四十六室の老害(自称)   作:スターリー

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ノコギリソウ

 

 痣城双也の斬魄刀、雨露柘榴。

 尸魂界でも珍しい常時卍解を可能とする斬魄刀で、その卍解が有する能力は融合である。

 

 万物と融合、同化、支配し、霊子単位で操作する。

 何かに特化したものでなく、その応用力の高さから万能とも言える能力であり、世界と融合することでその範囲内で起きた出来事を知覚し、瞬時にその場に移動も出来る。

 

 だが、双影無骨の卍解空間では融合のやり直しが必要になる。その再融合には時間がかかる。それは、これからも源蔵と行動を共にするなら不都合と言って良い。

 

 だから、痣城双也は卍解の即時展開と融合拡大時間の短縮の鍛錬をする必要があった。

 ついでに融合状態の便利さ。それ故の弱点を放置せずに雨露柘榴との対話を経て、始解状態で自分自身を鍛え直しもした。そうして毎日、丁寧に卍解の能力を向上させていったのだ。

 その成果を存分に発揮する。

 

「「卍解」」

 

 今の痣城双也は孤独に囚われるような考えはない。

 故に生物との融合に対して拒絶反応はなく、それによる反動もない。狙うは刳屋敷剣八の肉体と融合し、内側から八つ裂きにすること。

 その攻撃は逃れ得ない回避不可能の必殺技。

 

「雨露柘榴」

 

 その瞬間霊圧を爆発させて刳屋敷剣八がいる空間まで一気に融合する。

 

「餓樂廻廊」

 

 刳屋敷剣八の斬魄刀、餓樂廻廊。

 珍しい生物系の斬魄刀で、白く人の二倍ほどの大きさの顎しかない球体の生物を数十体も呼び出す能力である。始解の時点で既に他の卍解に匹敵すると言われるほどの凶悪なものでその卍解は……。

 

 巨大な顎が刳屋敷剣八以外の全てを呑み込むものである。それこそ痣城双也の融合範囲を丸ごと呑み込めるほど。

 つまり、決まれば正しく防御不可の一撃必殺。

 

 両者共に初撃大技。戦闘開始からたった数秒。瀞霊廷に似た世界の半分が更地に変わる。

 

 痣城双也の一撃は刳屋敷剣八も卍解したことによる霊圧の高まりによる防御力の向上と餓樂廻廊に対応するための即時撤退により、その内部破壊は致命傷程度に留まる。

 対して、刳屋敷剣八の卍解も融合部分を呑み込むも撤退の判断が早く、捕らえきれずに逃げ切られて致命傷で終わる。

 

 空より見下ろす痣城双也と大地より見上げる刳屋敷剣八。

 

 二人は卍解を解き、口から垂れる血を拭う。

 互いに致命傷、故に意気衝天。だが、その目に恐れはなく、恐怖もない。むしろ、高揚し、思わず笑みが溢れる。

 立場も被害も余計な雑事も、そんなものはここには必要ない。ただ意地と覚悟と本能さえあれば良い。

 

 片や空中に身を委ね、片や大地を蹴っ飛ばす。

 響く剣戟。飛び散る火花。頬を濡らすは血の一滴。

 その鍔迫り合いは大気を震わせ、刃の交差は衝撃波をまき散らす。

 

 互いに相手にとって不足なく、全身全霊をもって最強の称号を競うのだ。

 

 

 

 瀞霊廷を模した源蔵の卍解空間。

 普段大勢がいる各々の隊舎周辺で二人が戦い、双極の丘周辺で二百人がその戦いを見守っている。鬼道衆を中心に隊長格も力を添えて、鬼道による強力な結界で身を守っていた。

 

「いやぁ、懐かしいねぇ重國。君の卍解を思い出すよ。昔、ああして鍛錬したものだねぇ」

「源蔵よ。お主のおかげでまた新たな境地に辿り着いた。感謝しておる」

 

「それは初耳ですね。今度、是非私にも披露して頂けますよね?」

 

「「なんじゃって?」」

 

 その先頭には山本元柳斎重國と卯ノ花烈、源蔵がいる。

 よっぽどの事がない限り死傷者が出ることはないだろう。ただし、初代の血が滾らなけば、の話ではある。

 

「卯ノ花殿。分かってると思うけど、あの二人の決着がついたら直ぐに救護を頼むぞい!」

「ええ。勿論です。四番隊の矜持にかけて死人は出しませんよ」

「卯ノ花隊長。くれぐれもこの戦いに参加してはならん。それも分かっておるな?」

「何をおっしゃっているのです。私がそのようなことをする筈がないでしょう?」

 

「あの……卯ノ花殿。とりあえず斬魄刀から手を離しませんか?」

 

「あら、これは失礼しました。ふふふ、無意識は怖いですね」

 

 怖いのは卯ノ花殿だよ! っというツッコミを必死に抑えて、重國と源蔵はアイコンタクトで頷き合う。もしものことがあったら全力で止めよう、と。

 

 一騎打ちの傍らで、また別の戦いが始まっていた。

 

 

 

 迫りくる餓樂廻廊を掻い潜っても、その隙を突くように刳屋敷剣八が拳を振るう。速く重く鋭いその拳は、ギリアンを軽く粉砕する威力がある。

 その連携と経験とセンスで刳屋敷剣八は接近戦を制していく。

 

 そのなんの変哲もない浅打のように見える斬魄刀には融合範囲分の途轍もない質量が収まっている。その一閃は始解の餓樂廻廊一体を仕留める程に。

 巧みな鬼道で翻弄し、その一太刀にて仕留める。痣城双也は中距離戦に無類の強さを発揮する。

 

 押し引きの平行線。拮抗し、その力量は天秤を動かさない。即死しかない千日手を永遠のように繰り返す。

 共に読み合いが上手く、全体を見通せるだけにこれでは決め手にならないと理解している。卑怯な手を使うもありだが、それでも真っ向勝負にこだわるのは最強の称号がその裏切りを許さないからだ。

 

 隊長としての矜持や責任。死神としての使命や忠誠。二人が背負うその重荷。そのすべてが遠退いて、全力で目の前にいる強者を叩きのめすことに没頭していく。

 

 持てる技術、培った全てを吐き出して、本気で全力で戦うことのなんて楽しく面白いことか。その闘争の愉悦が全身を震わせる。戦いこそすべて。その在り方こそ、剣八に相応しい。

 

 初撃同様、両者共に巨大化は負けフラグである。

 それを理解していても流れを自分のものにする為ならば、多少の無理も負傷も犠牲すらもあって当然である筈だ。

 

 競う二人のその霊圧は更なる高みへと足を踏み入れていく。

 

「「卍解」」

 

 それでも二人の決着は近い。




初代組は源蔵がブレーキになってくれるだろうという安心感から色々ハジケてます。

痣城双也殿の姉をオリキャラにして出して良いですか?

  • ええよ
  • 駄目だね
  • …もぅ…んッ、…好き、にっ……してぇ♡
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