ソードアート・オンライン 黒の剣士と赤の少女   作:相馬エンジェル梅太郎

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また投稿が開いてしまいました。( 一一)
申し訳ないです。
これからまた頑張ります!

それと私事で申し訳ありませんが、近々一次創作をやろうと思っています!
これからも相馬エンジェル梅太郎の応援よろしくお願い致します!


真意

 気持ちは分からない。

自分の物なのに、全く分からない。自分の物だからこそ分からない。

人の顔色ばかりに気を使って生きて来た。

自分を蔑ろにして、人のために生きる。

だが、それすらも所詮は偽りに過ぎない。

人のため。人のため。人のため。

心の中で唱え続ける言葉は、ただそれだけ。

その言葉すらも、醜い自分を覆い隠すための武装。

人のため。人のため。人のため。

その真意は。

自分のため。自分のため。

自分の身を守るため。

ただそれだけ。

私は生きる屍だった。“あの事件”で私は全てを失った。生きながらにして、死んだのだ。

だが、不思議と後悔することは無かった。

後悔する。そんな簡単な行為する機能も、私は失った。

空っぽ。空っぽ。空っぽ。

これまでも。そして、これからも。

だが、運命は時として人生を大きく動かす。

私はこのデスゲームに閉じ込められたのは、運命だと悟った。

デスゲームで私は一度の過ちと、一度の出会いと、再びの過ち。それらを犯した。

結局私は空っぽのまま。

これまでも。そして、これからも。

 

 

 「はい。愛しています」

胸が焦がれるような言葉だった。自分の口からここまで稚拙な言葉が出るとは思わなかった。それでも思いは負けていないと考える。

稚拙ながら、真っ直ぐな言葉。

その思いを汲み取るように、アスナさんは笑った。

「何が可笑しいんですか?」

微笑むアスナさんを見て、攻撃的な反応を示してしまう。

心の中には軽い自己嫌悪。だが、それよりも思いを馬鹿にされたかもしれないことに、対しての怒りの感情が大きかった。

「ごめんなさい。馬鹿にしたわけじゃないの」

「え?」

アスナさんは微笑みながら、淡々と語り出す。

「キリト君は罪な男の子だなって」

羨ましい。そう感じた。

嫉妬した。醜い私が現れようとしている。

アスナさんは私の知らないキリト君を知っている。

ただそれだけなのに。

私には耐えられそうになかった。

「羨ましいです」

「何が?」

思わず口にしてしまう。アスナさんは笑顔を浮かべながらも、強い視線を向けている。

「私の知らないキリト君を知っていて」

アスナさんは私の言葉を聞くと、一度私から視線を外して下を向く。

「私だって何も知らないよ」

「え?」

泣き笑い。そんな表情だった。真意を隠し、建前の感情を出している。

人の顔を見て生きて来た私はすぐにそれが分かった。それでも、それを言葉にすることは無かった。

「私たちは歪な関係だったの」

アスナさんの独白が始まった。

「私たちは歪だった。本当に歪だった」

真意はどんどん身を潜め、表情は建前で埋まっていく。

優しい笑みになっていく。それが逆に辛かった。

「パートナーって言える時期もあったかもしれない。一緒にパーティーを組んでた時もあったし、彼がビーターって呼ばれてた時期も陰ながらサポートしたつもり」

私とキリト君の間にはない、確かな絆。

それが欲しいと素直に思った。

「けど、パートナーとしての私たちはダメだった」

その言葉が決定的な言葉だったのだろう。アスナさんは笑顔を浮かべながら泣いていた。

言葉を与える事無く、ハンカチを手渡す。

「ありがとう」

「いいえ」

アスナさんはハンカチを手に取り、目頭に充てた。

「私たちは足りなかった。何もかもが足りて無かった」

それは私たちの方だ。

そう言いたかった。

あなたたちには時間があったじゃないか。あなたたちには思いがあったじゃないか。あなたたちは愛があったじゃないか。

声を荒げて言いたかった。

けれど言えなかった。

「私達が得て来たものは、時間があれば誰でも手に入れられる」

ハンカチは既に手の中に握られていた。それはもうすごい力で。

「けれど、エミリーさんたちが得て来たものは、時間では解決出来ない」

私は何も言わない。アスナさんも何も言わない。

暫くの無言だった。

そして。

「私はエミリーさんが得て来たものが欲しかった」

真っ直ぐな視線。重い。そう感じた。

「だから、私の欲しかった物を持っているエミリーさんには諦めて欲しくない。このままじゃきっとキリト君は潰れちゃう」

悲痛な響きだった。

心臓が圧縮され、潰されるかと思った。

アスナさんは席を立つ。

「今日はもう帰るね」

「はい」

玄関まで送ろうにも、体に力が入らなかった。

「エミリーさんも良く考えて。どんな答えを出しても私は絶対に文句は言わない」

頭が痛くなってくる。そんな気がした。

「私は決めたの」

「何をですか?」

アスナさんに視線を合わせる。

「私はもう負けない。エミリーさんにもキリト君にも」

「どういうことですか?」

アスナさんは悪戯っ子のような表情を浮かべて。

「諦めないことにしたの。私達、これからライバルね」

アスナさんはそう言い残して、家を出て行った。

 

 

 俺は空っぽだった。

もう何もいらない。そう感じている。

リアルも、ゲームも、もうどうだっていい。

ただただエミリーに害を成す物さえなければ。

「キー坊。また来たのカ」

「ああ。情報はあるか、アルゴ」

小柄な少女はSAO随一の情報屋のアルゴ。

俺は連日彼女の元に訪れていた。

「今日も無いヨ」

「そうか。ならいい」

アルゴへの礼もそこそこに俺は彼女に背を向ける。

失礼だとは思うが、今は余計なことに気を向けたくなかった。

「何故そこまで彼女に固執するんダ?」

アルゴからしたら素朴な疑問だったのだろう。

何故ならここ数日彼女に依頼していたのは、エミリーの身辺調査に他ならないのだから。

「受け入れたいと思ったんだ」

「受け入れたい?」

「ああ。受け入れたい。守りたい。そんなもんさ」

「ただそれだけカ?」

「ああ。それだけだ」

沈黙。静寂が訪れている。

「それは危ないんじゃないカ?」

彼女は俺を心配してくれているのだろう。それは十分理解できる。

けれど、それすらも煩わしかった。

「アルゴには関係ない」

突き放すような口調で告げる。拒絶の意を隠そうともしない。

「関係ならあるヨ」

「は?」

その言葉は何だか気に障る言葉だった。

「関係ならあるって言ったんだヨ。キー坊とはβテストから一緒だし、キー坊は攻略組のトップダ!キー坊がそんな調子じゃ攻略は遅れル!そうなれば様々な問題が生じル!それが分からないキー坊じゃないだロ!」

アルゴの叫びは本音だったのだろう。こんな俺を見て、我慢が限界を超えたのだろう。

それも分かっている。

それでも。

「もうどうでもいいんだよ」

「え?」

「もうどうでもいいって言ってんだろ!」

アルゴの体がビクッと震える。俺の声に驚いたのだろう。それか俺の言葉に驚いたのかもしれない。

「キー坊。そこまで」

「もう構わないでくれ」

アルゴに背を向ける。彼女が俺に声を掛けることは無かった。

 

 

 アスナさんの言葉が頭から離れない。

「諦めない」

何て強い人だろう。何て綺麗な人だろう。何て素晴らしい人だろう。

敵わない。けれど、キリト君は渡したくない。

ただそれだけ。

キリト君との縁を切ったのは私。けれど、私は今もこうしてキリト君に縋っている。キリト君の面影だけを追っている。目を瞑ればキリト君が笑いかけてくれる。

けれど、そこには温かさはない。温もりがない。

それ故に、私はより一層キリト君の面影に縋ろうとする。

私は悍ましい人間だ。

これ程まで腐った人間もいない。

そう感じてしまう。

だが、私はそれを心の底から思っている訳ではないことも理解している。

私はそう思うことで本当の自分から、目を背けているのだ。

腐りそうで腐っていない。そんな中途半端な自分から目を背けている。

 

 “あの事件”で本当に全てが壊れてしまえばよかった。

中途半端に壊れた私は、中途半端な生き方しかできない。

それが何よりも悲しい。悔しい。虚しい。

だが、その気持ちが心の底から生まれたものであるという確証はない。

彼が現れるまで、私を理解しようとしてくれた人は両親とカリンだけだった。

献身的に支えてくれた。努力してくれた。

「どんなことがあっても、あたなは“絵美”よ。誰が何と言おうとママとパパだけは絶対に味方だからね」

そう言って抱きしめてくれた母。その温かさは今も忘れない。忘れようがない。

だが、母の言葉は心には響かなかった。

優しさは嬉しかった。

けれど、その言葉は“過去”の私に対してでしかない。

“過去”の私を呼び戻すために、“今”の私を廃絶する言葉でしかない。

ママにとっては“今”の私は“過去”の私を取り戻すための障害でしかない。

それが辛かった。

「何か欲しい物はないかい?」

「行きたいところはないかい?」

パパは私との距離が広がった。それは私のせいだ。距離は心も物理的にも。

それでも変わらぬ愛をくれた。

ママとパパの違いは現状の理解だった。

パパは“今”の私を理解してくれたのだ。“過去”の私と“今”の私は同一人物だと。

それでもパパの理解の前提には、“過去”の私はもう死んでいる。それが前提としてあった。

同じ肉体に、同じ精神が宿った別人。それは究極的な矛盾。

だが、パパはそうしなければ、パパは私を容認出来なかったのだろう。

「ごめんね。ごめんね。ごめんね」

“花梨”は懺悔しかしなかった。只管謝り、謝り、謝る。

自分を押しつぶさんとする罪悪感から、逃げるための懺悔。

私に対してで無く、自我を守るための懺悔。

そこで私たちの友情は壊れた。完膚無きまでに壊れた。

“花梨”は“過去”の私を殺した。自身の中で。そこで私達の関係は白紙に戻った。

懺悔もなく、過ちもなく、贖いもない。

そこで私達はようやく対等になれた。

けれど、全ての思いが消える訳ではない。

“花梨”は今も私に負い目を感じている。私を守ることを最優先に考えてくれている。

けれど、“花梨”はいい子だ。人を傷つけることは出来ない子だった。

私を外敵から守れなかった反動は、自分に返ってしまう子だった。

“敵”が私への攻撃を強めれば、彼女の中で“敵”への攻撃的意識と、私への守護欲が湧き上がる。

そうなればなるほど、彼女は“敵”を傷つけることが出来なくなり、私への負い目から“花梨”自身に攻撃を加えてしまう。

可笑しいかもしれないが、“花梨”はそうしなければ、私の隣に立つことも出来ない。

悩みに、悩みに、悩んだ結果だろう。

それを責める気にはならない。けれど、彼女がいくら努力しようとも私との溝は二度と埋まらない。

 

 そこに彼は現れたのだ。

全てが終わりを向い、修復の道など完璧に断たれたところに彼は現れた。

初めての存在だった。

過去の私を知らないで、今の私を支えようとしてくれる人。

彼は希望だった。

分断され誰にも見えない彼方に消えた“過去”の私。

それを見通さず、私を見てくれる。

そんな彼に依存した。けれど、近づけば近づく程、自分の醜さを嘆き、彼の純粋さを呪った。

それでも最終的には依存するのだ。縋る。みっともなく。

彼を失うことは“今”の私を失うことと同じ意味を持っていた。

笑うだろうか。

皆には遥か彼方に消えたように見える、“過去”の私は。

けれど、分かるのだ。

“過去”の私は消えていない。今もいる。今も生きている。

“今”の私は“過去”の私と同じ人間なのだから。

私がそう信じているのだから。

 

 

 七十四層。迷宮区。

ここは俺の運命の場所だ。ここで俺の人生は違う道を歩き始めた。軌道を変えた。

その分岐路に立つ。

あの時俺がこの場に居なかったら、彼女は死んでいた。

彼女を守った。それだけが胸の中にあった。

だが、あの時とは違う。何もかもが違う。

輝く色が違う。

真っ赤な輝きは、今はオレンジ色が支配している。

「どうして」

知らず声が漏れていた。

「あ。キリト君」

柔らかい笑み。長い間彼女と行動を共にしていたが、初めて見た笑顔だった。

包み込むような笑み。

「どうして君がここに」

後ずさる。ゆっくりと後ずさる。

「キリト君に会いに来たの」

全てを許すような柔らかい声で発した。

だが、次の言葉には確かな強さが含まれていた。

逃げようがない。

俺はここで新たな運命に出合った。

赤の少女との出会いの場所は。

「私はキリト君を諦めない」

オレンジ色の少女との再出発の場所になった。





久しぶりに書きました!ww
本当にサボってごめんなさい。
この暇な時期に色々と頑張ります!ww

今度書く一次創作も読んでね(はーと
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