四十六室の老害(自称)   作:スターリー

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あらゆる刃の流れは我が手にあり

 

 源蔵ほど長く生きていると、今にして思えばあの時は時代の節目だった、なんて感じる出来事がいくつかある。それはきっと時代の寵児で今もなお時代を築き上げている張本人である山本元柳斎重國では分からない、客観的な視点で見えるものだ。

 

 それこそ山本重國の台頭。本人とその一派による尸魂界の統一。護廷十三隊の創立。光の帝国(リヒト・ライヒ)打倒。エトセトラエトセトラ。

 

 どれも血生臭かったが源蔵の中で最も面白かった節目を聞かれれば、初代護廷十三隊が入れ替わるときだ、と笑いながら答えるだろう。

 

 

 初代護廷十三隊は護廷とはかけ離れた殺し屋集団。

 護廷隊が出来る以前の殺伐とした無法者たちに殺しの方向性を与えただけの状態。中央四十六室がまともに見えるほどの狂犬の群れ。法治を放置するんじゃないと、よく頭を抱えていた源蔵が護廷へと意識が向いていくのを感じた瞬間なのだからよく覚えている。

 

 

 それはある日突然起きるのだった。

 

 流魂街で大量の死体が見つかったと報告があった。

 そして、あの卯ノ花八千流が首元を貫かれて帰ってきた、と。

 

 ユーハバッハのこともある。あの戦乱で尸魂界は見事な更地と焼け野原にまで戻った。それからなんとか人も建物も建て直し、復興も目前である。

 そんな最中に起きたことだ。良くないことの前兆かもしれないと、一番隊に迅速に対応できるよう主要人物だけ集まることになったのである。

 

 一番隊隊首室の最奥に重國。

 その傍らに中央四十六室の顔役として源蔵。

 開いた窓の縁に座るのは調査と伝令の為に呼ばれた二番隊隊長の四楓院千日。

 

 しばらくすると治療を終えた当事者である卯ノ花八千流が顔を出す。その重い足取りと思い詰めた表情が状況の深刻さを物語っていた。

 話を急かそうとする千日に重國は「よい」と制して心の整理が出来てから語るように促す。源蔵も気を利かせてみんなにあっついお茶を淹れて一息つく。

 

 そうして仕切り直し、誰もが緊張した面持ちでその第一声を待っていたその時、ついに卯ノ花八千流は口を開いたのだった…………。

 

 

 

 

「どうか私を十一番隊隊長の座から退かしてほしいのです」

 

 

「「なん……じゃと?」」

 

 

 その日、手から滑り落ちた二つの湯飲みが真っ二つに割れて、四楓院千日が衝撃のあまり窓から落ちた。猫かな? 

 

 下で、大丈夫ですか四楓院隊長! と通りかかった隊士たちに騒がれる中、戦いこそすべて、とか思ってそうなあの卯ノ花八千流の発言に二人の脳が理解出来ずにフリーズする。そう、解釈不一致というやつである。

 

 ワンテンポ遅れて起動した二人が暴走する。

 

「源蔵! 偽物作りよったな!!」

「冤罪すぎる! 卯ノ花殿ぉ! どうしたの! やばいの食べた?」

「……あの」

「帯刀令じゃ! 難敵が来るやもしれん!」

「災害かもしれない! 戸締まりの徹底もしないと!」

「お二人共……?」

「食料の確認に向かわねば!」

「緊急防衛配備の手続きを!」

 

「 落ち着いてください 」

 

「「…………はい」」

 

 その迫力に源蔵はあっ本物だ、と思わず口から漏れるのであった。

 

 頭の冷えた二人はようやく冷静さを取り戻す。

 しっかりと話を聞くと何でも強敵を求めて流魂街へと繰り出していたそう。ちょっと何を言ってるか理解できないが、そういうことしそうだなと源蔵は納得する。解釈一致である。そして、運命と出会ったのだ。

 

「私(の後継者)にはもうあの子しかいないのです!」

 

 きゃーと興奮し「ラブ? ラブなの!?」とあたふたする源蔵の脳天に「落ち着かんかァ!」と重國の拳が入り、「割れるッ!」と悲鳴を上げて床に転がる源蔵を尻目に話は続く。

 

「至福のひとときでした。よもや私があんな子ども相手にこれまでに得たことのない悦びを得るなんて…………!」

 

「ねぇこれ大丈夫? 聞いてていいやつ? 儂帰る?」

「まあ、待て源蔵よ。儂一人に押し付けるつもりか……?」

 

「でも私は……! なんて過ちを! まさか、あの子に及ばず、逆に枷をつけてしまうなんて…………!」

 

「なに? おねショタ? 癖の話? もうそっちの話にしか聞こえんぞ。殺り合いの話だよねぇ重國! どっちにしても儂理解の外だよ! 倫理観の終わりだよ! もう理の果てだよ!」

「うむ」

「起きろ重國、思考を放棄するんじゃない!」

 

「私は私が情けない!」

 

 逢仏殺仏逢祖殺祖の化身、天下御免の大剣客、空前絶後の大罪人、卯ノ花八千流は自らの弱さを恥じるが故に十一番隊から退く決意をしたのだそう。

 

 まあ、つまるところ一連のあれこれに事件性はなく、エグい強い子供がおるぞ、卯ノ花八千流隊長辞めるってよというお話であった。

 

 そして、全ての話を整理したその結果と結末である。

 

「護廷隊が流魂街の民に刃を向けるとは何事かァ!!!!」

 

 と、重國の至極まっとうなお叱りもってこの騒動は幕を閉じましたとさ。

 

 

 その後、色々受理され、卯ノ花八千流は名を烈と戻し、四番隊へと移動。そして、たとえ治安の悪い犯罪人の集まりのような番地に住む流魂街の民だとしても殺しまくるのは普通にアウトである。卯ノ花烈には罰として無許可での私闘、戦闘禁止令が出されたのだった。

 

 あの剣しか勝たん大罪人が人を生かす四番隊へ行き、やがて癒やしの代名詞となった。やはり、時代の変わり目の一つであったのだ。




大事件の最中、毎回四十六室全滅してるからユーハバッハの初対峙でも全滅してそうですよね。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
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