだった。

 

 

 

 三人で仲良く帰っていると「急にどうしてこんなことを?」と話題が出る。

 

「刳屋敷殿の卍解が使用禁止になりそうでね。彼の性格なら無闇に使うことはないだろうし、心配はしてないんだけど…」

 

「そう言えば、元柳斎先生が卍解の使用禁止の最初の一人は源蔵殿とお伺いしたのですが本当ですか?」

 

「いや、重國か隊長格三人以上が側にいるとき限定で許可されてるから違うぞい」




今の所、攻撃力は全くない卍解です
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