護廷十三隊の隊長になるには三つの方法がある。
一つ、総隊長を含む三名以上の隊長が立ち会いのもと行なわれる隊首試験に合格すること。
二つ、六名以上の隊長から推薦を受け、他七名の隊長のうち三名以上にそれを承認されること。
三つ、隊員二百名以上の立会いの下、現隊長を一騎打ちで倒すこと。
現在、その三つ目の方法が行われようとしていた。
渦中の中心は十一番隊。求めるのは護廷十三隊最強の称号、剣八。
こんな騒ぎだが十一番隊の隊士たちに焦りはない。変わるかは別として恒例行事ではあるからだ。一騎打ちで隊長の座を奪うこの方法は十三隊の中で十一番隊が断トツで多い。
確かにこれなら代を重ねるごとに強くなる。十一番隊らしいと言えばらしいのだが、本当に笑えないお家芸である。
果たし合うのは尸魂界でも屈指のツワモノ。
既に前評判は出回っている。零番隊王属特務候補と中央四十六室の化け狸の懐刀。両者共に尸魂界に呼び名を刻む卍解習得者。
護廷十三隊十一番隊隊長七代目剣八、刳屋敷剣八。
源蔵一派警備防犯警邏部門統括、痣城双也。
この話は瞬く間に瀞霊廷に広がった。
そして、とある女傑が動く。
「よもや、枷があるまま剣八の座を賭けて戦わせる、なんてことはありませんよね?」
と、十一番隊……ではなく四番隊の卯ノ花八千……烈殿がニッコリと微笑みながら、一瞬で空気を氷点下にしながら殺……圧が強めの大変有り難いお願い(強制)が出された。
それはもう堂々と中央四十六室に乗り込んで来たのだ。
心臓が止まるかと思ったと後にメンバーが語るほどである。嘆願書無視の直談判。結果、七人ほど気絶して、四人くらい漏らした。彼らはビビりなのだ。もっと優しくしてあげて……。
この件には我関せずと白旗を上げた四十六室のメンバーは源蔵に丸投げした。決して面倒くさかった訳では無い。決して。…………多分。
だがしかし、源蔵は待ってました、とすかさず主導権を握ると可愛い身内の為なら一肌脱ごうじゃないかと立ち上がる。実に予定調和である。そんな事を言いながら、いつも脱いでるのできっと新手の露出狂なのだ。
彼らはとてもスムーズな話し合いの末、特殊な結界という体で源蔵の卍解を用いて、その決闘を見届ける運びになった。
さて、源蔵が斬魄刀を持っているのは半ば公然の秘密である。
それでも隠し通すことが大切なのだ。公になれば没収は必然。罪にだって問われかねない。しかしそれは源蔵よりも各方面が困ることになる。
そうなると問題は立ち会いの見届け人である隊員二百名である。相当口の固い死神の選抜をする必要がある。
現、護廷隊所属の過去に霊圧を込めたことのある知り合いをかき集めて、万が一の防壁と回復の為に鬼道衆と四番隊のメンバーに目隠しをして霊圧を刀に込めて貰う。そうして人数を埋めると最後にダメ押しの箝口令。
「総隊長命令である。結界の関係者以外立ち入り禁止ぃ! 結界の詳細な詮索禁止ぃ! 結界の今後一切の追求禁止ぃぃぃ!」
そんな鶴の一声が放たれ、いよいよ準備完了である。
「さて、久し振りにやるとしよう双影無骨」
一番隊の広場に集められたのは一騎打ちを行う痣城と刳屋敷。その後ろにズラリと並んだ総隊長、卯ノ花四番隊隊長を初めとする総勢二百人。
その視線を全方位を遮るように暗幕が張られている。その向こうに源蔵は立っていた。
普段は抑えている霊圧をほんの少しだけ解放する。
若い頃から空前絶後の霊圧オバケ。そこから成長し続けて何千年。普段は双影無骨の助けもあって一切揺らぐことのない完璧なコントロールで忘れがちだが、和尚が見に来るレベルの化物である。
一瞬、その霊圧で瀞霊廷が揺れる。
「卍解」
双影無骨の始解の核が刀身なら、卍解の核は鞘にある。
刀を抜くと、左手にある鞘が手のひら大の真っ白な球体へ変化する。
「
眩い大きな光が辺りを包み、その場の死神を全員見事に飲み込んで空中に大きな球体が出来上がるのだった。
最初は六畳一間もない、何にもない空間に過ぎなかった。
双影無骨とはよく「此処はトイレか!」と漫才をしていたものだ。
その空間は他者から注がれた霊圧で広がっていく。
注がれた霊圧が卍解空間を形造る一部になるからこそ、その空間に出入り出来るキーになる。だからその空間は友人たちと築き上げた絆の証であり、もはや逢えぬ者たちの霊力溜まりと言って良い。
何よりも自分一人では何も出来ない卍解である。
誰かと関わり、縁を結び、文字通り世界を広げていく。
源蔵はこれまで出会いと別れを何度も何度も繰り返して、その心を預かってきた。
かけがえのない瞬きも、忘れられない色彩も、託された未来も、届かなかった願いも。
総て、全て、すべて、彼らの想いを受け継いで引き継いで希望を拾い続けて、源蔵は歩みを続けている。
故にその卍解は源蔵が背負う世界そのものである。
故にその卍解は源蔵の戦う理由そのものである。
故にその卍解は源蔵の覚悟そのものである。
そして、その世界はまるで瀞霊廷の鏡映しのようだった。
続きを書こうとして、いつの間にか寝落ちすること数日です。