ソードアート・オンライン 黒の剣士と赤の少女 作:相馬エンジェル梅太郎
申し訳ないです。
これからまた頑張ります!
それと私事で申し訳ありませんが、近々一次創作をやろうと思っています!
これからも相馬エンジェル梅太郎の応援よろしくお願い致します!
気持ちは分からない。
自分の物なのに、全く分からない。自分の物だからこそ分からない。
人の顔色ばかりに気を使って生きて来た。
自分を蔑ろにして、人のために生きる。
だが、それすらも所詮は偽りに過ぎない。
人のため。人のため。人のため。
心の中で唱え続ける言葉は、ただそれだけ。
その言葉すらも、醜い自分を覆い隠すための武装。
人のため。人のため。人のため。
その真意は。
自分のため。自分のため。
自分の身を守るため。
ただそれだけ。
私は生きる屍だった。“あの事件”で私は全てを失った。生きながらにして、死んだのだ。
だが、不思議と後悔することは無かった。
後悔する。そんな簡単な行為する機能も、私は失った。
空っぽ。空っぽ。空っぽ。
これまでも。そして、これからも。
だが、運命は時として人生を大きく動かす。
私はこのデスゲームに閉じ込められたのは、運命だと悟った。
デスゲームで私は一度の過ちと、一度の出会いと、再びの過ち。それらを犯した。
結局私は空っぽのまま。
これまでも。そして、これからも。
「はい。愛しています」
胸が焦がれるような言葉だった。自分の口からここまで稚拙な言葉が出るとは思わなかった。それでも思いは負けていないと考える。
稚拙ながら、真っ直ぐな言葉。
その思いを汲み取るように、アスナさんは笑った。
「何が可笑しいんですか?」
微笑むアスナさんを見て、攻撃的な反応を示してしまう。
心の中には軽い自己嫌悪。だが、それよりも思いを馬鹿にされたかもしれないことに、対しての怒りの感情が大きかった。
「ごめんなさい。馬鹿にしたわけじゃないの」
「え?」
アスナさんは微笑みながら、淡々と語り出す。
「キリト君は罪な男の子だなって」
羨ましい。そう感じた。
嫉妬した。醜い私が現れようとしている。
アスナさんは私の知らないキリト君を知っている。
ただそれだけなのに。
私には耐えられそうになかった。
「羨ましいです」
「何が?」
思わず口にしてしまう。アスナさんは笑顔を浮かべながらも、強い視線を向けている。
「私の知らないキリト君を知っていて」
アスナさんは私の言葉を聞くと、一度私から視線を外して下を向く。
「私だって何も知らないよ」
「え?」
泣き笑い。そんな表情だった。真意を隠し、建前の感情を出している。
人の顔を見て生きて来た私はすぐにそれが分かった。それでも、それを言葉にすることは無かった。
「私たちは歪な関係だったの」
アスナさんの独白が始まった。
「私たちは歪だった。本当に歪だった」
真意はどんどん身を潜め、表情は建前で埋まっていく。
優しい笑みになっていく。それが逆に辛かった。
「パートナーって言える時期もあったかもしれない。一緒にパーティーを組んでた時もあったし、彼がビーターって呼ばれてた時期も陰ながらサポートしたつもり」
私とキリト君の間にはない、確かな絆。
それが欲しいと素直に思った。
「けど、パートナーとしての私たちはダメだった」
その言葉が決定的な言葉だったのだろう。アスナさんは笑顔を浮かべながら泣いていた。
言葉を与える事無く、ハンカチを手渡す。
「ありがとう」
「いいえ」
アスナさんはハンカチを手に取り、目頭に充てた。
「私たちは足りなかった。何もかもが足りて無かった」
それは私たちの方だ。
そう言いたかった。
あなたたちには時間があったじゃないか。あなたたちには思いがあったじゃないか。あなたたちは愛があったじゃないか。
声を荒げて言いたかった。
けれど言えなかった。
「私達が得て来たものは、時間があれば誰でも手に入れられる」
ハンカチは既に手の中に握られていた。それはもうすごい力で。
「けれど、エミリーさんたちが得て来たものは、時間では解決出来ない」
私は何も言わない。アスナさんも何も言わない。
暫くの無言だった。
そして。
「私はエミリーさんが得て来たものが欲しかった」
真っ直ぐな視線。重い。そう感じた。
「だから、私の欲しかった物を持っているエミリーさんには諦めて欲しくない。このままじゃきっとキリト君は潰れちゃう」
悲痛な響きだった。
心臓が圧縮され、潰されるかと思った。
アスナさんは席を立つ。
「今日はもう帰るね」
「はい」
玄関まで送ろうにも、体に力が入らなかった。
「エミリーさんも良く考えて。どんな答えを出しても私は絶対に文句は言わない」
頭が痛くなってくる。そんな気がした。
「私は決めたの」
「何をですか?」
アスナさんに視線を合わせる。
「私はもう負けない。エミリーさんにもキリト君にも」
「どういうことですか?」
アスナさんは悪戯っ子のような表情を浮かべて。
「諦めないことにしたの。私達、これからライバルね」
アスナさんはそう言い残して、家を出て行った。
俺は空っぽだった。
もう何もいらない。そう感じている。
リアルも、ゲームも、もうどうだっていい。
ただただエミリーに害を成す物さえなければ。
「キー坊。また来たのカ」
「ああ。情報はあるか、アルゴ」
小柄な少女はSAO随一の情報屋のアルゴ。
俺は連日彼女の元に訪れていた。
「今日も無いヨ」
「そうか。ならいい」
アルゴへの礼もそこそこに俺は彼女に背を向ける。
失礼だとは思うが、今は余計なことに気を向けたくなかった。
「何故そこまで彼女に固執するんダ?」
アルゴからしたら素朴な疑問だったのだろう。
何故ならここ数日彼女に依頼していたのは、エミリーの身辺調査に他ならないのだから。
「受け入れたいと思ったんだ」
「受け入れたい?」
「ああ。受け入れたい。守りたい。そんなもんさ」
「ただそれだけカ?」
「ああ。それだけだ」
沈黙。静寂が訪れている。
「それは危ないんじゃないカ?」
彼女は俺を心配してくれているのだろう。それは十分理解できる。
けれど、それすらも煩わしかった。
「アルゴには関係ない」
突き放すような口調で告げる。拒絶の意を隠そうともしない。
「関係ならあるヨ」
「は?」
その言葉は何だか気に障る言葉だった。
「関係ならあるって言ったんだヨ。キー坊とはβテストから一緒だし、キー坊は攻略組のトップダ!キー坊がそんな調子じゃ攻略は遅れル!そうなれば様々な問題が生じル!それが分からないキー坊じゃないだロ!」
アルゴの叫びは本音だったのだろう。こんな俺を見て、我慢が限界を超えたのだろう。
それも分かっている。
それでも。
「もうどうでもいいんだよ」
「え?」
「もうどうでもいいって言ってんだろ!」
アルゴの体がビクッと震える。俺の声に驚いたのだろう。それか俺の言葉に驚いたのかもしれない。
「キー坊。そこまで」
「もう構わないでくれ」
アルゴに背を向ける。彼女が俺に声を掛けることは無かった。
アスナさんの言葉が頭から離れない。
「諦めない」
何て強い人だろう。何て綺麗な人だろう。何て素晴らしい人だろう。
敵わない。けれど、キリト君は渡したくない。
ただそれだけ。
キリト君との縁を切ったのは私。けれど、私は今もこうしてキリト君に縋っている。キリト君の面影だけを追っている。目を瞑ればキリト君が笑いかけてくれる。
けれど、そこには温かさはない。温もりがない。
それ故に、私はより一層キリト君の面影に縋ろうとする。
私は悍ましい人間だ。
これ程まで腐った人間もいない。
そう感じてしまう。
だが、私はそれを心の底から思っている訳ではないことも理解している。
私はそう思うことで本当の自分から、目を背けているのだ。
腐りそうで腐っていない。そんな中途半端な自分から目を背けている。
“あの事件”で本当に全てが壊れてしまえばよかった。
中途半端に壊れた私は、中途半端な生き方しかできない。
それが何よりも悲しい。悔しい。虚しい。
だが、その気持ちが心の底から生まれたものであるという確証はない。
彼が現れるまで、私を理解しようとしてくれた人は両親とカリンだけだった。
献身的に支えてくれた。努力してくれた。
「どんなことがあっても、あたなは“絵美”よ。誰が何と言おうとママとパパだけは絶対に味方だからね」
そう言って抱きしめてくれた母。その温かさは今も忘れない。忘れようがない。
だが、母の言葉は心には響かなかった。
優しさは嬉しかった。
けれど、その言葉は“過去”の私に対してでしかない。
“過去”の私を呼び戻すために、“今”の私を廃絶する言葉でしかない。
ママにとっては“今”の私は“過去”の私を取り戻すための障害でしかない。
それが辛かった。
「何か欲しい物はないかい?」
「行きたいところはないかい?」
パパは私との距離が広がった。それは私のせいだ。距離は心も物理的にも。
それでも変わらぬ愛をくれた。
ママとパパの違いは現状の理解だった。
パパは“今”の私を理解してくれたのだ。“過去”の私と“今”の私は同一人物だと。
それでもパパの理解の前提には、“過去”の私はもう死んでいる。それが前提としてあった。
同じ肉体に、同じ精神が宿った別人。それは究極的な矛盾。
だが、パパはそうしなければ、パパは私を容認出来なかったのだろう。
「ごめんね。ごめんね。ごめんね」
“花梨”は懺悔しかしなかった。只管謝り、謝り、謝る。
自分を押しつぶさんとする罪悪感から、逃げるための懺悔。
私に対してで無く、自我を守るための懺悔。
そこで私たちの友情は壊れた。完膚無きまでに壊れた。
“花梨”は“過去”の私を殺した。自身の中で。そこで私達の関係は白紙に戻った。
懺悔もなく、過ちもなく、贖いもない。
そこで私達はようやく対等になれた。
けれど、全ての思いが消える訳ではない。
“花梨”は今も私に負い目を感じている。私を守ることを最優先に考えてくれている。
けれど、“花梨”はいい子だ。人を傷つけることは出来ない子だった。
私を外敵から守れなかった反動は、自分に返ってしまう子だった。
“敵”が私への攻撃を強めれば、彼女の中で“敵”への攻撃的意識と、私への守護欲が湧き上がる。
そうなればなるほど、彼女は“敵”を傷つけることが出来なくなり、私への負い目から“花梨”自身に攻撃を加えてしまう。
可笑しいかもしれないが、“花梨”はそうしなければ、私の隣に立つことも出来ない。
悩みに、悩みに、悩んだ結果だろう。
それを責める気にはならない。けれど、彼女がいくら努力しようとも私との溝は二度と埋まらない。
そこに彼は現れたのだ。
全てが終わりを向い、修復の道など完璧に断たれたところに彼は現れた。
初めての存在だった。
過去の私を知らないで、今の私を支えようとしてくれる人。
彼は希望だった。
分断され誰にも見えない彼方に消えた“過去”の私。
それを見通さず、私を見てくれる。
そんな彼に依存した。けれど、近づけば近づく程、自分の醜さを嘆き、彼の純粋さを呪った。
それでも最終的には依存するのだ。縋る。みっともなく。
彼を失うことは“今”の私を失うことと同じ意味を持っていた。
笑うだろうか。
皆には遥か彼方に消えたように見える、“過去”の私は。
けれど、分かるのだ。
“過去”の私は消えていない。今もいる。今も生きている。
“今”の私は“過去”の私と同じ人間なのだから。
私がそう信じているのだから。
七十四層。迷宮区。
ここは俺の運命の場所だ。ここで俺の人生は違う道を歩き始めた。軌道を変えた。
その分岐路に立つ。
あの時俺がこの場に居なかったら、彼女は死んでいた。
彼女を守った。それだけが胸の中にあった。
だが、あの時とは違う。何もかもが違う。
輝く色が違う。
真っ赤な輝きは、今はオレンジ色が支配している。
「どうして」
知らず声が漏れていた。
「あ。キリト君」
柔らかい笑み。長い間彼女と行動を共にしていたが、初めて見た笑顔だった。
包み込むような笑み。
「どうして君がここに」
後ずさる。ゆっくりと後ずさる。
「キリト君に会いに来たの」
全てを許すような柔らかい声で発した。
だが、次の言葉には確かな強さが含まれていた。
逃げようがない。
俺はここで新たな運命に出合った。
赤の少女との出会いの場所は。
「私はキリト君を諦めない」
オレンジ色の少女との再出発の場所になった。
久しぶりに書きました!ww
本当にサボってごめんなさい。
この暇な時期に色々と頑張ります!ww
今度書く一次創作も読んでね(はーと