マスキッパと私   作:スナエ

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ドレスアップ

 自著である『毒性のあるポケモンの生態と人体への影響について』が、ありがたいことに賞をもらった。

 今日は、その授与式である。

 私は、白衣ではなく盛装をして、鏡の前に立つ。

 

「悪く、ないんじゃないか……?」

 

 横になったり、背中側をチェックしたりしていると、相棒のマスキッパが、「すきゅっ」と鳴いた。

 褒められている気がする。

 

「君も一緒に行くから、お洒落しようか?」

「すきゅきゅ」

 

 満更でもなさそうなので、部屋の中をガサゴソと探した。

 何かあるだろ。何か。

 

「あっ」

 

 おもちゃのリングを見付けた。毒林檎を模したもので、緑色の毒液が赤い林檎にかかっている。

 

「これ、どうかな?」

 

 マスキッパの蔓を一本手に取り、リングを嵌めた。

 

「すきゅーっ」

「ふふ。気に入ったみたいだね」

 

 マスキッパが、草タイプであることは重々承知しているが、今回は毒についての本だから。

 私は、紫色のスカーフで毒を表している。毒コーデだ。

 

「じゃあ、出発しよう」

「すきゅっ」

 

 私たちは、アカデミーの自室から出て、テーブルシティの中を歩いて行く。ポケモン生態学会の授与式が行われる会場まで。

 ノモセからパルデア地方に来て、だいぶ経つが、今でも新鮮に街中を見られた。

 長い研究だったな。もう少し、アカデミーでの生活は続くけれど。

 ドオー・キラフロル・タギングル・ブロロローム、様々な毒を研究した。

 毒の研究をしていただけでなく、アカデミーで特別講師もさせてもらい、良い経験になったな。

 いずれ、ノモセシティの研究所に戻った時も役に立つだろう。

 会場に着いた。

 

「こんにちは。ツルバミ博士ですね?」

「はい」

「お席へご案内いたします」

「ありがとうございます」

 

 案内され、私は、マスキッパと並んで座る。

 この会場は、200人入るし、ネット中継もあるから、少し緊張した。

 

「すきゅう」

「ん? はは。大丈夫だよ。いつも通りやるさ」

 

 私の緊張が伝わったのか、マスキッパが心配している。

 とうとう式が始まった。

 ポケモン生態学会のオンライン会議で、世界中の人々の前で話したこともあるじゃないか。大丈夫さ。

 

「続いて、『毒性のあるポケモンの生態と人体への影響について』の著者、ツルバミ博士と相棒ポケモンのマスキッパです」

「はい」

「すきゅ」

 

 司会者に呼ばれ、返事をして舞台上へ行く。

 

「この度は、類い稀なる研究成果と功績を称え、メダルを授与いたします」

「ありがとうございます」

 

 金色に輝くメダルを首にかけていただいた。

 人々の視線やカメラが、私とマスキッパに向いている。

 マスキッパの葉がこちらに伸ばされていたので、手で握った。

 後日、その場面の写真が生態学雑誌に載り、親戚や知人からはお祝いの連絡が届く。

 

「出資者が増えるといいね」

「すきゅっ!」

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