ポケモン世界、問題多し 作:前途多難な転移者
ポケットモンスター、縮めてポケモン。
世界的に爆発的な人気を誇るゲームのジャンルであり、大人も子供もドハマりしていると言っても過言ではない。
とか言っている自分も、かなりハマっていたゲームである。
ランクマッチを少しやって、まぐれでスーパーボール級に行けた程度である。廃人という程やり込んでいた訳でもなく、捕まえたポケモン達でやれる戦法を考えて、時に
しかしそんな自分ももう大学生、そろそろ勉強を片手間にゲーム…ではなく真面目に勉強し、就職も視野に入れて動かなければならない。
そんな事を考えながは今日も大学が終わり、バイトも終えて家へと帰る。
信号で立ち止まり、ふとスマホの通知音がしたのでポケットから取り出した。
そんな時、強烈な光が目を焼くと共に、体が何かに当たり吹き飛んだ感覚。
「─── !」
「─た、─── か!?」
叫んでいる声が聞こえるが、全身が痛くてそれどころじゃない。
視界はぼやけて何も見えないし、体が寒さを訴えている。
「…ぁ」
「…しき─── ぞ!は──11 ──!」
人はふとした時に呆気なく死ぬ事は理解しているつもりだった
しかし、自分が当事者になるなど微塵も思ってはいなかった。
ぼやけた視界と、消えていく命の感覚にもっと混乱すると思っていたが、頭は意外と冷静だった。
そう言えば、死の間際、人は走馬灯を見るらしい
そんな自分の走馬灯は
ポケモンを楽しく遊ぶ、幼い自分自身だった。
そんな昔を思い出すと共に、意識は暗い闇の中へと消えて行った。
─────────
「ん…?」
次に目覚めた時、初めに感じたのは浮遊感。
それも、水にぷかぷかと浮いている、そんな感覚。
ゆっくりと目を開ければ、青い空に白い雲。
そして、飛んでるキャモメ
「……ん???」
もう一度よく見る。
キャモメである。
群れを成して飛んでいる、キャモメである。
「おーい…おーーーい」
まだ見た物を全然飲み込めていないが、何処からか声が聞こえた。
そちらへ目線を向ければ
「そこの人ーー!大丈夫ーー!?」
ラプラスの背に乗った少女が、ゆっくりと近付いてきた。
流石の自分ももう、認めるしかない。
理由も何も分からないが、自分は、ポケモンの世界に来たのだと。
「意識あり、呼吸は正常、漂流してたって感じじゃないね…お兄さん、ポケモン苦手だったりは?」
「…いや、大丈夫な…はず」
「そっか、じゃあ浜まで連れてくよ、連れて行きながら色々と聞くからね!」
そう言って、ラプラスに服を咥えられ、背に乗せられる。
ラプラスの背中の凹凸に体がスッポリと収まる。まるで初めから人を乗せる為にある様なフィット感だ。
「お兄さんここら辺じゃ見かけない人だね…観光…って訳じゃなさそうだし、遭難で消耗した感じはないし…」
こちらをチラリと見ながら少女が話しかけて来た
「…あぁ…気付いたら浮いてた」
「気付いたらここで浮いてた!?えっ!?何処から流されたの!?」
「それも分からない」
「…テレビで見た、寝てる間に流すってドッキリのやつ…?でもこんな沖まで流すなんて普通しないし…」
何やら考え込む少女は、ハッとしてこちらを向いて聞いて来た。
「そう言えばお兄さん、自分の名前と、ポケモンは?」
「名前か…カナエだ。ポケモン…」
そう思って腰回りを見る。
モンスターボールのホルダーもない、何なら帰宅しようとしていた時のままの格好だ。海水を吸っているのか地味に重く、不快感もある。
「…うん、一匹も居ないな」
「えっ…ボックスに居るって事は…?」
「…そもそもトレーナーカードがあるかどうかも分からない」
「えぇぇ…!?」
そう答えれば、少女は頭を抱えて何やらぶつぶつと独り言を言っている。
「そう言えば、あそこは何処だ?」
少しづつ見えて来た、巨大な島々を指さして問いかける。
「え?お兄さん、ここが何処かさえも知らないの?ここはメイガイ地方だよ」
「…いや…知らない…」
「…お兄さん、本当に何処から来たの…?」
そんな少女の問いに正直に答えられる訳もなく
島に着くまで、沈黙の代わりとして波の音と上機嫌なラプラスの歌声だけが響いた。